弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人前野光好の控訴の趣意は記録編綴の控訴趣意書記載のとおりであるから、
ここにこれを引用する。
 これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
 論旨第一点について
 所論は先づ原判決が被告人が本件各貸付けに当り約し又は受領した利息の徴収方
法を出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律(以下単に本法という)
第五条第三項にいわゆる利息の天引に該当すると認めた<要旨第一>のは不当である
というのである。しかし記録によれば被告人は貸付金を月賦弁済せしめる約束の下
に原判示各貸付を為すに当り一旦貸付元本全額を相手方に形式的に交付
してはいるけれども、その場で直ちにその内から(月賦弁済により毎月元本の減少
することは計算にいれないで)貸付全期間に対する貸付額面全額に対する約定利息
その他を右貸付元本の中から受領し、その余を現実に相手方に交付しているもので
あることが明らかである。このような方法は利息の前払の形式を擬装して右法条項
の計算方法を潜脱し、同法条第一項の規定の適用を免がれようとする脱法行為であ
るというの外ない。かような場合は同法条第三項の利息の天引と同視して同法条第
一項の規定を適用するのが相当である。何となれば、そう解しなければ貸主は右の
ような形ばかりの現実的授受を行うことにより容易に本条の適用を免がれ得ること
になるからである。右と同一の見解をとつた原判決は洵に相当であつて原判決には
所論のような違法はない。
 次に所論は原判決か被告人の受領した印紙代及び公正証書作成費用を同法条第五
項の看做利息と認定したのは<要旨第二>違法であるというのである。しかし同法条
項は金銭の貸付を行う者がその貸付けに関し受ける金銭は礼金、割
料、手数料、調査料その他何等の名義を以てするを問わず利息とみなして第一項の
規定を適用すると規定し、同趣旨の規定である利息制限法第三条が但し書を以て契
約の締結及び債務の弁済の費用を除外しているのと異なり、何等の除外例をも認め
ていないのである。これは本法において処罰の限度とされている利息は利息制限法
の規定する利息の最高限に比し極めて高率であるし、これらの費用の名義で種々の
脱法行為が行われることも予想されるのでそれを防止する意味で費用の実質を有す
るものについても例外を認めず、総て利息とみなし処罰の対象としたものと解され
るのである。されば原審が所論の印紙代及び公正証書作成費用を本法第五条第五号
を適用して総て利息とみなし、同法条第一項の規定を適用処断したのは相当であつ
て原判決には所論のような違法はない。論旨はいづれも理由がない。
 論旨第二点について
 所論は原審量刑の不当を主張するけれども原判示各違反の態様、回数、超過利息
額、被告人に昭和三二年一一月一二日本件と同種事犯により罰金五万円に処せられ
た前歴があることその他記録にあらわれた諸般の情状を考察すれば原審の量刑はや
むを得ないところというべく決して不当に重いものとは思料されない。論旨は理由
がない。
 よつて刑事訴訟法第三九条に則り主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 村木友市 判事 渡辺雄 判事 牛尾守三)

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