弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 論旨は冒頭において訴訟法違反をいうが、上告人が原審で、原判決事実摘示の控
訴人の陳述(一)のとおり述べたことは、記録上明らかであつて(二八六丁参照)、
右陳述が錯誤その他事実に反する証左がないから原審が所論の取消の点について判
断を与えなかつたことは正当であり、所論の違法は認められない。
 論旨一は事実誤認の主張に帰し(この点についての原審の認定は、その挙示の証
拠によりこれを是認することができる。)適法な上告理由と認められない。
 論旨二の中、違憲をいう点は原判示に副わない事項を前提とするものであつて、
(この点に関する原判示は正当と認められる。)適法な上告理由とは認められない。
所論の、D、E両名は、本件訴訟当事者でもなく被上告人代表者でもないから、こ
れを証人として尋問したことは何ら違法ではない。その他は原審の事実の認定、証
拠の取捨を非難するものであつて(この点に関する原審の判断は、その挙示の証拠
によりこれを是認することができる。)採るを得ない。(なお原審は、所論のよう
に、単に不正受験の意思をもつて、教科書を見れば見ることができるという状態に
おいただけのことをもつて、処罰しうべき不正受験行為と認めたものではなく、「
控訴人は……定刻から十数分遅れて試験場に入場し受験中、当日試験場においては
教科書は風呂敷や鞄又は机の中にしまうことと定められていたにも拘らず、控訴人
が膝の上に教科書を出して見ているのを試験監督員Dが発見し、控訴人に注意を与
え、教科書をしまわせた上控訴人をして引きつづき受験させたが、その後D監督員
が再び控訴人のところに行くと控訴人が再び膝の上に教科書をひろげて見ているの
を発見したので直に教科書を取り上げて受験を継続させたこと」を確定しており、
右認定は、挙示の証拠により是認することができる。また原審は、所論のように裁
判所が懲戒権者の裁量権の範囲を云為することができないとしたのではなく、本件
につき裁量権行使の当不当を論ずることは、本件処分の有効無効を判定する上には
関係がない旨を判示しているに止まるのであつて、右判示は正当である。更に原審
は、所論のように旧制第一法学部に処罰原因が発生しないのにも拘らず、公表もせ
ずに旧制第一法学部に一ヶ月の停学処分を課したことを認定しているのではなく、
「控訴人に対してなされた停学処分は、新制第二経済学部学生としてなされたもの
であつて、旧制第一法学部に対する関係においてはこれを認め得ない。」と判示し、
更に「控訴人に対する懲戒処分は、新制第二経済学部学生としての不正行為によつ
てなされたものであるけれども、該懲戒処分が被控訴大学の学生としての停学処分
である以上、控訴人は停学期間中被控訴大学の教育施設である営造物による一切の
教学上の行動を禁止せられるのであるから、控訴人が旧制第一法学部の学生として
授業を受け受験することもまた禁止せられることは当然である。」と判示している
のである。なお、憲法三九条の趣旨に違反するとの所論は、原判決の認定に副わな
い事実を前提とするばかりでなく、単に試験監督員の所為を非難するに帰し、原判
決の違憲を主張するものとは認められない。)
 同三は、本件停学処分の違法を前提とする主張であるが、これを違法でないとし
た原審の判断は正当であつて、所論は採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとお
り判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔

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