弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 第一、 申立。
 (控訴人)
 一、 原判決を取消す。
 二、 (本位的請求)
 1、 控訴人および選定者(以下控訴人らと略称)が被相続人亡A(本籍大阪市
a区b町c番地、最後の住所神戸市d区e町fg番地h、昭和四三年一〇月二七日
死亡)の相続人たる地位を有することを確認する。
 2、 訴訟費用(参加により生じた費用を含む。)は、第一、二審とも被控訴人
の負担とする。
 (予備的請求)
 1、 被控訴人亡A相続財産管理人Bの管理下にある被相続人Aの遺産中、特別
縁故者に対する相続財産分与後の残余財産に対して、控訴人(選定当事者)Cにつ
き三分の一、選定者Dにつき三分の一、同E、同F、同G、同H、同I、同Jにつ
き各一八分の一のそれぞれの割合による残余財産の分配請求権のあることを確認す
る。
 2、 訴訟費用(参加により生じた費用を含む。)は、第一、二審とも被控訴人
の負担とする。
 (被控訴人・補助参加人)
 主文第一、二項同旨。
 第二、 当事者らの主張・立証は、控訴代理人において原判決に対する不服の理
由を別紙一のとおり陳述し、被控訴人補助参加人代理人において、これに対する答
弁を別紙二のとおり陳述し、被控訴人・補助参加人において甲第二二号証の成立を
認めると述べたほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれをここに引用する。
         理    由
 一、 訴外Aが昭和四三年一〇月二七日死亡したが、相続人のあることが明らか
でなかつたため、神戸家庭裁判所において相続人不存在の手続が進められ、被控訴
人がその相続財産管理人に選任されていること、被控訴人は昭和四四年六月二〇日
民法九五八条に定める公告(以下これを最終公告という。)をなし、その権利主張
をなすべき期限(以下これを最終公告期限という。)を昭和四五年二月一三日と定
めたこと、控訴人ら(控訴人および選定者らを指す。以下同じ)は訴外Aの相続人
であると主張し乍らも、右期限内にその権利の申出をしなかつたこと、以上の事実
は当事者間に争いがない。
 控訴人の主張は、要するに、(1)本位的請求の前提をなす、本件においては訴
外K他三名が右最終公告期限内に相続人の申出をし、次いで相続権確認訴訟を提起
したことに因り、右最終公告期限が該訴訟の確定時である昭和四八年九月一一日ま
で延伸された旨の主張と、(2)予備的請求の前提をなす、民法九五八条の二の規
定は最終公告期限を徒過した相続人の相続権の行使を制限するものであつても、こ
れを失わしめるものではない旨の主張とから成つているが、右はいずれも民法九五
八条の二の規定の解釈問題であるので、次項に一括して考察する。
 <要旨第一・要旨第二>二、 (一)民法九五一条ないし九五九条の規定を通覧す
れば九五八条の二の規定は、最終公告期限内に相続人たるこ
との申し出をしなかつた相続人は、九五八条の公告に掲げられた期限の徒過によ
り、相続財産法人、ひいては特別縁故者に対する分与後にはその残余財産が帰属す
べき国庫に対し、その権利を行うことができないものとしたものと解すべきであつ
て、前掲控訴人の主張の如く、最終公告期限内に何人かが相続人たることの申出を
し、且つその者の相続権の存否が訴訟で争われている間は、他の相続人についても
該訴訟の確定時まで公告の期間が延伸されるものと解することはできない。
 (二) 控訴人は、前記の如き相続権存否確認訴訟が係属した場合、民法九五八
条の三第二項に定める特別縁故者の請求期間の始期が繰り下げられると解せられて
いることとの対比において、九五八条の二の期間もその間満了しないと解すべき旨
主張する。しかし、その場合は、請求期間の始期か繰り下げられるというよりも、
その終期が該訴訟の確定時から三ケ月後にまで延伸されると解すべきものであろう
が、いずれにせよ、九五八条の三に定める特別縁故者の請求権は、他に相続人のな
いことが確定して始めて生ずべきものであるから、その未確定の間、右請求権の消
滅を来さざるものと解することにそれなりの意味が存するも、九五八条の最終公告
に応じて申し出ずべき相続人の権利は、他の相続人の申出の有無とは関わりのない
ものであるから、これを同一に論ずるわけにはいかず、その結果が別途に帰するこ
とをもつて特別縁故者の請求権のみが不当に保護されるということはできない。
 そもそも九五八条の二により相続人が失権するのは、相続財産法人に対する関係
であるから、若しその最終公告期限内に申出を怠つていても、偶偶他に正当な相続
人の申出があり、相続人のあることが明らかになつたときは、九五五条により相続
財産法人は存立せざりしものと看做されるから、右申出を怠つていた相続人であつ
ても、爾後その者に対しては自己の相続権を主張して遺産の分配に与ることを妨げ
ないと解すべきてある。
 そうだとすると、控訴人の主張にして実益を生ずるのは、自ずとその相続人たる
ことの申出をした第三者の相続権が認められない場合に限られて来るのであつて、
かくて控訴人の主張は、本来自己の権利について尽すべき申出の期限を徒過してそ
の保全を怠つた者が、偶偶第三者が、しかも理由のない申出をなしていたことによ
つて、その本来罷るべき不利益を救済されるという極めて奇異な結果を招来せしめ
ることとなるのであつて、このような結果が容認される解釈は、衡平上到底これを
採り得ないとともに、右相続財産法人に対する相続人の権利の喪失は絶対的なもの
であつて、九五八条の三の分与の後、残余財産が生ずると否と、またその残余財産
の国庫帰属の時期が、相続財産管理人がこれを国庫に引き継いだ時であることも、
これに影響を及ぼすべきものではない。
 もとより、右相続財産法人に対して絶対的に喪失するということは、ひいて九五
八条の三により分与を受けた特別縁故者に対しては勿論、残余財産の引継を受くる
国庫に対しても爾後その権利を主張し得ざるに至り、実体上相続権が失われること
となる。かかる結果の招来については相続人不存在の相続財産の国庫帰属の性質
を、私権に基礎を置き、国庫を残余財産受取人とする法律の規定に基づく特定承継
的取得であると把握し、国庫は前主(相続財産法人)の権利以上のものを取得し得
ず、前主の権利に付着する負担を承継すべきであるとして、九五八条ないし九五九
条の改正追加(昭和三七年法律第四〇号による)前の九五九条の解釈において、最
終公告期間満了後においても残余財産の国庫引渡前には九五五条の適用があると解
した立場(控訴人が原審提出の昭和五一年四月五日付準備書面で援用する東京家庭
裁判所昭和三六年第二回身分法研究会多数説)からは、前記法条の改正追加後にお
いても、なお控訴人主張の如き反対が唱えられる余地がないではなかろう。しか
し、国庫帰属の性質が承継取得であつても、相続財産法人が蒙らない負担をも承継
すべきいわれはなく、昭和三七年の前記法条の改正追加は、特別縁故者への分与の
制度を導入したことに伴い、相続財産の帰属を迅速に確定して爾後の法律関係の錯
綜を避け、相続財産分与手続の円滑な遂行を図るべく、敢えて相続人の失権の時機
を明確にしたものと解すべきであるから、これによつて反射的に爾後相続人が残余
財産ひいてはそれが帰属すべき国庫に対する関係でも相続権を喪失するに至る結果
の招来は、法がこれを予想しつつも、公告に応えて自己の権利の申出を怠つた者に
その不利益を課することを是認したものとみるべきであつて、やむを得ないところ
である。
 そう解しても右相続財産法人制度の趣旨・目的に照らし、憲法二九条に反するも
のではないというべきである。
 (三) 控訴人は更に相続財産法人にも民法八〇条を類推適用して除斥期間内に
申し出でなかつた相続人も、残余財産に対して権利を行使し得ると主張するが、通
常申出債権者間の利害の調整という観念を容れる余地のない一般法人の清算手続の
場合と、相続人、相続債権者、受遺者、特別縁故者間の利害の調整を要する相続財
産法人の清算および分与手続の場合とを同一には論じ得ない。この点形式的に考察
する限りにおいては、失権相続人(最終公告期限後の申出相続人。以下同じ)が現
われた場合でもこれを無視して特別縁故者への分与を行い、若し残余財産を生じた
場合にのみ、その分配に与らしめればよいのであるから、失権相続人も、残余財産
への分配請求のみに限つては、これを許容することを妨げないともいえそうであ
る。しかし、現実の問題として、特別縁故者への分与前に現われた失権相続人にも
残余財産への分配請求権を認めるとした場合、家庭裁判所が分与審判の過程で、右
失権相続人の出現を全く無視することは事実上困難といわざるを得ない。且つそう
した失権相続人に残余財産への分配請求権を認むるとすれば、残余財産の有無およ
びその範囲につき、失権相続人を利害関係人として関与させ、審判に対する抗告権
を与えることをも許さなければならないであろう。
 (極端な場合、分与の結果残余財産が零となつたとしても、失権相続人がこれに
不服を申し立てられないのだとしたら、控訴人の主張を認めてみても実益に乏し
い。)。かくて残余財産についてであれ、これに失権相続人の権利主張を許すこと
は、折角相続財産を凍結して清算および分与手続の円滑化を図ろうとした法の趣旨
を没却せしめるものであつて、それが、先に前項に説示した絶対的失権の理由でも
あるのであるから、相続財産法人が法人であることに依拠して、明文をもつてその
準用を定めていない(九五七条二項参照)民法八〇条をたやすく類推適用すること
もできない。
 三、 すると、控訴人の本位的請求ならひに予備的請求は、いずれもその前提と
する主張が理由なくこれを採り得ず、前掲当事者間に争いのない事実関係の下にお
いては控訴人らは真正な相続人であつたとしても失権したものであつて、右両請求
ともその余の点を判断するまでもなく失当として排斥を免れない。よつて控訴人の
両請求をいずれも棄却した原判決は相当であつて本件控訴は理由がないので、民訴
法三八四条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 本井巽 裁判官 坂上弘 裁判官 潮久郎)
別 紙 一
<記載内容は末尾1添付>
別 紙 二
<記載内容は末尾2添付>
(別 紙)
 目    録
東京都江東区ij丁目k番l号
 控訴人選定当事者  C
千葉県千葉市m町n丁目o番地
 控訴人選定者    D
埼玉県大宮市p町q丁目r番地
 同         E
東京都北区st丁目u番v号
 同         F
埼玉県浦和市大字wx番地
 同         G
埼玉県浦和市yza1団地b1のc1
 同         H
埼玉県大宮市大字d1e1のf1番地
 同         I
埼玉県大宮市p町q丁目g1番地
 同         J

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