弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       原決定を破棄し,原々決定を取り消す。
       本件を佐賀地方裁判所に差し戻す。
         理    由
 抗告代理人田中克郎,同千葉尚路,同藤井基,同渡辺伸行,同中西健太郎の抗告
理由について
 1 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
 (1) 抗告人は,甲株式会社との間の平成4年7月1日付け建物賃貸借契約に基
づき,同社に対し,敷金3000万円を差し入れた。相手方は,同日,同社の敷金
返還債務を連帯保証した。抗告人は,平成12年2月25日,契約の終了に伴い上
記建物を明け渡した。
 抗告人は,平成13年9月8日,相手方に対する3000万円の上記連帯保証債
務履行請求権を被保全債権として,原々決定物件目録記載3の土地及び同目録記載
4の建物につき,仮差押命令の申立てをし,同月17日,仮差押命令が発せられ,
その執行がされた。
 (2) 本件は,抗告人が,上記仮差押命令と同一の請求権を被保全債権として,
同目録記載2の土地につき,仮差押命令の申立て(以下「本件申立て」という。)
をした事案である。
 2 原審は,概要次のとおり判示して,抗告人の仮差押命令の申立てを却下すべ
きものとした。
 (1) 仮差押命令の効力が保有されている場合に,これにより既に保全された債
権と同一の債権を被保全債権とし,異なる目的物に対して新たな仮差押命令の申立
てをすることは,同一の被保全債権及び同一の仮差押命令の必要性に基づく申立て
の当否について更なる審理を求めることになるので,裁判一般の基本原理である広
い意味での一事不再理の原則により,権利保護の要件を欠く。
 (2) 本件申立ては,既に発せられ,いまだ効力を有している状態にある仮差押
命令と同一の被保全債権及び同一の仮差押命令の必要性に基づくものであって,許
されない。
 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
 (1) 仮差押えは,金銭の支払を目的とする債権について,強制執行をすること
ができなくなるおそれがあり,又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれ
があるという仮差押命令の必要性が存するときに,債務者の所有する財産の処分を
禁止することにより本案の権利に基づく強制執行を保全する制度である(民事保全
法1条,20条1項参照)。仮差押命令の申立てにおいては,被保全債権及び債務
者の所有する特定の物(動産については,特定を要しない。)についての仮差押命
令の必要性が審理の対象となるところ(同法13条,20条,21条),ある被保
全債権に基づく仮差押命令が発せられた後でも,異なる目的物についての強制執行
を保全しなければ当該債権の完全な弁済を得ることができないとして仮差押命令の
必要性が認められるときは,既に発せられた仮差押命令の必要性とは異なる必要性
が存在するというべきであるから,当該目的物についての仮差押命令の申立てにつ
き権利保護の要件を欠くものではない。
 (2) したがって,【要旨】特定の目的物について既に仮差押命令を得た債権者
は,これと異なる目的物について更に仮差押えをしなければ,金銭債権の完全な弁
済を受けるに足りる強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき,又はそ
の強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときには,既に発せられた
仮差押命令と同一の被保全債権に基づき,異なる目的物に対し,更に仮差押命令の
申立てをすることができる。
 このように解しても,裁判所が無用な判断を行うことにはならず,また,債権者
が過剰な満足を受けることにもならない。なお,先後両仮差押命令に定められる仮
差押解放金の額の合計が被保全債権の額を超えることとなる場合にも,仮差押解放
金の供託により仮差押えの執行の停止又は取消しを求めようとする債務者に被保全
債権の額を超える仮差押解放金の供託をさせることがないような扱いをすることが
可能であり,上記の場合が生ずるとしても,異なる目的物に対し更に仮差押命令を
発することの障害となるものではない。
 (3) これを本件についてみるに,本件申立ては,既に発せられた仮差押命令と
同一の被保全債権に基づくものであるが,抗告人は,申立てに係る土地につき更に
仮差押えをしなければ,上記債権の完全な弁済を受けるに足りる強制執行をするこ
とができなくなるおそれがあるとき,又は強制執行をするのに著しい困難を生ずる
おそれがあるときには,更に仮差押命令の申立てをすることができるというべきで
あり,論旨は理由がある。
 4 以上によれば,これと異なる見解に立って,一事不再理の原則を理由に本件
申立てを却下すべきものとした原審の前記判断には,裁判に影響を及ぼすことが明
らかな法令の違反がある。したがって,原決定を破棄し,原々決定を取り消し,更
に審理を尽くさせるため,本件を原々審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。なお,裁判官北川弘
治の補足意見がある。
 裁判官北川弘治の補足意見は,次のとおりである。
 私は,法廷意見に賛成するものであるが,法廷意見にも指摘されているように,
ある被保全債権に基づいて発せられた仮差押命令(以下「先行仮差押命令」という。)
と同一の被保全債権に基づき,先行仮差押命令の目的物とは異なる目的物について
の仮差押命令(以下「後行仮差押命令」という。)が発せられた場合において,債
務者が被保全債権の額を超える仮差押解放金を供託しなければならない事態を避け
る方策等について,考慮すべき点があると考えるので,補足して意見を述べておく
こととしたい。
 1 先行仮差押命令と同一の被保全債権に基づき,異なる目的物について仮差押
命令を発するに当たって,両仮差押命令の仮差押解放金の額の合計が被保全債権の
額を超えることとなるときは,裁判所は,後行仮差押命令の主文において,仮差押
解放金の額を定めた上,この供託は先行仮差押命令における仮差押解放金の供託に
よってもすることができる旨を付記すべきである。そうすることによって,債務者
が被保全債権の額を超える仮差押解放金を供託しなければならない事態を避けるこ
とができる。
 2 後行仮差押命令を発した後の手続等は,以下のとおりである。
 (1) 1のような主文の後行仮差押命令が発せられたときは,債務者は,先行仮
差押命令及び後行仮差押命令の各事件番号を供託書に併記して,供託所に仮差押解
放金を供託することができる。そして,それぞれの保全執行裁判所に供託書の副本
を提出して,先後両仮差押えの執行の停止又は取消しを求めることができる(民事
保全法51条)。
 (2) 仮差押解放金の供託により,両仮差押命令における執行の効果は,仮差押
解放金の取戻請求権の上に移行する。
 債権者が,被保全債権につき本案の債務名義を得て,仮差押解放金の取戻請求権
に対する債権差押命令を申し立てるときは,差押えの対象を供託番号により特定し
,供託原因については両仮差押命令の事件番号を併記することとなる。
 (3) 債務者が,仮差押命令申立ての取下げや保全異議又は保全取消しの申立て
による取消しを理由として仮差押解放金を取り戻すためには,両仮差押命令のそれ
ぞれにつき,供託原因の消滅証明書を得た上,併せて供託所に提出する(供託法8
条,供託規則25条)ことが必要である。
 3 なお,先行仮差押命令の存在が判明しなかったために,これと同一の被保全
債権に基づき,異なる目的物に対する後行仮差押命令を発する際に,主文に前記1
の付記がされなかった場合は,債務者は,まず,いずれかの仮差押命令に対し保全
異議を申し立て(民事保全法26条),異議申立て事件の決定の主文において前記
1の付記を得た上,前記2(1)のとおりの方法により,仮差押解放金を供託して,
各仮差押えの執行の取消しを求めることができる。
 4 以上のような措置を講ずることにより,先行仮差押命令と同一の被保全債権
に基づきこれと異なる目的物に対し後行仮差押命令を発しても,債務者が,被保全
債権の額を超える仮差押解放金を供託しなければ,仮差押えの執行の停止又は取消
しを得られないという事態の発生を避けることができるものと考える。
(裁判長裁判官 梶谷 玄 裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山
継夫 裁判官 滝井繁男)

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