弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
       事実及び理由
第1 請求
 被告が平成11年7月9日付けで原告の平成9年10月1日から平成10年9月
30日までの事業年度の法人税についてした更正処分のうち所得金額9462万3
250円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
第2 事案の概要
 本件は,平成9年10月1日から平成10年9月30日までの事業年度(以下
「平成10年9月期」という。)にかかる法人税について,原告が,子会社の韓国
森川株式会社(以下「韓国森川」という。)に対して業務委託契約に基づく業務委
託費として支出した費用1200万円(以下「本件支出(1)」という。)及び平
成8年10月1日から平成9年9月30日までの事業年度(以下「平成9年9月
期」という。)に開発費として支出し,平成10年9月期に業務委託費に勘定科目
を振り替えた300万円(以下「本件支出(2)」という。)の合計1500万円
(以下「本件支出」という。)を損金に算入して確定申告していたところ,被告に
より上記業務委託費を寄附金であると認定され,更正処分(以下「本件更正処分」
という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」とい
う。)がなされたため,これを不服として国税不服審判所に審査請求をし,同審判
所長により審査請求を棄却する旨の裁決を受けたことから,本件更正処分のうち確
定申告額を超える部分及び本件賦課決定処分の取消しを求めた事案である。
1 争いのない事実等(認定に供した証拠は各項の末尾に掲げた。)
(1) 当事者
ア 原告は,昭和60年10月5日,ローヤルゼリー,プロポリス,蜂蜜等の蜂蜜
関連健康食品の製造,販売を主たる目的として設立された株式会社であり,平成8
年9月5日,大韓民国(以下「韓国」という。)においてソウル市内に本店を有す
る韓国森川株式会社を設立した。(甲4,34)
イ 韓国森川は,原告が全額出資した原告の子会社であり,代表理事に原告の代表
取締役aが就任しているほか,現地の従業員2名(b,c)を雇用している。
(2) 課税処分の経緯
ア 原告と韓国森川との業務委託契約
 原告は,韓国森川との間において,平成9年6月12日付け業務委託契約(以下
「本件業務委託契約」という。)の契約書(以下「本件契約書」という。)を作成
した。その内容は,以下のとおりである。(甲5)
(ア) 業務委託の内容
 韓国森川は,原告の依頼に基づいて行う経済金融情勢調査,市場需要動向調査,
顧客情報等の調査及びその他原告との間で別途合意した事項に関する業務を誠実に
行う。(第2条)
(イ) 手数料
 原告は,韓国森川に対し,平成9年7月から同年12月まで毎月日本円で100
万円を手数料として支払うものとし,以後は韓国森川との協議の上定めるものとす
る。(第3条)
イ 原告の経理状況
(ア) 原告は,韓国森川に対し,平成9年7月16日から毎月100万円ずつ送
金し(ただし,平成10年12月分及び平成11年1月分の合計200万円につい
ては,韓国森川に対する貸付金と相殺した。),平成9年9月期の送金額は合計3
00万円(本件支出(2)),平成10年9月期の送金額は合計1200万円(本
件支出(1))であった。(甲26,弁論の全趣旨)
(イ) 原告は,別表1「森川健康堂(株)が韓国森川(株)に支出した金員の経
理状況」記載のとおり,平成9年7月17日付け,同年8月19日付け,同年9月
19日付けでそれぞれ「仮払金」又は「短期貸付金」の勘定科目で韓国森川に支出
した合計300万円(本件支出(2))を,同月30日に「開発費」(繰延資産)
の勘定科目に振り替えて計上した(別表1の「借方」欄の勘定科目は変更後の勘定
科目,「貸方」欄の勘定科目は変更前の勘定科目を示す。)。その後,原告は,平
成10年9月30日に上記「開発費」300万円を「業務委託費」に振り替えた。
 また,原告は,平成9年10月17日から平成10年2月13日まで,韓国森川
への毎月100万円の支出を「開発費」の勘定科目に計上していた(合計500万
円)が,平成10年3月31日にこれを「業務委託費」の勘定科目に振り替え,同
月16日以降の韓国森川への合計700万円の支出をすべて「業務委託費」の勘定
科目に計上した。
 以上のような原告の支出及び経理処理に対し,韓国森川は,原告から「仮払金」
「短期貸付金」「開発費」「業務委託費」として送金された金員を「用役収入」と
して収入に計上していた。
ウ 原告の確定申告及びこれに対する被告の処分
 平成10年9月期の法人税について,原告からの確定申告,被告の本件更正処分
及び本件賦課決定処分,これに対する原告の審査請求,国税不服審判所長の裁決が
あり,これらの手続の経緯は別表2のとおりである。
 原告は,上記確定申告に当たり,前記イ(イ)の経理のもと,平成9年9月期に
支出した「開発費」300万円(本件支出(2))を「業務委託費」に勘定科目を
振り替え,平成10年9月期に支出した「業務委託費」1200万円(本件支出
(1))と合わせて合計1500万円(本件支出)を経費(業務委託費)として確
定申告書付属計算書類である決算報告書中の「販売費及び一般管理費内訳書」の
「業務委託費3275万2500円」の中に計上し,これを前提として当期利益を
1246万5678円と算定し,所得金額を9462万3250円,納付すべき税
額を3617万4000円とした。
 これに対し,被告は,原告が韓国森川に対して支出した上記1200万円につい
て,業務委託費ではなく,寄附金であると認定し,さらに,平成9年9月期に支出
した「開発費」300万円(本件支出(2))については,同期の法人税に係る更
正処理において同300万円を損金の額として所得金額から減算しているので,平
成10年9月期の損金の額に算入することはできないとした上,本件更正処分及び
本件賦課決定処分を行った。(乙2,3,5,弁論の全趣旨)
2 争点
 原告の韓国森川に対する本件支出が,法人税法37条の寄附金に該当するか。
(被告の主張)
 原告の韓国森川に対する本件支出は,韓国森川からの役務に対する対価ではな
く,韓国森川に対する無償の援助であるから,法人税法(以下「法」という。)3
7条の寄附金に該当する。
(1) 韓国森川は原告に対し役務の提供をしていない。
 韓国森川の従業員は,営業課長であるbと経理担当のcの2名であるが,両名の
仕事は,事務所において電話により得意先から注文を受け,受注した製品を原告に
発注し,入荷した製品を受注先へ配送するために運送業者に電話連絡をすること等
であって,本件業務委託契約に基づく経済金融情勢調査,市場需要動向調査,顧客
情報調査等が行われた具体的事実は存在しない。
 原告が本件業務委託契約に基づく経済金融情勢調査等の結果を示す書面であると
いう韓国森川の報告書は,いずれも韓国森川の従業員から韓国森川の社長a宛に記
載された月別の業務計画表又は週間業務報告書であって,原告が主張する本件業務
委託契約締結日以前から定型書式化されたものがそのままに引き継がれたものであ
る上,その内容も単に韓国森川の会社管理と単純な商品の販売等の取引のための内
部的な報告として行われてきたものであり,特に原告に対する役務としてなされた
ものではない。
 仮に,韓国森川が,韓国内の市場需要動向調査,経済金融情勢の分析等を行って
いたとしても,韓国森川自体が原告の製品を仕入れて韓国内で販売することを目的
として設立された会社であるから,韓国森川の本来の業務の一環として上記業務を
行っていたと見るべきである。
 また,韓国森川が行った展示会での宣伝活動その他の広告や販売活動は,原告が
主張する本件業務委託契約締結の日以前の平成9年5月23日から同月26日まで
の第11回国際健康産業博覧会で行われたものが含まれている上,韓国森川の事業
活動の一環として行われたものであって,原告に対する役務の提供ということはで
きない。(第1準備書面7頁,第2準備書面4頁,第3準備書面5頁)
(2) 本件業務委託契約の締結について
 原告は,前記1(2)イのとおり,韓国森川に対する平成9年7月の送金を仮払
金,同年8月及び9月の送金を短期貸付金の勘定科目に計上しており,また,後記
のとおり,同年6月25日付け連絡書(甲13の65)に業務委託の対価をどうす
るかについての意見が記載されており,現実に本件業務委託契約が同年6月12日
に締結されたのであれば,時間的前後関係からしてこのような経理処理あるいは記
載がなされるなど考えられない。そして,原告と韓国森川とは親子会社である上,
代表者も同一人物であって,本件契約書の内容や作成日付を自由に記載することが
できたから,同契約書の証明力は否定されるべきである。
 したがって,前記日付けの本件契約書が存在するからといって,同日に本件業務
委託契約が現実に締結されたと認めることはできない。
 さらに,本件業務委託契約が正当に締結されたのであれば,その対価は,当該業
務委託契約に基づく役務の内容,必要な費用等を勘案し,役務の対価として合理的
なものでなければならない。しかし,本件業務委託契約の対価100万円は,韓国
森川の存続と韓国の税務署の監視との兼ね合いから決定されたものであり,役務の
対価として合理的に決定されたものではない。これは,韓国森川の従業員cから原
告代表者に宛てて送付された平成9年6月25日付け連絡書(甲13の65)に
「金額は月¥1,000,000のほうが一番無難だと思います。この金額の以上
になりますと後,税務所からきびしくされるおそれがあります」と記載され,原告
代表者が審査請求において「韓国森川に対して毎月支払う100万円は,韓国森川
が存続するために必要な額である。」と述べていることから分かる。(第1準備書
面10頁,第2準備書面3頁,5頁,第3準備書面3頁)
(3) 原告の韓国森川に対する支出の意味
 原告の韓国森川に対する平成9年7月16日以降の毎月100万円の送金は,本
件業務委託契約の締結及び韓国森川からの役務の提供の各事実が認められないの
で,韓国森川に対する援助であると認めるべきである。
 また,韓国森川の経営状態は逼迫しており,その存続のためには増資をするか原
告からの資金援助が必要であり,原告は,当初,韓国森川に対して貸付金として資
金援助を行おうとしたが,韓国森川に対して貸付けを行うことに障害があったた
め,平成9年9月期は開発費として,平成10年9月期は業務委託費として資金援
助をしたのである。(第1準備書面9頁,第3準備書面8頁)
(4) 仮に原告の韓国森川に対する本件支出が寄附金と認められなくても,原告
が平成9年9月期に「開発費」として支出した300万円(本件支出(2))につ
いては,これを平成10年9月期の「業務委託費」(経費)として経理処理するこ
とはできない。すなわち,損金(経費)は,特別の規定のない限り,それが支出さ
れた事業年度に計上するものとされているところ(法22条3項),原告は,上記
300万円を平成10年9月期に支出しておらず,あらためて「開発費」として繰
延資産の自由償却をする旨の更正の請求も期間内にしていないからである。(第1
準備書面11頁)
(原告の主張)
(1) 韓国森川は,本件業務委託契約に基づき業務を行っている。
 すなわち,
ア 原告と韓国森川とは,韓国森川が原告の製品の普及のための経済金融情勢調
査,市場動向調査,顧客情報等の調査,広告宣伝活動を行い,それに対し,原告が
韓国森川に毎月100万円の業務手数料(業務委託費)を支払うという内容で,平
成9年6月12日に本件業務委託契約を締結した。
 被告は,本件契約書の作成時期を問題にしているが,原告は韓国の英和会計法人
にも相談しながら本件業務委託契約を締結しており,平成9年6月12日に作成さ
れたことは間違いない。(平成13年12月20日付け準備書面3頁)
イ 韓国森川は,韓国における健康食品等の市場動向及び国民の需要度を調査し,
雑誌等の宣伝広告,百貨店でのデモンストレーション(イベント),展示会等を行
い,原告の製品を韓国民に普及し販路を拡大するための宣伝広告等の諸活動を行っ
ている。また,韓国森川は,健康食品等の商品を取り扱っている問屋等への営業活
動も行っている。
 なお,実際に広告やイベントが実施されたことを裏付ける書類(文書)等も多数
存在している。
ウ 韓国森川の社員は,一週間ごとに行動結果・予定・市場動向等の調査結果の報
告,広告宣伝及びイベント開催のための伺い,その結果に対する報告を記載した営
業報告書等を原告に提出している。
 被告は韓国森川の報告書をもって,同社の代表者に対する報告であり,原告への
報告ではない旨主張するが,両者は代表者が同じであり,しかも,原告会社専務d
やその他従業員への報告もあるのであって,被告の主張は事実に反する。
エ 決算書からも明らかなとおり,韓国森川はこの手数料収入以外に原告の製品を
販売することによる収入がある。韓国森川が扱っている商品は,すべて原告の商品
である。(訴状2頁,平成13年6月25日付け準備書面2頁,同年12月20日
付け準備書面3頁)
(2) 原告が韓国森川に対して毎月支払っている100万円は,韓国森川が原告
の製品の市場開拓,普及のために調査宣伝等を行うという役務を提供していること
に対する対価であるから,経費として認められるべきである。
 原告の韓国森川に対する支出は,韓国森川の運営を維持する目的も有するが,こ
れは経費性を否定する理由にはならない。業務委託契約が存在し,それに基づく役
務の提供が実際にある場合,経費ではないと全面的に否定することは不当であり,
基本的に役務の対価は契約自由の原則に基づき自由に決められるのであって,しか
も,原告は韓国の会計事務所とも相談しながら本件業務委託契約を行っているので
あるから,全額が経費と認められるべきである。(平成13年12月20日付け準
備書面4頁,5頁)
第3 当裁判所の判断
1 法37条の寄附金について
(1) 法37条の寄附金とは,その名義にかかわらず,金銭その他の資産又は経
済的利益の贈与又は無償の供与のことであり(同条6項),法人の事業に関連する
か否かを問わず,法人が行う対価性のない支出であると解すべきである。
 すなわち,法人の行う対価性のない支出には,法人の事業に関連性を有し,その
収益を生み出すのに必要な経費といえるものと,そうでなく単なる利益処分の性質
を有するにすぎないものとがあるが,具体的事例において,ある法人の行った対価
性のない支出のうちどれだけが費用の性質をもち,どれだけが利益処分の性質をも
つのかを客観的に判定することは困難であるため,法は,事業活動の費用であるこ
とが明らかな同条6項の括弧書きの支出を例外として寄附金から除くとともに,行
政的便宜及び公平の維持の観点から一種の擬制として統一的な損金算入限度額を設
け,その範囲内の金額には当然に費用性があるものとして損金算入を認め,それを
超える部分については,仮に何らかの事業関連性があるとしても,損金算入を認め
ないものとしていると解すべきである(同条2項)。
 したがって,対価性のない支出であれば,法37条6項の括弧書きのものに該当
しない限り,法人の事業に関連するか否かを問わず,寄附金性を有するものと解す
べきである。
(2) また,法は,個々の法人を課税主体として,それぞれの担税力に応じて課
税を行うこととしており,たとえ親子会社のような同一企業グループを構成してい
る場合であっても,グループ内の各法人の損益を合算して課税するような方式を採
用していないことに照らせば,寄附金に該当するか否かの判断についても,独立し
た経済主体である各法人ごとにその経済的実質に基づいて行われるべきものである
と解される。
 そして,親子会社間で提供される役務について,役務の提供を受けた親会社がそ
の役務に関する経費の支出をした場合に,その経費が税務計算上の損金とされるた
めには,その親会社が現実に便益を享受していることが必要であると解するのが相
当である。
 これと反する限度で,前記第2の2(原告の主張)(2)の契約自由の原則に基
づき自由に決められた役務の対価が当然に全額経費と認められるべきであるという
かのような主張は採用することができない。
2 上記1の見解の下に,以下争点につき検討する。
(1) 前記第2の1の争いのない事実等に証拠(各項の末尾に掲記したもの。枝
番のあるものについて特に記載しない場合は枝番を含む。)及び弁論の全趣旨を総
合すると,以下の各事実が認められる。
ア 韓国森川の設立
 原告は,平成7年12月ころから,市場開拓のために海外(アメリカ合衆国,台
湾)進出を開始し,平成8年7月30日,韓国に子会社を設立することについて取
締役会の決議を得,同年9月5日,食品・健康補助食品等の貿易業及び販売業等を
目的する韓国森川を資本金7000万ウォンで設立し,同社に韓国における事業者
登録証を取得させた。(甲1ないし3,34,35,原告代表者)
 原告は,韓国森川を設立した後も,平成9年12月26日,平成10年9月1
日,平成11年9月26日の3回の増資の都度,同社に対し全額出資をしており,
現在の同社の資本金は3億3000万ウォンとなっている。(甲32,33,原告
代表者)
イ 本件契約書の作成の経緯及び韓国森川に対する本件支出
(ア) 韓国森川は,平成8年末ころから具体的な営業活動を開始したが,実際に
収益をあげることはできなかった。(原告代表者)
 韓国森川の経営状態は,平成8年9月5日から平成9年6月30日までの期間
(第1期)には223万3638ウォンの経常損失が,平成9年7月1日から平成
10年6月30日までの期間(第2期)には1億0102万2637ウォンの経常
損失が出ており,同期間の総売上金額1億6354万4743ウォンのうち,1億
1442万6800ウォンが原告から業務委託費として受領した用役収入であっ
て,現実の商品売上げは4911万7943ウォンにとどまっていた。(乙6)
(イ) 原告は,韓国森川を維持存続させるため,業務委託費として毎月同社に対
する金員の支給を行うこととし,平成9年6月12日付けで本件契約書を作成し
た。
 原告は,韓国森川への支給金額について,同社の人件費(従業員2名),事務所
費,活動経費等を考慮し,毎月100万円を支給することとした。同金額の決定に
当たっては,同社の従業員cからの平成9年6月25日付け連絡書による「委託手
数料の件,(中略)金額は月¥1,000,000円のほうが一番無難だと思いま
す。この金額の以上になりますと後,税務所からきびしくされるおそれありま
す。」との意見も参考にされたと思われる。(原告代表者,甲13の65)
(ウ) 原告は,韓国森川に対し,平成9年7月16日から毎月100万円ずつ送
金しており,平成10年9月期においては,合計金1200万円(本件支出
(1))の送金をしていた。(前記第2の1(2)イ(ア))
ウ 韓国森川の業務内容
(ア) 韓国森川の営業課長bと経理担当のc両名の主な仕事は,事務所において
電話により得意先から注文を受け,受注した製品を原告に発注し,入荷した製品を
受注先へ配送するために運送業者に電話連絡をすることであった。(弁論の全趣
旨)
(イ) 原告が本件業務委託契約に基づく役務の提供の証拠として提出した週間業
務報告書ないし月別業務計画表は,本件業務委託契約の日付である平成9年6月1
2日の前後を通じて定型書式の下に作成されてきていたもので,その内容は,営業
活動の概要や入出金,給与の支給,従業員の出勤・休暇,韓国森川及び原告の社長
aに対する韓国森川の営業に関する相談などであり,原告主張の健康食品等の市場
動向及び国民の需要度等の調査にあたる活動が特別になされた形跡はなく,単に,
韓国森川の従業員が同社及びその親会社である原告の社長に宛てた業務報告等のた
めの内部的な書類(ファックス)である。
 原告が前同様の証拠として提出した報告書ないし連絡書は,遅くとも平成8年9
月16日以降の分は,平成9年6月12日の前後を通じて定型書式の下に作成され
てきていたもので,その内容は,会社運営に関する内部的な事項に止まり,主とし
て,前同様,韓国森川の従業員から同社及び原告の社長に宛てたファックスであ
る。
 さらに,原告が本件業務委託契約に基づくと主張する韓国森川の広告宣伝活動に
ついていうと,同社は,平成9年6月12日以前の同年5月23日から同月26日
まで第11回国際健康産業博覧会の展示会に参加しており,同日以後平成10年9
月期までの展示会参加は,平成10年4月と同年6月の2回であって,いずれも自
社の営業活動としての参加であった。同社の雑誌への宣伝広告の掲載についても,
平成9年6月12日の前後にまたがり,平成9年4月号(KBS健康365日),
同年5月号ないし同年10月号(成人病と健康),平成10年4月号ないし平成1
1年8月号(DIRECT SELLING)において自社取扱商品の宣伝広告を
しており,韓国森川自身の営業活動の一部として行われたと見るのが自然である。
(甲9ないし18)
(2) 前記(1)イ,ウの事実及び弁論の全趣旨を総合すれば,韓国森川が本件
業務委託契約に基づき韓国における健康食品等の市場動向及び国民の需要度を調査
した形跡はなく,同社による前記報告書等の提出及び広告宣伝活動も本件業務委託
契約に基づき行われたものではなく,韓国森川自身の事業活動の一環として行われ
たものであって,結局,原告の韓国森川に対する本件支出は,韓国森川が行った役
務の対価ではなく,経営状態の悪かった韓国森川を維持存続させるための無償の資
金供与であったものであり,法37条6項の寄附金に該当する(同項の括弧書きに
は該当しない。)と認めるのが相当であり,上記認定に反する甲33,証人e及び
原告代表者の各供述は前記(1)イ,ウの事実に照らし採用できず,他に同認定を
覆すに足りる証拠はない。
 原告は,上記のような結論になることによって中小企業の海外進出は著しく抑制
されるのであり,政策として極めて問題であるとの問題意識から本訴提起に及んだ
と主張するが,同主張によっても前記1の法37条の寄附金の解釈の妥当性を否定
するまでには至らないから,同主張を採用することはできない。
3 韓国森川は,原告が全額出資して設立された外国法人であり,租税特別措置法
66条の4第1項の国外関連者に該当するから,同条3項により,寄附金たる本件
支出額を原告の損金の額に算入することはできないこととなる。
 以上によれば、被告が行った本件更正処分は適法であり,また,原告は,平成1
0年9月期には1億0958万6450円の所得金額を申告すべきであったとこ
ろ,同金額について確定申告しなかったことから過少申告加算税に係る件賦課決定
処分を受けたものであるが,上記金額について確定申告をしなかったことについ
て,国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるとは認められないか
ら,本件賦課決定処分も適法である。
第4 結論
 よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき行政
事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
熊本地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官 田中哲郎
裁判官 市川多美子
裁判官栗田正紀は転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官 田中哲郎

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