弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を罰金万円に処する。200
その罰金を完納することができないときは,金万円を日に換算11
した期間被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,A建設の屋号で建設業を営み,
第1奈良県がB線地方道路交付金事業(工事番号第C号・第D号)施工のため実
施する指名競争入札の指名を受けたものであるが,同入札の指名を受けた株式
会社E1代表取締役e1,E2建設代表者e2,有限会社E3取締役e3,E
4建設代表者e4,E5建設代表者e5,株式会社E6代表取締役e6,E7
興業代表者e7,株式会社E8取締役e8,E9建設代表者e9,E土木代
表者e,株式会社E取締役e,E建設代表者e,株式会社E代表
取締役e−1,同社代理人e−2,E組代表者e−1,同組代理人e
−2,E組代表者e−1,同組代理人e−2,E建設代表者e及
び有限会社E代表取締役eらと共謀の上,入札の公正な価格を害する目的
をもって,平成年月日,奈良市F町G丁目H番地所在の奈良建設業会18810
において,当選業者を業者とするくじ引きを行い,くじに当選した上記e21
が公示された予定価格に近い価格である万円で入札し,同人以外の入札1820
者は同価格を超える価格で入札する旨の協定をし,
第2奈良県がB線地方道路交付金事業(工事番号第I号)施工のため実施する指
名競争入札の指名を受けたものであるが,同入札の指名を受けた上記e1らと
共謀の上,入札の公正な価格を害する目的をもって,平成年月日,奈18912
1良市J町K丁目L番地所在の奈良県土木事務所敷地内において,当選業者を
業者とするくじ引きを行い,くじに当選した被告人が公示された予定価格に近
い価格である万円で入札し,被告人以外の入札者は同価格を超える価格1340
で入札する旨の協定をし,
第3奈良市が第M号市営住宅建替工事(N工区)施工のため実施する制限付一般
競争入札に参加申請していたものであるが,同入札に参加申請していた株式会
社O1代表取締役o1,株式会社O2代表取締役o2,O3建設代表者o3,
O4株式会社代表取締役o4,株式会社O5代表取締役o5,株式会社O6代
表取締役o6,株式会社O7代表取締役o7,O8株式会社代表取締役o8,
O9建設代表者o9,O建設専務o,O株式会社代表取締役o,株式
会社O代表取締役o及び有限会社O取締役oらと共謀の上,入札の公
正な価格を害する目的をもって,平成年月日,奈良市P丁目Q番R号18912
所在の奈良市庁西棟階入札控室において,当選業者を業者とするくじ引き13
32900を行い,くじに当選した業者が公示された予定価格に近い価格である
万円で入札し,同業者以外の入札者は同価格を超える価格で入札する旨の協3
定をし,
もって談合したものである。
(証拠の標目)
(記載省略)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はそれぞれ刑法条,条の第項に該当するところ,609632
判示各罪について所定刑中それぞれ罰金刑を選択し,以上は同法条前段の併合45
罪であるから,同法条項により各罪所定の罰金の多額を合計した金額の範囲482
内で被告人を罰金万円に処し,その罰金を完納することができないときは,同200
法条により金万円を日に換算した期間被告人を労役場に留置することとす1811
る。
(量刑の理由)
本件は,判示のとおり,被告人が各共犯者らと共謀して度にわたり談合をした3
という事案である。
そもそも,談合は,公共工事等の価格の適正を害し,納税者たる県民や市民の利
益を著しく損なう犯罪であるところ,本件は,常習性や組織性が顕著で,談合発覚
を防ぐための巧妙かつ周到な手口を用いた,相当に悪質な事案である。したがって,
被告人の刑事責任は到底軽視されるものではなく,被告人に対し安易に寛刑をもっ
て臨むべきでないことは明らかである。
そして検察官は,「本件事案を罰金で処分すれば,結局悪いことをしても,談合
で得た利益の範囲で支払うことのできる罰金額で許してもらえるとの意識が定着す
る」,「本件のような,常習的で手口も巧妙で,未だに不正な利益を保持し続ける
悪質な事案については,刑務所に行かなければならないとの認識を徹底させる必要
がある」などとして,被告人を懲役刑に処すべきである旨主張する。
もっとも,本件につきいかなる刑種の選択が相当であるかは,共犯者間の刑の均
衡という見地から,なお慎重な検討が必要である。そして,証拠(被告人質問)に
よれば,本件の共犯者の大半が,罰金万円の略式命令を受けたか,あるいは公100
訴提起すら受けていないことが認められる上,本件につき懲役刑を受けた共犯者が
いることをうかがわせる証拠はない。そうすると,共犯者につき略式命令請求等の
処分をした検察官は,本件談合の悪質性等を考慮してもなお,原則として罰金刑に
よる処断で足りると判断していたものと認められる。このような共犯者に対する処
分の状況等にかんがみると,被告人につき懲役刑による処断を相当と解するために
は,それ相応の特段の事情が認められる必要があるというべきである。
この点について,検察官は,「奈良県(判示第,第),奈良市(同第)発123
注の公共工事それぞれにまたがって談合を敢行したのは,数多い共犯者の中では被
告人のみであり,他を突出した悪質性がある」などと主張する。しかしながら,本
件に関わった業者のなかには,奈良県と奈良市の入札業者を兼ねているものが少な
くない上,本件が,奈良県及び奈良市の入札業者の間で常習的に行われてきた数多
くの談合のうち,今回たまたま摘発を受けた件であったことに照らすと,本件談3
合の社会的実態からみる限り,被告人の刑事責任と共犯者のそれとの間に,異なる
刑種の選択を正当化するに足る重大な差異があるとは考えられない。加えて,①各
談合の仕切役は他の共犯者であって,被告人が各談合につき共犯者に比べ突出して
重要な役割を担ったという事情はうかがわれないこと,②確かに,検察官が指摘す
るとおり,被告人が判示第で当該工事を落札して利益を取得したという事情は認2
められるものの,このような事情は,くじに当たったという偶然によって生じたも
のである上,判示第,第において工事を落札した共犯者にも認められることで13
あって,さらに,被告人は,落札金額から割を控除した金額しか受け取らない旨1
を公判廷で誓っており,その限度で本件の被害が回復される見込みであることなど
の事情に照らすと,被告人が利益を取得したという前記事情を,量刑判断上ことさ
らに重視するのは相当とはいえないこと,③被告人が,捜査段階の当初から本件を
一貫して認め,反省の態度を示していること,④被告人が,奈良県及び奈良市から
それぞれ年間の指名停止処分を受けるといった,それなりの社会的制裁を受けて2
いること,⑤被告人に前科前歴のないこと,⑥被告人が懲役刑に処せられた場合,
執行猶予付きであったとしても,建設業の許可を失ってしまうことなどの事情を併
せ考えると,被告人を懲役刑に処するのを相当とする特段の事情はないというほか
ない。懲役刑を科すべきであるとの検察官の意見は,共犯者間の刑の均衡を著しく
欠くものといわざるを得ず,これを採用することはできない。
ただし,先に述べた本件談合の悪質性に加え,本件各犯行の全部に関与したのが
被告人のみであることなどの事情を併せると,被告人に対しては比較的多額の罰金
刑をもって臨むべきである。
そこで,当裁判所は,以上の事情を総合考慮し,被告人を罰金万円に処する200
のを相当と判断した次第である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑懲役年月)16
平成年月日19226
奈良地方裁判所刑事部
松井修裁判官

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