弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人は無罪。
         理    由
 職権を以て調査するに原判決は「被告人は昭和二二年八月二五日肩書本籍地大原
村役場において被告人が日本において兵役に服したことがない旨並びに選挙に投票
したことがない旨夫々虚偽の内容を記載した証明願各一通宛合計二通を同役場係員
Aに提出し情を知らない同係員をして同村長Bから委任を受けていた村長のこの種
証明書発行の職務に関し行使の目的を以て、右証明書二通に順次同村長B名義の証
明文の奥書及び同村長職印の押捺を為さしめ、以て右各証明書記載の内容が事実相
違ないことを証明する旨の同村長名義の虚偽の証明書二通を順次作成せしめ」と認
定し、被告人の右所為を刑法一五六条、一五五条に該当すると判示している。しか
し刑法は、いわゆる無形偽造については公文書のみに限つてこれを処罰し、一般私
文書の無形偽造を認めないばかりでなく、公文書の無形偽造についても同法一五六
条の他に特に公務員に対し虚偽の申立を為し、権利義務に関する公正証書の原本又
は免状、鑑札若しくは旅券に不実の記載を為さしめたときに限り同法一五七条の処
罰規定を設け、しかも右一五六条の場合の刑よりも著しく軽く罰しているに過ぎな
い点から見ると公務員でない者が虚偽の公文書偽造の間接正犯であるときは同法一
五七条の場合の外これを処罰しない趣旨と解するのを相当とする。そして右判示の
証明書が同法一五七条にいわゆる権利義務に関する公正証書の原本又は免状、鑑札、
旅券のいずれにも当らないことはいうまでもないところであるから被告人の右判示
無形偽造の所為は罪とならないものといわなければならぬ。従つて、前記各証明書
は虚偽の公文書とはいえないから、原判決が認定したように、たとえ被告人が同年
九月一九日米国領事館に到り、同館係員に対し、右作成に係る虚偽の証明書二通を
恰も真実の内容を記載したものである様に装い、旅券下附申請書と共に一括して提
出行使したとしても刑法一五八条一項、一五六条、一五五条一項に該当する虚偽文
書行使の罪にあたるとはいえない。それ故この点も罪とならないものといわなけれ
ばならぬ。
 更に原判決は「被告人は同係員を欺罔して旅券の下付を受けようとしたけれども、
その後占領軍官憲の調査により右証明書二通の記載内容が虚偽であることを発見さ
れたため竟に旅券騙取の目的を遂げなかつたものである」と認定し、刑法二四六条
一項、二五〇条に該当する詐欺未遂である旨判示している。そして、刑法一五七条
二項には、公務員に対し虚偽の申立を為し免状、鑑札又は旅券に不実の記載を為さ
しめたる者とあるに過ぎないけれども、免状、鑑札、旅券のような資格証明書は、
当該名義人においてこれが下付を受けて所持しなければ効用のないものであるから、
同条に規定する犯罪の構成要件は、公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の
記載をさせるだけで充足すると同時にその性質上不実記載された免状等の下付を受
ける事実をも当然に包含するものと解するを正当とする。しかも、同条項の刑罰が
一年以下の懲役ヌは三百円以下の罰金に過ぎない点をも参酌すると免状、鑑札、旅
券の下付を受ける行為のごときものは、刑法二四六条の詐欺罪に問擬すべきではな
く、右刑法一五七条二項だけを適用すべきものと解するを相当とする。されば、原
判決が右下付を受けようとした行為を目して詐欺未遂としたことは擬律錯誤の違法
があるものといわなければならない。そして、判示の米国領事館員のごときは、刑
法七条、従つて同法一五七条二項にいわゆる公務員とはいえないから、右判示行為
は、刑法一五七条二項の未遂罪にも該当しないものといわなければならない。従つ
て原判決の認定した前記下付を受けようとした行為も結局罪とならないものと断じ
なければならぬ。されば、被告人並びに弁護人松井佐の各上告趣意につき判断する
までもなく、本件上告は結局その理由があり、原判決は全部破棄を免れない。
 よつて旧刑訴四四七条、四四八条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判
決する。
 検察官 十蔵寺宗雄関与
  昭和二七年一二月二五日
     最高裁判所第一小法廷
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎
 裁判長裁判官沢田竹治郎は退官につき署名捺印することができない。
            裁判官    真   野       毅

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