弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件特別抗告を棄却する。
         理    由
 本件特別抗告の理由は末尾添付書面記載のとおりである。
 刑事訴訟において被告人又は弁護人から申請した証人は当該事件の裁判に不必要
と思われるものまでも悉く尋問しなければならないというものではなく、その申請
の採否は一般に裁判所の自由裁量に任されているけれども、ただこれを尋問の必要
なしと認めて申請を却下することが裁判所の主観的専制ないし独断に陥り健全な合
理性ないし実験則に反するに至つたものというべき場合には不法であり憲法三七条
二項に違反するものといわねばならないこと当裁判所大法廷判決の趣旨とするとこ
ろである(昭和二三年(れ)八八号同年六月二三日大法廷判決、刑集二巻七号七三
四頁、同年(れ)二三〇号同年七月二九日大法廷判決、刑集二巻九号一〇四五頁)。
今、この見地に立つて原決定の所論の点に関する判断が憲法三七条二項に違反する
や否やにつき按ずるに、記録によると、本案の綾部簡易裁判所に起訴された公職選
挙法違反事件の起訴状記載の訴因は、被告人九名(Aを含む)はいずれも原決定に
判示する昭和三五年一一月二〇日施行の総選挙に際し立候補者Bの選挙運動者とし
て同年一〇月一一日頃ないし一一月一五日頃までの間に或は同候補者に当選を得し
める目的で他の選挙運動者に選挙運動の報酬として現金を供与し、或は他の選挙運
動者から選挙運動の報酬として現金の供与を受けたというのであるところ、勝本朝
男裁判官をもつて構成する第一審裁判所の公判では、被告人及び弁護人側において、
その金銭の授受のあつたことについては、公訴事実第一についてC、同第二につい
てA、同第五についてD、同第八についてEを除くほかは、皆これを争わないが、
その金銭授受の趣旨を否認し「その金銭は選挙運動の実費の前渡し、政冶団体I会
員募集費用又はF或は青年会議所えの寄附金である」と主張したところ、立証段階
では、先ず検察測の立証として、(1)受供与者とされた被告人等に供与したとさ
れた者又はその使者となつたという者等が証人として尋問され、右供与者及び使者
等の検察官調書謄本の取調が行われ、また、受供与者とされた被告人等につき、こ
れに関連する証人等が取調べられたほか、(2)被告人Cの供与につき受供与者被
告人A、Aの受供与につき供与者被告人C、被告人Dの供与につき受供与者被告人
G、同H、被告人G、同Hの受供与につき供与者被告人Dが(以上被告人A、C、
G、H、Dの五名はそれぞれ公判手続分離の上)いずれも証人として取調べられた
上、現金、領収書等の証拠物の取調、各被告人の検察官調書謄本その他の証拠書類
の取調が行われて、検察官側の立証は一応終り、次いで、前堀弁護人からIは政治
団体であり右立候補者の後援会でなく、被告人H、同Gが選挙運動の労務者達に現
実に労務賃を支払わねばならない状態にあつたことや公民館の使用料内規及び取扱
方を立証するため証人J外一四名の、又、被告人Hの取調に当り警察官が自白を強
制した事実を立証するため、その警察官一名の各取調を請求するとともに、Iが右
立候補者の後援会でなく、被告人らがその幹事、会員であることを立証するため同
会の設立決議書案、同趣意書、同会名簿の取調を請求したところ、検察官はこの証
拠物の取調に異議ない旨を述べたが、勝本朝男裁判官は右弁護人の証拠調申請をす
べて却下したという事実、その他原決定に認めたような右公判手続の経過及び内容
に照らすときは、次のように判断することができる。
 右第一審公判においては、前示C、A、D、Eの認めない各公訴事実を除く外、
その余の被告人らは、本件選挙に際しいずれも公訴事実のとおり現金を授受した事
実を争わずただその趣旨は右立候補者のため選挙運動の報酬としてではなく選挙運
動の実費の前渡やI等えの寄附金であると主張するので、主たる争点は現金授受の
趣旨が右選挙運動の報酬であつたか否かということになつた訳であるが、現金を渡
し若しくは受取つた者がそれを如何なる趣旨で授受したかについては本人の供述或
いはこれが使者となつた者その他現金授受の事情をよく知る者の公判における陳述
又は証拠能力ある供述調書の如きものは直接証拠となりうるのを常とするけれども、
しかし、右金員はI会員募集費用ないしF或は青年会議所えの寄附金であることの
立証としてのIが政治結社であつて右立候補者の後援会ではない事実や被告人H、
同Gが選挙運動の労務者達に現実に労務賃を支払わねばならない状態にあつた事実
ないし公民館使用料内規及び取扱方等に関する証拠の如きは間接証拠であつて、た
とえこれらの事実を措信できるとしても、直ちに起訴状記載の金員の授受か右選挙
運動報酬の趣旨でなされたものであることを否定せしめ若しくは疑わしめるに足る
ものとなるとはいえない筋合である。
 また、Hを取調べた警察官が自白を強要した事実の存在は同被告人及び被告人D
に対する公訴事実に関係があるに過ぎないのみならず、警察官の自白強要の事実は
必ずしも当然それが検察官に対する同被告人又はDの供述に影響を及ぼしたことを
疑わしめるものとはいい難く、また、被告人Hの受供与の事実については、被告人
Dの分離公判証言があり、被告人Dの供与の事実については被告人Hの分離公判証
言もあり、これら分離公判証言については被告人らは反対尋問の機会も与えられた
ことが認められるので、以上の諸点を総合し、且つ右証拠申請に際し弁護人からは
別段他に申請すべき証拠がない旨の附言もなく、同裁判官においては右申請の諸証
拠に関する限りは取調の必要なしと考える相当の余地があるのであつて、被告人側
申請の証人は一切取調の必要なしとして有罪判決をなすべき虞ある態度に出でたよ
うな情況は認められないことに照らすときは、右勝本裁判官の証拠調申請の却下は
別段主観的専制ないし独断に陥り健全な合理性ないし実験則に反するものというを
えない。されば、原決定には、結局、所論の点に関し憲法三七条の解釈を誤まり若
しくは論旨引用の判例と相反する判断をしたところはないものといわねばならない。
論旨は理由がない。
 よつて刑訴四三四条、四二六条一項により全裁判官一致の意見で主文のとおり決
定する。
  昭和三七年七月二〇日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊

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