弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
       事   実
第一、申立
(原告の求める裁判)
 被告が、原告の昭和三五年四月一日から昭和三六年三月三一日までの事業年度分
の法人税について昭和四一年五月三〇日付でなした
一、総所得額を六五九万六四四七円(但し昭和四二年四月三日名古屋国税局長の裁
決により一部取消された後の金額。)とする再更正処分
二、重加算税一〇五万七五〇〇円(但し、前記裁決により一部取消された後の金
額。)の賦課決定処分
三、青色申告の承認取消処分
はいずれもこれを取消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決。
(被告の求める裁判)
 主文同旨の判決。
第二、主張
(請求原因)
一、原告は、主として不動産の売買および賃貸借の仲介並にその委託管理を営む会
社であるが、昭和三五年四月一日から昭和三六年三月三一日までの事業年度(以下
「係争年度」という。)の法人税について、法定の申告期限内である昭和三六年五
月三一日に訴外名古屋中税務署長(以下「中税務署長」という。)に対し、欠損金
額二九九万六四七九円とした青色申告による確定申告書を提出した。
二、ところが、中税務署長は、昭和三七年三月二六日別表(一)のとおり更正処分
をなすと共に、青色申告承認の取消処分をなし、そのころ原告に送達した。
三、そこで、原告は同年四月一〇日、右青色申告承認の取消処分を不服として中税
務署長に対し再調査請求をなしたところ、同年七月五日同署長は青色申告承認取消
処分を取消し、そのころ原告に送達した。
四、ところで、昭和三九年一月、原告が本店を名古屋市千種区<以下略>に移転し
たところ、大蔵省組織規程の改正によつて、右地区は訴外名古屋東税務署長(以下
「東税務署長」という。)の所轄する地域となつたが、東税務署長は昭和四一年五
月三〇日付で原告の係争年度の法人税について、別表(二)のとおり更正処分およ
び重加算税の賦課決定処分(以下「本件更正処分」という。)をなすと共に青色申
告承認の取消処分(以下「本件取消処分」という。)をなし、同年六月二日に原告
に送達した。
五、そこで、原告は、同年六月二四日東税務署長に対し、本件更正処分並びに本件
取消処分につき異議申立をしたが、同年九月二二日東税務署長は原告の申立をいず
れも棄却する旨の決定をなし、そのころ原告に送達した。
六、そこで、原告は同年一〇月一七日訴外名古屋国税局長に対し、本件更正処分並
びに本件取消処分に対する審査請求をなしたところ、昭和四二年四月三日同局長は
本件更正処分については別表(三)のとおり一部取消をなし、本件取消処分につい
てはこれを棄却し、そのころ原告に送達した。
七、その後再び大蔵省組織規程の改正があり、被告が東税務署長の事務を承継し
た。
八、然るに本件更正処分および本件取消処分には次のような違法があるから取消さ
れるべきである。
(一) 本件更正処分の通知書(以下「本件通知書」という。)は、国税通則法七
〇条二項に定める法定申告期間から五年を経過する日(昭和四一年五月三一日)ま
でに適法に送達されていないから、本件更正処分は違法である。すなわち、昭和四
一年六月二日東税務署所属の職員が本件通知書を持参して原告代表者A方を訪れ、
同人の妻Bに対し、本件通知書の受領を求めたが、同人が受領を拒絶したところ、
右職員は本件通知書をA方郵便受函に投げ込み立ち去つたものであつて、前記期日
までに適法に送達されていない。仮に送達されているとしても、
(1) 本件通知書は封筒に入つており、右封筒に記載された原告代表者の住所は
「<地名略>」と記載されていたが、東税務署所属の職員が本件通知書を現実に差
置送達した場所は<地名略>である。従つて、右差置送達は同法一二条に定める
「送達すべき場所」を誤つたもので不適法である。
(2) また、東税務署所属の職員が前記Bに対し封筒に入つた本件通知書の受領
を申向けた際においても、同女は右封書の内容を知らされず、また封書の宛先と異
なる場所でこれを受領すべき理由の説明を受けていないのであるから、同人には右
封書の受取を拒むにつき「正当の理由」があつたというべきである。それにも拘ら
ずなされた差置送達は違法である。
(二) 本件取消処分の通知書には法定の理由付記が欠けているから本件取消処分
は取消されるべきである。すなわち、右通知書には取消の理由として「法人税法一
二七条一項三号に掲げる事由に該当すること」の記載されている。ところで同条二
項によれば取消通知書には「その取消しの処分の基因となつた事実が同条一項各号
のいずれに該当するかを付記しなければならない」とされており、この職旨は税務
署長が青色申告承認取消の基因たる事実を特定、明記した書面自体をもつて、納税
義務者にその事実を知らせることにより、取消の妥当、公正を担保することにあ
る。従つて、青色申告承認取消の基因たる事実を特定明記せず、単に該当の条項を
記載したにすぎない前記通知書は法の要求を充たさないものであり、従つて本件取
消処分は違法である。
(三) 前項に述べた如く本件取消処分が取消される結果、原告に対する更正等は
法人税法一三〇条によつて更正の理由を付記した通知書によつてなされるべきとこ
ろ、本件更正処分の通知書には何ら理由の記載がない。従つて本件更正処分は違法
である。
(四) 本件更正処分は、その内容に誤りがある。すなわち、原告は昭和三六年一
月七日別紙目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を訴外Cに代金総額四二
九七万六〇〇〇円をもつて売却した。右土地は、もと訴外大和信商株式会社(以下
単に「大和信商」という。)の所有(ただし、土地の登記名義人はD。)であつた
が、昭和三五年二月一〇日訴外平和不動株式会社(以下単に「平和不動」とい
う。)が代金総額三〇八〇万円(但し代金三〇〇〇万円、手数料八〇万円)で買受
け、更に同年四月一二日同会社より原告が代金総額三七九二万円で買受けた(ただ
し、登記簿上は、Dから原告会社へ、原告会社からCへ順次移転登記がなされ平和
不動の買受および譲渡は省略されている。)。従つて、本件土地取得額は三七九二
万円とされるべきところ、被告は登記簿上の記載に従つて原告が直接Dより三〇八
〇万円で買受けたと認定し、その間売買差益を七一二万円過大に算定し、本件更正
処分をなしたものである。これによつて、本件係争年度の原告会社の所得は、五二
万三五五三円の欠損となるから、本件処分は違法である。
(被告の答弁および主張)
一、請求原因第一項ないし第六項記載の事実(但し第四項の送達の日は除く。)は
すべて認める。
二、第七項(一)記載の事実のうち、本件通知書の名宛人の住所が「名古屋市<以
下略>」と記載されていたこと、東税務署長所属の職員が本件通知書を差置送達し
た場所が同市<以下略>であつたことは認めるが、その余の事実は争う。
三、第七項(二)記載の事実のうち、本件取消処分の通知書に原告主張の如き記載
があることは認めるが、その余の事実は争う。
四、第七項(三)記載の事実は争う。
五、第七項(四)記載の事実のうち、原告が、その主張の日に本件土地を訴外Cに
その主張の額で売却したことは認めるが、その余の事実は争う。
六、本件通知書は、国税通則法七〇条二項に定める更正をなし得る最終期限である
昭和四一年五月三一日までに原告に送達されたから、本件更正処分に違法はない。
すなわち、原告会社は本店所在地を名古屋市<以下略>として商業登記をなしてい
たが、既に昭和三九年一月三一日には解散し、右本店所在地には代表者Aは居住し
ていなかつた。しかし、偶偶、他の税務署長宛に同会社より「名古屋市<以下略>
A」なる人物がその清算人として届出られていたため、被告は、本件通知書送達に
あたつては右Aを送達を受けるべき者と指定し、同人の住所地に本件通知書を送達
することとした。そこで昭和四一年五月三〇日東税務署E国税調査官およびF徴収
官が本件通知書を持参し、右Aの前記住所に赴いたところ、同人は転居していたの
で、直ちに同人の転居先について調査した結果、同人は同月一〇日に名古屋市<以
下略>に転出していることが判明した。そこで右E調査官およびF徴収官は右住民
登録がなされていることを確認して同所に赴いたところ、本人家族共不在であつた
ため、表札並びに隣人によつて、右Aが同所に居住していることを再確認したう
え、同日午前一一時一五分本件通知書を同人宅の郵便受函に投函したのである。そ
して、翌三一日午前八時三五分、右E調査官において再び原告代表者宅を訪れたと
ころ、同人の妻が在宅したので、同人に対し前日本件通知書を送達した理由を説明
し、念のため受領書の交付を求めたが拒絶されたので、同調査官は本件通知書が他
の郵便物と一諸に保管されていることを確認したうえ、本件通知書をAに渡しても
らいたい旨申述べて同人宅を辞去したのである。ところで、一般に行政上の書類の
送達には右書類の内容を了知しうる状態におけば足るものと解されるところ、本件
通知書は原告代表者宅の郵便受函によつて原告会社の了知しうべき状態におかれた
ものであるから、本件通知書は昭和四一年五月三〇日原告に送達されたのである。
 原告は本件通知書の送達は送達すべき場所を誤つた不適法なものと主張するが、
国税通則法一二条一項本文によれば税務署長が発する書類はその送達をうくべき者
の住所或いは居所に送達すれば足りるのであつて、書類上送達を受くべき者の住所
として記載された場所がたまたま同人の現住所と異つていても右送達が不適法とな
る訳ではない。また、国税通則法一二条五項によれば、「書類の送達を受くべき者
に出合わず、その同居者において正当の理由なく同書類の受領を拒否された場合は
これをその場所(送達すべき場所)に差置くことができる」旨規定している。本件
通知書は前述の如く、原告代表者本人並びに家族不在のため同人宅の郵便受函に投
函して差置送達をなし、翌日同人宅に前記E調査官が臨宅して受領の確認を行つた
もので、本件通知書の送達はこの点においても違法はない。
七、本件取消処分は、理由付記について何ら違法はない。すなわち、青色申告制度
は、法律の要求する誠実かつ信頼性のある記帳をすることを約束した納税義務者
が、これに基づき所得を正しく算出して申告納税することを期待すると共に、かか
る納税義務者に対しては一定の特典を付与するものであり、青色申告書提出承認の
取消しは、この期待を裏切つた納税義務者に対しては、いつたん付与した特典を剥
奪すべきものとすることによつて青色申告制度の適正な運用を図ろうとするもので
ある。
 ところで、法人税法一二七条一項各号に定められた青色申告書提出承認の取消原
因は、納税義務者の備付帳簿の記載自体およびそれに基づく申告に関係する事柄で
あり、従来の経験に徴し一般に予測され得るような、記帳自体の誠実性信頼性を疑
わしめ正確な所得算出を不可能とする事由を概括的に類型化したものである。従つ
て、その理由付記も、法律が記帳の誠実性、真実性の欠如を予測し得るものとして
定めた右事由を概括的類型的に示せば足り、実体的な数額もしくは所得の種類等の
変更を伴う計算もしくは判断過程があり、かつ、それが次の事実年度の所得計算に
も当然に影響を及ぼす青色申告の更正処分におけるが如き具体性ある理由の付記を
要しないのである。このことは、青色申告の更生処分の理由付記に関する同法一三
〇条二項の規定と、青色申告書提出承認取消の理由付記に関する同法一二七条二項
後段と、その表現が異つていることからも明らかである。従つて同条項の解釈とし
ては承認取消の基因となつた事実を具体的に記載することまでは必要でなく、同条
項が規定しているように「その取消の処分の基因となつた事実が同条一項各号のい
ずれに該当するか」を付記すれば足りると解すべきである。
八、本件更正処分の内容には何らの違法も存しない。本件土地は、昭和三五年四月
一二日に原告が大和信商の仲介によつりDより代金総額三〇八〇万円(うち八〇万
円は大和信商に対する手数料)で買受けたものである。このことは次の事実よりす
るも明らかである。
(一) 本件土地の昭和三五年四月五日付売買契約書には売渡人D、買受人東洋商
事株式会社(以下単に「東洋商事」という。)G(東洋商事は原告会社の旧商号で
ある。)、立会人大和信商と記載されていること。
(二) 右取引当時の原告代表者Gが、法人税法違反嫌疑事件の参考人として名古
屋国税局収税官吏の取調を受けた際、本件土地を原告がDより契約日を昭和三五年
二月一〇日、売渡日を同年四月一一日、代金三〇〇〇万円、手数料八〇万円として
取得した旨の上申書を右係官に提出していること。
(三) 原告が、中税務署長に提出した法人税確定申告書その添付書類及び原告備
付帳簿等によれば、本件土地をDより二五二八万円で取得し、Cに三〇三三万六〇
〇〇円で売却した旨が記載されており、その結果として売却益四一六万二七五〇円
が総収入金額に計上されていること。
(四) 仮に原告主張の如く平和不動が本件土地をDから代金総額三〇八〇万円
(うち手数料八〇万円)で取得し、原告に三七九二万円で譲渡したとすれば、右譲
渡に伴う売却益七一二万円が平和不動の利益として同法人の決算書に計上されるべ
きであるのに、同法人の法人税確定申告書には右利益金は何ら計上されていないこ
と。
(五) また本件土地の代金支払は次のような経緯でなされたものであり、この事
実も被告の右主張を根拠づけるものである。すなわち、昭和三五年二月一〇日、大
和信商が自己の預金から五〇〇万円を払戻し、これを原告のため本件土地売買の手
付金としてDに立替払いし、翌一一日原告の関連会社たる平和不動(代表者は当時
の原告会社代表者たるGの母Hであり、平和不動の実権はGにある。)が大和信商
に五〇〇万円支払つているが、これは原告の依頼によるもので、同年四月五日原告
は平和不動に右五〇〇万円を返済した。次いで、同月一一日原告は大和信商に本件
土地代金の一部として一〇〇〇万円を支払い、大和信商は翌日これを売主Dに引渡
した。その後、資金不足のため原告は大和信商より昭和三六年四月一一日満期の約
束手形で一五〇〇万円借入れこれにより、残金一五〇〇万円の決済をした。その際
借入金の利息を年一割とし、利息相当分一五〇万円、本件土地の仲介手数料八〇万
円を大和信商に支払い、本件土地に抵当権を設定した。原告は、昭和三六年一月七
日、本件土地を大和信商を介してCに四二九七万六〇〇〇円で売渡し、手数料九五
万円前記借入金と相殺に係る一五〇〇万円を差引いた残額二七〇二万六〇〇〇円を
受取つたのである。尚この相殺に伴い返済期日が当初約定の昭和三六年四月一一日
より繰上げられたので前記支払利息一五〇万円のうち一五万円が返戻され、差引利
息一三五万円は本件更正処分に対する審査裁決によつて費用として認められ、本件
更正処分の一部取消がなされたものである。
 以上の如く本件土地の取消価格は三〇八〇万円である。そこで、本件更正処分に
おいては、本件土地の売渡しによる収入漏れとして四二〇二万六〇〇〇円(Cに対
する売渡金額より仲介手数料九五万円を控除。)を加算し、これに対応する原価と
して三〇八〇万円を減算したところ、審査請求に対する裁決において前記支払利息
一三五万円の減算が追加認容され、結局別紙原告会社所得金額計算表のとおり原告
会社の係争年度の所得金額は六五九万六四四七円(別表(三))となつたのであ
る。よつて、本件更正処分には何らの誤りもない。
第三、証拠(省略)
       理   由
一、請求原因第一項ないし第六項記載の経過(但し本件通知書の送達日を除く。)
で、原告主張の如き確定申告、更正処分、青色申告承認取消処分、右取消処分の再
調査請求、その取消決定、本件更正処分並びに本件取消処分、これらに対する異議
申立、棄却決定、審査請求、本件更正処分の一部取消裁決、本件取消処分の棄却裁
決が順次なされたこと、原告がその主張の如き営業を目的とする会社であること、
被告が東税務署長の事務を承継したことは当事者間に争いがない。
二、そこで、原告主張の本件更正処分、本件取消処分の違法原因につき順次判断す
る。
(一) 本件通知書の送達について。
 本件通知書の宛先が「名古屋市<以下略>」となつていたこと、訴外東税務署所
属の職員が同市<以下略>の原告代表者宅の郵便受函に本件通知書を投函したこと
は当事者間に争いがない。
 証人Eの証言により成立を認める乙第一、二号証、同Fの証言により成立を認め
る乙第四号証、右両証人の証言により昭和四一年五月三〇日に撮影した写真である
ことが認められる乙第五号証の一ないし三、同第六号証の一ないし三、成立に争い
のない乙第七号証、証人E、同Fの各証言並びに前記争いのない事実を綜合すれ
ば、原告会社は、既に昭和三九年一月三一日解散していたが、同会社より偶々昭和
税務署長宛に、名古屋市<以下略>在住のAが原告会社代表者清算人として届出ら
れていたため、東税務署長は、同人を受送達者として本件通知書を送達することに
したこと、昭和四一年五月三〇日同税務署E国税調査官およびF徴収官が本件通知
書送達のため右<以下略>に赴いたが、同人は既に同市<以下略>に転居していた
ので、右両名は右場所にAの住民登録がされていることを調査したうえ、さらに右
場所に赴いたこと、ところが、本人家族共不在であつたので、表札及び隣人からの
聴取により右場所所在の住宅に右Aが居住していることを確認して、同日午前一一
時一五分、右A方郵便受函に本件通知書を投函したこと、更に翌日三一日E調査官
が送達の事実を確認するために再び右A方を訪れたところ、同人は又も不在であつ
たが、その妻Bが在宅したので本件通知書を同宅に送達した理由を説明し、受領書
の交付を要求したが、同女は右申出を拒絶したこと、そこで、E調査官は本件通知
書がA宅に保管されていることを確認しただけで辞去したこと、以上の事実が認め
られ、右認定に反する証人Bの証言は措信せず、他に右認定を覆すに足りる証拠は
ない。
 ところで、国税通則法一二条五項によれば受送達者が送達すべき場所にいない場
合には差置送達をなしうる旨規定されているところ、前記認定の事実よりすれば、
本件通知書は昭和四一年五月三〇日原告代表者宅の郵便受函に投函されることによ
つて、右差置送達がなされたものと認めることができる。
 原告は、本件通知書は送達すべき場所を誤つた不適法なものと主張するが、税務
署長の発する書類は受送達者の住所或いは居所に送達されれば足る(同法一二条一
項本文)ものとされているところ、本件通知書はまさに受送達者たる原告代表者の
現住所に送達されたものであるから、たといそれが本件通知書又はその封筒に記載
された住所と異つていても、右差置送達を違法ならしめるものではない。
 また、原告は、原告代表者の妻Bが本件通知書の受領を拒む正当な理由がある旨
主張するが、前記認定の如く本件通知書は受送達者不在のため差置送達がなされ、
これによつて送達の効果が発生したものであつて、E調査官が右Bに面会し、本件
通知書の受領書交付を求めたのは単に事務処理の万全を期するためにすぎず、Bに
対し本件通知書を交付しようとしたわけではないから原告の右主張は失当である。
 してみれば、本件通知書は同法七〇条二項に定める更正の最終期限である昭和四
一年五月三一日前に原告に送達されたものであるから、この点について本件更正処
分に違法はない。
(二) 本件取消処分の理由付記について。
 本件取消処分の通知書に原告主張の如き記載があることは当事者間に争いがな
い。
 ところで、青色申告書提出承認の取消は、法人税法一二七条一項各号に定められ
た事由、すなわち、記帳自体の誠実性、信頼性を疑わしめ、正確な所得算出を不可
能とする事由の存する場合になされるものであるが、青色申告書に係る更正の場合
(同法一三〇条二項)とは異なり、その理由付記も承認取消の基因となつた事実が
同一二七条一項各号のいずれに該当するかを付記すれば足りるのであつて、取消の
基因となつた具体的事実を記載することまでは要求されていないものと解するのが
相当である。けだし、右一二七条一項各号は承認取消の基因たるべき事実をある程
度具体化して規定しているので、取消処分通知書にいちいち具体的事実を摘示しな
くとも取消の妥当公正が担保されないということはできないし、また、このように
解することが同条二項の文理にも副つているからである。しかして、前記争いのな
い事実によれば、本件取消処分の通知書には法人税法一二七条一項三号に掲げる事
由に該当する旨の記載があるのであるから、本件取消処分はその理由付記について
欠けるところはない。
(三) また、原告は、本件取消処分が取消される結果、本件更正処分も同法一三
〇条によつて理由を付記した通知書によるべきところ、本件更正処分の通知書には
理由の付記がない旨主張するが、本件取消処分には前記のとおり何らの違法もない
のであるから、原告の右主張はその前提を欠くもので主張自体失当である。
(四) 本件土地の取得価格の認定について。
 原告が、その主張の日に本件土地を訴外Cにその主張の代金で売却したことは当
事者間に争いがない。
 成立に争いのない乙第八号証、同第一〇号証の一、二、第一一ないし第一三号
証、同第一九ないし第二二号証、証人Iの証言により成立を認める乙第一四号証の
一、二、同第一五、一六号証、同第一七号証一、二、証人Jの証言により成立を認
める乙第一八号証(但し一葉目について成立に争いがない。)、証人I、同Jの各
証言並びに前記争いのない事実を綜合すれは、大和信商の仲介により昭和三五年二
月一〇日原告会社(当時の商号は東洋商事株式会社。)と本件土地の所有者たるD
との間に本件土地を代金三〇〇〇万円で売買する商談が成立し、同日大和信商がそ
の手付金として五〇〇万円を自己の預金から払戻し、右Dに原告のため立替払いし
たこと、翌一一日平和不動が大和信商に右立替金償還として五〇〇万円支払つた
が、平和不動と原告会社とは、前者の代表者Hが後者の代表者Gの実母という関係
にある関連会社であり、平和不動の右支払いは原告会社の依頼によるものであつた
こと、一方、原告会社は、同年四月五日前記立替金五〇〇万円を平和不動に支払
い、同日本件土地につき売主D、買主原告会社、仲介人大和信商、代金二五二八万
円とする売買契約書(乙第八号証)を作成したこと、同月一一日原告会社は大和信
商に対し一〇〇〇万円支払い、更に大和信商から昭和三六年四月一一日を満期とす
る額面一五〇〇万円の約束手形により同額の金員を借入れこれにより代金残額を決
済したが、その際大和信商に手数料八〇万円、借入金の利息一五〇万円を支払つた
こと、昭和三五年四月一三日本件土地の所有権が、同月一二日の売買を原因として
Dから原告(東洋商事株式会社)に移転した旨所有権移転登記がなされているこ
と、昭和三六年一月七日本件土地が大和信商の仲介により原告会社からCに代金総
額四二九万六〇〇〇円で売却され、仲介手数料九五万円および前記借入金一五〇〇
万円を差引いた残額を原告会社が受取つたこと、前記手形が満期日以前に決済され
たため支払ずみ利息のうち一五万円が大和信商から原告会社に返却されたこと、原
告会社が大和信商に支払つた利息一三五万円は本件審査裁決において本件取引の費
用と認められ、再更正処分の一部取消がなされたこと、原告会社は係争年度の法人
税の確定申告書において土地の売却益を相当額計上しているに反し、平和不動のそ
れには土地の売却益と認むべきものは全く計上されていないこと、当時の原告会社
代表者Gも大和信商に対する法人税法違反けん疑事件の調査において名古屋国税局
係官に対し昭和三五年二月一〇日に本件土地をDから代金三〇〇〇万円で買受け、
手数料として八〇万円支払つたことを自陳し、かつ、その旨の上申書も提出してい
ること、原告会社は本件更正処分に対する異議申立、審査請求の手続において、本
件土地を直接Dから買受けたのではなく、平和不動から買受けたものであつて、従
つて本件土地の売却益が被告主張金額とは異なることは全く主張しておらず、本件
訴訟においてはじめてこれを主張したこと、以上の事実が認められ、右認定に反す
る証人Gの証言および同証言により成立を認める甲第二、三、五号証の記載は前記
証拠に対比しこれを措信せず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
 右認定の事実関係よりすれば、本件土地は、原告会社がDより代金総額三〇八〇
万円(うち八〇万円は手数料)で買受けたものと認めることができ、別紙原告会社
所得金額計算表の内容については右以外の点は原告において争わないのであるか
ら、係争年度の原告の所得が被告主張のとおりとなること計算上明白といわねばな
らぬ。よつて、本件更正処分の内容には何ら誤りはない。
三、よつて、原告の本訴請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし、
訴訟費用の負担については民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 宮本聖司 福富昌昭 将積良子)
(別表(一)~(三)省略)

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また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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