弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する
     当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする
         理    由
 弁護人及び被告人の各控訴趣意は別紙のとおりである
 弁護人の控訴趣意第一点について
 記録によれば本件が刑事訴訟法第二百八十九条第一項により弁護人がなければ開
廷することができないこと及び本件公訴が当初小樽簡易裁判所に提起せられ同裁判
所は刑事訴訟法第三十六条本文によつて弁護士Aを弁護人に選任したが其の後刑事
訴訟法第三百三十二条により本件を札幌地方裁判所小樽支部に移送したこと並びに
同支部においては本件につき新に弁護人を選任することなく右弁護士Aが公判廷に
出席弁護人としてその訴訟行為をなしたことはいずれも所論のとおりである弁護人
は当初事件の繋属した裁判所において弁護人を附しても前記の如き移送決定があつ
た場合には該決定の確定により弁護人たる地位は消滅する旨主張<要旨>するのであ
るが移送を受けた裁判所においては事件の事実審理手続をこそ新にこれをなすを要
するも事実審理に属さないと認むべき移送裁判所のなした起訴状謄本の送
達、国選弁護人の選任の如きものについては移送決定確定後においても其の効力に
何等の消長を及ぼさないものと解すべきであるしかも刑事訴訟法第三十二条第二項
によれば弁護人の選任は審級ごとになすべき旨を規定しているのみであつて本件は
単に一審裁判所間に於ける事件の移送に過ぎないのであるから移送を受けた裁判所
において更に弁護人の選任をなすの必要はない尤も移送を受けた裁判所において一
応移送裁判所の選任した弁護人を解任し更に弁護人を選任するのが通例行われてい
る妥当な措置であると謂い得るのであるがかゝる措置を採らなかつたからといつて
直ちに原審の訴訟手続に違法の廉があつたとは謂われない論旨は理由がない
 被告人の控訴趣意及び弁護人の控訴趣意第二点について
 原判示事実は背広三つ揃洋服三着外衣類等三十六点を窃取したと認定しているの
であつて右は原判決挙示の証拠によりこれを認むるに足り又本件記録並びに原審の
取調べた証拠に現われた被告人には窃盗及び強盗の前科がありしかも仮釈放期間中
に本件犯罪を敢行した事実其の他諸般の事情を綜合すれば所論を考慮に容れても原
審が被告人に対し懲役三年の刑を科したのは量刑必ずしも不当とは思われない論旨
はいずれも理由がない
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条により本件控訴を棄却すべきものとし同法第百
八十一条第一項に則り当審における訴訟費用は全部被告人の負担とし主文のとおり
判決する(昭和二六年七月五日札幌高等裁判所第四部)
 (裁判長判事 黒田俊一 判事 鈴木進 判事 東徹)

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