弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人神谷安民の上告理由第一点ないし第三点について。
 所論は、原判決が、上告人において遅滞なく異議を述べていないので更新の効力
が生じたもので、その後生じた上告人の更新拒絶の正当理由はこれを斟酌し得ない
として控訴棄却をしたと主張し、これを前提として、原判決の違法をいうのである。
しかし、原判決は、所論異議の述べられたことを前提とし、これにつき正当事由の
有無を判示しているものであることは判文上明らかである。それ故、所論は原判示
を正解せず、前提を缺く主張たるに帰し、採るを得ない。
 同第四点について。
 原判決の確定するところによれば、上告人は原審においてはじめて、被上告人ら
に対し立退料一五〇万円を贈与する意思がある旨主張し、これに基づいて被上告人
らに対し、右立退料の支払と引換に本件建物収去および土地明渡を請求するに至つ
たというのである。これに対し、原判決は、所論更新拒絶の正当事由の有無を判断
するについては、土地所有者が遅滞なく異議を述べるべきであつた時期を基準とす
べきであり、更新拒絶の正当事由判断の基準時期後に生じた事実は、これを右正当
事由として斟酌することを得ないものであるとし、所論立退料支払の条件提示は、
原判決の認定した事実関係の下に、おいては、右判断の基準時期後に生じた事実で
あつて、正当事由としては斟酌し得ない旨を判示しているのであつて、右原審の判
断は正当である。これと異なる論旨は、独自の見解であつて採るを得ない。
 同第五点、第六点について。
 所論の点に関する原判決の事実認定は、挙示の証拠に照らし是認できる。また、
本件更新拒絶の正当事由の有無については、所論の点をも含めて被上告人、上告人
双方の事情を対比し彼此考量した上で正当事由なしと判断したものであることは判
文上明らかである。論旨は、結局原審の裁量に属する証拠の取捨判断、事実の認定
を非難するに帰し、原判決には所論の違法は認められない。
 同第七点について。
 控訴審判決に事実および理由を記載するについて第一審判決を引用し得ることは
民訴三九一条の規定するところであり、原判決が第一審判決を引用した点に所論の
違法はない。所論は採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   朔   郎
            裁判官    長   部   謹   吾

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