弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
     京都地方裁判所が同庁昭和六一年(ケ)第一六四号不動産競売事件につ
き昭和六二年一一月五日作成した配当表のうち、順位一、二番の項記載の被上告人
に関する配当部分を取り消し、順位三番の項中「配当等実施額」の欄の金額を「五、
〇〇〇、〇〇〇円」と変更する。
     訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人宅島康二の上告理由について
 一 原審の確定した事実関係は、次のとおりである。
 (1) 上告人A1は、本件不動産を所有していたが、これには、被上告人の訴外
Dに対する債権を担保するために一番の抵当権が、上告人A2の債権を担保するた
めに二番の抵当権がそれぞれ設定されていた。
 (2) 被上告人が本件不動産に対して申し立てた不動産競売事件(京都地方裁判
所昭和六一年(ケ)第一六四号)において、昭和六二年三月一三日、被上告人を買
受人とする売却許可決定がされたが、同月一八日、上告人A1は、被上告人が予め
その受領を拒絶していたので、被上告人に対して同日までの被上告人の抵当権の被
担保債権の元本及び損害金並びに競売手続費用を弁済するのでこれを受領するよう
催告し、これに対して被上告人がその受領を拒絶したので、同月二〇日、同月一八
日までの被上告人の抵当権の被担保債権の元本及び損害金の合計七八二万七八九七
円並びに競売手続費用としての四〇万円を供託した。
 (3) 京都地方裁判所は、昭和六二年一一月五日の配当期日において、売却代金
一一〇五万八〇〇〇円につき、被上告人に対する手続費用に三六万七八五五円を、
被上告人の被担保債権の元本及び損害金の合計八三七万五九六二円への弁済に同額
を、上告人A2の被担保債権の元利合計内金五〇〇万円への弁済に残余の二三一万
四一八三円を、それぞれ配当する旨の配当表を作成した。
 (4) 上告人らは、右配当期日において、それぞれ、本件配当表の記載のうち、
被上告人への手続費用並びに抵当権の被担保債権の元本及び損害金への配当の全額
について配当異議を申し立てた。
 二 右事実関係のもとにおいて、原審は、(1) 民事執行法(以下「法」という。)
は、弁済受領証書の提出による競売手続の無制限な停止による弊害を是正するため
手続停止文書の範囲を制限し(法一八三条)、代金の納付による買受人の不動産の
所有権の取得は担保権の不存在、消滅により妨げられないと定めている(法一八四
条)こと、(2) 法は、配当手続が開始された後においては、法三九条一項八号に
掲げる文書の提出があつても、執行裁判所は、これを無視して配当等を実施すべき
旨を定めており(法一八八条、八四条四項)、右の関係においては、被担保債権の
弁済供託書も法三九条一項八号に掲げる文書と同様に扱うべきものと考えられるこ
とをあげ、右のような法の趣旨及び構成に照らして、配当手続が開始された後にお
いては、関係人から弁済による被担保債権の消滅を主張し、これを根拠として配当
表に異議を申し立てることは許されないとして、被上告人の手続費用請求権並びに
抵当権の被担保債権の元本及び損害金がいずれも弁済(弁済供託)によつて消滅し
たことを原因とする配当表の当該部分の取消し及び変更を求める上告人らの請求を
棄却した。
 三 しかし、不動産競売手続における配当期日において、不動産競売手続を申し
立てた抵当権者の債権又は配当の額に異議の申出をした債権者及び所有者は、配当
期日までに抵当権又はその被担保債権が消滅したことを配当異議の訴えの原因とす
ることができると解することが相当であつて、原審の右判断を到底是認することは
できない。その理由は次のとおりである。
 すなわち、法は、債権を有する者への正当な弁済を実現するため、法八九条にお
いて、債務者及び配当表の是正によつて自己への配当額の増加が見込まれる債権者
に対して、配当異議の申出により配当表中異議に係る部分の配当実施を阻止するこ
とを認め、法九〇条において、右異議に係る債権又は配当の額の存否を配当異議の
訴えで確定することとしており、配当期日において配当表に記載された債権が存在
しないことを理由として配当異議を申し出、その債権の不存在を配当異議の訴えの
原因とすることができることは当然の事理というべきである。そして、右各規定は
法一八八条において不動産競売について準用されるところ、その場合についてみて
も、法一八三条の規定は法一八一条一項の規定に対応して手続停止文書を限定する
趣旨に出たものであり、法一八四条の規定は競売申立債権者の担保権の被担保債権
の不存在又は消滅にかかわらず買受人の所有権取得を保護するとの趣旨に出たもの
であつて、法一八三条及び一八四条の規定が担保権の不存在若しくは消滅の効果を
その当事者間で主張することを禁じ、又は担保権を消滅させる行為を禁ずるもので
ないことは明らかである。また、法一八八条において準用する法八四条四項の規定
の趣旨は、競売申立債権者について手続停止文書の提出があつても、他の債権者に
ついて右文書が提出された場合と同様に、手続の進行を止めないとすることにあり、
もとより、手続停止文書を無視すべきことが定められているものではなく、あるい
は右文書に係る事実の主張が禁じられることが予定されているものでもない。した
がつて、原判決がその論拠として引用する法の各規定は前記解釈と異なる解釈の根
拠となるものではなく、さらに、法の規定中には競売申立債権者の担保権の不存在
又は消滅を配当異議の訴えの原因とすることを禁ずる趣旨の規定は存しないという
べきである。
 右によれば、原判決には法一八三条、一八四条、一八八条、八四条四項、八九条、
九〇条の解釈を誤つた違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである
ので、原判決は破棄を免れない。
 四 そこで、前記事実関係に基づき、本件請求について判断するに、上告人A1
は本件土地の所有者として被上告人の抵当権の被担保債権を弁済する利益を有し、
また、不動産競売手続が進行し一定の段階に至つたことをもつて、被上告人が弁済
受領を拒絶する正当の理由とすることはできないから、上告人A1がした被担保債
権額の弁済受領の催告は有効な提供ということができ、被上告人の受領拒絶を理由
とする本件弁済供託により、被上告人の本件債権は消滅したといわなければならな
い。そうすると、上告人A1の請求は理由があり、上告人A2の請求は、同上告人
の請求額に満ちるまでの限度で被上告人への配当に不服をいうものと解すべきとこ
ろ、すべて理由があるので、第一審判決を取り消したうえ、上告人らの各請求をい
ずれも認容することとする。
 よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁
判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    角   田   禮 次 郎
            裁判官    大   内   恒   夫
            裁判官    佐   藤   哲   郎
            裁判官    四 ツ 谷       巖
            裁判官    大   堀   誠   一

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