弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
原判決を破棄する。
本件公訴事実中飲食営業緊急措置令違反及び昭和二二年政令第一六五号
違反の各事実並びに別表第二記載の鮮魚介、蔬菜、ごま油、木炭、醤油買受の各事
実(その細目は附表第一三、第一四、第一七乃至第一九記載)について、各被告人
を免訴する。
被告人Aを罰金六〇万円に、被告人Bを罰金一〇万円に処する。
被告人等が右罰金を完納することができないときは、金一、〇〇〇円を
一日に換算した期間労役場に留置する。
理由
弁護人清瀬一郎、山本粂吉、森田重次郎、手代木隆吉、高屋市二郎の上告趣意第
一点について。
論旨は、原審は検事の附帯控訴について審判をしない違法があるというのである
が、検事から附帯控訴の申立があつたとの事実については特に判決に明示する必要
のないこと勿論であるのみならす原判決によると原審は、被告人Aに対し、第一審
判決の懲役二年及び罰金七〇万円の刑を、懲役二年及び罰金七五万円の刑に重く変
更しているのであるから、原審が検事の附帯控訴につき審理したことは明らかであ
つて論旨は採るを得ない。
同第三点について。
記録に基き原審公判廷における被告人Aの供述内容を仔細に検討するに、その公
判供述の全趣旨は、相被告人Bの供述等に徴し、被告人Aは、法定の除外事由がな
いにも拘わらず、自己の経営する飲食営業用に必要な諸種の統制品を購入すること
を相被告人Bと共謀したことを自認し、唯購入の実際は、支配人たる被告人Bに一
任したため、その詳細は関知していないが、Bが直接購入の衝に当つたのであるか
らその購入の詳細は同被告人の供述どおり相違ないと思うと供述して、共犯の行為
。、の内容を承認したものであることは明瞭であるそして原判決の証拠説示によると
「被告人両名の当公廷における各自関係部分について夫々判示同趣旨の供述」と判
示しているのであるから、原審が所論の如く、被告人Aの公判供述の趣旨を誤解し
て採証したものということはできない。論旨はそれ故理由がない。
ところで職権を以て調査するに、本件公訴事実中被告人両名に対する、原判示第
一の飲食営業緊急措置令違反及び同第三の昭和二二年政令第一六五号違反の各事実
()()、、並びに同第二の一別表第一記載及び二別表第二記載の事実中鮮魚介蔬菜
ウイスキー、ごま油、木炭、醤油買受の各物価統制令三条違反の事実(別表第一の
細目については、附表第三、第四、第七乃至第一〇記載、別表第二の細目について
は、附表第一三、第一四、第一七乃至第一九記載)については、昭和二七年政令第
一一七号大赦令により大赦があつたので、刑訴施行法二条、旧刑訴四三四条二項、
、、、、、、四一五条四四七条四四八条四五五条三六三条三号により原判決を破棄し
右第二の二の事実につき各被告人を免訴し、その余の大赦にかからない原判示第二
の一(別表第一記載)及び二(別表第二記載)の事実中精米、小麦粉、清酒、麦酒
買受の各事実(別表第一の細目については、附表第一、第二、第五、第六記載、別
表第二の細目については、附表第一一、第一二、第一五、第一六記載)について、
当裁判所において改めて法令を適用して量刑処断すべきものである。
従つて右大赦にかかる、飲食営業緊急措置令違反の事実に対する前記弁護人清瀬
一郎外四名の上告趣意第四点及び第八点、弁護人森田重次郎の上告趣意第五点並び
に昭和二二年政令第一六五号違反の事実に対する弁護人森田重次郎の上告趣意第二
点及び第三点、弁護人山本粂吉の上告趣意第二点についてはいずれも判断の要がな
く、また右大赦にかからない事実について、原判決の法令の適用を非難する、前記
弁護人清瀬一郎外四名の上告趣意第二点及び第五点乃至第七点、弁護人森田重次郎
の上告趣意第一点並びに原審の量刑を非難する弁護人山本粂吉の上告趣意第一点に
ついても、既に当裁判所において自判する以上判断を与えるべき限りでない。
よつて原判決が適法に認定判示する前記大赦にかからない、被告人両名共謀によ
る精米、小麦粉、清酒、麦酒の不法買受に関する原判示第二の一の事実に対し、物
価統制令三三条一号、三条、四条、七条、刑法六〇条、昭和二二年法律第一二四号
による政正前の刑法五五条、附表第一、第二、第五及び第六の適用告示欄記載の各
告示を、同第二の二の事実に対し、前同様物価統制令の諸規定の外刑法六〇条、附
表第一一、第一二、第一五及び第一六の適用告示欄記載の各告示を適用し、いずれ
も所定刑中罰金刑を選択し(刑法六条一〇条により罰金等臨時措置法は適用しな、
い)以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪につき定
められた罰金額を合算し、その金額の範囲内において被告人Aを罰金六〇万円に、
被告人Bを罰金一〇万円に処することとし、罰金不完納の場合における労役場留置
につき刑法一八条を適用して、主文のとおり判決する。
なお本件公訴事実中大赦にかかる、原判示第二の一、別表第一記載の鮮魚介、蔬
菜、ウイスキー、ごま油、木炭、醤油買受の各物価統制令三条違反の事実(その細
目については、附表第三、第四、第七乃至第一〇記載)については前記の如く、各
被告人を免訴すべきものであるが、右公訴事実は、他の大赦にかからない、原判示
第二の一、別表第一の精米、小麦粉、清酒、麦酒買受の各事実(その細目について
は、附表第一、第二、第五、第六記載)と連続犯の関係にあるものとして起訴され
たものであるから、特に主文において免訴の言渡をしない(当裁判所昭和二六年
(れ)第二一二三号同二八年六月二四日大法廷判決参照。)
この判決は、連続犯の一部が大赦に当るに過ぎないときは、その全部について赦
免されないとする裁判官斎藤悠輔同島保同井上登同岩松三郎の少数意見右、、、、(
昭和二六年(れ)第二一二三号判決所載のとおり)を除き、裁判官全員一致の意見
によるものである。
検察官十藏寺宗雄出席
昭和二八年七月二二日
最高裁判所大法廷
裁判長裁判官田中耕太郎
裁判官霜山精一
裁判官井上登
裁判官栗山茂
裁判官真野毅
裁判官小谷勝重
裁判官島保
裁判官斎藤悠輔
裁判官藤田八郎
裁判官岩松三郎
裁判官谷村唯一郎
裁判官小林俊三
裁判官本村善太郎
裁判官入江俊郎
別表第一
<記載内容は末尾1添付>
別表第二
<記載内容は末尾2添付>

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