弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士久保田美英の上告理由は添附の別紙記載のとおりである。
 上告理由第一について。
 論旨は要するに、自作農創設特別措置法施行規則一条の二による農林大臣の承認
は行政処分であると主張するに帰する。
 しかし、右の承認は、農林大臣の都道府県知事に対する指揮権に基く行為であつ
て、上告人等に対する行為ではなく、また、上告人等の権利義務に直接関係のある
行為ではない。原判決が「行政訴訟の不服の対象となるものではない」と判示した
のは正当であつて、論旨は採用することができない
 同第二点について。
 論旨は、原判決は本件不承認行為の効力について審理をしない違法があるという
のであるが、前述のように承認、不承認が行政処分ではなく、その取消または無効
確認を求める訴が不適法である以上、かゝる点について判断を加える必要はないの
であつて、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 論旨は、前記自作農創設特別措置法施行規則一条の二は、法律によつて定められ
た都道府県知事の権限を、省令をもつて制限するものであり憲法に反すると主張す
るのである。
 しかし、都道府県知事が自作農創設特別措置法に基いて行う行為は、いわゆる国
の機関委任事務に属し(地方自治法一四八条二項、別表第三参照)この種の事務に
ついては、主務大臣は地方公共団体の長を指揮監督できるのであつて(国家行政組
織法一五条、地方自治法一五〇条参照)、前記規則一条の二は、農林大臣の右の指
揮監督権に基くものと解せられるから、所論のように省令をもつて法律を変更する
ものではない。所論違憲の主張は、農林大臣の右の指揮権のないことを前提とする
のであるから、その前提においてすでに誤つており、到底これを採用することがで
きない。
 同第四点について。
 論旨は原判決が上告人の「本件買収除外区域指定を承認すべし」との請求を不適
法と判示したことを非難するのであるが、承認が行政機関相互間の行為であり、上
告人等の権利義務と直接関係のない行為である以上、原判決は結局正当であつて論
旨は理由がない。
 以上説明のとおり論旨はすべて理由がないから本件上告はこれを棄却することと
し、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり
判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    池   田       克

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