弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人平井博也作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるか
ら、これをここに引用し、これに対して次のとおり判断する。
 控訴趣意第二点について。
 原判決が、その理由において、被告人が自動車運転者として所論摘録のような業
務上守るべき注意義務があるのにかかわらず、この義務を怠つた過失により本件衝
突事故を惹起し、被害者Aに傷害を負わせたものである旨の業務上過失傷害の有罪
事実を認定判示していることは、所論のとおりであつて、これに対して所論は、本
件衝突事故は、被害者たるAの自ら招いた傷害であつて、被告人の過失に基因する
ものではなく、被告人は、何ら刑責を負うべきものではないから、原判決には、こ
の点につき事実の誤認があり、その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかである
旨を主張する。よつて案ずるに、原判決の挙示する証拠を総合して考察するとき
は、所論の点をも含めて原判示事実のすべてを肯認し得られるのである。なるほ
ど、所論の挙げている証拠によれば、本件衝突事故の発生については、被害者たる
Aの側にも過失の存在が認められることは、所論の指摘するとおりであるけれど
も、所論のように、同人の過失のみによつて本件事故が発生したものであつて、被
告人には、全然過失がなかつたと断ずることは、正鵠を得たものということができ
ない。所論は、本件の交さ点においては、被告人の進行して来た道路が被害者の進
行して来た道路に対し優先通行順位にあつたことをもつて、被告人に過失がなかつ
たことの根拠としているもののようであるが、なるほ<要旨>ど、被告人の進行道路
が優先通行順位にあつたことは、所論のとおりであるけれども、しかし、およそ、
自動</要旨>車運転者たるものは、いかなる場合においても、他との衝突を避ける
につき、そのなし得べき最善の措置を講ずべき業務上の義務があるものであつて、
(昭和九年七月一二日大審院第一刑事部判決参照)道路交通取締法が安全交通の建
前上、その第一七条、第一八条において、車馬又は軌道車の通行順位を一応定めて
いるからといつて、これがため、先行順位の運転者に対し、運転上必要な注意義務
を免除し、警音器吹鳴、一時停車、徐行等をなすべき義務がないとしたものと解す
べきではなく、先行順位にある者であつても、右の法規を無視して進行路上に侵入
して来た車馬等に対しては衝突させてもよいという道理はない訳であつて、もし、
このような交通法規を守らない車馬等があつた場合には、これとの衝突を避けるた
めにも、警音器吹鳴、徐行ないし一時停車等の措置をとり得るよう注意すべき義務
があるものと解するのが相当であるから、被告人か先行順位にあつたからといつ
て、ただそれだけで、被告人に過失がなかつたと断ずることはできないものといわ
なければならない。所論は、被告人は、被害者の進行して来た道路上には、右交さ
点の入口に近く屋根の黒い小型四輪自動車が停車していたので、右は、被告人の車
が通過して後に進行するため避譲しているものと思い、なお、その道路上には、他
に交さ点に向つて進行して来る車馬がないことを確認したので、そのまま進行した
ところ、右小型四輪自動車の陰から被害者の足踏二輪自転車がとび出して来たもの
であつて、しかも、その自転車は、ブレーキが利かなかつたため、本件事故が発生
するに至つたものであるから、被告人には、何らの過失もなかつたものである旨主
張するのであるが、しかし、本件交さ点のように、信号機の設置されていない交さ
点においては、たとえ一応車馬等の通行順位が定められていたとしても、前後左右
の道路から、同時に交さ点に進入して来る車馬、通行人等があり得る訳である上
に、原判決挙示の証拠によれば、本件被害者のように、前示小型四輪自動車の陰に
いるため、被告人の車が進行して来たことに気付かない者もあるかも知れない状況
にあつたことが認められるのであつて、もし、被告人において、これらの者に自己
の車の存在を知らせるため、警音器を吹鳴し、又は、同交さ点に進入して来る車
馬、通行人等との衝突を避けるため、いつでも急停車をなし得る程度に徐行する
か、ないしは、一時停車して、同交さ点に進入して来る車馬、通行人等のないこと
を確認してから進行する等事故を未然に防止するに必要な措置をとつていたなら
ば、本件事故を回避することができたであろうと考えられるところであるから、被
告人には、前示のような措置に出るべき業務上の注意義務があつたものと認むべ
く、原判決援用の証拠に徴するときは、被告人が右の注意義務を怠り、前示の措置
に出なかつたことが認め得られるのであつて、この過失が本件事故の一因をなして
いることは、まことに明らかであるといわなければならない。これを要するに、原
審で取り調べた証拠を総合考察するときは、本件衝突事故は、被害者の過失と被告
人の前示業務上過失とが競合してこれが原因となつて発生したものと認めるのが相
当であつて、所論のように、被告人には全然過失がなかつたものということはでき
ないものであるから、原判決が、その挙示する証拠によつて原判示事実を認定した
ことは、相当であつて、記録を精査検討してみても、原判決に所論のような判決に
影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認があるものとは考えられないから、論旨は
理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 中西要一 判事 山田要治 判事 鈴木良一)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛