弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人両名の弁護人江藤洋一の上告趣意のうち,廃棄物の処理及び清掃に関する
法律(平成15年法律第93号による改正前のもの。以下「法」という。)25条
8号,16条の規定について憲法31条違反をいう点は,規定中の「みだりに」「
捨て」るという文言が所論のように不明確であるとはいえないから,前提を欠き,
憲法29条違反をいう点は,原審で何ら主張,判断を経ていない事項に関する違憲
の主張であり,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実
誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論にかんがみ,廃棄物の不法投棄の罪の成否につき,職権で判断する。
 1 原判決及びその是認する第1審判決並びに記録によれば,本件の事実関係は
,以下のとおりと認められる。
 (1) 被告会社は,福島県喜多方市内に工場を設けてアルミニウム再生精錬事業
を行っており,被告人Aは,被告会社の常務取締役兼工場長として本件工場の業務
を統括管理するものである。
 (2) 本件工場では,アルミニウム再生精錬過程から,汚泥,金属くず,鉱さい
,がれき類等の産業廃棄物が排出されていたが,昭和51年ころから,被告会社社
長の承認と工場長である被告人Aの指示の下に,これらの産業廃棄物のうち廃棄物
処理業者に処分を引き受けてもらえないものを工場敷地内に掘られた素掘りの穴に
埋め,穴が一杯になると表面を覆土し,あるいはコンクリート舗装するなどした上
,新たに掘られた他の穴に同様に廃棄物を投入するということを繰り返すようにな
った。そして,平成9年ころ,本件工場敷地内の材料処理工場の北西側に長さ約1
6.6m,幅約12.5m,深さ約2.7mの穴(以下「本件穴」という。)が掘
られ,これに本件工場から排出される廃棄物が投入されるようになった。
 (3) 本件工場で排出された廃棄物は,その都度本件穴に投入されるのではなく
,いったん本件穴のわきに積み上げられ,ある程度の量がたまったところで,ショ
ベルローダー等により本件穴の中に押し込んで投入するという手順がとられていた。
被告人Aや本件工場従業員らは,廃棄物を上記の積み上げてある場所に運ぶ作業自
体を,「捨てる」とか「穴に捨てる」などと表現していた。そして,本件穴のわき
に積み上げられた廃棄物について,これが四散したり含有されるフッ素等の物質が
空中や土中に浸出したりしないように防止措置を講じ,あるいは廃棄物の種類別に
分別するなどといったような管理の手は全く加えられず,山積みの状態のまま相当
期間にわたり野ざらしにされていた。
 (4) このような中で,被告人Aは,被告会社の業務に関し,本件工場のアルミ
ニウム再生精錬過程から排出された産業廃棄物である汚泥,金属くず,鉱さい,れ
んがくず等合計約9724kgを平成13年8月10日ころから同年11月28日
ころまでの間,前後7回にわたり,同工場従業員らをして本件穴のわきに運ばせ,
同所に無造作に積み上げさせた。この各行為が,廃棄物をみだりに捨てた行為とし
て起訴されたものである。
 (5) なお,被告会社は,本件工場敷地内で産業廃棄物を埋立処分をするのに法
令上必要とされる設備を設けたり,あるいは許可等を取得したことはない。
 2 以上の事実関係の下で,所論は,被告人Aを始め工場関係者は,本件汚泥等
を被告会社の保有する工場敷地内に積み置いただけであり,廃棄物をみだりに捨て
たものではない旨主張する。しかし,【要旨】本件各行為は,本件汚泥等を工場敷
地内に設けられた本件穴に埋め立てることを前提に,そのわきに野積みしたという
ものであるところ,その態様,期間等に照らしても,仮置きなどとは認められず,
不要物としてその管理を放棄したものというほかはないから,これを本件穴に投入
し最終的には覆土するなどして埋め立てることを予定していたとしても,法16条
にいう「廃棄物を捨て」る行為に当たるというべきである。また,産業廃棄物を野
積みした本件各行為は,それが被告会社の保有する工場敷地内で行われていたとし
ても,生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図るという法の趣旨に照らし,社会的
に許容されるものと見る余地はない。したがって,本件各行為は,同条が禁止する
「みだりに」廃棄物を捨てる行為として同条違反の罪に当たることは明らかであり
,これと同旨の原判断は正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 今井 功 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 中川
了滋 裁判官 古田佑紀)

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