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裁判例


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○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対し昭和四一年一月三一日付で
した滞納者芝興業株式会社にかかる第二次納税義務告知処分を取消す。訴訟費用は
第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、控訴棄却
の判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠関係は、左のとおり附加するほか、原判決の事実摘示の
とおりであるから、これを引用する(但し、原判決末尾滞納税金目録中一行目第四
欄に「納期限」とあるのを「所定納期限」と訂正する。)。
(主張)
一 控訴人
1 控訴人は滞納会社(芝興業株式会社)から国税徴収法三九条に該当する利益を
受けたことはない。控訴人は、後記のとおり、滞納会社の代表取締役の地位にあつ
たAから、共同事業契約(組合契約)の解約に関連して、同人の義務不履行による
損害賠償金として合計七四〇〇万円の支払を受けた事実があるが、右はあくまでも
A個人から支払を受けたのであつて、滞納会社から支払を受けたものではない。従
つて、控訴人が滞納会社に関し第二次納税義務を負ういわれはない。なお、控訴人
は、原審において、控訴人が滞納会社から被控訴人主張の金員の支払を受けた旨の
被控訴人の主張を認めるとの陳述をしたが、右は真実に反する自白であるので、こ
れを取消す。元来租税訴訟は、課税の実体を見極め的確かつ公正に税法を適用し、
税負担の公平を図ることをその使命とするものであつて、訴訟特につき自由処分の
許される一般の民事訴訟とはその本質を異にするのであるから、明らかな事実に反
する自白の撤回につき異議を述べることは、課税正義を実現すべき課税官庁のとる
べき態度ではない。
控訴人がAから前記金員の支払を受けるに至つた経緯は、次のとおりである。
(一) Aと訴外B及び控訴人の三名は、昭和三五年六月頃、共同して滞納会社か
ら同会社所有の東京都港区<地名略>及び<地名略>の二筆の宅地合計六六・九一
坪(以下「本件土地」という。)を購入し、その地上に建物を建築してこれを賃貸
することを目的とする共同事業を経営することを約した(右共同事業契約の性質は
民法上の組合契約である。)が、右契約を締結するに際し、右三名は、本件土地の
購入の事務はAが、その地上に建物を建築する事務はBがそれぞれこれを分担し、
本件土地購入のために当面必要とする資金は控訴人がこれを調達する(但し、本件
土地購入後二か月以内に、Aにおいて本件土地を担保として、控訴人の調達した土
地購入資金及びその借入利息相当額の銀行融資を受け、右資金を控訴人に返済す
る。)ものとし、各自互にそれぞれ分担した事務を遂行する債務を負う旨を約し
た。
(二) 控訴人は、前記契約上の債務を履行するため、昭和三六年四月頃、四〇〇
〇万円を訴外東光商事株式会社(以下「東光商事」という。)から借受け、これに
自己資金一三一〇万円を加えて合計五三一〇万円を調達し、これをAに交付した。
(三) Aは、控訴人の調達した資金をもつて本件土地を購入すべく、その所有者
である滞納会社と折衝したが、滞納会社の代表取締役Cの意向が滞納会社の株式全
部の売却には応ずるが本件土地だけの売却には応じられないとのことであつたの
で、同年四月滞納会社の株式全部を買受け、同会社の全株式を取得することによ
り、株主として本件土地を支配し得る地位を得た。そして、右買受にかかる株式
は、前記共同事業契約(組合契約)の趣旨に従い、A、B及び控訴人がこれを共有
(持分各三分の一)するところとなつた。
(四) Aは、前記契約により、本件土地購入後二か月以内に控訴人の調達した土
地購入資金を返済すべき債務を負つていたが、前記のとおり、本件土地購入に代る
べき滞納会社の全株式の取得が実現した後も、本件土地を担保として銀行融資を受
けるべき前記契約上の債務を履行しなかつたため、共同事業の継続が不可能とな
り、A、B及び控訴人間で協議の結果、同年一〇月頃右三者間で、(1)前記
(一)の共同事業契約を解約する。(2)Aは、滞納会社の全株式を自ら引受けて
同会社を経営する、(3)Aは、B及び控訴人に対し、右共同事業契約に伴つてB
及び控訴人が受けた財産上の損害(Bのなした建物の設計に要した費用、控訴人の
調達した前記株式買収資金とその利息を含む一切の損害)を賠償することを確約す
る旨の新たな合意が成立した。
(五) 右合意に基づき、B及び控訴人は、同年一〇月一〇日滞納会社の全株式の
所有権(共有持分一二分の二)をAに譲渡すると共に、同年六月に就任していた同
会社の代表取締役を辞任した。これにより、Aは、同会社の全株式を所有すること
になり、同年一〇月二八日に同会社の代表取締役に就任した。
(六) Aは、右のようにして本件土地を自由に支配し得る地位を取得したとこ
ろ、滞納会社の代表取締役として、同年一〇月二八日本件土地を担保に供して訴外
大東京信用組合から金員を借入れ、更に同年一一月二日本件土地を訴外Dに売渡
し、右のようにして得た滞納会社の資産をもつて、自己の控訴人及びBに対する個
人的債務である前記(四)の(3)の損害賠償債務の弁済のため、控訴人に対し、
同年一〇月二八目に一五〇〇万円、同年一一月二四日頃五九〇〇万円、合計七四〇
〇万円を支払つた。
控訴人は、右受領にかかる金員を次のとおり弁済充当した。
(1) 控訴人が調達した前記株式買収資金の元本返済額           
       五三一〇万円
(2) 右資金のうち四〇〇〇万円の借入利息として、借入先である東光商事に支
払つた分   一四四〇万円
(3) 右資金のうち控訴人の支出した自己資金一三一〇万円に対する金利相当額
の遅延損害金と控訴人が組合契約存続中に組合のために立替えた諸経費分として控
訴人が受領することにした分        五〇〇万円
(4) Bに対し、同人の行つた設計の費用相当額の損害賠償金として交付した分
       一五〇万円
以上合計 七四〇〇万円
(七) 以上のとおりであるから、滞納会社の第二次納税義務は、同会社の資産を
個人的債務支払のために流用したAが負うべきものである。
2 滞納会社は、昭和五一年八月二日に訴外共和興業株式会社(以下「共和興業」
という。)に吸収合併されたから、共和興業の納付能力を調査し、同会社に納付能
力がある場合には、本件第二次納税義務告知処分は取消さるべきものである。
二 被控訴人
1 控訴人の前記主張1の冒頭の事実は否認する。
控訴人は、原審において、控訴人が滞納会社の実質上の支配者であり、かつ滞納会
社から本件土地売却利益計上洩れにかかる二七九七万八九四〇円のうちからAへ支
払つた一五〇万円を差引いた残額二六四七万八九四〇円の交付を受けた旨の被控訴
人の主張に対し、これを認める旨の陳述をしたのであるから、当審において、控訴
人が滞納会社から金員の支払を受けたことがないと主張することは、原審でなした
自白の撤回にあたる。よつて、右自白の撤回につき異議を述べる。
控訴人の前記主張1の(一)の事実は否認する。
仮にA、B及び控訴人の三者間に控訴人の主張するような共同事業の合意が成立し
たとしても、右合意は、その当初において(控訴人主張の昭和三六年一〇月頃の解
約の合意よりも以前に)三者の明示又は黙示の合意によつて解消され、消滅したも
のとみるべきである。
同(二)の事実のうち、控訴人が東光商事から四〇〇〇万円を借受けたこと及び総
額として五三一〇万円を調達したことは認めるが、その余は否認する。控訴人が五
三一〇万円を調達したのは、滞納会社の代表取締役Cの要請により、控訴人自身が
本件土地の所有者である滞納会社の全株式を買取ることとし、その資金等に充てる
ためであつたのである。
同(三)の事実は否認する。控訴人は、Cの要請により、控訴人の調達した前記資
金をもつて滞納会社の全株式を買取つた結巣、同会社が所有する本件土地の処分権
限を取得したのである。
同(四)の事実は否認する。
同(五)の事実のうち、B及び控訴人が昭和三六年一〇月一〇日に滞納会社の代表
取締役を辞任した旨及びAが同月二八日に同会社の代表取締役に就任した旨の各登
記が経由されていることは認めるが、その余は否認する。なお、B及び控訴人の両
名は、代表取締役辞任の登記を経由した後も取締役として在任し、同年一二月二八
日付で同年一〇月三〇日に同会社の取締役を辞任した旨の登記を経由しているので
ある。
同(六)の事実のうち、本件土地が滞納会社からDに売渡されたこと、控訴人が一
四四〇万円を東光商事に借入利息として支払つたことは認めるが、その余は否認す
る。本件土地は、昭和三六年一〇月二五日に代金額八五〇〇万円で売買されたもの
であるが、控訴人は、自らその買主Dから同日内金二〇〇〇万円、同年一一月二〇
日に残金六五〇〇万円を受領し、右各金員のうち、Aに交付し、或いは負債の返済
等にあてたほかの残額二六四七万八九四〇円を滞納会社に帰属させず、同会社の実
質上の単独支配者たる地位に基づき、同会社から無償譲渡を受けたのである。
同(七)の主張は争う。
2 控訴人の前記主張2については、滞納会社が昭和五一年八月二日に共和興業に
吸収合併されたことは認めるが、その余は争う。
行政処分の取消しとは、有効に成立した行政処分につきその成立に瑕疵(一定の取
消原因)が存する場合に、その行政処分時にさかのぼつて初めからその処分が行わ
れなかつたのと同様の状態に復せしめる行為であるから、取消原因となる行政処分
の瑕疵の有無は、当然にその処分の時を基準として判断すべきものである。ところ
で、本件告知処分は、前記合併よりも一〇年も以前である昭和四一年一月三一日に
なされたのであるから、その後に滞納会社を合併した共和興業が租税債務を支払う
資力を有するに至つたとしても、これをもつて本件告知処分の取消原因となし得な
いことは明らかである。
(証拠)(省略)
○ 理由
一 当裁判所も原裁判所と同様控訴人の本訴請求は理由がないと判断するものであ
り、その理由は、左のとおり附加訂正するほか、原判決の理由説示のとおりである
から、これを引用する。
1 原判決九枚目表六行目の「争いがない」の次に「(なお、控訴人は、当審にお
いて、右1の事実のうち、滞納会社が昭和三六年一一月二〇日頃本件土地の売却利
益計上洩れにかかる二七九七万八九四〇円のうち二六四七万八九四〇円を控訴人に
交付することによつて処分していたとの点につき、自白を撤回したが、右自白の撤
回の認められないこと後記説示のとおりである。)」と加える。
2 原判決一〇枚目裏末行の「証人E」から一一枚目表三、四行目の「有するよう
になつたこと」までの記載を、「第八、九号証、第一一号証の一ないし三、第一二
ないし第一七号証、証人A、同B、同E(原審及び当審)、同Fの各証言並びに控
訴本人尋問の結果(第一、二回)を総合すれば、控訴人は、昭和三六年四月頃A及
びBと共同して滞納会社の発行済の全株式を取得して、右三名で、右株式を共有
(持分各三分の一)するに至ると共に同会社の経営権を掌握したこと」と改め、同
一一枚目表末行から同裏初行にかけて「同社の一人株主であり実質上の単独支配者
である」とあるのを、「同会社の発行済の全株式につき持分三分の一の共有権者で
あり、A、B両名と共にその経営権を掌握していた」と改める。
3 原判決一二枚目表三行目に「同証言」とあるのを、「前掲乙第一三号証、第一
五号証、証人E(原審及び当審)、同B、同Aの各証言及び控訴本人尋問の結果
(第一回)」と改める。
4 原判決一三枚目表一〇行目から一一行目にかけて「いわゆる一人株主であつ
た」とあるのを、「発行済の全株式につき持分三分の一の共有権者であつて、控訴
人、A及びBの三名で同会社の発行済株式の全部を所有していた」と改める。
二 控訴人の当審における新たな主張の当否について検討する。
1 控訴人は、当審において新たに、控訴人が滞納会社から本件土地の売却によつ
て得た金員の支払を受けたことはない旨主張するに至つたが、控訴人は、原審第九
回口頭弁論において、控訴人が昭和三六年一一月二〇日頃滞納会社から本件土地の
売却利益計上洩れにかかる二七九七万八九四〇円のうち二六四七万八九四〇円の交
付を受けたとの被控訴人の主張に対し、これを認める旨の陳述をしたのである(右
事実は原審記録によつて明らかである。)から、当審における前記陳述は、裁判上
の自白の撤回にあたるというべきである。
そこで、右自白の撤回が許容されるか否かについて判断するに、およそ裁判上の自
白の撤回が許容されるためには、自白をした当事者において、該自白が真実に反し
かつ錯誤に基づくものであることを立証しなければならないのであつて、この理は
本件のような租税訴訟においても異なるところはないと解すべきところ、後述のと
おり、本件においては、右自白にかかる事実が真実に反すると認めるに足りる確証
がないから、右自白が錯誤に基づいてなされたものであるか否かを問うまでもな
く、その撤回は許されないといわなければならない。即ち、原本の存在及び成立と
もに争いのない甲第三号証の二、四、第四号証、控訴本人尋問の結果(第二回)に
よつて成立を認める甲第五号証の一、二(但し、甲第五号証の一のうち官公署作成
部分については成立に争いがない。)、証人Bの証言及び控訴本人尋問の結果中に
は、控訴人の当審における前記主張即ち控訴人が滞納会社から本件土地の売却によ
つて得た金員の支払を受けたことはないとの主張に沿う部分があるけれども、右各
証拠はいずれも後記証拠と対比してたやすく採用することができず、他には控訴人
の右主張を肯認するに足る証拠はなく、かえつて、前掲乙第四、五号証、成立に争
いのない乙第六号証、前掲第八、九号証、第一一号証の一ないし三、第一二ないし
第一七号証、成立に争いがない乙第一八号証、証人A、同B、同G、同E(原審及
び当審)、同Fの各証言並びに控訴本人尋問の結果(第一、二回)に弁論の全趣旨
を総合すれば、
次の事実が認められる。
(一) 控訴人、A及びBの三名は、昭和三五年後半頃Aの発案により、共同し
て、滞納会社から同会社所有の本件土地を購入し、その地上に建物(ビルデイン
グ)を建築して貸ビル業を営むことを企画し、三者で相談した結果、(イ)本件土
地の購入の事務及び土地購入資金を金融機関から借り入れる事務はAが、その地上
に建物を建築する事務はBがそれぞれこれを担当し、本件土地購入のため当面必要
とする資金(いわゆるたね銭)は控訴人がこれを調達する(但し、本件土地購入後
二か月以内に、Aにおいて本件土地を担保として金融機関から融資を受け、右資金
を控訴人に返済する。)こと、(ロ)前記貸ビル営業によつて得た収益は右三名で
均等に分配すること等を内容とする口頭による約定が三者間に成立した。
(二) 控訴人は、右約旨に従い、昭和三六年四月頃、東光商事から四〇〇〇万円
を高利で借受けるなどして五三一〇万円を調達し、これをAに交付した。他方、A
は、前記約旨に則つて、本件土地を購入すべく、滞納会社の代表取締役Cと折衝し
たが、同会社には本件土地のほかには見るべき資産がなかつたところから、Cが同
会社の全株式の売却には応ずるけれども本件土地だけの売却には応じられないとし
て譲らなかつたため、控訴人及びBの同意を得たうえ、本件土地を購入する代り
に、滞納会社の株主全員の代理人兼本人であるC及びHから同会社の発行済の株式
全部を前記三名で買受けることにした。そして、Aは、同年四月七日頃、自己とB
の名を用いて(控訴人が韓国籍を有する外国人であるため、外対的な信用の損われ
ることを慮つて、特に控訴人がその買主の一人であることを相手方に示さなかつ
た。)、C、H両名との間に、同人らの所有する滞納会社の発行済の全株式五万株
を売買する旨の契約を締結し、控訴人から交付を受けた前記金員をもつて右売買代
金の支払に充て、C、H両名から同会社の株券と社印の引渡を受け、Bにその保管
を委ねた。右のようにして、控訴人、A及びBの三名は、本件土地の所有者であつ
た滞納会社の全株式を取得し(右株式の買受がA、B両名の名においてなされたこ
とは前記のとおりであるが、前証認定の経緯に照らせば、右売買の結果、右株式は
控訴人、A及びBの三名がこれを共有(持分各三分の一)するに至つたものと認め
られる。)、同会社の経営権を完全に掌握することにより、本件土地を自由に使
用、収益、処分し得ることになつた。
(三) ところで、その後二か月を経ても、Aが当初の約定に従つて控訴人の調達
にかかる前記五三一〇万円につきその返済をしようとしなかつたため、控訴人とA
との間の信頼関係は次第に失われ、控訴人はBと相談のうえ、Aには無断で、昭和
三六年六月一〇日に控訴人、B、I(控訴人の親族)他三名が滞納会社の取締役
に、更に同日右のうち控訴人及びBの両名が代表取締役にそれぞれ就任した旨の登
記を同年七月四日に経由した。そして、その後も控訴人とAとの関係は改善され
ず、そのままでは、当初の約定どおり控訴人ら三名で共同して本件土地上に建物を
建築して貸ビル業を営むことは困難な状況であつた。
(四) 滞納会社は、前記のとおり、本件土地以外には見るべき資産を持たず、控
訴人ら三名がその全株式を取得した後は全く営業活動をなさず、従つて、何らの収
益も挙げていなかつた。そこで、控訴人は、この際本件土地を売却処分し、その売
得金をもつて自己の調達した前記金員を回収しようと考え、A及びBと協議したと
ころ、昭和三六年一〇月初頃三者間に、次のような合意が成立した。
(1) 滞納会社をしてその所有にかかる本件土地を売却させ、控訴人は、同会社
から右売得金をもつて、さきに本件土地を取得するための資金として調達しAに交
付した五三一〇万円及びこれに対する利息金相当額の支払を受ける。
(2) 控訴人及びBは、同人らの所有にかかる滞納会社の株式(持分)をAに譲
渡し、以後Aにおいて同会社の経営に当たる(同会社は、本件土地以外には僅かに
電話加入権を有するのみであつて、本件土地を売却し、その売得金を右(1)のと
おり処分すれば、無資力同然となるが、同会社の資本金額が二五〇〇万円と比較的
大きかつたところから、当時資本金額が一六〇万円に過ぎない共和興業の経営者で
あつたAは、滞納会社の右資本金額に魅力を感じていた。)。
(3) 本件土地の売却に関する交渉はAがこれを担当する。
(五) 控訴人ら三名間に前記合意が成立するや、これに基づき、Bは、その保管
にかかる滞納会社の株式及び社印をAに交付し、又Aが昭和三六年一〇月三日同会
社の取締役に就任し、更に同月一〇日控訴人及びBが代表取締役を辞任(平取締役
として留任)したが、後任の代表取締役については、控訴人ら三名間で、暫定的に
控訴人の代理人的な立場にあるIをして就任させ(以上の就任及び辞任の登記は同
月一七日に経由した。)、控訴人が本件土地の売得金をもつて自己の調達した前記
金員の回収をなし得る目処がつき次第、安田を辞任させ、Aをその後任の代表取締
役に就任させることを相互に了解した。ところで、同月二五日頃Aにおいて、本件
土地をDに代金八五〇〇万円で売却する旨の交渉を取りまとめ、手付金二〇〇〇万
円の授受を了し、右金員が控訴人に交付されたので、同月二八日安田が代表取締役
を辞任して、Aが後任の代表取締役に就任し、同月三一日にその旨の登記が経由さ
れた。
(六) かくして、Aは、名実共に滞納会社の代表者となつたため、昭和三六年一
一月二日付で同会社を代表して、Dとの間に、本件土地の売買に関する契約証書
(乙第一三号証)を取交わし、同月二四日頃前記売買代金の残額六五〇〇万円の授
受を了したが、本件土地の売買代金の授受は、手付金の分も含めて、現実には、前
記安田が控訴人の代理人ないし使者となつて買主から直接受領して、控訴人にこれ
を交付した。
控訴人は、自らの判断で、右受領にかかる売買代金八五〇〇万円のうちから、
(4)Bに対し、同人が前記(一)の約定に従つて行つた建物の設計料分として一
五〇万円、(ロ)Aに対し、利益配分として一五〇万円、(ハ)東宝不動産に対
し、本件土地の仲介手数料として一〇〇万円、(ニ)弁護士坂本忠助に対し、書類
作成料として一〇万円をそれぞれ支払つたが、残金は自らこれを取得し、その一部
を控訴人が前記(一)の約定による金員の調達のため東光商事から借受けた四〇〇
〇万円及びその利息金一四四〇万円の弁済に充て、残余は右金員調達のため自ら支
出した一三一〇万円及びこれに対する金利並びに立替諸経費の名目でこれを取得し
た。
以上認定のとおり、控訴人は、A及びBと共同して、本件土地の所有者である滞納
会社の全株式を取得して、右三名でこれを共有するに至つたが、右株式の取得に要
した全費用を自己において調達した関係上、右三名の中では終始控訴人が主導的な
立場を保持し、当初の計画どおり右三名で本件土地を利用して共同事業を営むこと
が困難な状況に立ち至るや、自己の調達した資金の回収を図る目的で、滞納会社を
してその所有にかかる本件土地を売却処分させ、自らその売得金を買主から受領し
たうえ、その中からA、Bその他に支払うべき金員を自らの判断で支払い、残余の
約八〇〇〇万円を自ら取得し、自己の調達した前記資金の弁済に充てるなどしたも
のであるところ、控訴人は、当時滞納会社そのものに対しては何ら債権を有してい
たわけではないから、同会社所有財産の売得金を右のようにして取得し得るいわれ
は全くなく、従つて、以上の事実関係に徴すれば、控訴人は滞納会社から被控訴人
主張の二六四七万八九四〇円を上廻る金員を実質上無償で譲渡を受けたものという
べきである。以上のとおり、控訴人の前記自白については、それが真実に反するも
のと認められないから、その撤回は許されず、従つて、控訴人の当審における前記
の新主張はこれを採用することができない。
2 次に、控訴人は、当審において新たに、滞納会社は本件告知処分後の昭和五一
年八月二日に共和興業に吸収合併されたから、共和興業に納付能力がある場合に
は、本件告知処分は取消さるべきである旨主張するところ、成立に争いのない乙第
一〇号証、前掲乙第一八号証によれば、滞納会社が控訴人主張のとおり本件告知処
分後の昭和五一年八月二日に共和興業に合併されたことが認められる。
しかしながら、国税徴収法等の定める第二次納税義務の告知処分は、主たる課税処
分により確定した主たる納税義務の徴収手続上の一処分としての性格を有し、該告
知処分を受けた第二次納税義務者は、主たる納税義務について徴収処分を受けた本
来の納税義務者と同様の立場に立つのであるから、該告知処分後に、本来の納税義
務者が租税債務を支払う資力を回復し、或いは本来の納税義務者が十分な資力を有
する法人と合併するに至つたとしても、右のような事由は、一旦なされた第二次納
税義務の告知処分の効力に何ら影響を及ぼすものではないというべきである。従つ
て、控訴人の右主張はその主張自体失当といわなければならない。
三 よつて、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がな
いから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民
事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 杉田洋一 蓑田速夫 松岡 登)
(原裁判等の表示)
○ 主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
1 被告が原告に対し昭和四一年一月三一日付でした滞納者芝興業株式会社にかか
る第二次納税義務告知処分を取消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
主文と同旨
第二 当事者の主張
一 請求の原因
1 被告は、原告に対し昭和四一年一月三一日付で、訴外芝興業株式会社(以下
「滞納会社」という。)の滞納にかかる法人税等について、納付限度額を二〇、一
九四、〇〇〇円とする第二次納税義務告知処分(以下「本件処分」という。)を
し、原告はこれに対し法定の行政不服審査手続を経由したがいずれも棄却された。
2 本件処分は、滞納会社が原告に対し交付した二六、四七八、九四〇円の利益の
配当が国税徴収法三九条の「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」にあたるも
のとしてなされたのであるが、右金員の交付は右の規定には該当しないものであ
り、したがつて本件処分は違法である。
3 よつて、原告は被告のした本件処分の取消を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2のうち、滞納会社が原告に対し原告主張の金員を交付したこと、本件処分
は右金員の交付が国税徴収法三九条に該当するものとしてなされたことは認める
が、本件処分が違法であるとの主張は争う。
三 被告の主張
1 滞納会社は、昭和三六年一〇月二五日、その所有にかかる東京都港区<地名略
>ほか一筆の宅地合計六六・九一坪を代金八五、〇〇〇、〇〇〇円で訴外Dに売却
し、同年一一月までに右代金を受領した。しかるに、滞納会社は、その昭和三六年
三月一日から昭和三七年二月二八日までの事業年度分の法人税の確定申告にあたつ
て、前記土地の売却価額を過少に申告するとともに、昭和三六年一一月二〇日こ
ろ、右土地の売却利益計上もれにかかる二七、九七八、九四〇円のうち一、五〇
〇、〇〇〇円を同社の代表取締役であるAに対し、残額の二六、四七八、九四〇円
を同社の株主でありかつ実質上の支配者である原告に対しそれぞれ交付することに
よつて処分していた。
2 そこで滞納会社の納税地を管轄する麻布税務署長は、昭和四〇年四月二六日付
で滞納会社に対し、前記土地の売却収入計上もれ等を理由とする法人税の更正処分
をするとともに、Aに交付された一、五〇〇、〇〇〇円を賞与に、原告に交付され
た二六、四七八、九四〇円を利益配当にそれぞれ認定し、給与所得あるいは配当所
得にかかる源泉所得税合計三、一七〇、八九〇円の各納税告知処分をした。
また、原告の納税地を管轄する平塚税務署長は、昭和四一年二月二八日付で原告に
対し、昭和三七年分所得税について、前記利益配当額二六、四七八、九四〇円から
借入金利子一〇、九二九、六〇〇円を控除した一五、五四九、三四〇円を配当所得
として加算する更正処分をした。
なお、滞納会社に対する前記の更正処分及び各納税告知処分並びに原告に対する更
正処分は、いずれも既に確定しているものである。
3 ところで滞納会社が原告に交付した前記二六、四七八、九四〇円は実質上金員
の無償譲渡であり、以下のとおり国税徴収法三九条に該当するものである。
(一) 滞納会社は、昭和四一年一月三一日現在において、別紙滞納税金目録(以
下「別紙目録」という。)記載の税金合計一八、七四六、〇二〇円(ただし、未確
定延滞税を除く。)を滞納しているのに対し、当時、同会社は、既に休業してお
り、財産としてはわずかに電話加入権一本(四三六局三〇六一番)を有しているに
すぎなかつたので、右滞納税金は、徴収不足となる状態であつた。
(二) 前記金員の無償譲渡は、前記のとおり昭和三六年一一月二〇日ころであつ
て滞納税金の法定納期限(別紙目録参照)の一年前の日以後になされており、しか
も滞納会社は前記金員の無償譲渡によつて無資力となつたものである。
(三) 原告は実質上滞納会社の一人株主であるから国税徴収法施行令一三条一項
五号により、同会社の特殊関係者にあたるところ、前記金員の無償譲渡により金員
相当額の利益を受けている。
4 よつて、被告は、本件第二次納税義務の納付限度額を次のとおり算定し、昭和
四一年一月三一日原告に対し、別紙目録記載の滞納税金(ただし、番号1および7
の国税を除く。)につき二〇、一九四、〇〇〇円を納付限度とする本件処分をした
ものである。
(1) 原告が無償で取得した金額                     
 二六、四七八、九四〇円
(2) 前記利益配当にかかる源泉所得税                  
  二、六四七、八九四円
(3) 原告に対する昭和三七年分所得税の更正処分にかかる増差税額(前記配当
所得が加算されたことによつて増加した所得税額)           三、六
三六、〇八〇円
(4) 納付限度額((1)から(2)及び(3)の合計額を控除したもの。ただ
し千円未満切捨)     二〇、一九四、〇〇〇円
5 原告は利益の配当としてなされた前記金員の交付は、国税徴収法三九条の「無
償又は著しく低い額の対価による譲渡」には該当しないと主張する。しかし右主張
は以下のとおり失当である。
すなわち、商法上「配当」とは会社が事業活動によつて得た利益のうちから株主総
会等の決議を経て株主等に対しその持株数に応じて分配するものをいうのである
が、税法上における「利益の配当」とは会社が確定した決算において利益または剰
余金の処分により配当または分配したものだけではなく、株主等に対しその株主等
たる地位に基づいて供与した経済的利益も含まれるのである。
したがつて、商法上違法な配当と目されるものや、株主に対する会社資産の無償あ
るいは低額による譲渡等は、その名目のいかんにかかわらず、税法上においてはそ
の経済的利益の実質をとらえこれを課税客体としているのであつて、株主が、会社
から無償または著しく低い額の対価によつて会社資産を譲り受けた場合には、その
行為の結果に基づく経済的利益が所得税法上の配当所得を構成する一方、その行為
が国税徴収法三九条における「無償または著しく低い額の対価による譲渡」にもあ
たるのであつて、その間においては何らの矛盾も存しないのである。
四 被告の主張に対する原告の認否及び反論
1 認否
被告の主張1及び2の事実は認めるが、その余の事実は不知、主張は争う。
2 反論
国税徴収法三九条の無償による譲渡とは、民法上の贈与等をさすものであり、これ
に対し利益の配当とは投資の対価をいうのであつて、両者は法律上の意義も性質も
まつたく異なるものである。
本件において原告が滞納会社から交付を受けた金員は、滞納会社に対する源泉所得
税の納税告知処分では利益の配当と認定され、
また原告に対する更正処分でも所得税法二四条の利益の配当として配当所得と認定
され、右処分は既に確定している。したがつて、これを前記法条の無償の譲渡にあ
たるとしてなされた本件処分は、法律の適用を誤つたものである。
すなわち、本来の納税義務者でない第三者に納税義務を課す第二次納税義務の告知
処分は、税法上の特殊例外的規定であるから厳格に解釈されなければならず、ま
た、一つの法律用語を他の別の法律用語と同一意義に解するには合理的な理由を必
要とするところ、被告は所得税の課税上利益の配当と認定されたものを合理的理由
もなく前記法条の無償の譲渡にあたるとしたのであるが、元来、利益の配当たる配
当所得は株主等の地位に基づいて供与されるものであつて、無償という観念は入る
余地がなく矛盾するものというべきである。そして逆にいえば、前記法条の無償の
譲渡により得た個人の利益は、所得税法上の雑所得となるはずのものであつて、配
当所得とは関係ないものといわざるをえないのである。
したがつて、本件処分はいずれにしても違法である。
第三 証拠関係(省略)
○ 理由
一 請求原因1の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで本件処分の適否について判断する。
1 被告の主張1及び2の事実並びに本件処分が国税徴収法三九条の規定に基づい
てなされたことはいずれも当事者間に争いがないところ、原告は、原告が滞納会社
から交付された二六、四七八、九四〇円は所得税法二四条の配当所得たる利益の配
当であつて、これを前記法条に規定する無償の譲渡と認定することは許されないと
主張する。
しかし、所得税法二四条一項に規定する配当所得たる利益の配当とは、本来は法人
の事業活動によつて得た利益を株主等に対して分配したもの(その分配がたとえば
商法上適法であるか否かは問わない。)、すなわち株主等の投下した資本に対する
直接の対価としての性質を有するものをいうのであるが、これにとどまらず、その
全部または一部につき投下資本の直接の対価としての性質を有せず本来ならば一時
所得を構成するような個人の所得であつても、株主等に対する会社資産の無償ある
いは低額による譲渡のように、法人がその株主等に対し株主等たる地位に基づいて
供与した利益は、その名目にかかわらずこれを利益の配当たる配当所得に含まれる
と解することが許されるものというべきである。すなわち、株主等がその地位に基
づいて法人から供与を受けた所得には、本来の意味における配当、つまり投下資本
の直接の対価としての性質を有するものと、そのような対価性のない本来ならば一
時所得とされるようなものの二つの場合がありうるわけではあるけれども、いずれ
も株主等としての地位に基づくということを大きな特徴とする所得であつて、この
点において発生原因や担税力においては大きな相違はないと解され、他方、その所
得が本来の配当としての直接の対価性を有するものであるか否か、あるいは右の対
価性を有しているのは所得のいかなる部分であるかについては、必ずしも判然とし
ない場合も多いと解されること等にかんがみれば、右のような相違を区別せず、株
主等たる地位に基づく法人からの所得をすべて配当所得とすることが法の趣旨とす
るところとも解するのが相当である。
したがつて換言すれば、課税庁が配当所得と認定した個人の所得であつても、それ
が国税徴収法三九条に規定する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」に該当
することは、当然ありうることであつて、同一の資産の譲渡が一方では右法条に該
当し、他方では個人の配当所得に該当することに何らの矛盾はないというべきであ
る。
これを本件についてみるに、前記当事者間に争いのない事実と成立に争いのない乙
第四、五号証、証人Eの証言並びに弁論の全趣旨によれば、原告は昭和三六年四月
ころ滞納会社の全株式を取得し、以後同社のいわゆる一人株主として実質上その単
独支配権を有するようになつたこと、滞納会社は昭和三六年一〇月二五日その所有
する港区<地名略>所在の宅地を代金八五、〇〇〇、〇〇〇円で売却し、右代金は
すべて原告が受領して、その利益金につき一部を同社の役員に対して分配しあるい
は負債の返済等にあてたほかは、残額二六、四七八、九四〇円についてこれを同社
の財産に帰属させず、すべて原告個人において取得したことが認められる。右認定
事実によれば、右売却代金は元来すべて滞納会社に帰属すべきものであるから、同
社の一人株主であり実質上の単独支配権者である原告個人の所有となつた前記二
六、四七八、九四〇円は、原告がその株主たる地位に基づき滞納会社からその資産
につき無償の譲渡を受けたものと解すべきである。
そして以上によれば、滞納会社に対する源泉所得税の納税告知処分あるいは原告に
対する所得税更正処分において、右の二六、四七八、九四〇円が原告の配当所得と
されたことは前記のとおり当事者間に争いがないけれども、右事実が前認定の妨げ
となるものでないことも明らかである。
2 そこでさらにすすんで本件処分が所定の他の要件を満たしているか否かについ
て検討する。
前出乙第四号証、いずれも成立に争いのない乙第一号証及び第三号証、証人Eの証
言と弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙第七号証、同証言並びに弁
論の全趣旨を総合すると、本件処分がなされた昭和四一年一月三一日現在における
滞納会社の国税滞納状況は別紙目録記載のとおりであり、その合計額は未確定延滞
税を除き一八、七四六、〇二〇円であること、滞納会社は当時まつたく事業活動を
行なつておらず、またその所有に属する財産はわずか電話加入権一本があるのみで
あつて、他には何らの財産も有していないこと、他方、原告が前認定の滞納会社の
全株式を取得した昭和三六年四月ころは、滞納会社は、前認定の売却にかかる宅地
を所有しており、その時価は約八五、〇〇〇、〇〇〇円と評価されるものの、他に
は見るべき財産がなかつたこと、したがつて、右土地の売却利益から負債の返済等
にあてた残額である前記二六、四七八、九四〇円につき、滞納会社が原告に無償で
譲渡したこと(右譲渡が昭和三六年一一月二〇日ころなされたことは前記のとおり
当事者間に争いがない。)により、同社は前記のとおり何ら見るべき財産を有しな
くなつたものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。
右認定事実によれば、滞納会社は、本件処分時たる昭和四一年一月三一日当時にお
いて、その滞納にかかる前認定の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収す
べき額に不足すると認められる場合であり、かつその不足すると認められることが
右の国税については法定納期限の一年前の日以降に滞納会社がその財産につき原告
に対じて行なつた前記二六、四七八、九四〇円の無償の譲渡に基因するものである
ということは明らかというべきである。
3 以上によれば、別紙目録2ないし6の滞納国税についてなされた本件処分は国
税徴収法三九条、同法施行令一四条所定の要件を満たしているということができる
ところ、原告が右金員の譲渡を受けた当時滞納会社のいわゆる一人株主であつたこ
とは、前記認定のとおりであつて、原告は、同法施行令一三条一項五号に規定する
同族会社の判定の基礎となつた株主である個人に該当し、同族会社たる滞納会社の
「親族その他の特殊関係者」(同法三九条)であるから、したがつて原告は前記の
金員の無償譲渡により受けた利益の限度において前記の滞納国税についての第二次
納税義務を負うものといわなければならない。
そこで原告の右第二次納税義務の納付限度額について検討すると、原告が滞納会社
から無償で取得した金額が二六、四七八、九四〇円であることは前記認定のとおり
であり、弁論の全趣旨によれば、原告は、右金員が原告の配当所得とされることに
より源泉所得税二、六四七、八九四円を課税され、さらに更正処分により所得税が
一二、六三六、〇八〇円増加したことが認められるから、原告が前記の金員の譲渡
により受けた利益は、前記二六、四七八、九四〇円から右各課税額二、六四七、八
九四円及び三、六三六、〇八〇円を控除した二〇、一九四、〇〇〇円(千円未満切
捨)となる。
三 以上の次第であるから、滞納会社の滞納にかかる別紙目録2ないし6の国税に
ついて、被告が原告に対しなした二〇、一九四、〇〇〇円を納付限度額とする本件
処分は適法というべきであつて、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却する
こととし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用し
て、主文のとおり判決する。
別紙(省略)

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