弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
         理    由
 本件抗告の趣意は、弁護人遠山泰夫名義の抗告申立書に記載されたとおりである
から、これを引用する。
 所論は、要するに、原決定は、原審弁護人が控訴の申立てをしたのち、これを知
らないで上訴放棄申立書を提出した被告人の行為に控訴取下げの効果を認めたが、
上訴の放棄が上訴の申立て前に裁判の確定を求める行為であるのに対し、上訴の取
下げは上訴の提起後原裁判の確定を求める行為であつて、両者は性格、行うべき訴
訟の段階を異にする別異の行為であること、上訴の放棄及び上訴の取下げはいずれ
も被告人から上訴審での救済の途を閉ざす重大な不利益をもたらす行為であり、ま
た、その故に要式行為とされていることに照らすと、上訴放棄申立書の提出に上訴
取下げの効果を認めるようなことは許されないのに、これを認めた原決定は国民の
裁判を受ける権利を保障した憲法三二条に違反するものであるから、その取消しを
求める、というのである。
 そこで、検討すると、上訴の放棄及び上訴の取下げがいずれも原裁判を確定させ
上訴審において審判を受ける機会を失わせる訴訟上重大な意味を持つ行為であるこ
と、そのため、これらの行為が慎重に行われかつ申立てをした者の意思が明確に認
識できるように、上訴放棄の申立ては常に書面をもつてなすべきものとされ(刑訴
法三六〇条の三)、上訴取下げの申立ては書面又は公判廷において口頭でなすべき
ものとされていること(刑訴規則二二四条)、上訴の放棄が上訴の申立て前になさ
れるものであるのに対し、上訴の取下げは上訴後になされるものであることはいず
れも所論のとおりである。また、上訴放棄の申立ては原裁判所にしなければならな
いのに対し(刑訴規則二二三条)、上訴取下げの申立ては上訴裁判所になすべきも
のとされている(刑訴規則二二三条の二第一項)。しかしながら、上訴の放棄も上
訴の取下げも上訴審での再度の審判を望まず原裁判の確定を求めるという目的の点
では一致しており、上訴の放棄又は取下げのうちいずれの方法によるべきかは、た
だ既に上訴の申立てがなされているか否かのみにより決まるものであること、被告
人が上訴審での再度の審判を望まず原裁判の確定を求める趣旨の申立書を提出した
ときには、記載の不備や字句にあまり拘泥せず、既に上訴の申立てがあつたか否か
により上訴の放棄又は取下げとして扱うのが上訴の放棄又は取下げの<要旨>制度が
設けられた趣旨に合致すると考えられること等に鑑みると、被告人又は被告人のた
めに上訴をなしうる者が上訴をしたのち、被告人が上訴放棄申立書を提出し
たときには、被告人が既に上訴の申立てがあつたことを知つていたか否かを問わ
ず、該申立書の提出に上訴取下げの効果を認めるのが相当である。そして、その
際、該上訴放棄申立書の宛先として原裁判所が記載され、本来上訴取下げの申立書
に宛先として記載されるべき上訴裁判所が宛先として記載されていなかつたとして
も、そのことは上訴放棄申立書の提出に上訴の取下げとしての効果を認めることの
妨げとはならないものというべきである。そうすると、原審弁護人が控訴申立書を
原裁判所に提出したのち、被告人が右事実を知らないで原裁判所に宛てた上訴放棄
申立書を在監中の監獄の長に提出した行為に控訴取下げの効果を認めた原決定の判
断は正当であり、何ら被告人の裁判を受ける権利を侵害するものではないから、原
決定が憲法三二条に違反するとの所論は失当である。
 よつて、本件抗告は理由がないから刑訴法四二六条一項後段によりこれを棄却す
ることとし、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 海老原震一 裁判官 杉山英巳 裁判官 浜井一夫)

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