弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人A、同Bに関する無罪部分を除きその余の部分を破棄す
る。
     被告人A、同Cを各懲役一年六月に、同Bを懲役一年に各処する。
     但し被告人等三名に対し三年間右各刑の執行を猶予する。
     被告人Cから金一万円、同Bから金五千円を各追徴する。
     検察官の被告人A、同Bに対する各控訴は、これを棄却する。
     当審における訴訟費用(証人Dに支給した分)は被告人Bの負担とす
る。
         理    由
 被告人Bの升展人桑原五郎、被告人Aの弁護人宮地憲三、同鈴木惣三郎、被告人
Cの弁護人三宅清同岡田俊男の各控訴の趣意は記録編綴の各作成名義控訴趣義書記
載のとおりであり、検察官の控訴の趣意は記録編綴の原審検察官高橋道玄作成名義
控訴趣意書及び当審検察官平井卓二作成名義控訴趣意補充書各記載のとおりである
から、ここにこれを引用する。
 これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
 検察官の論旨について
 <要旨>住民票が刑法第一五七条第一項に所謂権利義務に関する公正証書に該当す
るか否かは一にそれが権利義務の得喪変更に関する事実の存在を証明する効
力を有するものであるか否かによつて決せらるべきものであること洵に所論のとお
りである。しかし乍らここに所謂権利義務の得喪変更に関する事実とは、所論のご
とくその事実が権利義務の得喪変更に何等かの関係を有すれば足りると解すべきで
はなく、権利義務の得喪変更に関する事実それ自体を意味するものと解すべきであ
る。而して住民登録法の諸規定を通覧すれは住民票は市町村の住民を登録すること
によつて住民の任所の所在、その期間、住民たる資格、世帯の構成など現実の居住
関係に基づく諸事実を公証するに止ることか明瞭であつて、以上公証の対象たる事
実はそれ自体としては権利義務の得喪変更に関する事実とは到底謂いがたいのであ
る。住民票は此の点において刑法第一五七条第一項に所謂権利義務に関する公正証
書に該当しないこと明らかであるというべきである。右と同一の結論を採つた原判
決は結局相当であつて何等所論のごとく法令の適用を誤つた違法はなく論旨は理由
がない。
 被告人Bの弁護人桑原五郎、被告人Cの弁護人三宅、清、同岡田俊男の各論旨に
ついて
 各所論は被告人B、同Cにつき原審量刑の不当を主張するものである。よつて記
録を検討するに、原判示各犯行の態様罪質等から見るとその犯情軽視し得ないもの
があること勿論てあるが、他面記録によつて認められる右被告人両名が本件各犯行
を為すに至つた経緯、犯行当時における被告人両名の年令、従来の素行、犯行後の
生活態度、改悛の情況、家庭の情況、被告人両名共本件の為昭和三一年八月三一日
附を以て広島市事務員を徴戒免職となつていること、未だ前科のないことその他記
録にあらわれた諸般の情状を考察すれば被告人両名に対しては刑の執行を猶予し更
生の機会を与えることが相当であると思料される。論旨は理由がある。
 被告人Aの介護人宮地憲三、同鈴木惣三郎の論旨について
 所論は被告人Aにつき原審量刑の不当を主張するものである。よつて記録を検討
するに、原判示犯行の態様、罪質等から見るも本件罪清は悪質であると認められる
のみならず、相被告人となつている年若い二人の公務員を利欲を以て誘ない原判示
第一の犯行にひき入れ、その一生を誤まらしめた責任、被告人が原判示第一の犯行
につき終始遁辞的な弁解を試み反省の色の認めがたい点などをも併せ考えると原審
が被告人に臨むに徴役は一年六月の実刑を以てし峻厳な態度を示したことは一応首
肯し得られないではないが、他面記録によつて認められる原判示第一の犯行の動機
原因、第四の犯行による被害の既に回復せられていること、当裁判明の量定する和
被告人両名の刑との均衡、被告人に未だ前科のないこと、その他記録にあらわれた
諸般の情状を考察すれば被告人を徴役一年六月の実刑に処し刑の執行猶予を与えな
かつた原審の量刑は酷に失するものと認められる。論旨は理由がある。
 以上説明のとおり検察官の被告人A、同Bに対する本件控訴はいづれも理由がな
いから刑事訴訟法第三九六条に則り之を棄却すべきものとし、被告人等の本件各控
訴はいづれも理由があるから同法第三九七条第一項第三八一条に従い原判決中被告
人A、同Bに関する無罪部分を除きその余の部分を破棄し同法第四〇〇条但書に従
い当裁判所において更に判決すべきものとする。
 原審の認定した右関係事実に法律を適用するに被告人三名の原判示第一の所為中
有印公文書偽造の点は刑法第一五五条第一項第六〇条に、同行使の点は同法第一五
八条第一項第一五五条第一項第六〇条に、公正証書原本不実記載の点は同法第一五
七条第一項第六〇条罰金等臨時措置法第二条第三条(懲役刑選択)に、同行使の点
は刑法第一五八条第一項第一五七条第一項第六〇条罰金等臨時措置法第二条第三条
(懲役刑選択)に、被告人B、同Cの原判示第二、第三の加重収賄の点は刑法第一
九七条の三第二項に、被告人Aの原判示第四の詐欺の点は同法第二四六条第二項に
夫々該当するところ、前記有印公文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載、同行
使の間には順次手段結果の関係があるから同法第五四条第一項後段第十条に則り夫
々重い偽造有印公文書行使の罪の刑を以て処断すべく、之と前記加重収賄、詐欺と
は夫々同法第四五条前段の併合罪であるから同法第四七条第一〇条に則り被告人A
については重い偽造有印公文書行使罪の刑に被告人C、同Bについては重い加重収
賄罪の刑に夫々併合罪加重を為し九刑期範囲内で被告人A、同Cを各懲役一年六月
に、同Bを徴役一年に処しいづれも情状右各刑の執行を猶予するを相当と認めるか
ら同法第二五条を適用し被告人三名に対し本裁判確定の日より三年間右各刑の執行
を猶予することとし、被告人B、同Cの各収受した原判示第二第三の冬賄賂はいづ
れもこれを没収することが出来ないから同法第一九七条の四を適用して其価額を追
徴すべきものとし当審における訴訟費用(証人Dに支給した分)は刑事訴訟法第一
八一条第二項本文に従い被告人Bをして之を負担せしむべきものとする。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 村木友市 判事 渡辺雄 判事 藤間忠顕)

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