弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告は,原告P1に対し,80万円を支払え。
2被告は,原告P2に対し,50万円を支払え。
3原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,被告と原告P1との間に生じたものについてはこれを
10分し,その9を原告P1の負担とし,その余を被告の負担とし,
被告と原告P2との間に生じたものについてはこれを10分し,その
9を原告P2の負担とし,その余を被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告らに対し,それぞれ,社員就業規則(郵人事第1-5号平成
19年10月1日施行)別表第2の「深夜勤」勤務(ただし,社員就業規則に
基づく「社員勤務時間・休暇手続」(郵人事第3-4号同日施行)の別記2
の例によるもの)に従事する義務のないことを確認する。
2被告は,原告らに対し,それぞれ,前項記載の「深夜勤」勤務を指定しては
ならない。
3被告は,原告P1に対し,505万円及び平成20年9月3日以降,第1項
記載の「深夜勤」勤務に従事させるごとに1回につき5万円の割合による金員
を支払え。
4被告は,原告P2に対し,250万円及び平成20年9月3日以降,第1項
記載の「深夜勤」勤務に従事させるごとに1回につき5万円の割合による金員
を支払え。
第2事案の概要
本件は,被告の設置する支店(郵便局)に勤務している原告らが,被告に対
し,憲法25条等に基づき,被告の就業規則等に定める一定の深夜勤務に従事
する義務のないことの確認及び同深夜勤務の指定の差止め,並びに,既に同深
夜勤務を指定されて就労したことによって精神疾患に罹患する等の損害を被っ
たとして,債務不履行(安全配慮義務違反)又は不法行為(人格権の侵害)に
基づき,損害金(慰謝料)として,本訴状送達の日の翌日である平成16年1
0月19日以降の各原告に対する同深夜勤務の指定1回あたり5万円(平成2
0年9月2日までに,原告P1は101回,同P2は50回それぞれ指定され
た。)の支払を求めた事案である。
なお,本件は,当初,日本郵政公社(以下「公社」という。)を一方当事者
とする訴えであったが,平成19年10月1日に公社が解散し,その本件訴訟
上の地位を被告が承継したことに伴い,平成20年10月7日の本件第20回
口頭弁論期日において,前記第1のとおり,訴えの変更がされたものである。
1前提となる事実(争いのない事実又は各項の末尾に示した証拠等により容易
に認定できる事実である。)
(1)当事者等
ア被告等
(ア)被告は,郵政民営化法(平成17年法律第97号)等により,公社
が解散したことに伴って新たに設立された,郵便事業を目的とする株式
会社である。
すなわち,郵政民営化法(平成17年法律第97号),日本郵政株式
会社法(平成17年法律第98号),郵便事業株式会社法(平成17年
法律第99号),郵便局株式会社法(平成17年法律第100号),独
立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法(平成17年法律第10
1号)及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
(平成17年法律第102号)が平成19年10月1日に施行されたこ
とにより,公社は同日において解散し,一方,日本郵政株式会社,郵便
事業株式会社(被告),郵便局株式会社,郵便貯金銀行,郵便保険会社
(以下「承継会社」という。)及び独立行政法人郵便貯金・簡易生命保
険管理機構が設立され,承継会社等は同日において郵政民営化法163
条3項の認可を受けた実施計画(以下「承継計画」という。)において
定められた業務等を公社から承継した(同法166条1項)。
また,公社の解散の際現に公社の職員であった者は,別に辞令を発せ
られない限り,同日において,承継計画において定めるところに従い,
承継会社のいずれかの職員となるものとされた(同法167条)。
(乙156,弁論の全趣旨)
(イ)公社は,平成15年4月1日,総務省に置かれる郵政事業庁の所掌
に係る事務を一体的に遂行する国営の新たな公社として,独立採算制の
下,信書及び小包の送達の役務,簡易で確実な貯蓄,送金及び債権債務
の決済の手段並びに簡易に利用できる生命保険を提供する業務,当該業
務を行うための施設その他の経営資源を活用して行う国民生活の安定向
上及び国民経済の健全な発展に資する業務等を総合的かつ効率的に行う
ことを目的として設立された法人である(中央省庁等改革基本法33条
1項,日本郵政公社法1条,2条,なお,郵政事業庁は,平成13年1
月6日,中央省庁再編により,郵政省から再編され,郵便事業,郵便貯
金事業,簡易生命保険事業等を行っていた国の機関である。)。
公社の平成15年4月1日当時の常勤職員数は,28万0042人で
あった。
イ原告ら等
(ア)原告P1
原告P1は,昭和▲年▲月生まれの男性である。
原告P1は,昭和46年8月,郵政省(当時)に入省し,日本郵政公
社職員を経て,平成19年10月1日,郵政民営化法167条及び承継
計画に従い,被告の従業員(一般職)となった。
(イ)原告P2
原告P2は,昭和▲年▲月生まれの男性である。
原告P2は,昭和49年10月,郵政省(当時)に入省し,日本郵政
公社職員を経て,平成19年10月1日,郵政民営化法167条及び承
継計画に従い,被告の従業員(一般職)となった。
(ウ)労働組合
公社の職員等が構成員となっていた労働組合には,平成15年当時,
全逓信労働組合(その後,名称が「日本郵政公社労働組合」と変更され
た。以下「全逓」という。),全日本郵政労働組合(以下「全郵政」と
いう。)等があり,全逓と全郵政を合わせた組合員数は,当時,公社の
職員の約8割を占めていた。
全逓(日本郵政公社労働組合)と全郵政は,平成19年10月22日,
両労働組合を統合することで合意し,承継会社の従業員で構成される新
たな労働組合として,日本郵政グループ労働組合(以下「JP労組」と
いう。)を結成した。
原告らは,いずれも,全逓(日本郵政公社労働組合)及びJP労組に
所属している。
(2)被告の従業員の勤務時間の概要等
ア社員の勤務時間に関する規則・手続の根拠規定
被告は,「社員就業規則」(平成19年10月1日郵人事第1-5号。
以下「就業規則」という。)及び「社員の勤務時間・休暇手続」(平成1
9年10月1日郵人事第3-4号。以下「社員勤務時間・休暇手続」とい
い,就業規則と併せて「就業規則等」ともいう。)において,従業員の勤
務時間・休暇及びこれらの取扱いに関する手続を規定している。
(乙141,142)
イ原則的形態
(ア)勤務時間
勤務時間は,1日について原則8時間,4週間について1週平均40
時間であるが(就業規則43条1項),支店(集配センターを含む。)
に勤務する社員については,4週間の勤務時間が1週平均40時間を超
えない範囲内において,特定の日における勤務時間について8時間を延
長又は短縮することもできる(同条2項)。
(イ)休息時間
休息時間は,原則として,勤務4時間中に15分を勤務の途中に設け
ることができるものであるが,所属長が業務の特殊性に応じて必要があ
ると認めるときは,これを超えて休息時間を設けることができるとされ
ている(就業規則44条2項)。
ただし,休息時間は,勤務時間に含まれ,与えられなかったとしても,
繰り越されないとされている(同条3項)。
(ウ)休憩時間
休憩時間は,労働基準法34条の規定によるものであり,6時間を超
える勤務時間の場合は45分を,8時間を超える勤務時間の場合は1時
間を,勤務時間の途中に設けるとされている(就業規則45条1項)。
また,休憩時間は,勤務時間に含まれず,予め指定された時間帯に付
与されなかった場合は,振り替えて付与されることとなっている(同条
4項)。
ウ勤務の指定
(ア)服務表
所属長は,業務運行等を勘案し,服務表を作成することとなっており,
服務表においては,①勤務の種類並びに始業時刻及び終業時刻,②休憩
時間を設ける方法,③休息時間を設ける方法,④週休日を設ける方法,
⑤非番日を設ける方法及び⑥勤務の種類の組合せ方法について定めるこ
ととされている(就業規則48条1項)。
このうち,「勤務の種類並びに始業時刻及び終業時刻」は,従業員が
所属する組織ごとに適用される勤務の種類並びに始業時刻及び終業時刻
から,各組織ごとの業務運行に必要な勤務の種類並びに始業時刻及び終
業時刻を定めることとなる(就業規則49条1項)。
なお,具体的な始業時刻及び終業時刻については,就業規則各別表に
定める勤務の種類ごとの始業時刻及び終業時刻を繰り上げ又は繰り下げ
ることができることとされている(就業規則別表第1及び別表第2)。
服務表の作成あるいは変更については,各組織において,関係労働組
合支部等との団体交渉等を行い,実施予定日の1週間前までに関係従業
員に周知することとなっている(社員勤務時間・休暇手続10条4項)。
(イ)勤務指定
個々の従業員に対する勤務の指定は,4週間を単位として,当該従業
員の各日の勤務の種類等を指定し(就業規則49条1項),当該期間の
1週間前までに関係社員に周知することとなっている(社員勤務時間・
休暇手続11条1項)。
その際,実際に指定される勤務の種類は,上記(ア)により作成された
服務表に定める勤務の種類である。
エ深夜帯における勤務指定等
(ア)深夜帯勤務の種類
被告の支店(集配センターを含む。)における一般職の深夜帯勤務の
種類の概要は以下のとおりである。
(乙141,142)
a深夜勤
原則として暦日をまたいで1日分の勤務を行う深夜帯の勤務をいい
(「ふかやきん」と呼称されている。),基本的な形態として,始業
時刻を午後9時,終業時刻を翌日午前8時とする勤務(10時間拘
束)である「10深夜勤」と,始業時刻を午後10時,終業時刻を翌
日午前6時45分とする勤務(8時間拘束)である「8深夜勤」とが
ある。
なお,具体的な始業時刻,終業時刻については,一定の幅で繰り上
げ又は繰り下げが可能であるとされている。
b新夜勤
深夜勤と他の短時間勤務の2つの種類の勤務形態を組み合わせて,
2日分(14時間又は15時間)の勤務を指定する深夜帯の勤務をい
い(「ニューやきん」と呼称されている。),組み合わせる2つの勤
務の間(以下「勤務開放時間」という。)が原則として2時間空けら
れる。
新夜勤として組み合わせる勤務の種類及び勤務と勤務の組合せ方法
は,就業規則別表第2(本判決の別紙①-1),別記(本判決の別紙
①-2)のとおりである。
c調整勤務
新夜勤は,2つの種類の勤務形態を組み合わせた,2日分の勤務で
あるから,本来は,合わせて16時間勤務しなければならないもので
あるが,新夜勤として組み合わせられる2つの勤務の合計時間が14
時間又は15時間であり,正規の勤務時間には2時間又は1時間不足
することとなる。この不足時間について,他の日の勤務で調整するこ
ととし,そのために設けたのが「調整勤務」である。
就業規則別表第2のうち,「調整」を冠した勤務の種類がこれに該
当するが,その中には,始業時刻を午後9時,終業時刻を翌日午前7
時とする「調整深夜勤A」,始業時刻を午後9時,終業時刻を翌日午
前8時とする「調整深夜勤B」,始業時刻を午後7時,終業時刻を翌
日午前6時とする「調整深夜勤C」などがある。
(イ)深夜帯勤務の連続指定方法(勤務パターン)
被告は,支店に勤務する従業員(一般職)に対し,深夜勤(「10深
夜勤」,「8深夜勤」)のみを,日勤や他の調整勤務と併せることなく,
単独で連続して勤務を指定することもでき,回数制限はない。
実際に従業員に対し指定する勤務の種類は,各支店において作成した
服務表に定められた勤務の種類であるが,その指定パターンは,社員勤
務時間・休暇手続別記1ないし3(本判決の別紙②)のとおりである。
また,支店によって,深夜勤を導入している支店,深夜勤及び新夜勤
を併用して指定する支店,深夜勤を導入せず,新夜勤のみを指定する支
店,そもそも深夜帯の勤務を要さない支店も存在し,全支店が一律に同
じ勤務形態となるものではない。
(乙141,142,弁論の全趣旨)
(3)労働協約
ア公社との労働協約
公社は,全逓(日本郵政公社労働組合)との間で,平成15年9月26
日,勤務時間及び週休日等に関する協約等の一部改定について,前記(2)
と同一の内容を含む「勤務時間及び週休日等に関する協約」等の一部改正
に関する協約等(以下「公社協約」という。)を締結した。また,公社は,
全郵政との間でも同旨の協約を締結した。
これをふまえ,公社は,同年11月21日,「郵便事業における効率的
な服務方法の実施」として,「日本郵政公社職員勤務時間,休憩,休日及
び休暇規程運用細則」(以下,単に「運用細則」というほか,改正前の運
用細則を「旧運用細則」といい,改正後の運用細則を「新運用細則」とい
う。)を公社協約と同一内容に改定し,平成16年2月8日より施行した。
(乙2,3)
イ承継会社との労働協約
日本郵政株式会社は,郵政民営化法171条に則り,全逓(日本郵政公
社労働組合)と団体交渉を行い,平成19年8月27日,前記(2)と同一
の内容を含む「社員の勤務時間・休暇に関する協約」及び「『社員の勤務
時間・休暇に関する協約』附属覚書」(以下,これらを併せて「旧協約」
という。)を締結した。
また,被告は,JP労組との間で,同年10月22日付けで,前記(2)
と同一の内容を含む「社員の勤務時間・休暇に関する協約」及び「『社員
の勤務時間・休暇に関する協約』附属覚書」(以下,これらを併せて「本
件協約」という。)を締結した。
(乙136ないし139,141,142,弁論の全趣旨)
(5)原告らの「深夜勤」及び疾病の発症等
ア原告P1
(ア)原告P1は,平成16年2月当時,公社のα国際郵便局(東京都千
代田区<以下略>に所在した。以下「旧局」という。)国際エクスプレ
スメール(以下「EMS」という。)課に所属し,平成17年10月以
降,東京都江東区<以下略>に移転した公社のα国際郵便局(後に承継
会社のα国際郵便局となる。以下「新局」という。)EMS・小包郵便
課に所属し,いずれも局内において,業務に従事している。
原告P1は,平成16年2月から平成19年9月まで,公社から10
1回の連続深夜勤の指定を受け,連続深夜勤をした。
(イ)原告P1は,平成19年3月16日,P3病院を受診したところ,
うつ病に罹患しており,同日から自宅静養を要する旨の診断を受けた。
その後,原告P1は,2か月間の自宅静養の後,勤務に復帰したが,深
夜帯の勤務を避けるよう医師から指示を受けている。
(甲70の1及び2,71,原告P1本人)
イ原告P2
(ア)原告P2は,平成16年2月当時,公社のβ郵便局(東京都台東区
<以下略>に所在する。)郵便課に所属し,局内において,業務に従事
している。
原告P2は,平成16年2月から平成19年9月まで,公社から55
回の連続深夜勤の指定を受け,連続深夜勤をした。
(イ)原告P2は,平成18年11月24日,P3病院を受診したところ,
「うつ状態」であり,2か月間は自宅静養を要する診断を受けた。その
後,原告P2は,2か月間の自宅静養の後,勤務に復帰したが,深夜帯
の勤務を避けるよう医師から指示を受けている。
(甲66,69の1ないし3,75の1ないし3,原告P2本人)
2争点
(1)本件協約の効力
(2)連続「深夜勤」指定の違法性
(3)連続「深夜勤」に従事したことについての損害賠償請求権の有無
(4)連続「深夜勤」指定の差止請求権の有無
3争点に関する当事者の主張(要旨)
(1)争点(1)(本件協約の効力)について
(被告の主張)
公社協約,旧協約及び本件協約のいずれも全逓(日本郵政公社)又は及び
JP労組の適切な内部の意見集約の上に締結されたものであり,その集約過
程に何ら瑕疵はなく,締結された目的がことさら原告らのみに不利益を課そ
うとするところにあったともいえない。定期全国大会においても,原告らと
同様の意見が表明された上で執行部に対応を一任することが承認されている
のであって,原告らは,単に自分たちの意見どおりにならなかったことや検
討期間が短かったことに対する不満を述べているにすぎない。
また,労働協約の効力を検討するについては手続的側面のみを検討すべき
であるが,仮に内容の合理性を問題とするとしても,深夜勤の連続指定は何
ら不合理なものではない。
したがって,公社協約,旧協約及び本件協約は,そのいずれにも同意して
いない原告らに対しても効力(拘束力)を有するというべきである。
(原告らの主張)
公社,日本郵政株式会社又は被告との労働協約の締結・承継に際して,全
逓(日本郵政公社労働組合)及びJP労組内部の意見集約に決定的な瑕疵が
あった。
すなわち,当局の平成15年1月31日の提案から全逓の平成15年6月
の定期全国大会までの間,組合内の論議は本部と地方本部止まりであった。
この間,該当職場の分会組合員には情報が何も伝えられなかった。同年5月
19日付け定期全国大会議案書を手にして初めて原告らは,郵便職場の本務
者にも深夜帯10時間ないし8時間勤務の「深夜勤」が1勤務指定期間内に
8回も可能となり,そのほぼ全てが2,3,4回の連続指定で,従来の深夜
帯勤務回数制限(4週5回)も廃止されることを知った。そして,同年6月
の定期全国大会まで,分会レベルからの意見集約は一切なされなかった。
同定期大会で,全逓本部は,原告ら郵便分会の組合員が最も大きな被害を
被る連続「10深夜勤」指定(4週間に最高8回)と夜勤回数制限撤廃につ
いては反対しない「基本交渉スタンス」に基づき,今後は「地本書記長会議
等との往復運動を前提に,交渉の到達水準を確保できた場合の妥結判断につ
いて,中央執行委員会に一任していただく」とし,これが大会で承認可決さ
れた。ここでも,直接被害を被る当該職場からの意見集約は度外視された。
その後も,原告らの職場(分会)からの意見集約は一切なかったし,公社
に対する要求にも,その後の協約(公社協約)にも,「深夜勤」導入により
決定的な被害を被る原告ら職場の組合員の切実な要求は,全く反映されなか
った。
このように,現場の意見を全く無視するという態度は,旧協約及び本件協
約の締結の際においても,同様であった。
加えて,公社協約,旧協約及び本件協約のいずれも,連続深夜勤指定を認
めるものであり,その内容は極めて不合理である。
したがって,公社協約,旧協約及び本件協約は,そのいずれにも同意して
いない原告らに対し効力(拘束力)を有しないというべきである。
(2)争点(2)(連続「深夜勤」指定の違法性)について
(原告らの主張)
本件「深夜勤」の一番の危険性は,作業の負担の重い重労働に,仮眠のと
れない深夜帯労働として何夜にもわたって連続的に従事させられること自体
の心身への悪影響の大きさに加え,この連続する深夜帯勤務が,「完全不規
則」交替制ともいうべき,被告の不規則交替制勤務の中に織り込まれており,
この勤務時間の不規則性によって,連続深夜帯労働によって受けるダメージ
(概日リズムの狂い,睡眠不足,疲労の蓄積)が破滅的ともいうべき程度に
まで拡大・悪化させられ,過労死等に追い込むということである。
このような連続「深夜勤」の勤務指定を可能とする就業規則等の規定は憲
法13条,18条,25条及び国際人権規約A規約7条に反し,無効である
ともに,「連続する深夜勤」等の勤務指定は憲法の前記諸規定及び国際的な
人権規定に明確に反する違憲違法な所為である。
さらに,公社又は被告の「連続する深夜勤」等の勤務指定は,安全配慮義
務にも違反しており無効である。
(被告の主張)
「深夜勤」が作業の負担の重い重労働ではないし,仮眠がとれないという
こともない。
深夜交替制勤務に関し,「概日リズム」を生理学的に示す論文は多いが,
交替制勤務と健康障害との関連を実証的に扱った論文はほとんどなく,過労
により人間の生体リズムが崩壊して生命維持機能が破綻をきたし,致命的極
限状況をもたらす危険を有するという根拠は定かではない。
特に,夜間勤務を行う前の健康状態,年齢,夜間の勤務時間,経験年数等
により個人差もあるから,深夜勤により疲労が蓄積され,過労により生命維
持機能が破綻し,致命的極限状況をもたらすものとはいえないものであり,
まして,夜勤によりストレスが生じるという科学的根拠もないことから,原
告らの推論に過ぎないものである。
したがって,連続「深夜勤」の勤務指定を可能とする就業規則等の規定が
憲法13条,18条,25条及び国際人権規約A規約7条に反し無効である
とはいえないし,「連続する深夜勤」等の勤務指定が憲法の前記諸規定及び
国際的な人権規定に明確に反する違憲違法な所為であるともいえない。
さらに,公社又は被告の「連続する深夜勤」等の勤務指定は,安全配慮義
務にも違反していない。
(3)争点(3)(連続「深夜勤」に従事したことについての損害賠償請求権の有
無)について
(原告らの主張)
原告らは,それぞれ「深夜勤」の負担の大きさに苛まれながら,いずれも
体調の不良,精神疾患の発症などの被害を被ってきた。
原告らは,いずれも自宅静養を経て職場復帰したが,現在も薬の服用を続
け,「深夜勤」等の深夜帯の勤務には就いていない。被告において,原告ら
の生命・身体・精神の健康保持(安全)に配慮する意図や意向が,わずかば
かりでも存在するのであれば,連続指定の見直し,仮眠時間の設定,交替制
勤務の見直しという形でいくらでも改善が図れるものである。にもかかわら
ず,そのような「深夜勤」従事者の健康保持のための措置,検討を全く行っ
ていない。
このようにして,原告らが被告により「深夜勤」従事を強いられるという
不法行為又は安全配慮義務違反の行為によって被った被害を慰謝するには,
懲罰的な要素をも考慮し,連続した「深夜勤」指定1回(1セット)にあた
りついて5万円を下らない。
したがって,これまでに101回指定を受けている原告P1については金
505万円,同じく50回の指定を受けた原告P2については金250万円
の損害賠償がなされるべきである。
(被告の主張)
連続「深夜勤」の指定による過労が原因で死亡者が発生したという事実は
ない(過労を原因に公務災害と認定された例はない。)。
また,職員の健康管理については,従来から配慮しているところであり,
深夜勤により死亡につながるものとはいえない。
公社の実施した郵便事業における効率的な服務方法の実施が著しい不利益
なものではなく,かつ,被告は十全な健康管理対策を措置し,十分な代償措
置を講じており,原告らに対し何ら損害を与えたものではないことが明白で
ある。
したがって,原告らの主張する損害賠償請求は理由がないというべきであ
る。
(4)争点(4)(連続「深夜勤」指定の差止請求権の有無)について
(原告らの主張)
前記のとおり,就業規則等(及びこれと同内容の公社の新運用細則)は違
憲違法なものであって無効であり,これに基づく連続「深夜勤」の指定は,
そもそもすることができない。
原告らは,公社に対し連続「深夜勤」勤務を指定しないよう求めたところ,
公社が「これに応じることはできない,もし勤務につかなければ欠務扱いに
する」旨通告してきたことから,やむを得ず,連続「深夜勤」勤務について
いたところ,前記のとおり,うつ病等に罹患してしまったのである。
現時点では,精神科の医師の指示によって,原告らに対する「深夜勤」指
定は行われていない。しかし,今後,療養や薬の効果により,原告らにおい
て,一定程度の回復が見られる場合には,従前の被告の姿勢からして,原告
らに対する「深夜勤」指定を再開することは必死である。そして,原告らは,
再び「深夜勤」による過労死の危険にさらされることになり,その生命や身
体・精神の健康を害される事態となる。
したがって,原告らについては,個人の生命,身体という重大な保護法益
が現に侵害され,または,将来侵害されようとしている具体的な危険がある
場合として,その侵害を排除し,または将来の侵害を予防するために,人格
権に基づき,被告に対し,連続「深夜勤」指定の差止を求めることができる
というべきである。
(被告の主張)
争う。
第3当裁判所の判断
1事実の認定
後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)公社における職員の勤務時間の概要
ア適用法等
公社の職員は,一般職の国家公務員である(日本郵政公社法50条)が,
職員の勤務時間に関する事項については,国家公務員法106条,一般職
の職員の勤務時間,休暇等に関する法律及び人事院規則15-14(職員
の勤務時間,休憩,休日)の各適用が除外されており(日本郵政公社法5
7条1項2号及び8号),公社総裁の定めた勤務時間等規程(乙1)及び
公社人事部門の長の定めた運用細則(乙2,3)によるものとされていた
(日本郵政公社法55条,勤務時間等規程34条)。
また,公社の職員には,特定独立行政法人等の労働関係に関する法律
(以下「特労法」という。),労働組合法,労働基準法等が適用される
(特労法2条3号及び4号,37条1項1号)。このことから,公社は,
職員の勤務時間に関する制定ないし改正を行うに当たっては,関係労働組
合との間で団体交渉を経て,勤務時間等規程又は運用細則の改正を行って
いた(特労法8条)。
イ原則的形態
公社の職員の勤務時間,休息時間,休憩時間については,勤務時間等規
程及び運用細則により定められているが,その規定内容は,被告の従業員
の勤務時間,休息時間,休憩時間に関する就業規則の規定内容(第2の1
(2)イ)と同旨である。
ウ勤務の指定について
公社の各機関の長による服務表の作成及び勤務指定については,勤務時
間等規程及び運用細則により定められているが,その規定内容は,被告の
所属長の服務表の作成及び勤務指定に関する就業規則及び社員勤務時間・
休暇手続の規定内容(第2の1(2)ウ)と同旨である。
エ平成16年2月7日以前の深夜帯の勤務
(ア)勤務形態
郵便関係職員の平成15年当時の深夜帯における勤務形態は,運用細
則に規定されていたが,その種類としては新夜勤(組合せの対象として
の調整勤務,一部の深夜勤を含む。)のみであり,新夜勤として組み合
わせる勤務の種類及び勤務と勤務の組合せ方法は,旧運用細則(乙2)
別表第4,別表第5及び別記1のとおりであった。
また,1勤務指定期間(4週間)中における新夜勤及び調整深夜勤の
勤務回数については,「一人平均5回以内」に制限されていた。
なお,非常勤職員については,単独で勤務を指定する深夜勤があった。
(イ)休息時間の特例
郵便関係職員については,勤務の種類,勤務時間数及び郵便局の規模
等の別に,前記イの休息時間のほかに,旧運用細則(乙2)別表第9の
とおり,特例の休息時間を設けることができるとされ(以下,旧運用細
則別表第9の1項に定める休息時間の特例を「特例休息」という。),
新夜勤で最大72分,夜勤で30分の休息時間が付与されていた。
(ウ)勤務時間の短縮
旧運用細則により,単独計画人員配置(郵便局の各事業(郵便,貯金,
保険,共通)ごとに原則として単独に計画人員が算定され,及び配置さ
れる郵便局)の郵便局に勤務する郵便関係職員又は総合計画人員配置
(単独計画人員配置の郵便局以外の郵便局)の郵便局に勤務する職員に
対する勤務時間の特例措置として,以下のとおり,新夜勤又はその調整
勤務について勤務時間の短縮措置を行っていた(以下,新夜勤制度にお
ける勤務時間の短縮措置を「カット時短」という。)。
a地域区分局等においては,調整勤務から2時間,又は,新夜勤とし
て組み合わせる深夜勤及び調整勤務から各1時間を短縮する。
b地域区分局以外の郵便局については,新夜勤として他の短時間勤務
と組み合わせる深夜勤又は調整勤務のいずれか一方の勤務から,又は,
新夜勤と連続して指定する調整深夜勤から1時間を短縮する。
(2)公社における運用細則の改定(連続「深夜勤」勤務の導入)
ア運用細則改定の背景
(ア)郵便事業の使命
郵便事業の使命は,ユニバーサルサービス(つまり,国民生活,社会
経済活動に不可欠な郵便サービスをなるべく安い料金で,全国あまねく
公平に提供すること)の確保である(郵便法1条)。また,郵便事業は,
独立採算制の下で効率的に経営することとされており(中央省庁等改革
基本法33条1項2号),すなわち,利用者のニーズに応えるサービス
を提供し,その対価をもってコストを補うこととされた。
そして,郵便事業は人力に依存する度合の高い事業で,業務の多くの
部分を人的労働力に頼る必要があることから,費用の多くの部分は人件
費で占められており,「なるべく安い料金」を実現するためには,大量
の郵便物を確保し,また,郵便ネットワークを活用した多様なサービス
を提供するとともに,人件費の抑制・節減に努めることが要請された。
(乙5,108,証人P4)
(イ)公社の郵便事業を取り巻く情勢
a郵便事業は,平成15年4月1日の公社設立以前,独占事業として
経営され,高度経済成長期には,経済成長に比例して郵便物数も伸び
てきていた。また,人件費の増加等により赤字となった場合は郵便料
金の値上げを行ったが,基本的には右肩上がりの需要の中で安定的な
経営を続けてきた。
しかしながら,平成9年度下半期以降の金融機関の破綻を契機とし
た我が国経済の低迷の影響,また,IT化の進展による電子メールや
インターネットのホームページによる請求書,領収書,利用明細など
をお知らせするサービス(eビリング)の普及によって,引受郵便物
数の将来的な市場の見通しとしては,総体的に郵便利用が減少してい
くことが見込まれる状況にあり,その一方で,「民間事業者による信
書の送達に関する法律」による民間事業者の信書送達への参入,民間
宅配・メール便業者との競争激化等をふまえ,独立採算制を維持し,
経営の健全化を図るためには収益の確保と費用の抑制に努め累積利益
を確保するとともに,できるだけ安い料金で継続的に郵便サービスを
提供していくためには,郵便処理の機械化の推進や非常勤職員の活用
等による事業運営の効率化を図り,費用の多くを占める人件費の伸び
の抑制そして削減に努める必要があった。
(乙4ないし6,108,証人P4)
b郵便事業財政については,平成9年度に郵便業務収入が初めて前年
度実績を下回った以降,平成11年度を除き対前年度を下回り続け
(乙6),様々な効率化施策の実施などにより経費の節減を図ったも
のの,平成10年度は625億円,平成11年度は553億円,平成
12年度は100億円と3年連続して赤字を計上した。
その後,平成13年度には80億円の黒字に転じ,平成14年度は
再び225億円の赤字となり,平成15年度は263億円の黒字とな
ったが,約5000億円の債務超過があった。
(乙4ないし6,108,証人P4)
(ウ)効率化施策の実施
a郵便事業新生ビジョン(案)の策定・実施
郵政事業庁は,平成13年3月,新たな公社設立に向け,郵便事業
の今後進むべき方向性の事業改革方針として「郵便事業新生ビジョン
(案)」を策定した(乙9)。
「郵便事業新生ビジョン(案)」には,2年後の平成15年には企
業会計原則の下,より自律的で弾力的な経営を可能とするため,増収
対策やサービスアップ施策に加え,事業財政の改善に必要不可欠な5
か年計画の効率化計画を示しているが,このビジョンの中で,郵便事
業における効率的な服務方法の実施(「常勤職員への深夜勤の指定」,
「新夜勤回数制限の廃止」及び「特例休息及びカット時短の廃止」)
についても,悪化した郵便事業財政を改善するための施策として計画
に盛り込まれた(乙108)。
b中期経営目標・中期経営計画の達成
公社は,日本郵政公社法及び日本郵政公社法施行規則(平成15年
総務省令第4号)に基づき,収益費用,資産,負債等の現在における
状況,将来の見通しを踏まえ,中期の期間(4年)において公社が達
成すべき経営の具体的な目標である「中期経営目標」,この目標を達
成するための公社の経営計画である「中期経営計画」,「収益及び費
用の見通し」及び「資産及び負債の見通し」を策定し,総務大臣の認
可を受けた(乙7,8)。
「中期経営目標」では,郵便事業について,平成15年度から平成
18年度までの4年間の中期経営目標を,①独立採算制の下で経営の
健全化を図るために収益の確保と費用の抑制に努め,積立金(累積利
益)を500億円以上確保する,②できるだけ安い料金で継続的に郵
便サービスを提供していくため,郵便処理の機械化の推進や非常勤職
員の活用等を進め,事業運営の効率化を図り,事業経費率((営業原
価(郵便局において発生する費用)+販売費及び一般管理費(本社等
管理機関の郵便業務を管理する部門において発生する費用))÷営業
収益×100)を98.5%以下とすること等を定めていた(乙7)。
そして,この中期経営目標を達成するためにとるべき措置として計
画された「中期経営計画」において,業務運営の効率化は確実に実行
しなければならないものとされ,人件費及び物件費の抑制等が掲げら
れていた(乙8,108)。
cアクションプランの推進
アクションプランは,中期経営目標を確実に達成するための公社内
部の行動計画であり,平成15年度及び平成16年度の当面2年間の
具体的な行動計画である(乙10)。
アクションプランでは,現在の郵便局ネットワークを維持していく
とともに,事業の将来展望を確かなものにしていくため,小包のシェ
ア拡大に向けたサービスと品質の徹底的な改善を図ることとし,市場
競争力ある料金水準や,集配運送ネットワークの増強,営業体制の整
備,情報システムの高度化等が必要で,こうした競争力を強化し郵便
事業を拡大再生産に持っていくための投資的施策や料金値下げを実施
するためには,その財源が必要であり,中期経営計画(「郵便事業新
生ビジョン(案)」の効率化計画を含む)の前倒しと追加施策により
更なる費用削減を行う必要があった。
なお,アクションプランでは,中期経営計画で予定している施策の
前倒しと追加施策により,平成15及び16年度の2年間合計で更に
人件費約1千5百億円,物件費約900億円の合計約2400億円の
コスト削減策を追加した。この人件費の削減では,営業体制の整備等
に必要な増員を確保しつつも,郵便物処理の機械化・転力化,処理方
法の見直し等により,郵便事業常勤職員を平成15度及び平成16年
度の2年間合計で1万2000人純減することとしていたが,本件郵
便事業における効率的な服務方法の実施による効率化効果についても,
アクションプランに盛り込まれており,その実現に向けて確実に実施
しなければならない施策となっていた(乙108)。
(乙10,108,証人P4)
d高品質なサービスの提供(郵便のスピードアップ)
郵便事業財政の改善を図るためには,事業運営の効率化を推進する
一方で,民間宅配業者と同レベルのサービス改善を図り,顧客により
品質の高い郵便サービスを提供することにより郵便需要を高め増収を
図る必要があった。
郵便の送達速度の向上に対する顧客の強い要望に応えるため,平成
15年5月から「小包」及び「通常(手紙・はがき)」を翌日に配達
する地域を全国的に拡大した。
これは,集配普通郵便局(特定郵便局長を長とする郵便局以外の郵
便物の配達を担当する郵便局)窓口の引受締切時刻(新郵便日数表に
定められた配達日数を約束する最終的な郵便物の引受時刻)を普通通
常郵便物(手紙・はがき)について15時から17時に繰り下げ,普
通小包郵便物について19時から18時に繰り上げ,翌日配達便の増
便等を行うことにより,普通通常郵便物では,東京都区から300㎞
圏であった翌日配達エリアを400㎞圏(一部600㎞圏)まで拡大
し,普通小包郵便物では東京都区から700㎞圏を1000㎞圏にま
でに拡大した。
(乙108,証人P48ページ10行目ないし9ページ24行目,
同23ページ14行目ないし24ページ22行目)。
イ改定後の運用規則等の内容
(ア)勤務時間の改定
a常勤職員(「本務者」ともいう。)への深夜勤の指定(旧運用細則
(乙2)31条,別表第4及び別表第5の改正)
深夜帯の勤務に従事する職員の健康保持と深夜帯における効率的な
業務処理を実施することを目的として,常勤職員の勤務について,被
告の支店の一般職と同様,新夜勤のほか,「10深夜勤」,「8深夜
勤」,「調整深夜勤C」(10時間勤務)及びその服務編成方法(単
独でも連続指定できる等)を追加した(新運用細則(乙3)31条4
項ないし6項,別表第4,別表第5,別記2,別記3及び別記4)。
また,深夜帯における効率的な業務処理を実施するため,1勤務指
定期間当たりの回数制限を撤廃した。
これにより,一つの勤務の始業時刻から終業時刻までの時間数が減
少することとなった。
ただし,実際に職員に対し指定する勤務の種類は,各郵便局におい
て作成した服務表に定められた勤務の種類であって,全郵便局が一律
に同じ勤務形態となるものではなかった。すなわち,郵便局によって,
深夜勤を導入し,新夜勤の指定を見直した郵便局,深夜勤及び新夜勤
を併用して指定する郵便局,そもそも深夜帯の勤務を要さない郵便局
も存在した。
(乙4,108,証人P4)。
b特例休息の廃止(旧運用細則(乙2)8条の改正,別表第9の削
除)
深夜帯における効率的な業務処理を実施するため,特例休息を廃止
した(別表第9の削除)。
cカット時短の廃止(旧運用細則(乙2)21条の削除)
勤務時間の適正な運用と深夜帯における効率的な業務処理を実施す
るため,「新夜勤」実施局において行っていた1時間又は2時間の勤
務時間の短縮について廃止した(乙108,証人P44ページ1行
目ないし15行目,同11ページ7行目ないし13行目,同12ペー
ジ2行目ないし15行目,同55ページ16行目ないし19行目)。
この結果,本来の正規の勤務時間である一週平均40時間,4週1
60時間の勤務時間になった。
(乙108,証人P4)
(イ)新たな勤務条件の設定
a夜間特別勤務手当の改正
(a)常勤職員の深夜勤(8時間の深夜勤・10時間の深夜勤及び調
整深夜勤)の新たな指定と特例休息及びカット時短の廃止に対する
措置として新たな支給区分の追加と支給単価を増額した。
①深夜帯勤務(新夜勤,9時間の調整深夜勤及び深夜勤(10時
間の深夜勤を除く。))についての1回当たりの単価の改正(増
額)は,本件郵便事業における効率的な服務方法の実施前は,1
回当たり1,300円ないし3,200円であったものを,1回
当たり1600円ないし3400円とした。
②10時間の調整深夜勤及び10時間の深夜勤1回当たりの単価
の新設をし,1回当たり1700円ないし3500円とした。
(乙12,108)
(b)深夜勤の連続指定及び深夜帯勤務回数の制限の廃止に対する措
置として新たな支給区分を追加した。
①10時間の深夜勤に4回(8時間の深夜勤に5回)従事した場
合の加算額を新設し,連続指定4回の場合(8時間の深夜勤の場
合は連続指定5回)につき6000円とした。
②深夜帯勤務の回数実績に応じた加算額を新設し,1000円
(3回の場合)ないし8000円(9回を超える場合)とした。
(乙12,108,証人P4)
b新たな休息時間の創設(新運用細則(乙3)8条3項1号)
(a)従事する勤務の種類ごとに,勤務4時間中に15分の休息時間
とは別に,次のとおり,新たな休息時間が付与されることとなった
(新運用細則(乙3)8条3項1号)。
①新夜勤60分
②「8深夜勤」30分
③「10深夜勤」及び「調整深夜勤C」38分
(b)この新たな休息時間の付与により,地域区分局と一般局の深夜
帯勤務に従事する職員の休息時間の格差が解消され,郵便局の規模
によっては,新たな休息時間を付与することとした,新夜勤,10
時間の深夜勤及び8時間の深夜勤については,むしろ従前の勤務よ
りも多くの休息時間が与えられることとなった。
具体的な休息時間は,新夜勤14時間の勤務の場合,勤務4時間
につき15分の割合で付与される一般の休息時間53分に加え,新
たな休息時間60分が付与されたことにより,休息時間は113分
を付与することとなった。
また,「8深夜勤」の場合,勤務4時間につき15分の割合で付
与される一般の休息時間30分に加え,新たな休息時間30分が付
与されたことにより,休息時間は60分を付与することとなり,
「10深夜勤」及び「調整深夜勤C」の場合,勤務4時間につき1
5分の割合で付与される一般の休息時間38分に加え,新たな休息
時間38分が付与されたことにより,休息時間は76分が付与され
ることとなった。
(乙108,証人P4)
c1勤務指定当たりの深夜帯勤務回数の目安の設定
1勤務指定当たりの深夜帯勤務回数の制限廃止に係る措置及び職員
の健康保持と能率維持のため,「10深夜勤」の連続指定の場合は8
回,新夜勤と調整深夜勤を組み合わせて連続指定する場合は6回,
「8深夜勤」の連続指定の場合は10回又は8回という深夜帯勤務の
回数の目安(年末年始繁忙期等を除く。)を新たに定めた。
(乙4,108,証人P4)
d時間外労働の抑制策
(a)新夜勤(ただし,勤務と勤務の間が原則2時間とされているも
のに限る。)の勤務と勤務の間について,時間外労働を命ずること
は自粛するものとした。
(b)深夜帯勤務に連続して服する場合,連続する勤務と勤務の間に
ついて,時間外労働を命ずることは,特殊・発着における緊急事故
への対応等,真にやむを得ない場合を除き,自粛するものとした。
(乙4,108,証人P4)
(ウ)健康管理対策等
a一般的健康管理対策
公社は,労働安全衛生法に基づき,日本郵政公社健康管理規程を定
め,職員の健康管理に必要な事項を定めていた。
そして,郵便局長等の所属長は,健康管理規程に定める事項を適切
に実施し,職員の健康の保持,増進に必要な措置を講ずる責務を有し
(同規程3条),毎年1回定期健康診断を実施するとともに(同規程
24条),健康診断票兼指導票の総合判定の指導区分(同規程21
条)に従い,要療養者については必要な期間休暇を与えて休養させる
こと,要軽業者については必要に応じて勤務場所又は担務の指定変更
を行い,又は健康診断を行った医師の診断書に基づき休暇を与えて1
日の勤務時間を短縮することなど,勤務上必要な措置を行っていた。
また,公社は,夜間交替制勤務者(「新夜勤」「深夜勤」従事者)
について,前記定期健康診断のほか,特別健康診断を実施するととも
に,健康診断の結果,指導区分が「C-1」(「要注意者」の「要医
療」)と決定され,病名,症状が循環器系疾患,代謝障害及び呼吸器
系疾患とされている職員については,所属長又は所属の管理者が個別
に対話をし,その結果に基づいて,必要に応じ,時間外労働及び休日
労働の勤務制限等の指導を行っていた。
(乙98,120)
b運用規則改定に伴う健康管理対策の強化
深夜帯の勤務に従事する職員の健康保持及び健康増進を図るため,
特例として以下のとおり健康管理対策を強化した。
(a)自発的健康診断の経費負担の充実
深夜業を含む業務に従事する職員には,定期健康診断のほか特別
健康診断を実施しているところであるが,当該健康診断のほか,
「深夜業に従事する職員の自発的健康診断」経費について,事業主
負担とするようにした(年度内一回に限る。)。
(b)成人病検診受診の助成の充実
深夜勤従事者の成人病検診受診(35才以上の職員(共済組合員に
限る。)を対象)に係る自己負担分の助成を受診職員全員に実施で
きるようにした。
(乙13,14,108,証人P4)
c疲労回復時間確保のための深夜帯勤務の始終業時刻の設定
勤務と勤務の間の時間は,「10深夜勤」の連続指定の場合は13
時間,新夜勤と調整深夜勤の連続指定の場合は11時間15分,「8
深夜勤」の連続指定の場合は15時間15分として,深夜帯の勤務に
おいて,勤務と勤務の間は一定時間を確保するよう,勤務の始終業時
刻を設定した。
(乙4,108,証人P4)
d深夜勤に従事する職員用の休憩室の確保
郵便局の状況に応じて,深夜勤に従事する職員にも,新夜勤に従事
する職員用の仮眠・横臥のための休憩室(夜間)の利用ができるよう
にした。
(乙4,108,証人P4)
e深夜帯勤務に連続して従事する遠距離通勤者への休憩室の解放
郵便局の状況に応じて,遠距離通勤者等が勤務と勤務の間(新夜勤
の勤務解放時間を除く。)に在局し,仮眠,横臥のため休憩室(夜
間)等を使用できるようにした。
(乙4,108,証人P4)
f自動車通勤者の駐車場の確保
深夜勤に従事する職員の自動車通勤のための駐車スペースについて
は,新夜勤に従事する職員と同様に,公共の交通機関で出・退勤が不
可能な場合,局舎構内に最大限確保し,なお不足する場合は,借上げ
により対処した。
(乙4,108,証人P4)
(3)公社協約の締結過程
ア公社等の提案
(ア)郵政事業庁は,平成13年ころ,関係労働組合に対し,「郵便事業
新生ビジョン(案)」を示していた。
全逓は,同案の「勤務時間の見直し(回数制限廃止と深夜勤導入)」
を含む具体的施策案に含まれている各種効率化施策の許否の判断は第5
5回定期全国大会以降行っていくこととし,第55回定期全国大会,臨
時中央委員会等において,組織内議論を継続していた。
(イ)郵政事業庁は,平成15年1月,全逓及び全郵政を含む関係労働組
合に対し,同月31日付け「郵便事業における効率的な服務方法の実施
について」と題する書面を提示し,就業規則等の改正に係る内容を示し
た(乙15,108)。
この際,郵政事業庁は,改訂後の運用細則等の実施時期について,翌
日配達地域の拡大と併せて実施することとして,同年5月19日以降準
備でき次第として提案していたが,支社・郵便局段階における十分な労
使交渉期間を確保すること及び職員への施策の趣旨・目的の周知期間を
十分に確保し,施策の円滑な実施を図ることという観点から,実施時期
を延期することとした。
(乙108)
イ全逓と公社との交渉等
(ア)全逓は,前記ア(イ)の提案を受け,各地方本部に対し,同年1月3
1日付け機関誌「UI-NET」494号(甲7)により,「郵便事業
における効率的な服務方法の実施について」と題する書面及びそこに盛
り込まれている提案内容を組合員に周知させるよう指示した。
また,全逓は,これに前後して,全組合員に対し,同年1月9日付け
機関誌「ZENET」号外(甲38)及び同年2月22日付け「ZEN
ET」号外(甲37)により,第118回中央委員会の議事内容として,
勤務時間の見直しに関する郵政事業庁の考え方として,「郵便事業にお
ける効率的な服務方法の実施について」の具体的な施策内容として「本
務者への深夜勤指定」や「特例休息の廃止」などについて告知していた。
(甲37,38,弁論の全趣旨)
(イ)全逓は,同年6月18日から同月20日までの3日間,第57回定
期全国大会を開催した。同大会には,大会代議員定数366人中364
人が出席した。
同大会では,「経営ビジョンを確たるものとし,郵政事業の将来を切
り拓くためには,アクションプランの考え方に異を唱えるものではな
い。」,「労働組合にとっては,新たな効率化に向き合うことになるが,
痛みのシェアを具体的な数値として検証し,事業と雇用の誤りなき展望
を切り拓いていく。」とするP5中央執行委員長の挨拶が述べられたほ
か,議案の提案,質疑,討論が行われた後,一票投票が実施され,20
03年度運動方針が決定され,「勤務時間の見直し」についての最終判
断は本部に一任された(甲9)。
特に,公社からの前記ア(イ)の提案についての討議においては,P6
企画部長から,運動方針として,①多様な選択肢メニューを提供するこ
とにより,地方段階で柔軟な対応と判断ができる形を求める,②昼間労
働と夜間労働を峻別し,現行処遇と比較して大幅な処遇改善を求める,
③「特例休息」の確保に全力をあげ,地域区分局と一般局は基本的に同
一条件を求める,④地域区分局と一般局の夜間労働のあり方は格差を設
定しない方向で求める,という交渉方針(以下「基本スタンス」とい
う。)が示され,この内容が現情勢下で確保すべき最低限の労働条件で
あるという認識のもとで中央交渉に臨み,交渉経過等については,地方
本部書記長会議等の往復運動を前提に,交渉の到達水準を確保できた場
合の妥結判断権について,中央委員会に一任してもらいたい旨の提案が
された。
これに対し,「勤務時間の見直し,カット時短・実質的な特例休息を
保障していただきたい。」(北海道地方本部),「勤務時間の見直しに
ついて,職員の高齢化が進む中,夜間労働の負担は大きく,暦日非番日
の確保,健康への配慮,処遇の改善等の集中論議が必要。」(東北地方
本部),「勤務時間の見直しについては,本部の提案に対して賛成をす
る代議員はなく,職場から危惧する声や,スタンスの変更をとの声があ
った。ぜひ,その点の意見を汲んで,本部答弁を。」(東京地方本部),
「勤務時間見直しについては受け入れられない,白紙撤回をとの声が多
く出された」(東海地方本部),「夜間労働と勤務時間の見直しは,週
39時間プラス現行を最低限とした特例休息の確保など,さらなる夜間
労働の軽減をこそ本社に求めていく方向で交渉スタンスをとっていただ
きたい。」(九州地方本部),「勤務時間の見直し,新夜勤回数制限の
撤廃,特例休息の廃止等は納得できない。」(沖縄地方本部)等の発言
があった。
これに対し,P7中央執行委員が,勤務時間の見直しについて,「今
後,公社との厳しい対応が想定されるが,交渉経過については地本書記
長会議等で議論検討し,職場にオープンにした往復運動をすることを前
提に,妥結判断権について本部に一任いただきたい。」旨発言した。
(ウ)公社は,同年7月,関係労働組合に対し,同月14日付け「郵便事
業における効率的な服務方法の実施について」と題する書面を提示し,
本件就業規則の改正に係る具体的内容を示した(乙16,108)。
この際,公社は,改訂後の運用細則等の実施時期について,支社・郵
便局段階における十分な労使交渉期間を確保しつつ,できる限り早期に
実施したいとして,同年10月5日以降準備でき次第として提案してい
たが,郵便局段階における十分な労使交渉期間を確保すること及び職員
への施策の趣旨・目的の周知期間を十分に確保し,施策の円滑な実施を
図ることという観点から,実施時期を延期することとした。
(乙108)
(エ)全逓は,各地方本部に対し,同年7月16日,全逓の要求書(案)
を送信し,同月24日午後4時までに意見集約を求めた。
原告P1が所属する全逓P8支部P9国際総分会発行の平成15年7
月23日付け「全逓こくさい」には,「郵便事業における効率的な服務
方法の実施(勤務時間見直し施策)要求素案の周知と意見集約につい
て」,「現在意見集約中ですので,意見がある方は役員まで」との記載
がある(乙27の1)。
(オ)全逓は,前記ア(イ)の公社からの提案に対し,同年8月5日,「郵
便事業における効率的な服務方法に関する要求書」を公社あて提出した。
同月6日付け「全逓こくさい」には,「『勤務時間見直し』に関する
支部の要望書提出」,「組合員の意見の立場に立って,P8支部として
『勤務時間見直し』に関して,第1回全国地本書記長会議(7/28・
29)向けて,下記の四点について要望書を提出意見反映しました。」
との記載がある(乙27の2)。
(カ)全逓は,各地方本部に対し,同年8月20日付け機関誌「UI-N
ET」103号(甲15)により,「全逓の要求に対する現時点での公
社の回答と特徴的な交渉経過」を伝えた。また,全逓東京地方本部は,
各総分会長等宛に,同月21日,前記「UI-NET」103号に掲載
されたものが全逓の要求に対する公社の一次回答であり,これに目を通
した上で,要求がある場合には各支部でまとめて同年9月2日までに東
京地方本部交渉部まで伝えること,同年9月3日に地方本部交渉部長会
議で本部から説明を受けること,その説明の内容を同月4日に東京地方
本部の支部書記長会議で伝えること,その上で要求内容があれば,同月
10日までに地方本部交渉部まで伝えること,本部は地方本部の意見集
約をして,最終的には同月13日を目途に整理を図りたいとしているこ
とを伝えた(甲16)。
同年8月27日付け「全逓こくさい」には,全逓本部が提出した質問
書に対し公社が同月20日に一次回答を行ったこと及び全逓本部の今後
の団体交渉における取組みについて記載されているほか,「本部は,各
地方からの意見集約を行い,この回答を基本に交渉を強めていくとして
います。」,「現在,勤務時間の見直しに対する意見集約していますの
で執行部まで意見をお寄せ下さい。」との記載がある(乙27の3)。
全逓名古屋地方本部P10支部γ郵便分会に所属するP11は,同月
9月7日の第20回P10支部定期大会において,同年9月3日及び4
日に開催された港分会の職場集会で示された意見として,公社から提案
されていた「勤務時間の見直し」に関し,職場・組合員が強い抵抗感を
抱いていること,「夜は眠い」という人間の生理現象に反比例する夜間
・深夜労働の連続には納得がいかず,「殺人勤務だ。」,「高齢者はと
ても持たない。」という声があること,慎重かつ賢明な判断をしてほし
いことを訴えた(甲62)。
(キ)全逓本部は,各地方本部に対し,同年9月8日,「新たな休息時間,
手当の概要,勤務パターン,実施時期等について,前向きの回答引き出
す」と題する書面(甲18)を送付し,交渉経過とともに公社の回答を
伝えた。
同文書には,「7月14日に提示された『郵便事業における効率的な
服務方法の実施』に関する交渉は,第57回全国大会における議論・決
定を踏まえ,中央・地方の認識に齟齬が生じないよう,要求作成段階か
ら地本書記長会議を軸とした往復運動をおこなってきた。本施策は,関
係組合員の労働条件に大きな変化をもたらすものであり,8月5日に提
出した要求はぎりぎりの内容との立場で,本部一丸となって交渉を展開
してきた。これに対し公社も,カット時短・特例休息は廃止するものの,
夜間交替制職場における労働実態を考慮した『新たな休息時間』の検討
や現行原資を大幅に増額した夜間特別手当の検討,さらには,提案され
ているパターン以外の方法等について前向きの姿勢を示してきた。この
回答を踏まえ本部は,公社に対し検討作業を急ぐとともに内容を早期に
明らかにするよう強く求め,9月8日下記の回答を引き出した。」とし
て,①新たな休息時間の確保,②夜間特別勤務手当の増額及び加算額の
新設,③勤務パターンの増加,④実施時期の延期,を伝えるとともに,
全逓本部が郵便局段階での混乱をなくすよう配慮することとして,公社
に対し,「(1)今回の見直しにより労働条件が大きく変化することか
ら,地方とりわけ郵便局段階における丁寧な取り扱いが必要であり,具
体的な服務方法やそれにともなう要員配置計画等の策定作業に十分な準
備期間が必要であること。(2)今回の見直しにともない,対象局にお
ける勤務の種類及び組み合わせ方法は地方における選択となるが,その
場合,支社-地本間はもとより,地方・支部,支社と郵便局間の十分な
意志疎通を保証する期間が必要となること。(3)本年末始は,公社と
なって初めての年末始繁忙であり,失敗は許されず,当然現場段階では,
業務計画はもとより,営業施策も含めて万全の体制確立に向け準備して
おり,無用の混乱はできるだけさける必要があること。等を理由に実施
時期を明年2月にするよう公社に求めてきた。これに対し公社は,経営
の判断として実施時期を平成16年2月とすると回答した。」と記載さ
れている。
(ク)公社は,全逓に対し,同年9月22日,前記要求書に対する最終回
答として,①新たな休息時間の付与,②夜間特別勤務手当の増額,③実
施時期の変更及び④勤務パターンの追加を示した上,中央交渉の大綱整
理をした。
全逓も,同日までに「郵便事業における効率的な服務方法の実施」に
かかる要求交渉について,大綱整理をした。
そして,公社と全逓は,同月26日,公社協約を締結した。
(甲19,乙17,18,108)
ウ全郵政と公社との交渉経緯
全郵政は,公社に対し,平成15年7月30日,公社からの前記ア(イ)
の提案に対し,「郵便事業における効率的な服務方法に関する要求書」を
提出した。
公社は,全郵政に対し,同年9月22日,前記要求書に対する最終回答
をした上,中央交渉の大綱整理をした。
そして,公社と全郵政は,同月26日,全郵政との一連の交渉経過等を
受けて,公社協約と同旨の「『勤務時間及び週休日等に関する協約』等の
一部改正に関する協約」を締結した。
(乙108)
エ運用細則等の改正
平成15年10月以降,各郵便局と関係労働組合支部等の間において,
服務表改正に係る団体交渉等が行われ,各郵便局における服務表を決定し
た。
また,公社は,平成15年11月21日,公社協約と同一内容で運用細
則を改正したものの,①郵便局段階での労使交渉期間を確保すること及び
②平成15年度年末年始繁忙期が,公社化後に迎える初めてのものである
ことから,業務運行対策と業務収入確保に郵便局が全力を傾注できるよう
にすることとの観点から,平成16年2月8日に施行した。
公社は,平成16年2月2日,本勤務時間の改正に関する就業規則の改
正を行い,実施日である同年2月8日前までに,労働基準監督署への届け
出,職員周知等を行った。
(乙108)
(4)被告における就業規則の制定
ア就業規則制定の背景
(ア)被告の経営方針等
公社の郵便事業は,承継計画により,被告に引き継がれ,「経営の自
主性,創造性及び効率性を高めるとともに公正かつ自由な競争を促進し,
多様で良質なサービスの提供を通じた国民の利便の向上及び資金のより
自由な運用を通じた経済の活性化を図る」(郵政民営化法2条)という
郵政民営化法の理念のもと,効率的な事業運営によりユニバーサルサー
ビスとしての郵便サービスの提供の確保,②経営資源の積極的活用によ
る顧客の多様なニーズに応える国内外の物流サービスの充実等により,
「人,企業,社会を真心で結ぶネットワーク」を創出することが被告の
経営方針として定められ,また,市場環境の変化,社会・地域の多様な
ニーズ等に的確かつ柔軟に対応できる物流システムの構築,きめ細かく
高品質なサービスの提供,健全経営の維持,顧客満足度の向上,営業推
進,経費節減等,IT推進による業務運営の効率化,コスト削減,サー
ビス品質の向上,働きがいのある職場作り等が具体的な経営管理目標と
して定められた。
さらに,承継計画では,被告の経営見通しとして,郵便事業に係る収
入が主な収益であり,一方,郵便事業に係る費用の主なものは人件費と
郵便局株式会社に対する委託手数料であり,費用については,業務の効
率化等を進めることにより削減を行うものとされている。
(乙108,143,144,証人P4)
(イ)公社及び被告を取り巻く情勢
公社は平成16年度には283億円の黒字であったが,平成17年度
は黒字が26億円,平成18年度は19億円弱まで黒字が減少していた。
これに対し,承継計画では,被告の平成19年度(平成19年10月
から平成20年3月までの6か月間)の経常利益を860億円,純利益
を520億円,平成20年度の経常利益を630億円,純利益を380
億円と見込んでいる。
しかしながら,電子メールの飛躍的な普及,顧客ニーズの高度化,民
間宅配・メール便業者との競争の激化といった状況には変化がなく,よ
り高度なサービスの提供が求められるとともに,今後は,ダイレクトメ
ールやクレジットカード等の分野で競争の進展が予想されていることか
ら,郵便事業を取り巻く環境が厳しさを増し,引受郵便物数の将来的な
市場の見通しとしては,総体的に郵便利用が減少していくことが見込ま
れる状況にあり,郵便事業を取り巻く環境は将来的にも極めて厳しい情
勢にある。
(乙5,108,118の2及び3,121,143,144,証人P
4)
イ制定された就業規則等の内容
(ア)被告の就業規則等で定める従業員の勤務時間,休息時間,休憩時間,
勤務指定,深夜帯における勤務については,前記第2の1(2)のとおり
であり,特例休息やカット時短はない。
(イ)被告は,公社が平成16年2月に実施した新運用細則等の実施と併
せて設定した新たな勤務条件及び健康管理対策等について,夜間特別手
当の単価が以下のとおり増額された以外は,公社のものと同一内容を維
持した就業規則等を定めた。
①深夜帯勤務(新夜勤,9時間の調整深夜勤及び深夜勤(10時間
の深夜勤を除く。))についての1回当たりは1800円ないし3
400円である。
②10時間の調整深夜勤及び10時間の深夜勤1回当たりの単価は,
1回当たり1900円ないし3500円である。
(5)旧協約及び本件協約の締結経緯
ア旧協約締結の経緯
(ア)日本郵政株式会社は,平成18年7月31日,関係労働組合に対し,
民営・分社化後の各承継会社の概要等(乙143,144)を示した。
また,日本郵政株式会社は,同年12月7日,郵政民営化法170条
1項,2項及び173条に基づき,関係労働組合に対し,「人事制度・
労働条件等について」と題する書面(乙145)を交付し,民営・分社
化時の各会社の人事制度・労働条件等の民営化時の制度の方向性の内容
を示した。この中で,同社は,深夜勤を含む勤務時間に関する民営化時
の制度の方向性については,公社時と同様としたい旨示していた。
(イ)全逓(日本郵政公社労働組合)は,平成19年2月15日から同月
16日,第121回中央委員会を開催した(乙146,154の1)。
同委員会では,日本郵政株式会社が示した人事制度及び労働条件等に
ついて議論が行われ,全郵政との組織統合問題のほか,労働条件につい
ては公社時を下回らないことを基本とし,必要に応じて不利益変更を防
止するなどの経過措置等を求める等の提案が行われ,これが承認された。
なお,質疑・討論では,本部の原案を支持する発言が多かったが,労
働条件を含む職場環境について,「職場は精神面の病気・休職が増加。
具体的なメンタルヘルス策を。」(北海道地方本部)という発言があっ
たほか,公社が導入したJPS(ジャパン・ポスト・システム)という
就労形態に関し,本来の趣旨に沿う運用がされていない旨の発言が見ら
れ(東海地方本部,東北地方本部),「スタンディングワークも早急な
見直しを」求める発言(九州地方本部)もあった。
(ウ)日本郵政株式会社は,同年3月14日,関係労働組合に対し,「民
営化後の各社社員の給与体系イメージ等について」と題する書面(乙1
47)を交付し,民営・分社化時の各会社の給与体系イメージの内容を
示した。この中で,深夜勤に従事した際に支給される夜間特別勤務手当
については,民営・分社化時においても公社時と同様とすることを示し
た。
さらに,日本郵政株式会社は,同月26日,関係労働組合に対し,
「人事制度・労働条件等に関する民営化時の制度について」と題する書
面(乙148)を交付し,民営・分社化時の各会社の人事制度・労働条
件等に関する具体的内容を示した。この中で,公社の運用規則等で定め
る「10深夜勤」についても郵便事業株式会社においても実施すること
を示した。
(エ)全逓(日本郵政公社労働組合)は,同年4月3日,日本郵政株式会
社に対し,「民営・分社化における人事制度・労働条件等に関する要求
書」(乙149)を提出した。
(オ)日本郵政株式会社は,同年3月26日付け書面の内容の一部を修正
した上,同年5月8日,関係労働組合に対し,同日付け「人事制度・労
働条件等に関する民営化時の制度」と題する書面(乙150)を交付し,
民営・分社化時の各会社の人事制度・労働条件等に関する具体的内容を
示すとともに,同日,全逓(日本郵政公社労働組合)に対し,前記要求
書に対する回答をした(乙151)。
(カ)全逓(日本郵政公社労働組合)は,同年6月19日から同月21日,
第63回定期全国大会を開催した。
同定期全国大会では,人事制度・労働条件等に関わる交渉経過等につ
いて,議論が行われ(乙152,154の2),交渉到達点と本部判断
についての「運動方針」に関し,有効投票数338票中,賛成328票
(97%)で承認された(乙154の4)。この本部の運動方針は,深
夜勤を含む勤務時間については,「現行制度と同様としているため了と
します。」と提案していたものである(乙152)。
なお,質疑・討論では,本部の原案を支持する発言が多かったが,労
働条件を含む職場環境について,「効率化施策の現状は,ESや,ひい
ては『現場力』の低下を招いている。」(東海地方本部),「職場の業
務煩瑣は限界。」(信越地方本部),「本社の現状も,連日の超勤や休
日出勤が当たり前」(東京地方本部),「近年の病状増加やメンタルヘ
ルスもあり,部内医療機関の存続を求める。」(南関東地方本部),
「厳しい職場実態に鑑み,労働力構成の再強化とともに転力化政策の検
証と非常勤職員配置率の損益分岐点明示を求める。」(関東支部)等の
発言があった。
(キ)日本郵政株式会社と全逓(日本郵便公社労働組合)は,同年8月2
7日,郵政民営化法171条に基づいて団体交渉を行い,社員の勤務時
間等について合意に至ったことから,郵便事業株式会社の社員の勤務時
間及び休暇に関し,旧協約(乙136,137)を締結した。
なお,公社は,全郵政に対し,同年6月29日,公社協約の解約を予
告していた(乙156)。
イ本件協約の締結
全逓(日本郵政公社労働組合)及び全郵政は,平成19年10月22日
午前,それぞれ臨時全国大会を開催し,双方との組織統合を承認した。
全逓と全郵政が統合したJPUは,同日午後,結成大会を開催し,同年
度の運動方針を満場一致で採択した。
被告とJPUは,同日付けで,旧協約と同一内容の本件協約(乙138,
139)を締結した。
(乙155,156)
(6)原告P1の勤務状況
アα国際郵便局の概要
(ア)旧局
旧局は,局長のほか副局長が配置され,総務課,郵便企画課,法人郵
便営業課,運行課,航空通常郵便課,EMS課,航空小包郵便課及びα
広域国際郵便営業センターが設置され,職員数約380名(再任用職員,
短時間職員を含む。)及びゆうメイト(非常勤職員)約140名をもっ
て構成する無集配普通局であり(平成16年12月1日現在,乙22),
主として外国との郵便物(外国郵便物)の通関・交換業務を専門的に取
り扱う郵便局であった。
また,旧局は,勤務時間については,地域区分局に準じた取扱いとな
る郵便局である(旧運用細則(乙2)21条,新運用細則(乙3)別記
1注意書き)。
旧局は,同局に勤務する職員のうち約9割の職員が国際郵便物の交換
業務(国内から外国に向けて差し出される郵便物(外国あて郵便物)を
直接に外国に送付し,あるいは外国から送達されて来る郵便物(外国来
郵便物)を直接に外国から受け取る業務をいい,この業務を行う郵便局
を「交換局」という。)に携わり,その取扱量も全国の国際郵便物の約
7割近くにものぼるなど,国内最大規模の国際郵便を取扱う郵便局であ
った。
(乙22,105)
(イ)新局
新局は,平成17年10月10日,郵便物の増加,大型化による施設
狭隘に対処するため,東京都江東区<以下略>に新築移転されたもので
あり,機械化等による効率化の推進として,外国あてEMS・小包区分
機,税関呈示装置,航空コンテナステージ等の機器を導入し,国際郵便
の処理の迅速化・効率化を推進して,国際郵便サービスの品質向上,ス
ピードアップを図ったものである。
新局は,現在は,国際スピード郵便(EMS),航空通常郵便,航空
小包郵便,エコノミー航空(SAL)郵便,Dメール(航空優先大量郵
便物),Pメール(航空非優先大量郵便物)を取り扱うほか,EMS配
達時間保証(EMSタイムサーテンサービス)といった大都市ならでは
のサービスも提供している。
新局(α国際局)は,局長のほか副局長が配置され,総務課,郵便企
画課(国際郵便調査センター),国際通常郵便課,EMS・小包郵便課
(集荷センター)が設置され,平成17年10月10日現在で,職員数
305名(再任用職員,短時間職員を含む。)及び長期で雇用している
ゆうメイト(非常勤職員)150名をもって構成されている。そのうち,
EMS・小包郵便課(集荷センターを除く。)の職員数は,平成17年
10月10日現在で,職員数191名(再任用職員,短時間職員を含
む。)及び長期で雇用しているゆうメイト(非常勤職員)105名であ
る。
(乙105)
イ国際EMS課の業務内容及び勤務形態
(ア)旧局国際EMS課における業務内容
aα国際局に到着したEMSを,到着区分,差立区分等の仕分け,通
関作業を行う。
EMSで取扱っているサイズは,最大の長さ1.5メートル以内,
長さと最大の横周の合計が3メートル以内,重量は30キログラム以
内とされている。
平成16年10月1日から同月31日までの間,EMS課の総取扱
物数は約77万個(通)で,そのうち20キログラムを超え30キロ
グラムまでの重量の荷物(同課においては「特重」という。)の割合
は約1パーセント程度であり,また,箱型の形状のものであっても,
外国から日本に到着する郵便物についてみた場合,取扱個数全体で約
20万7000個に対し,「特重」は約4600個で,割合としては
2.2パーセント程度である。
(乙23の1及び2,105)
bα国際局は,平成16年2月8日に適用された新運用細則(乙3)
の別表第4の適用を受ける郵便局であり,EMS課の職員に適用され
ている服務表(乙24の1)は始終業時刻によって,日勤,調整日勤
B,中勤,夜勤,調整夜勤B,新夜勤,10深夜勤,調整深夜勤Bが
ある。
また,職員が各日において服すべき具体的な勤務の種類,あるいは
週休日,非番日等の指定は4週間を単位に作成される勤務指定表によ
り特定され,一週平均40時間,4週で160時間の勤務時間となっ
ている。
なお,郵便サービスに対する利用者のニーズに即応するため,国際
郵便取扱業務の迅速かつ円滑な処理を行う必要があるので,郵便関係
に従事する職員は,いわゆる交替制による変形勤務(4週間単位)で
24時間職員を配置する形態がとられている。
(乙105)
cEMS課における深夜帯の勤務は,平成16年2月8日以降,10
深夜勤及び新夜勤が指定されており,1勤務指定期間(4週間)にお
ける10深夜勤及び新夜勤の勤務を指定する際には,業務運行上必要
な最低配置人員を確保することを前提に,総務主任をリーダーとする
4名ないし5名で編成されたチームごとに,勤務を指定しているとこ
ろである。
ただし,各指定期間における休暇者数(年休など)の違いや健康上
の理由から深夜帯の勤務が全く指定できない職員がいるなどのために,
全員が同一の深夜帯勤務回数となる勤務指定となっていないこともあ
る。
(乙105)
d平成16年8月22日を適用開始とするEMS課職員の服務表(乙
24の2)によれば,10深夜勤1の勤務時間は午後9時から翌日の
午前8時までであり,10深夜勤1の符号Bの場合の休憩時間は勤務
開始日翌日の午前5時10分から20分間及び同午前6時50分から
の40分間であり,休息時間については,午後10時29分から31
分間ないし,勤務開始日翌日の午前0時50分から15分間,午前2
時15分から15分間及び午前3時45分から15分となっている。
また,10深夜勤2の勤務時間は午後10時から翌日の午前9時ま
でであり,休憩時間は勤務開始日翌日の午前6時10分から20分間
及び同午前7時50分から40分間であり,休息時間については,午
後11時29分から31分間ないし勤務開始日翌日の午前1時50分
から15分間,午前3時15分から15分間及び午前4時45分から
15分間となっている。
新夜勤については,2つの勤務を組み合わせることから,勤務時間
は午後4時30分から翌日午前3時30分及び午前5時05分から午
前9時05分となっており,2つの勤務の間は,勤務から完全に開放
される時間帯となっている。それぞれの勤務における休憩時間は午後
7時00分から45分間及び午後9時00分から15分間であり,休
息時間は午後11時00分から25分間,翌日午前1時15分から1
5分間,午前2時47分から43分間及び午前6時50分から30分
間となっている。
(乙105)
(イ)新局EMS・小包郵便課における業務内容
aEMS・小包郵便課における業務内容及び勤務形態は旧局とほとん
ど変わらない。
①差立区分作業(外国あてEMS・小包郵便物作業)(1階で行
う。)
ロールパレットに積まれてきた郵便物から変形郵便物・特重郵便
物・こわれ物郵便物・EMS(書類)を抜き取り,それ以外の郵便
物を大型小包区分機に供給する。
抜き取った郵便物は,EMS(書類)であれば「EMS(書類)
差立場」へ,それ以外の郵便物であればロールパレットに積み,各
宛先国のシュート口へ区分する(区分作業)。
郵便物を大型小包区分機に供給する際は,「保管所」のロールパ
レットに積まれている郵便物を「供給口」に乗せて,操作盤とワイ
ヤレスマイクで,その荷物の行き先(各宛先国のシュート口)の指
定を音声またはキーボードにより入力する(供給作業)。
その後,小包区分機で宛て先国(交換局)別に区分されシュート
口に降下してきたEMS等を,あて先国(交換局)別に閉袋し(閉
袋作業),各郵袋をロールパレットに積み込み,編成所まで輸送す
る(パレット輸送作業)。
(乙59,60,61,62の1及び2,63の1ないし9,64
の1ないし8,65,66の2,67の1及び2,69の1ないし
3,70の1及び2,71の1及び2,72の1ないし5,73の
1ないし5,74の1ないし6,75の1ないしの3,76の1及
び2,105,証人P12,原告P1本人)。
②到着作業(2階で行う。)
郵袋から開披された小包郵便物(乙82)について,外国郵便局
において付されたラベルのバーコードをハンディ(乙79の1及び
2)で読み取り,小包郵便物を呈示機に供給する(呈示機供給作
業)。
また,郵便物を供給する際にハンディ(乙79の1及び2)によ
りバーコードを読み取った情報をもとに,供給口の反対側に設置し
ているラベルプリンター(乙86の1及び2)から国内用のラベル
(乙87)が自動で発行されるため,そのラベルシールの番号と,
ラベル(乙85)の郵便物の番号を確認してから,郵便物にラベル
を貼り付け,宛先を見て2方向へ流す(ラベル貼り付け作業)。
(乙77,78の1及び2,80,81の1及び2,82,83の
1及び2,105,証人P12,原告P1本人)
b10深夜勤2の勤務時間は午後9時00分から翌日の午前8時00
分までであり,10深夜勤2の符号Bの場合の休憩時間は勤務開始日
翌日の午前5時10分から20分間及び同午前6時50分から40分
間であり,休息時間については,午後10時29分から31分間,勤
務開始日翌日の午前0時50分から15分間,午前2時15分から1
5分間及び午前3時45分から15分間となっている。
また,10深夜勤3の勤務時間は午後10時00分から翌日の午前
9時00分までであり,休憩時間は勤務開始日翌日の午前6時10分
から20分間及び同午前7時50分から40分間であり,休息時間に
ついては,午後11時29分から31分間,勤務開始日翌日の午前1
時50分から15分間,午前3時15分から15分間及び午前4時4
5分から15分間となっている。
(乙105)
ウ原告P1の勤務状況について
(ア)平成17年度の出勤状況等
平成17年4月1日から平成18年3月31日までの1年間(365
日)のうち,出勤日数が201日,出勤日以外の日が164日であった。
そして,出勤日以外の日数164日の内訳は,週休日が54日,非番
日が50日(うち暦日で付与したものは37日),解放非番日が25日,
祝日及び祝日代休が11日,年次有給休暇が17日(正確には17日と
31時間),特別休暇が5日,代替休暇が1日,成検が1日であった。
(乙127,132,原告P1本人)
(イ)平成18年度の出勤状況等
平成18年4月1日から平成19年3月31日までの1年間(365
日)のうち,出勤日数が198日,出勤日以外の日が167日であった。
そして,出勤日以外の日数167日の内訳は,週休日が50日,非番
日が52日(うち暦日で付与したものは45日),解放非番日が22日,
祝日及び祝日代休が11日,年次有給休暇が15日43時間,特別休暇
が7日,病気休暇が9日,成検が1日であった。
(乙127,133,原告P1)
(ウ)超過勤務等の状況
原告P1がうつ病を発症する6か月前の平成18年9月16日から平
成19年3月15日までの原告P1の超過勤務(時間外労働)及び休日
労働等の勤務状況は,民営・分社化に伴う研修を行った休日労働1日
(4時間)のみである。
(乙128,原告P1)
(エ)深夜帯の勤務
a原告P1の連続「深夜勤」を指定された場合の勤務パターン及び休
憩・休暇取得の例は別表1ないし3のとおりである。
すなわち,1勤務指定のパターンとしては,4週間のうちに,①2
連続深夜勤の勤務指定,②2連続深夜勤と2連続深夜勤の間に解放非
番を入れた勤務(深深非深深)及び2連続深夜勤(深深)を組み合わ
せた勤務指定,③2連続深夜勤と2連続深夜勤の間に解放非番を入れ
た勤務(深深非深深)及び3連続深夜勤(深深深)を組み合わせた勤
務指定であり,また,回数としては,同期間内に8回(α国際局の上
限)を超えていなかった。
(乙105,126,証人P12,原告P1,弁論の全趣旨)
b公社は,日本郵政公社健康管理規程に基づき,管理医からの通知及
び健康診断の結果に基づき,原告P1を生活規正区分上の要軽業者
(勤務に制限を加える必要のある者)として,平成19年5月16日
から職場復帰させた後にも,勤務指定については深夜勤勤務を指定し
ないようにしていた。
また,被告も,原告P1に対し,勤務指定については深夜勤勤務を
指定していない。
(乙38,105,証人P12,原告P1本人,弁論の全趣旨)
(7)原告P2の勤務状況
アβ郵便局の概要
β郵便局は,局長のほか副局長が配置され,平成16年12月1日現在,
総務課,法人郵便営業課,郵便課,第一集配営業課,第二集配営業課,集
荷営業課,貯金課,保険課が設置され,職員数331名(再任用職員,短
時間職員を含む。)及びゆうメイト(非常勤職員)175名をもって構成
する集配普通郵便局であり,勤務時間等の取扱いについては,地域区分局
以外の郵便局であった(旧運用細則(乙2)21条,新運用細則(乙3)
別記1注意書き)。
なお,β郵便局は,平成19年2月1日現在では,総務課,第一・第二
・第三法人郵便営業課,郵便課,第一・第二集配営業課,集荷営業課,貯
金課,保険課,職域保険課が設置され,郵便課の職員数は,職員74名
(再任用短時間職員及び郵政短時間職員は無し),長期で雇用しているゆ
うメイト(非常勤職員)59名の合計133名である。
(乙2,3,25,106,証人P13)
イβ郵便局の業務及び勤務形態
(ア)郵便課の業務内容
a原告P2が所属する郵便課の主な業務は,同局及び同局区内で引き
受けた郵便物を全国の集配郵便局あてに送達するために行う仕分け作
業,あるいは他局から同局区内あてに差し出され,同局に到着した郵
便物を配達エリアごとに仕分けする作業,書留郵便物の処理,料金受
取人払に関する事務及び私書箱あて郵便物の交付に関する事務などで
ある(乙106)。
bβ局郵便課においては,職員が担当する仕事を通常担務,発着担務,
特殊担務,窓口担務の4種類の担務に分けており,職員は分担簿によ
り日々の担務を割当てられる。
通常担務とは,主に定形郵便物を区分機に供給する作業(乙46の
1及び2)及び供給した郵便物を区分機のボックスから抜き取る作業,
さらに,区分機で読み取れなかった郵便物及び区分機に供給できない
厚手の郵便物を区分する小型手区分作業(乙41の1ないし3,乙4
7,乙48),大型の郵便物(主に定形外郵便物)を区分する大型手
区分作業(乙40の1ないし4,乙43の1及び2,乙50の1及び
2,乙101の1ないし3,乙102の1ないし6)等の業務をいう。
特殊担務とは,主に書留郵便物を取り扱う担務であり,作業は特殊
郵便物取扱室と呼ばれる事務室(乙51の1ないし6)で行っている。
その作業内容は配達証の作成(乙52の1及び2,53),日計の作
成(乙54,55)などの業務をいい,比較的座ったままで行う作業
が多い。
原告P2は,4種類の担務のうち通常及び特殊担務に従事している
ところであるが,平成16年5月ころからは,主に特殊担務となるこ
とが多くなっていた。
(乙39,42,99,106,証人P13,原告P2本人)
(イ)郵便課における深夜帯の勤務
aβ郵便局郵便課は,平成16年2月8日から適用された新運用細則
(乙3)の別表第4の適用を受ける郵便局であり,同局郵便課の職員
に適用されている服務表は始終業時刻によって,早出勤務,調整早出
B,日勤,調整日勤B,中勤,調整中勤B,夜勤,調整夜勤B,新夜
勤,10深夜勤,調整深夜勤Bがある(乙26の1)。
また,職員が各日において服すべき具体的な勤務の種類,あるいは
週休日,非番日等の指定は4週間を単位に作成される勤務指定表によ
り特定され,一週平均40時間,4週間で160時間の勤務時間とな
っている。
なお,郵便サービスに対する利用者のニーズに即応するため,郵便
物の迅速かつ円滑な処理を行う必要があるので,郵便課に従事する職
員は,いわゆる交替制による変形勤務(4週間単位)で24時間職員
を配置する形態がとられている(乙106)。
b郵便課では,10深夜勤及び新夜勤が指定されており,1勤務指定
期間(4週間)における10深夜勤及び新夜勤の勤務を指定する際に
は,業務運行上必要な最低配置人員を確保することを前提に,勤務を
指定している。
ただし,各職員ごとに勤務可能な担務に差があり,特に発着担務に
ついては,窓口担務ができる職員に限られるため,勤務指定において
は同担務ができる職員に偏りが生じることや各指定期間における休暇
者数(年休など)の違い,予想される郵便物の量及び健康上の理由か
ら深夜帯の勤務が全く指定できない職員がいることなどのために,全
員が同一の深夜帯勤務回数となる勤務指定とはなっていないこともあ
る。
(乙106)
c平成16年6月6日を適用開始とするβ局郵便課職員の服務表(乙
26の2)によれば,10深夜勤2の勤務時間は午後9時45分から
翌日の午前8時45分までである。
また,10深夜勤2の符号Aの場合の休憩時間は勤務開始日翌日の
午前1時20分から40分間及び同午前5時40分からの20分間で
あり,休息時間については,午後10時40分から20分間ないし,
勤務開始日翌日の午前0時20分から10分間,午前2時から26分
間及び午前4時00分から10分間及び午前7時から10分間となっ
ている。
新夜勤については,2つの勤務を組み合わせることから,深夜勤B
(B-6の符合B)と6早出の符合Bの組合せの場合の勤務時間は午
後4時30分から翌日午前1時15分及び午前3時00分から午前9
時00分となっており,2つの勤務の間は,勤務から完全に開放され
る時間帯となっている。それぞれの勤務における休憩時間は午後9時
00分から45分間であり,休息時間は午後5時50分から10分間,
午後6時45分から15分間,午後10時20分間から10分間,午
後11時40分から10分間,翌日午前0時45分から30分間,午
前5時00分から20分間及び午前7時00分から18分間となって
いる。
(乙106)
ウ原告P2の勤務状況
(ア)平成17年度の出勤状況等
平成17年4月1日から平成18年3月31日までの1年間(365
日)のうち,出勤日数が208日,出勤日以外の日が157日であった。
そして,出勤日以外の日数157日の内訳は,週休日が52日,非番
日が53日(暦日),解放非番日が17日,休日及び祝日が7日,年次
有給休暇が20日17時間,特別休暇が4日,代替休暇が4日であった。
(乙130,134,証人P13,原告P2)
(イ)平成18年度の出勤状況等
平成18年4月1日から平成19年3月31日までの1年間(365
日)のうち,出勤日数が169日,出勤日以外の日が196日であった。
そして,出勤日以外の日数196日の内訳は,週休日が51日,非番
日が52日(暦日),解放非番日が11日,休日及び祝日が9日,年次
有給休暇が24日(正確には24日と28時間),特別休暇が9日,代
替休暇が3日,病気休暇が36日,成検が1日であった。
(乙130,135,証人P13,原告P2)
(ウ)超過勤務等の状況
原告P2がうつ状態と診断される6か月前の平成18年5月24日か
ら同年11月23日までの原告P2の超過勤務(時間外労働)及び休日
労働等の勤務状況は,超過勤務(時間外労働)の合計1時間38分のみ
である。
(乙131,原告P2)
(エ)深夜帯の勤務
a原告P2の連続「深夜勤」を指定された場合の勤務パターン及び休
憩・休暇取得の例は別表4及び5のとおりである。
すなわち,1勤務指定のパターンとしては,4週間のうちに,①3
連続深夜勤の勤務指定,②2連続深夜勤と3連続深夜勤を組み合わせ
た勤務指定,③2連続深夜勤と新夜勤を組み合わせた勤務指定,④3
連続深夜勤と新夜勤を組み合わせた勤務指定,⑤2連続深夜勤,3連
続深夜勤及び新夜勤を組み合わせた勤務指定であり,また,回数とし
ては,同期間内に8回(β郵便局の上限)を超えていなかった。
(乙106,乙129,証人P13,原告P2本人,弁論の全趣旨)
b公社は,日本郵政公社健康管理規程に従い,管理医からの通知及び
健康診断の結果に基づき,原告P2を生活規正区分上の要軽業者(勤
務に制限を加える必要のある者)として,平成19年1月27日から
職場復帰させた後も,勤務指定については深夜勤勤務を指定しないよ
うにしていた。
また,被告も,原告P2に対し,勤務指定については深夜勤勤務を
指定していない。
(乙38,106,証人P13,原告P2本人)
(8)交替制勤務又は深夜業の一般的状況
旧労働省の「深夜業の就業環境,健康管理等の在り方に関する研究会」中
間報告(平成10年4月末日当時の状況についてのもの)及び厚生労働省に
よる労働環境調査(平成13年9月末日当時の状況についてのもの)による
と,我が国の他の民間企業等における深夜業に関する一般的状況は,以下の
とおりである(乙20,21,116,証人P4)。
ア深夜交替制勤務の実施状況
深夜業(午後10時から翌日午前5時までに行う労働)のうち,郵便事
業の勤務の形態に近い「深夜交替制勤務」を実施している民間事業所は,
事業所規模が比較的大規模な事業所ほど実施割合が高く,従業員1000
人規模の事業所のうち8割を超える。
イ深夜帯勤務時間数・勤務日数
深夜業従事者の週の所定労働時間数は,深夜交替制勤務を実施している
事業所のうち4割弱の事業所が「40時間」となっている。
また,1か月当たりの深夜帯勤務時間数では,「20~40時間未満」
となっている事業所が最も多く3割弱を占めている。
なお,1か月当たりの深夜勤務の最高回数では,「10~14回」とな
っている事業所が最も多く3割強を占めている。
ウ深夜業従事者への配慮事項
前記中間報告では,「労働時間,深夜帯勤務回数等についてなんらかの
限度を設けている」は25%に留まっているとされていた。
これに対し,前記労働環境調査では,深夜業を実施している事業所(深
夜交替制勤務,常夜勤務及び所定外深夜勤務を実施している事業所)のう
ち9割の事業所が深夜業の従事者へ何らかの配慮を行っているが,配慮の
内容は「休憩時間を2回以上確保」(50.3%),「所定外労働時間数
を制限」(42.6%),「深夜勤務回数を制限」(38.4%)が高い
とされている。
(9)交替制勤務又は深夜業と健康障害
ア概日リズム
概日リズム(サーカディアンリズム)とは,地球の自転・公転のサイク
ル等に合わせて,1日を約24時間サイクルで睡眠と覚醒を繰り返すとい
うものである。
この概日リズムは,細胞内の時計遺伝子によって制御され,体温,脈拍
数,血液,ホルモンの分泌についても影響を及ぼし,それらの諸機能を制
御している。たとえば,人間の体内時計が司る概日リズムの状態を表すと
いわれる深部体温についてみれば,日中の午後に最高値になり,深夜午前
に最低値になる。生体ホルモンのひとつであり,抗酸化物質のひとつで,
睡眠と関連のあるメラトニンの分泌量は,概日リズムに沿って変動し,夜
間に多くなり昼間は光刺激で分泌が抑制され減少する周期性を持つ。また,
自律神経系では,概日リズムに従い,日中には交感神経が優位となり,血
管が収縮し血圧は上昇,心拍数も多くなり,アドレナリンの分泌が活発に
なるというように活動に適応した状態に向かい,反対に,夜間は副交感神
経優位の状態になり血管が拡張し血圧は低下,活動には不向きで睡眠に適
応した状態になる。
このような人間の身体に本来的に備わっている概日リズムに照らすと,
人間にとって,昼間に活動し夜間は睡眠をとるという生活行動パターン
(昼行夜眠)こそが,生理的で正常な生活パターンといえる。
(甲20ないし24,76の2)
イ睡眠の機能
睡眠には,深い睡眠に入るノンレム睡眠期と,その後に夢を多く見るレ
ム睡眠期が訪れ再び深い眠りのノンレム睡眠期を繰り返す。ノンレム睡眠
とレム睡眠の繰り返しを睡眠サイクルといい,一つの睡眠サイクル周期は
90分である。人間は,一晩で(8時間の睡眠の場合)通常,この睡眠サ
イクルを5,6回繰り返す。
人間は断眠すると脳内に疲労物質が蓄積する。この物質は,睡眠物質と
いわれる脳内ホルモンと類似した構造を持っているため,疲労物質を分解
するために睡眠を摂る必要に迫られ人間は眠気を覚えることになる。人間
は睡眠を摂ることによって脳内の疲労物質を分解しているのである。
これだけでなく,睡眠を摂ることの意味・機能は,身体的側面について
いえば,日中の活動で上昇した脳や身体の加熱を冷やすため,脳神経や身
体の休養や疲労回復のため,身体活動リズムを調整し,免疫機能を高める
ことなどが挙げられる。
疲労回復に必要な物質は,脳の下垂体から分泌される成長ホルモンであ
り,新陳代謝を高め蛋白同化作用などにより,子供では骨や筋肉の成長を
促し,大人でも細胞や神経,筋肉などの修復や再生を促し疲労を回復させ
るところ,このホルモンを最も多く分泌するためには,午前零時までに就
寝し午前1~2時ころに最も深い眠りを迎えるとよいとされる。
(甲76の2,77)
ウ昼夜逆転生活のもたらす影響
(ア)概日リズムの乱れによる影響
a概日リズムは,その生体リズムに備わっている固有の生理的リズム
であり,生活時間帯をずらしても生理的リズムを容易に変えることは
できないため,生活行動と生理的リズムとの間に摩擦を生じ,また,
ホルモン分泌,生体物資の代謝等の相互のバランスにも影響を与え,
その影響は,睡眠障害(睡眠不足・睡眠不良・睡眠不安)として表れ
る。
なお,交替制勤務の場合であっても,毎日同じ時間の始業を繰り返
す勤務形態の場合は,概日リズムの昼夜逆転はあるものの不規則では
ないことから,生活リズムを昼間に睡眠するタイミングに順応させる
ように努力する余地があるけれども,規則性の全くない深夜帯・交替
制勤務の場合には,生活リズムを順応させるようにすることができず,
深刻な睡眠障害に苦しむことになりやすい。
(甲21,22)
b不規則な勤務形態が基で発生した睡眠障害については「交代勤務睡
眠障害」といわれ,以下の国際的診断基準(ICDcode30
7.45-1)が確立している。
①主要な訴えが不眠や過度の眠気であること。
②主要な訴えは通常の睡眠時間に行なう仕事の時間帯(通常は夜勤勤
務)と時間的に関連している。
③睡眠ポリグラフやMSLTを行なうことによって正常な睡眠覚醒パ
ターンが失われていることが明らかにされるなど,時間生物学的リ
ズムが障害されている証拠があること。
④症状を引き起こす精神障害や身体的疾患がないこと。
⑤不眠や過度の眠気を引き起こす他のいかなる睡眠障害の診断基準に
も合わないこと。
(甲76)
(イ)睡眠障害による影響
a睡眠障害が持続することによって,疲労からの回復過程は破壊され,
疲労が蓄積していくことになる。
また,睡眠障害があると,これ自体が心身へのストレスとなり,ス
トレスによりさらに眠りは妨げられ睡眠障害が深刻となるという悪循
環が生じるとされている。
(甲34,79)
b睡眠障害等による疲労の蓄積やストレス反応が重層的・複合的に作
用することにより,免疫力の低下や不眠症,一般的健康状態の低下,
食欲の低下,そして,胃腸機能の不整などの消化器症状,呼吸器系の
障害,さらには,脳・循環器系に対する悪影響を与えるとされている
報告がある一方,この影響を否定する報告もある。
また,概日リズムの乱れによる睡眠障害において,抑うつ症状の合
併が高率に存在することが報告され,うつ病と生体リズム異常の関連
が強く疑われ,交替制勤務は常日勤者に比してうつ病のリスクは40
%増加し,交替制勤務を6年以上続けるとうつ病の有病率は25%以
上も上昇するという指摘もある。
(甲25,26,28,35,76の2,乙115,116)
(ウ)対策としての「仮眠」
深夜帯勤務中の仮眠は,直接に疲労を回復する効果があるのみならず,
生体リズムを維持したり(「アンカー睡眠効果」という。),生活時間
を創出するなどして,疲れが慢性疲労化したり,慢性疲労が昂じて過労
状態に陥ることを防止する上で,非常に効果的な方法である。
もっとも,これらの効果を満足するためには,90分単位の睡眠サイ
クルや睡眠開始後の体温低下との関係で2時間程度がよいとされている
が30分程度でも効果があるという報告もある。
逆に,30分以下の極端に短い仮眠時間の場合,疲労回復・眠気解消
が図れず,強い疲労・眠気と格闘しながら勤務に従事することになり,
かえって,勤務終了後には強い疲労に襲われたり,概日リズムの乱れが
増幅し,生体リズムの破壊,生理活動・生命活動の乱れが著しくなるな
ど,かえって作業の安全性を損なう可能性が高まるとされている。
(甲23,33,乙115)
エ各種報告等
(ア)久留米大学医学部の精神神経科内山直尚助教授(当時)の調査(甲
80)
不眠経験は交代勤務がある人の42.9%に及び,日勤だけの人の1.
6倍,抑うつ症状は日勤だけの人の3.3倍になること,平日の睡眠時
間が短いほど不眠・抑うつの発現率が高く,睡眠時間7~8時間で最も
低いこと,睡眠4~5時間の人は7~8時間の人に比べ,不眠は約2倍,
抑うつは約5倍にも上る。
事故や自殺,生活習慣病につながる不眠・抑うつを減らすには,適切
な睡眠時間の管理が重要である。
(イ)日本産業衛生学会交代勤務委員会「夜勤・交代制勤務に関する意見
書」(甲29)
夜業もしくは交代制の導入は,社会的に必要な最小限度にとどめるべ
きと考えられる。やむをえず夜勤・交代制勤務を行わせる場合は,その
労働者の健康と生活について十分な対策が講じられていなければならな
い。
交代制勤務編成の最低の基準としては,以下のとおりである。
①交替制勤務による週労働時間は,通常週において40時間を限度と
し,その平均算出期間は2週間とする。
②深夜業に算入する時間は,現行の22時から5時までの規定をさら
に拡張し,21時から6時までを当面の目標として再検討すべきであ
る。
③深夜業を含む労働時間は,1日につき8時間を限度とする。ただし,
作業負担が身体的および精神神経的に軽度な断続的業務に関しては,
拘束12時間まで延長することができるものとするが,その場合はこ
の勤務が連続しないようにする。
④作業の性質に応じて,一連続作業時間と休憩を適切なものとする。
食事休憩時間は,十分な食後休養がとられるよう少なくとも45分以
上を確保しなければならない。
⑤深夜業を含む勤務では,勤務時間内の仮眠休養時間を拘束8時間に
ついて少なくとも連続2時間以上確保することがのぞましい。
⑥深夜勤務は原則として毎回1晩のみにとどめるようにし,やむをえ
ない場合も2~3夜の連続にとどめるべきである。ただし,身体的も
しくは精神的に負担の著しい勤務にあっては,深夜勤務の連続を禁じ
なければならない。
⑦各勤務間の間隔時間は原則として16時間以上とし,12時間以下
となることは厳に避けなければならない。やむをえず16時間以下と
なるときも,連日にわたらないようにする。深夜勤務後には24時間
以上の勤務間隔をおき,できるだけ夜勤明け日のつぎに休日が続くよ
うにする。
⑧月間の深夜業を含む勤務回数は8回以下とすべきである。
⑨年次有給休暇を除く年間休日数は,平均週休2日に国民の祝祭日を
加えた日数を常日勤者なみに確保する。各休日は一暦日を含むものと
し,休日1日の場合は一暦日を含む連続36時間以上,休日2日は連
続60時間以上とする。
⑩年次有給休暇日数は,交代制勤務に配置される初年度から年間4週
相当以上とする。その完全な取得がはかられるよう,また欠勤者の生
じたための連勤が避けられるよう,適正な数の予備要員の配置が義務
づけられていなければならない。
⑪週末に該当する休日日数の増加をはかり,とくに週末休日が連休と
なる回数をふやすことがのぞましい。
⑫融通性ある交代制勤務の導入につとめるべきである。
(ウ)国立精神・神経センター精神保健研究所の内山真氏による「精神疾
患発症と長時間残業との因果関係に関する調査-睡眠と精神障害との関
係に関して-」と題する研究報告書(甲34)
交替勤務に従事した年数がうつ病発症の危険率を高めることは明らか
になった。
このメカニズムとして,交替勤務を続けることによる身体的・精神的
ストレス,家族関係や社会的交流の問題,疲労による身体疾患の合併な
どが介在する頻度が高く,かつ長期間においても順応しにくいものであ
る。この点から,交替勤務に伴う睡眠障害や睡眠不足がうつ病の直接の
リスクとなりうる可能性も高いことが考えられた。
実験的睡眠不足状態において,4時間睡眠を1週間にわたり続けると
健常者においてコルチゾール分泌過剰状態がもたらされるという実験結
果もある。
これらを総合すると,4~5時間睡眠が1週間以上とつづき,かつ自
覚的な睡眠不足感が明らかな場合は精神疾患発症,とくにうつ病発症の
準備状態が形成されると考えることが可能と思われる。
(エ)産業医科大学作成の「深夜業の健康影響に関する調査研究」(平成
13年)(乙114)
深夜・交替制勤務労働者に対する配置転換事例等について産業医にア
ンケートを行った結果は,配置転換になった理由として最も多かった回
答は,精神神経疾患(44例,21.3%)であり,続いて糖尿病であ
った。
(オ)医療法人社団ウェルネス望洋台医院の藤田正彦医師の意見書(甲7
6の2)
夜勤中であっても,90分単位の睡眠サイクルを超える2時間程度の
仮眠(アンカー睡眠)を午前1時から5時ころの間に職員同士で交替し
てとる体制を取り入れて概日リズムに基づくヒトの睡眠欲求を多少でも
解消する工夫が必要である。また,「日勤→准夜勤→深夜勤務→休日→
日勤」というように交代勤務を編成するもので,生活サイクルを後向き
に遅らせながら就労と睡眠を繰り返すことができるので体に無理のない
勤務編成になるし,交代勤務の編成には周期性や規則性をもたせ,不規
則な交代勤務の編成は避けるなどの対策が必要である。
しかしながら,郵便事業株式会社の実施している交替勤務編成の手法
は,「深夜勤」からアンカー睡眠を排除した上で,「深夜勤」を連続操
業させることにより従業員から連日に亘り夜間睡眠と正常な食事時間の
機会を奪い,更にはほぼ1週間毎に昼夜逆転の生活サイクルを交互に繰
り返すことで,身体の生活順応の機会を恒常的に逃している点などから
鑑み,前代未聞の過酷な労働条件を強いる方法と言わざるを得ない。
(カ)「交替制勤務者の健康管理」と題するリーフレット(乙119)
交替制勤務に従事することになった場合の時間管理で大切なことは1
日24時間のサイクルを基本としたリズムを中心に,約1週間を単位と
して健康を保つための活動と休養のリズムをトータルで作り,これを崩
さないように努めることである。
睡眠は,疲労回復のために欠くことのできないものであり,夜勤明け
に帰宅した場合には,早めに眠るようにして,少なくとも昼間の睡眠の
ためにゆっくり寝ていられる一定時間を確保することが必要である。交
替勤務者は,とかく昼間の時間を得したように感じて,家の仕事を手伝
ったりしてしまいがちだが,家族の方からもブレーキをかけるような協
力体制が必要である。
適度の休憩,休息は疲労の予防と回復に極めて大切である。また,夜
勤の勤務開放時間などにはできるだけ仮眠をとるようにすべきであり,
比較的短時間(30分程度でも効果がある。)の睡眠でも,生体リズム
を整えるのに有効である。
2争点に対する判断
以上の認定事実及び第2の1の事実を踏まえて判断する。
(1)争点(1)(本件協約の効力)について
ア公社協約の締結について
(ア)郵政事業庁及び公社からの提案を受け,全逓内部でその提案内容が
周知され,第57回定期全国大会において,執行部の基本スタンスが質
疑,討論を経て(このなかでは,原告らの所属する地方本部の代議員を
含む複数の代議員から,連続「深夜勤」指定や特例休息とカット時短の
廃止について強い消極論が示された。),一票投票が実施されて,「勤
務時間の見直し」についての最終判断は本部に一任されたことが認めら
れる。
そして,同定期全国大会以後は,公社と全逓本部との交渉が地方本部
を通じて各分会に伝えられ,その意見の集約スケジュールも示され,各
地方本部で意見集約が行われた後,要求書がまとめられて,これに対し
公社が最終回答を示し,大綱整理をへて,公社協約の締結に至っている
(1(3)ア,イ)。
このような経緯からして,全逓は,公社協約については,その内部の
適式な手続を経てされた意見集約の結果をふまえて同協約の締結に臨ん
だというのが相当であり,意見集約が十分でなかったとか,締結手続に
瑕疵があるということはできない。
(イ)原告らは,職場での周知が十分でなかった,検討期間が短かった,
執行部提案は現場の実情を酌んでいない,と主張する。
しかしながら,原告らの主張するところでも前記全国大会の1か月前
には公社提案を了知したのであるし,証拠(甲59ないし62,証人P
11,原告P1本人,同P2本人)のとおり同全国大会の後の意見集約
の期間が十分でなかったとしても,同全国大会で最終判断が本部に一任
された以上,その後の意見集約のための期間が従前より短くなるのはや
むを得ないところである。また,執行部提案が現場の実情を酌んでいな
いというのは,原告らの意見が反映されていないという不満を述べてい
るにすぎず,そうであるからといって手続的瑕疵があるということには
ならない。
したがって,原告らの前記主張は採用できない。
イ旧協約及び本件協約の締結
旧協約及び本件協約の締結についても,日本郵政株式会社が民営・分社
化後の労働条件の方向性について,全逓の第121回中央委員会の約2か
月前には全逓を含む関係労働組合に示しており,その中で「深夜勤」を含
む勤務時間に関する民営化時の制度の方向性についても,公社時と同様と
したい旨明らかにしていたのであり,また,全逓の第63回定期全国大会
の3か月前には,公社の運用規則等で定める「10深夜勤」についても郵
便事業株式会社においても実施することを示していたのである。そして,
同定期全国大会では,深夜勤を含む勤務時間について「現行制度と同様と
しているため了とします。」という本部の運動方針が,質疑,討論を経て,
一票投票が実施されて,賛成97パーセントという比率で承認されたこと
が認められる。そして,全逓は,この運動方針に基づき,日本郵政株式会
社との間で,旧協約を締結したことが認められる(1(5)ア)。
また,本件協約は,全逓と全郵政が統合してJP労組が結成されたこと
を受けて,被告とJP労組との間で締結されたものであるが(1(5)イ),
旧協約と同一内容であり,JP労組の前身である全逓と全郵政がともに旧
協約を承認していたことからすると,本件協約は旧協約を再確認したとい
う性格のものであることが認められるから,従前と内容が変わらない限り,
特段の内部意見集約手続を要しないものといえる。
この点,旧協約及び本件協約について,職場の意見集約が十分でなかっ
たことを示す証拠はない。
したがって,全逓及びJP労組は,旧協約及び本件協約については,そ
の内部の適式な手続を経て各協約の締結に臨んだというのが相当であり,
締結手続に瑕疵があるということはできない。
ウまとめ
してみると,公社協約,旧協約及び本件協約のいずれについても,原告
ら所属の労働組合(全逓,JP労組)の内部手続に瑕疵があるとはいえな
いし,また,後記(2)で認定,判断するところによっても,原告らを含む
一部組合員をことさらに不利益に扱うことを目的として締結されたとはい
えない。
したがって,公社協約,旧協約及び本件協約のいずれについても,原告
らに対し効力(拘束力)が及ぶと解するのが相当である。
(2)争点(2)(連続「深夜勤」指定の違法性)について
アはじめに
労働協約の拘束力があるとしても,その内容が公序良俗等反する等の無
効原因があれば,当該協約及びこれに基づく就業規則,そして勤務指定も
無効となり得る。その観点から検討をすることとする。
イ原告らの指摘する不利益
(ア)「深夜勤」の連続指定等,深夜帯の交替勤務によって従事者に対す
る健康への相当程度の影響があることは否定できないところである。特
に,概日リズムの乱れによる睡眠障害,疲労蓄積によるストレスにより,
抑うつ症状,うつ病の発症に罹患する率が高まることが指摘されている
ことが認められる(1(9))。
もっとも,健康への悪影響をもたらす危険性が内在するからといって,
そのような業務を命ずる雇用契約等が直ちに無効であるとはいえない。
(イ)一方,深夜交替制勤務を実施している民間事業所においては,1か
月当たりの深夜帯勤務時間数は,20時間以上40時間未満とする事業
所が最も多くて,全体の3割弱を占めている一方,原告らの1勤務指定
期間(4週間)当たりの「10深夜勤」の指定回数は,概ね4回ないし
6回であり(別表1,3の勤務パターン),これに1回の深夜帯勤務の
時間数6時間(午後10時から午前5時までの7時間から休憩時間1時
間を減じた時間数)を乗じると,原告らの深夜帯勤務の時間数合計は1
勤務指定期間(4週間)あたり24時間ないし36時間となる(6時間
×4ないし6回=24時間ないし36時間)。
また,深夜交替制勤務を実施している民間事業所においては,1か月
当たりの深夜勤務回数は,10回から14回が最も多くて全体の3割強
を占めている一方,被告の従業員に対する1勤務指定期間中の勤務指定
回数については,「10深夜勤」は8回,「8深夜勤」は8回又は10
回との目安を設けており,(少なくとも,原告らについて)これを超え
る勤務指定は行われていない。
さらに,被告は,深夜業務従事者に対する配慮として,通常の4時間
につき15分の休息時間のほか,「10深夜勤」につき60分,「8深
夜勤」につき45分の休息時間を付与し,勤務と勤務との間の時間外労
働を制限しているのである。
そうすると,被告による連続「深夜勤」指定による負担(不利益の程
度)が,我が国の他の民間企業等における深夜業に関する一般的状況に
照らし,深夜帯の時間数,実施回数,休憩時間という点からみて,過重
であるとまではいい難い。
(ウ)そして,被告は,深夜勤を含む深夜帯の勤務従事者については,健
康診断等の一般的対策のほか,自発的健康診断の経費負担,成人病検診
受診の自己負担分の助成,休憩室の確保,駐車場の確保等の配慮をする
とともに,夜間特別勤務手当を増額している(1(4)イ)。
ウ「深夜勤」の必要性,合理性
(ア)承継計画に規定されている経営方針等(1(4)ア(ア))及び郵便利
用が相対的に減少することが見込まれる一方で民間の新規参入により競
争が激化するという被告の郵便事業をとりまく情勢等(1(4)ア(イ))
からすれば,公社時代と変わらず,より高いサービスの提供(翌日配達
地域の拡大等)が不可欠であり,そのための業務繁忙に対応するために
「深夜勤」の継続実施は避けられないものといえる。
(イ)また,「新夜勤」のみでは拘束時間も長くなり,従業員の勤務管理
という面からしても,(ある程度規則的な)「深夜勤」の連続指定を認
めることが不合理とまではいえない。
エまとめ
してみると,連続「深夜勤」指定を定める就業規則等は,その不利益の
内容と程度,「深夜勤」勤務実施の必要性,合理性とを総合考慮するとき
は,憲法13条,18条,25条,国際人権規約A規約7条の趣旨を考慮
しても,公序良俗に反するとか強行法規に反するとはいえない(なお,安
全配慮義務に反することはそもそも無効原因ではない。)し,連続「深夜
勤」勤務を指定することも,(一般的には)違法無効とまではいえない
(原告らは,作業負荷や作業環境に関しても併せて主張しているが,それ
は連続「深夜勤」指定の問題ではなく,被告における業務態様(例えばJ
PS等)の問題であるから,その事情をもって連続「深夜勤」指定の効力
を論じることはできない。)。
(3)争点(3)(連続「深夜勤」に従事したことについての損害賠償請求権の有
無)について
ア原告らの連続「深夜勤」勤務とうつ病等の発症との因果関係
(ア)原告P1はα国際局で所定の連続「深夜勤」指定を受けて業務に従
事し,従事してから約3年後にうつ病を発症しているが,業務以外にう
つ病の発症となるような確たる要因を認めることができる証拠はない。
また,従事した「深夜勤」は,「10深夜勤1」,「10深夜勤2」,
「10深夜勤3」であり,休息・休憩時間とも,「10深夜勤1」,
「10深夜勤2」では15分又は31分,「10深夜勤3」でも40分
程度しかなく,証拠(原告P1本人)によれば,原告P1は,「深夜
勤」勤務中に仮眠室等で十分な仮眠を取ることができなかったことが認
められる。
してみると,深夜帯の交替勤務の健康への影響及び仮眠の効果をふま
えるときは,原告P1のうつ病の発症と連続「深夜勤」勤務との間には
因果関係があると認めるのが相当である。
(イ)原告P2はβ郵便局で所定の連続「深夜勤」指定を受けて業務に従
事し,従事してから約3年後にうつ状態に罹患していると診断されてい
るが,業務以外にうつ状態に罹患するような要因としては実母の介護に
よる心労がある(原告P2本人により認める。)が,それがどの程度の
強度のものであったかは明らかにされていない。
また,従事した「深夜勤」は,「10深夜勤2」であり,休息・休憩
時間とも,10分又は20分であり,証拠(原告P2本人)によれば,
原告P2は,「深夜勤」勤務中に仮眠室で十分な仮眠を取ることができ
なかったことが認められる。
してみると,深夜帯の交替勤務の健康への影響及び仮眠の効果をふま
えるときは,原告P2のうつ状態への罹患と連続「深夜勤」勤務との間
には因果関係があると認めるのが相当である。
イ安全配慮義務違反
被告は,自らが示したリーフレット(乙119)で,規則的な生活リズ
ムを守ることを規定しているのにもかかわらず,連続「深夜勤」の指定に
ついては,不規則な指定をしているのであり,また,不規則の深夜帯の交
替勤務については,うつ病等の精神障害の発症率がより高いことが指摘さ
れていることからすると,原告らに対する安全配慮義務違反(過失)があ
ると認めるのが相当である。
ウ損害額
損害額(慰謝料額)については,必ずしも当事者の主張に拘束されない
ところ,各原告の病状,休職期間,他の原因の関与(証拠(原告P2本
人)によれば,原告P2は,うつ病発症前に,重度の病気を抱えた母の介
護のため,心労を抱えていたことが認められる。),労働能力の喪失の程
度(原告らはいずれも職場に復帰しているが,深夜帯の勤務指定を受けず,
勤務を軽減されている。)等の事情を総合考慮し,原告P1については8
0万円,同P2については50万円を認めるのが相当である(なお,この
金額には懲罰的要素を含まない。)。
(4)争点(4)(連続「深夜勤」指定の差止請求権の有無)について
前記のとおり,就業規則等(及びこれと同内容の公社の新運用細則)は違
憲違法なものであって無効であるとはいえない。
また,被告は,医師の判断を尊重し,うつ病等を発症し自宅療養が必要で
あると診断された原告らに対しては「深夜勤」を含む深夜帯の勤務を指定し
ていない。
そして,原告らの健康状態が一定程度回復した場合に,被告が原告らに対
し業務上の必要性を勘案して「深夜勤」指定を再開したとしても,原告らの
回復状況いかんによっては,健康状態の悪化が必然的に招かれるとはいえな
いし,前記の被告の態度からすると,被告が原告らに対し「深夜勤」指定を
再開するかどうかについては,医師の判断を尊重して慎重に検討するであろ
うことが期待できる。
そうすると,原告らについては,少なくとも現在において,その生命,身
体が将来侵害されようとしている差し迫った具体的な危険があるとまではい
えないといわざるを得ない。
したがって,原告らの被告に対する人格権に基づく「深夜勤」指定の差止
請求は,これを認めることができない。
3結語
以上の次第であり,原告らの本訴請求は,連続「深夜勤」指定を受けて勤務
に従事したことによりうつ病等の健康被害等を生じたことについて,原告P1
につき80万円,同P2につき50万円の各損害金(慰謝料)の支払を求める
限度で理由があるから,その限度で認容することとし,その余の部分について
は理由がないから,棄却することとし,仮執行の宣言については,事案の性質
にかんがみ,これを付さないこととする。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第11部
裁判官鈴木拓児

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