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平成14年(行ケ)第381号 審決取消請求事件
平成14年12月10日口頭弁論終結
            判       決
     原         告    矢崎化工株式会社
     訴訟代理人弁理士       山 名 正 彦
     被         告    積水樹脂株式会社
     被         告    タキロン株式会社
     被告ら訴訟代理人弁理士    小 谷 悦 司
     同           川 瀬 幹 夫
          主       文
    特許庁が無効2001-35383号事件について平成14年6月12日
にした審決を取り消す。
    訴訟費用は被告らの負担とする。
        事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
  主文と同旨
2 被告ら
(1)原告の請求を棄却する。
(2)訴訟費用は原告の負担とする。
第2 特許庁における手続の経緯並びに審決の理由
  以下は,当事者間に争いがなく,かつ,証拠(甲第1号証~第3号証)及び
弁論の全趣旨によって認定できる事実である。
1 特許庁における手続の経緯
  被告らは,意匠に係る物品を「建築構造材用継手」とし,その態様を別紙審
決書写し別紙第一「本件登録意匠」記載のとおりとする意匠登録第1062965
号の意匠(平成9年11月26日出願(以下「本件出願」という。),平成11年
11月19日設定登録,以下「本件意匠」という。)の意匠権者である。
  原告は,平成13年8月29日,上記登録(以下「本件意匠登録」という。)
を無効とすることにつき審判を請求した。特許庁は,これを,無効2001-35
383号事件として審理し,平成14年6月12日,「本件審判の請求は,成り立
たない。」との審決をした。
2 審決の理由
  審決の理由は,別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本件意匠と,
原告が頒布したカタログ「ヤザキのプラスチックス ERECTOR イレクター
仕様書」(1979年印刷)において商品番号「J-16」として示されているも
のの意匠(その態様は,別紙審決書写しの別紙第二「甲号意匠」中の「J-16」
のとおりである。以下,本判決においても「甲号意匠」という。)とは,
ア 基本的構成態様において,全体が,正面視左方に,上方が開口した略Cの
字状の管(C型管)を配し,その右方に,短円筒状の管(円形管)を,やや間隔を
開けて平行に配し,その二つの管の底部を接線方向に,管壁と同厚の平板により接
合し,また,C型管の正面視右側の切断面から円形管の接線方向に,管壁と同厚の
平板により接合している点(以下「本件基本的構成態様」という。),
イ 具体的態様において,①C型管と円形管の長さを同長とし,その長さが,
外径の略2倍のものである点,②平面視において,その縦横比が,略2:3のやや
横長長方形状のものである点,③C型管と円形管について,その内径及び外径,ま
た,管壁の厚さがほぼ等しい点(以下「本件具体的態様」という。)
で共通するとしつつ,他方,
ウ ①C型管の開口部について,本件意匠は,左右の切断面の高さが同じであ
り,開口部が真上に向いているのに対して,甲号意匠は,左側の切断面の高さが右
側の切断面より高く,開口部が,正面視やや右向き(内向き)に配置されている
点,②本件意匠は,C型管の左側面,また,円形管の平面及び右側面に,その全長
にわたって,管外径の略1/4幅の帯状平面部を形成しているのに対し,甲号意匠
は,そのような平面部が形成されていない点,
 に差異があるとした上で,共通する点は,看者の注意を引かない微弱なもので
あるのに対し,ウの①の点は,類否判断に及ぼす影響は微弱であるものの,ウの②
の点は,十分な意匠的効果があり,類否判断に及ぼす影響は大きいものであって,
前記共通点は,この相違点を埋没させるほど強力な印象をもたらすものではないか
ら,結局,両意匠は類似しない,として,原告主張の無効理由を排斥するものであ
る。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
  審決は,本件意匠と甲号意匠との共通点,差異点の意匠的効果の評価を誤
り,その結果両者が類似しないとの誤った結論に至っているものであるから,取り
消されるべきである。
1 意匠に,ありふれた周知の形状が含まれている場合には,その部分は,一般
の需要者の注意を引くことはないから,意匠の要部とはなり得ない,との類否判断
の例は多く,審決も,そのような判断手法を採用したものと認められる。
  しかし,ありふれた周知の形状から成る意匠の外観に,意匠的効果のある差
異点(本件意匠でいえば,平面部)が現われているとき,それだけですべて非類似
の意匠となる,とはいえないはずである。判決例(東京高判昭和43年(行ケ)1
56号)においても,「物品の形状のみから成る意匠の全体的な形態がその意匠に
係る物品の基本的形態として周知であるときでも,全体的な形態が絶対に意匠の要
部(最も看者の注意を惹く点)になり得ないわけではなく,それが周知の形態でな
い場合に比べて,その重要性の比重が相対的に低下するにすぎないと解するのが相
当である。したがつて,本願意匠に前記配置に基づく全体的な形態のほかに看者の
注意を惹く点がないとすれば,右の全体的な形態がやはり本願意匠の最も看者の注
意を惹く点であるといわねばならない」,としている(甲第7号証)。
  別の判決例(東京高判昭和54年(行ケ)201号)でも,「意匠は,その
各構成部分を総合した全体的なまとまりとして,視覚的に看者に印象づけるもので
あり,ある部分が看者の注意を特にひく部分かどうかについても,その部分が全体
に対しどれだけ影響力を及ぼしているかを全体的に考究すべきものであることにか
んがみると,意匠の類否判断にあたつて,公知ないし周知の構成部分をたやすく除
外して類否の判断をするのは,相当でない。」,としている(甲第8号証)。
2 本件意匠に係る物品「建築構造材用継手」の主な需要者は,いわゆるDI
Y(DoItYourself)の製作を楽しむ一般消費者である。これらの需要者は,自ら
設計した作品を組み立てるに当たって,建築構造材をどのような態様で何本連結す
るかの観点から,適合する継手の種類や意匠を選択する。つまり,継手の基本的構
成態様及び具体的態様(全体的な形態)が,選別の決め手となる。本件意匠の「平
面部」のような,装飾的な部分には,何ら関心を持たない。
  「平面部」は,古来より種々の技術分野において,日常的に,丸棒や円管等
の表面を必要に応じて削除するなどして形成してきたものであり,格別創作という
ほどに目新しいものではない。
3 審決は,本件意匠の「帯状平面部」を意匠の形状要素として殊更に過大に評
価している。
  本件意匠の「帯状平面部」は,管外径の略1/4幅を有するとはいえ,各接
合管の正面と背面及び平面の中心線に沿う3箇所の部位にのみ,その全長にわたっ
て実質3本,各接合管の強度に影響を及ぼさない程度に薄く形成しているにすぎ
ず,その存在感と視覚的印象は極めて薄弱である。
  当該物品の需要者にとっても,注意を引かず,存在意義をにわかには理解し
難い形状要素である。
4 本件意匠においては,本件基本的構成態様及び本件具体的態様(全体的な形
態)のほかには,看者の注意を引く点がないのであるから,これが,要部となる。
これを前提として判断すれば,本件意匠と甲号意匠とは類似するというべきであ
る。
5 本件意匠に係る物品であるプラスチック製ジョイント(継手)においても,
同じ用途・機能を持ちつつ,多様な形態があり得る。機能上必然の形態であると
か,共通する形態を採らざるを得ないとの主張には理由がない。
  本件意匠を実施した物品は,甲号意匠を実施した物品のデッドコピーといっ
ても差し支えないものである。
第4 被告らの主張の要点
1 一般に,出願意匠ないし登録意匠と引用意匠との類否判断においては,侵害
訴訟において行われる意匠の類否判断におけるのとは異なり,出願意匠ないし登録
意匠の側の登録適格性,すなわち,当該意匠に公知の引用商標にはみられないよう
な,看者の注意を引く点が存するか否かが問題とされる。
  出願意匠ないし登録意匠と引用意匠との間に共通する部分があったとして
も,これがありふれたものであるのに対し,出願意匠ないし登録意匠に,引用意匠
にはみられない看者の注意を引く点が存し,その結果,両意匠が全体観察上看者に
異別の印象を与える場合は,出願意匠ないし登録意匠は,引用意匠とは類似しない
意匠と認められる。
  判決例においても,「建築用コンクリートブロツクもしくは構築用ブロツク
にあつては,横長のほぼ直方体状としてその側方中央に帯状の凹みを設け,上面に
透孔部を同じ間隔をおいて設けるという構成はきわめて周知な態様であつて,この
ような態様のものとして認識できる建築用もしくは構築用ブロツク自体は,一般需
要者にとつてきわめてありふれたものであることが認められる。
  したがつて,一般の需要者としても,右のごとき周知な構成部分をもつ構築
用ブロツクを看る場合には,このありふれた構成部分を把えて意匠としての特徴点
とは考えず,むしろ,それ以外の形状及び模様の部分にその意匠の特徴を見い出す
ものと考えるのが妥当である。」(東京高裁昭和54年(行ケ)第220号・乙第
2号証),「工業製品に係る意匠は,需要者の嗜好の変遷や技術面での進歩などに
応じて変化するものであり,その意匠の変化は,それまでの意匠を何らかのかたち
で前提とした段階的なものとなるのが普通である。したがつて,登録出願に係るあ
る意匠が意匠法第三条第一項第一,二号に規定された引用意匠に類似する意匠かど
うかを判断するにあたり,当該出願意匠の特徴点を認定する場合においては,その
意匠登録出願当時のその意匠の属する分野における一般的な意匠の傾向やその普及
の程度など意匠出願の背景などを勘案すべきものである。登録出願に係る意匠の構
成のうちで,出願当時において需要者がしばしば目にするようなありふれた部分
は,看者の注意を惹く箇所とは到底いえないし,そこにいわゆる意匠の要部がある
ともいえないからである。」(東京高裁昭和63年(行ケ)第131号・乙第4号
証),としている。
2 甲号意匠に係る物品を含むプラスチック製ジョイントは,すべて断面円形の
複数のパイプを種々の方向に種々の角度で接合したり,本件意匠のように2本のパ
イプを平行状態で接合したりすることにより,購入者が所望する棚や机や椅子など
の多種多様の構造体を購入者自らが組み立てる,いわゆるDIY商品に用いるジョ
イントであって,接続する断面円形のパイプを嵌入する断面円形や断面Cの字状の
複数の短管を種々の方向,種々の角度に板状のリブ等で接続して成るものである。
いずれも断面円形パイプを種々の方向,種々の角度や平行状態に接合せんとする機
能を達成する上で,ほとんど必然的に決まる形態によって,大部分が占められてい
る。甲号意匠も,本件意匠の出願の約18年前から公知,周知の形状として需要者
に知られている,ありふれた形状である。
3 甲号意匠と本件意匠とは,審決でも認定されているとおり,前記第2の2の
アの本件基本的構成態様及び同イの具体的態様の①ないし③が共通している。これ
らの態様は,いずれもありふれたものである。
  他方,丸棒や円管等の表面を,必要に応じ,適宜削除することが目新しいこ
とではないとしても,C型管の左側面,また円形管の平面及び右側面に,その全長
にわたって形成された管外径の略1/4幅の帯状の平面部は,従来全く存在しなか
った特異な構成部分である上,現実にも,本件意匠の外観の主要部における差異,
すなわち,目立ちやすい差異となり,本件意匠の特徴点を形成している。
  一般に,意匠を部分部分に分解すればすべて幾何学上のありふれた形態とな
ることは,いうまでもないことである。それらのありふれた形態を組み合せること
により全体として看者に新鮮な印象を与えるところにこそ,新しい意匠の創作とい
うものがあり得るのである。
4 甲号意匠も本件意匠も,平行状態に配設された2本の断面円形パイプの1本
にC型割管を嵌着して接着固定し,他方のパイプに短円管ソケットを回動自在に挿
着してヒンジとしての用途及び機能を有するようにしたものである。いずれも,そ
の用途及び機能を達成する必要上,ヒンジとなる断面円形パイプを回動自在に接合
するための断面円形の短円筒状ソケットと,他方の断面円形パイプに外嵌して接着
固定できるように断面円形の短円筒の一部を切り欠いたC型割管状のソケットとを
平行状態に接合することとし,そのために,上記2つの管の底部を,接線方向に,
管厚と同厚の2枚の平板により接合して成るもので,機能上必然的に決まる形態で
ある。
  機能は,本来,特許,実用新案で保護されるべきものであって,意匠の保護
対象ではない。本件意匠と甲号意匠とで共通する本件基本的構成態様及び本件具体
的態様は,意匠の保護対象とはいえない,機能に由来する形態であるから,これが
類似するからといって,本件意匠と甲号意匠が類似することになるものではない。
第5 当裁判所の判断
1 本件意匠及び甲号意匠の共通部分の評価のあり方について
(1)本件意匠にと甲号意匠に係る物品は,いずれも,いわゆるDIY製品とし
て,パイプとともに用いられ,構造体(物置・棚・台等)を組み立てるのに用いら
れるものである。
  両者とも,平行状態に配設された2本の断面円形パイプを連結させるため
に用いられるものであり,そのうちの1本のパイプにC型割管を嵌着し,他方のパ
イプを短円管ソケットに挿着して,例えばC型割管にパイプを嵌め込む際,接着剤
を用いて接着固定して,ヒンジとしての用途及び機能を果たさせるものである。
  この用途及び機能を達成する必要上,ヒンジとなる断面円形パイプを回動
自在に接合するための断面円形の短円筒状ソケットと,他方の断面円形パイプに外
嵌して接着固定できるように断面円形の短円筒の一部を切り欠いたC型割管状のソ
ケットを,平行状態に接合することとし,そのために,これら二つの管の底部を接
線方向に,管厚と同厚の2枚の平板により接合している。
  両意匠は,審決において認定されたとおり,
ア 本件基本的構成態様,すなわち,全体が,正面視左方に,上方が開口し
た略Cの字状の管(C型管)を配し,その右方に,短円筒状の管(円形管)を,や
や間隔を開けて平行に配し,その二つの管の底部を接線方向に,管壁と同厚の平板
により接合し,また,C型管の正面視右側の切断面から円形管の接線方向に,管壁
と同厚の平板により接合している点,
イ 本件具体的態様,すなわち,①C型管と円形管の長さを同長とし,その
長さが,外径の略2倍のものである点,②平面視において,その縦横比が,略2:
3のやや横長長方形状のものである点,③C型管と円形管について,その内径及び
外径,また,管壁の厚さがほぼ等しい点
で共通し,
ウ ①C型管の開口部について,本件意匠は,左右の切断面の高さが同じで
あり,開口部が真上に向いているのに対して,甲号意匠は,左側の切断面の高さが
右側の切断面より高く,開口部が,正面視やや右向き(内向き)に配置されている
点,②本件意匠は,C型管の左側面,また,円形管の平面及び右側面に,その全長
にわたって,管外径の略1/4幅の帯状平面部を形成しているのに対し,甲号意匠
は,そのような平面部が形成されていない点
で相違している。
  原告は,甲号意匠を採用したジョイントを,遅くとも昭和54年ころから
販売しており,甲号意匠は,遅くとも本件出願時までに,周知となっていたものと
認められる。
(甲第1号証の1ないし第5号証,弁論の全趣旨)
(2)ある意匠において,周知ないし公知であり,ありふれたものとなっている
部分が,当該意匠の要部,すなわち,看者の注意を最も強く引く部分となることは
いくらでもあり得る。ありふれた部分を含む意匠を全体的に観察する際,ありふれ
た部分も,何らの美感をも与えないというわけではなく,よくあるものであるとの
印象(これも一つの美感である。)を看者に与えることは当然であり,当該意匠中
の他の部分に,ありふれた部分が与えるこの印象(美感)を超える美感を生じさせ
るだけの力がない場合には,結局,ありふれた部分が,最も強く看者の注意を引く
部分,すなわち,当該意匠の要部ということになるのは,当然である。ありふれた
部分であるからといって,当然に,看者に与える印象が微弱であって,要部に該当
しないということはできない。誇張していえば,むしろ,現実に世にある多くの意
匠の大半は,このようなものであるということも許されるであろう。
(3)本件意匠ないし甲号意匠を採用する物品(ジョイント)は,前記のとお
り,いわゆるDIY製品であり,その需要者は,それを用いて種々の構造物を作る
ための部品としてみるのであるから,まず,本件基本的構成態様及び本件具体的態
様に着目し,これに基づいて物品の取捨選択をすると考えられる。そうである以
上,それがありふれた,周知のものであるからといって,そのことだけで,看者に
与える印象が微弱なものであるということはできない。
  もっとも,両意匠の上記共通点(本件基本的構成態様及び本件具体的態
様)が看者に与える印象が微弱なものであるとはいえないとしても,本件意匠と甲
号意匠との相違点に係る部分,とりわけ審決の強調する「帯状平面部」の有無が,
意匠の全体的観察において,看者に強烈な印象を与えるなどして,最も看者の注意
を引くものとなり,全体として甲号意匠とは異別の印象を与えるだけの力のあるも
のであれば,両者は類似しないことになる。
  結局,両意匠の類否は,それぞれを,その各部の看者に与える印象の強さ
を総合考慮して全体的に観察して決すべき事柄であるという以外にない。しかし,
その際,ありふれたものである本件基本的構成態様及び本件具体的態様が看者に与
える印象は微弱なものである,との前提に立って判断することは,正しくないとい
うべきである。
2 本件意匠と甲号意匠との類否判断について
(1)本件意匠には,審決認定のとおり,それぞれその長手方向に沿って,短円
形管部に2か所,C型管部に1か所「帯状平面部」が設けられている。しかし,こ
れは,各外周の一部をごく薄く削り取って形成したようなものにすぎず,設けられ
た個数も3か所しかないこと,丸棒や円管の表面を必要に応じ適宜削除すること
は,種々の分野において古くから行われてきた,ありふれた手法であること(弁論
の全趣旨)からすれば,そもそもこれ自体,立体物である現実のプラスチック製ジ
ョイントにおいて,看者の注意を引く力がそれほど強いものと認めることはできな
い。また,この帯状平面部は,DIY製品の機能・用途には,基本的に無関係なも
のと認められる(甲第1号証の1,第2号証)。
  そうすると,前記のとおり,この種DIY製品において,需要者が,まず
部品としての機能・用途により製品の取捨選択を決めることからは,本件基本的構
成態様及び本件具体的態様がまず注目されると考えるのが合理的であり,これらを
差し置いて,この帯状平面部が最も強く看者の注意を引く部分であると認めること
はできず,同部分の与える印象は,むしろ,周知の,ありふれた本件基本的構成態
様及び本件具体的態様の与える印象に埋没してしまうものとすら認められるのであ
る。
  いわゆるDIY製品であるプラスチック製ジョイントにおいて,円筒状の
部材の外周の一部を削ったようにして形成された帯状平面部が,最も看者の注意を
引く部分となることが,およそあり得ないというわけではない。しかし,前記のよ
うな,本件意匠における帯状平面部の個数,形状,丸棒や円管の表面を必要に応じ
て適宜削除することはありふれた手法であるとの事実,本件意匠が用いられる商品
の性質,用途,一般的な需要者の製品選択のあり方などを総合考慮すると,それ
が,最も看者の注意を引く部分,すなわち要部であると認めることはできないとい
う以外にない。
(2)被告らは,本件基本的構成態様及び本件具体的態様は,機能上必然的に決
まる形態であるから,意匠法における類否判断をするに当たり考慮するのは相当で
ない,と主張する。
  仮に,本件基本的構成態様及び本件具体的態様が機能上必然的に決まる形
態であるとしても,意匠法における類否判断をするに当たり,これを考慮の対象か
ら外すことに,何らの合理性も認めることはできない。意匠法において,二つの意
匠の類否は,それぞれの意匠が全体として与える美感の対比により決定されるべき
事柄であり,そうである以上,各意匠を構成する態様は,すべて,それが何に由来
するものであろうと,考慮に入れられなければならないことになるのは,当然のこ
とであるからである。
  なお,本件で,原告は,甲号意匠につき意匠法上の権利保護を求めている
ものではなく,むしろ,被告らが本件意匠につき意匠法による保護を得ることの妥
当性を問題にしているのであることに留意すべきである。本件意匠の登録を無効と
したからといって,原告が,何らの意匠法上の権利も取得するものではないこと
は,論ずるまでもないことである。
  被告らの主張は,失当である。
  付言するに,本件基本的構成態様及び本件具体的態様を採用する意匠の中
でも,様々なバリエーション(変形物)が考えられる。本件に即していえば,C型
管の開口部の向きや,帯状平面部の形状(面積)・個数には,多数のパターン
(型・種類)が考えられ,ものによっては,甲号意匠とは類似しないと判断される
場合もあり得ると認められる。
3 以上のとおりであるから,両意匠の類否についての審決の認定判断は,共通
点である本件基本的構成態様及び本件具体的態様の与える美感を不当に軽視し,相
違点に係る帯状平面部の与える美感を不当に重視したものというべきであり,この
誤りが,その結論に影響することは,明らかである。
4 結論
 以上のとおりであるから,原告の主張の取消事由には理由がある。そこで,
原告の本訴請求を認容して審決を取り消すこととし,訴訟費用の負担について,行
政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
  東京高等裁判所第6民事部
           裁判長裁判官    山  下  和  明
              裁判官     設  樂  隆  一
 
              裁判官    高  瀬  順  久

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