弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
原判決を取り消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第1 控訴の趣旨
 主文同旨
第2 事案の概要
 事案の概要は,次のとおり付加,訂正するほか,原判決「事実及び理由」の第2
のとおりであるからこれを引用する。
1 原判決2頁1行目の「21号証」の後に「,乙50号証」を付加し,5行目の
「規定される」を「規定されている」と,8行目の「関する」を「要する」とそれ
ぞれ改める。
2 原判決3頁12行目の「118件」を「120件」と,13行目の「5件」を
「9件」と,15行目の「113件」を「111件」と,19行目の「543戸」
を「516戸」とそれぞれ改める。
3 原判決4頁2行目を「本件利子補給は,地方自治法232条の2にいう「公益
上必要がある場合」における補助に当たるか,が本件の争点である。」と,5行目
の「公益上の」を「公益上」とそれぞれ改める。
第3 当裁判所の判断
1 差止訴訟の訴訟要件について
 本件利子補給は,これが違法である場合には,上記の支出予定総額の大きさに照
らせば,支出後にこれを是正,回復することは困難であると認められ,本件は,地
方自治法242条の2第1項ただし書にいう「当該行為により普通地方公共団体に
回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合」に該当する。
2 本件利子補給の公益上の必要性について
 地方自治法232条の2は,普通地方公共団体は,その公益上必要がある場合に
おいては,寄附又は補助をすることができる旨規定しており,普通地方公共団体が
補助金を支出できるのは,公益上の必要性がある場合に限られている。
 そこで検討するに,上記のとおり,αにおいては昭和50年代初めをピークに人
口の伸びが止まり,本件要綱が定められた平成3年前後では人口が漸減傾向にあっ
たもので,本件要綱は,過疎化対策の一環として,数世代にわたる定住者を増加さ
せるため,親がαに在住する若い世代の住民に対し,住宅整備に要する融資につき
一人当たり年額25万円を上限として最長10年間に限り利子の補給を行うものと
し,これに基づいて本件利子補給がされているのであるから,本件利子補給が,定
住を促進し過疎化を防ぐという公益上の必要に基づいてされたものであることは明
らかである。
 確かに,被控訴人の指摘するように,αの住民であっても親が住民でない者は補
助を受けられないという一見不平等な結果が生じることは否定できないが,これは
本件要綱が親子2,3世代が共に生活を送ることを特に目的としていることからく
るもので,そのような政策目的の立て方は控訴人の合理的な裁量の範囲内のものと
いえ不当なものとは考えられないから,結果として補助を受けられる住民とそうで
ない住民が生じるからといって,本件利子補給の公益上の必要性が失われることに
はならないというべきである。また,本件利子補給には個人の資産形成を助長する
という側面があり,高額所得者であっても所定の要件を満たせば受給できることも
被控訴人が指摘するとおりであるが,これによって,数世代にわたる定住者の増加
を図るという本件利子補給の制度趣旨が損なわれるわけではなく,受給者一人当た
りの補給額は年間25万円が上限であることに照らすと,定住促進という目的を離
れて個人に利益を与えているともいえないから,やはり公益上の必要性が欠けるこ
とにはならない。
3 結論
 以上のとおり,本件利子補給には公益上の必要性があると認められるから,これ
が地方自治法232条の2にいう「公益上必要がある場合」という要件を欠いた違
法なものであることを前提とする被控訴人の請求は理由がない。
 よって,これと結論を異にする原判決は失当であるから取り消し,被控訴人の請
求を棄却する。
(口頭弁論終結の日 平成14年3月19日)
福岡高等裁判所宮崎支部
裁判長裁判官 馬渕勉
裁判官 黒津英明
裁判官 岡田健

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