弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告理由第一点について。
 原判決は、上告人提出の証拠方法のうちには、埋立による耕地の増大等予想され
る各種の利益よりも被害の方が大きいことを認めるに足りるようなものは存在しな
旨を判示し趣旨と解すべきであるから、原判決に所論の違法があるということはで
きない。所論は採用のかぎりでない。
 同第二、第三点について。
 原判決(及びその引用する一審判決)は、行政処分としての埋立免許(公有水面
埋立法二条)乃至承認(同法四二条)が当然無効のものでないかぎり、右行政処分
の取消訴訟を提起し、判決による取消を得た上でなければ、埋立乃至干拓工事の中
止等を求める上告人の請求は是認し難いものであるとした上で、出訴期間の徒過に
より判決による取消の途はもはや存在せず、また、右免許乃至承認が仮に違法の処
分であるとしても当然無効の処分とはいい得ないから、上告人の右請求は是認でき
ない旨を判示した趣旨と解すべきである。原審の右判断は相当であり、原審の結論
に到達するために右行政処分が適法要件を具備するものであることをとくに説示す
る必要はなく前述のように、右処分が仮に違法であるとしても当然無効でない旨を
判示すれば十分である。所論は、原判決を正解しないことに基くものでなければ、
独自の見解の下に原判決を非難するものであつていずれも、採用のかぎりでない。
 同第四点について。
 本件記録によれば、原審における昭和三四年六月二〇日午前一〇時の口頭弁論期
日(上告人出頭)において、弁論が終結され、同年七月一四日午前一〇時の判決言
渡期日が指定・告知され(記録五〇七丁以下)、次いで、右七月一四日午前一〇時
の期日(当事者双方不出頭)において、判決言渡が延期され、同年八月六日午前一
〇時の言渡期日が指定・告知され(記録五一二丁)、右期日において(当事者双方
不出頭)判決が言い渡された(記録五一三丁)ことは明らかである。右経過によれ
ば、判決言渡の手続に何等違法はなく、所論の非難の当らないことは明らかである。
 同第五点について。
 乙第八号証の一乃至一〇は記録二三五丁乃至二四六丁に、乙第九号証の一、二は
記録二四七、二四八丁に編綴されている。また、所論の答弁書(第一審における昭
和三一年二月二八日答弁書、記録三七丁)には副本を領収した旨の上告人の認印が
あり、上告人が副本を受領していることは明らかであるから、改めてこれを送達し
なかつたからといつて何等違法ではない。それ故、所論は、すべて採るに足りない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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