弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
       事   実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1) 原告が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律3条に基づき,被告
の保有する別紙文書目録記載の各行政文書について,平成13年7月6日付けで行
った開示請求に対し,被告が同法9条1項又は同条2項に基づく決定をしないこと
は違法であることを確認する。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 本案前の答弁
(1) 主文第1項同旨
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1) 被告は,別紙文書目録記載の各行政文書(以下「本件行政文書」とい
う。)を保有する行政機関である外務省の長である。
(2) 原告は,平成13年7月6日付けで,行政機関の保有する情報の公開に関
する法律(以下「情報公開法」という。)3条に基づき,被告に対し,本件行政文
書の開示請求(以下「本件開示請求」という。)をした。
(3)ア 開示請求に対して,行政機関の長は,当該開示請求に係る行政文書の全
部若しくは一部を開示するか,又は全部を開示しないかを決定し(以下「開示決定
等」という。),これを開示請求者に対して通知することが義務づけられている
(情報公開法9条1項,2項)。
イ 開示決定等は,開示請求があった日から30日以内(本件の場合は平成13年
8月6日まで)に行わなければならないものであり,例外的に「事務処理上の困難
その他正当な理由があるとき」に限り,この期間を30日以内に限り(本件の場合
は平成13年9月4日まで)延長することが許されている(同法10条1項,2
項)。
ウ さらにその例外として,「開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため,
開示請求があった日から60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることに
より事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合」には,上記アイの制約を
免れるが,その場合にも,①「開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分」につ
いては,上記ア又はイの期限内に開示決定等を行う義務,②残りの行政文書につい
ても,相当の期間内に開示決定等をする義務は免れることができず(同法11条前
段),この場合には,その適用理由とあわせて,②の残りの行政文書について「開
示決定等をする期限」を明示することが義務づけられている(同条後段)。
(4) 被告は,平成13年8月6日付けで,原告に対し,「開示決定等の期限の
延長等について」と題する通知を発した。同通知の内容は,本件開示請求について
情報公開法11条を適用し,「平成13年9月4日までに可能な部分について開示
決定等を行い,残りの部分については,平成13年10月4日までに開示決定等す
る予定です。」というものであった。
(5) しかし実際には,平成13年9月4日の法定延長期限はもとより,同年1
0月4日の特例延長期限に至っても,本件行政文書について開示決定等は全くなさ
れなかった。
(6) 平成13年10月4日付けで,外務省大臣官房総務課情報公開室名義の
「開示決定等に関するお知らせ」と題する文書が原告に送付された。この「お知ら
せ」の内容は,「開示決定等を行うための事務処理に想定外の時間を要すること,
予測し得ない事務の繁忙が生じたこと等,事情の変化により,既にお知らせした期
限までに開示決定等を行うことができなくなりました。可及的速やかに本件に係る
事務処理体制を整備し,開示決定等の新たな期限を通知する所存です。」というも
のであって,新たな開示期限を明示するものではなかった。
(7) その後も,本件開示請求に対して開示決定等はなされていない。情報公開
法10条の応答期限を徒過したことは,とりもなおさず行政事件訴訟法3条5項の
「相当の期間」を徒過したことを意味する。
(8) よって,原告は,被告が本件開示請求に対し開示決定等をしないことが違
法であることの確認を求める。
2 本案前の主張
 被告は,本件開示請求に対して,平成14年2月26日付けで開示決定等(以下
「本件開示決定等」という。)を行った。
 したがって,本件訴えは,訴えの利益を欠く不適法なものである。
3 本案前の主張に対する反論
(1) 被告が本件開示決定等をしたことは認める。
 その具体的内容は,①別紙文書目録1の在フィリピン大使館における便宜供与フ
ァイルについては243件の存在を認めた上で,うち36件につき全部不開示,残
りの207件につき一部不開示,②同目録2の在仏大使館分については19件の存
在を認めた上で,いずれも一部不開示,③同目録3の在英大使館分については,該
当文書は「不存在」により不開示,④同目録4の在米大使館分については32件の
存在を認めた上で,いずれも一部不開示とするものである。
(2) 原告は,本件請求を,上記①②④の各処分のうち対象行政文書の全部又は
一部の開示を拒否する部分の取消請求及び③の文書不存在を理由とする不開示処分
の取消請求に変更する予定である。ただし,前者の各不開示処分のうち,どの範囲
を違法と主張するかは,対象文書の写しが現実に交付された上で,これを特定する
予定である。
(3) 裁判所が本件訴えを却下し,不開示処分の取消につき原告に別訴の提起を
余儀なくさせることは,被告の不適切な職権行使の結果によって,原告に訴訟費用
の二重負担を強いることを意味し,著しく正義に反する。
 したがって,原告が被告から対象文書の写しを現実に交付された上でその内容を
検討し,本件訴えを不開示処分取消の訴えに変更するために必要な相当期間が経過
するまでの間は,本件訴えの利益は消滅しない。
       理   由
1 法令の定め等
(1) 行政機関の長は,開示請求があったときは,開示請求に係る行政文書に情
報公開法5条各号に掲げる情報のいずれかが記載されている場合を除き,開示請求
者に対し,当該行政文書を開示しなければならず(情報公開法5条柱書),開示請
求に係る行政文書の全部又は一部を開示するときも,その全部を開示しないとき
(当該行政文書を保有していないときを含む。)も,その旨を決定し,書面により
通知しなければならない(同法9条1項,2項)。
(2) 開示決定等は,原則として開示請求があった日から30日以内にしなけれ
ばならない(同法10条1項本文)。
 ただし,事務処理上の困難その他正当な理由があるときは,この期間を30日以
内に限り延長することができ,この場合には,開示請求者に対し,遅滞なく,延長
後の期間及び延長の理由を書面により通知しなければならない(同法10条2
項)。
(3) 開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため,開示請求があった日か
ら60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著し
い支障が生ずるおそれがある場合には,行政機関の長は,開示請求に係る行政文書
のうちの相当の部分につき60日以内に開示決定等をし,残りの行政文書について
は相当の期間内に開示決定等をすれば足りる。この場合には,30日以内に開示請
求者に対し,情報公開法11条を適用する旨及びその理由,残りの行政文書につい
て開示決定等をする期限を書面により通知しなければならない(同法11条)。
(4) 被告は,本件行政文書を保有する外務省の長である(国家行政組織法5条
1項。甲1の1ないし4,乙1の1ないし4)。
2 まず,本件訴えの適否について判断する。
 甲第1号証の1ないし4によれば請求原因(2)(本件開示請求)の事実が認め
られ,本件開示決定等がなされたことは当事者間に争いがない。
 そうすると,本件開示請求に対しては,本件開示決定等によりすべて応答がなさ
れたものということができるから,本件訴えは訴えの利益を欠く不適法なものであ
る。
 原告は,本件訴えを不開示処分取消の訴えに変更するために必要な相当期間が経
過するまでの間は,本件訴えの利益は消滅しない旨主張するが,本件口頭弁論終結
時にいまだ訴え変更の申立てがされていない以上,被告が開示決定等をしないこと
の違法の確認を求める本件訴えは訴えの利益を欠くものといわざるを得ない。
3 訴訟費用の負担
 情報公開法は,事務処理上の困難その他正当な理由があるときであっても,開示
決定等の期限の延長は開示請求の日から60日以内に限っており(同法10条2
項),開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため,開示請求があった日から
60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい
支障が生ずるおそれがある場合でも,開示請求があった日から30日以内に同法1
1条を適用する旨及びその理由並びに残りの行政文書について開示決定等をする期
限を書面により通知した上で,開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分につい
ては開示請求があった日から60日以内に開示決定等をしなければならない旨定め
ている(同法11条)。
 しかるに,甲第2号証の1ないし4及び第3号証によれば,被告は,平成13年
8月6日(本件開示請求の日から30日目である平成13年8月5日は日曜日なの
で,民法142条により情報公開法11条後段,9条1項所定の30日の期間は翌
日である同月6日に満了する。)付けで,原告に対し,「開示決定等の期限の延長
等について」と題する情報公開法11条所定の通知を行ったものの,本件開示請求
から60日目である同年9月4日になっても,同法11条によって命じられた相当
の部分の行政文書の開示決定等を行うことなく,また,同通知に示した期限である
同年10月4日までにも本件行政文書について全く開示決定等がされなかったこと
が認められる。そして,原告が本件開示請求後187日目の平成14年1月9日に
本訴を提起し,第1回口頭弁論期日が同年3月5日と定められると(本件記録上明
らかである。),前記のとおり,本件第1回口頭弁論期日の1週間前で,本件開示
請求の日から実に235日目である同年2月26日に至って,ようやく本件開示決
定等を行ったものである。
 以上の経緯に照らせば,原告の本訴の提起は原告の権利の伸張に必要であった行
為というべきであるから,訴訟費用は被告に負担させるのが相当である。
4 よって,本件訴えは不適法であるからこれを却下することとし,訴訟費用の負
担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法62条を適用して,主文のとおり判決す
る。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官 北澤晶
裁判官 伊藤繁
裁判官 西村康夫
文書目録
1 平成11年度の在フィリピン日本国大使館における便宜供与ファイル
2 平成11年度の在仏日本国大使館における便宜供与ファイル
3 平成11年度の在英日本国大使館における便宜供与ファイル
4 平成11年度の在米日本国大使館における便宜供与ファイル

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛