弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A弁護人元林義治の上告趣意、被告人B弁護人布施辰治の上告趣意、同弁
護人古屋貞雄の上告趣意は後記のとおりである。
 弁護人元林義治の上告趣意について。
 所論は、いずれも法令違反の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない(
なお本件起訴状には脅迫の事実の記載が明らかであるからなんら所論一のような違
法はなく、また未決勾留日数の通算は裁判所の自由裁量に属することであるから所
論二の非難は当らない)。
 弁護人布施辰治の上告趣意第一点について。
 所論は、刑訴四〇五条が検事の起訴した公訴事実の誤認を上告理由としなかつた
ことは、憲法三二条に違反するという趣旨であるが、しかし単に上告理由に関する
手続規定の違憲の主張は、上告理由として不適法であるとするのは当裁判所の判例
とするところであるから、採用のかぎりでない(昭和二七年(あ)第五〇四一号同
二八年二月一九日第一小法廷決定、集七巻二号三二八頁参照)。
 同第三点について。
 所論は、原判決は被告人Bの民族的、差別的偏見にとらわれたものであつて、憲
法一四条に違反すると主張するが、記録を精査しても所論のような事実を認められ
ないから、前提において失当であり、採用できない。
 同第二点、第四点、第五点について。
 所論は、単なる法令違反、事実誤認又は刑の量定不当を主張するに過ぎず、刑訴
四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても所論のような違法は認められ
ない。
 弁護人古屋貞雄の上告趣意第一点ないし第三点について。
 所論は、結局原審の事実認定を非難する事実誤認の主張であつて刑訴四〇五条の
上告理由に当らない。そして原判決の事実認定は相当であつてなんら違法は認めら
れない。
 同第四点について。
 所論は、原審において主張なく判断を経ていない事項であるのみならず、法令違
反の主張であつて適法な上告理由とならない(なお記録によれば、被告人は公判廷
で日本語をもつて述べており、弁護人からも通訳を附すべき旨の申立もなかつたの
であるから、所論のように日本語に通じないものとは認められない。従つて法令違
反もない)。
 その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三〇年二月一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三

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