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平成13年(ワ)第168号 損害賠償請求事件
          判          決
         主          文
1 被告は原告に対し,1063万2596円及びこれに対する平成12年8月
4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告の負担とし,その余は被告の負担
とする。
4 この判決は,原告勝訴の部分に限り,仮に執行することができる。
          事実及び理由
第1 請求
 被告は原告に対し,1806万5989円及びこれに対する平成12年8月4
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,被告運転の自動車の助手席に同乗していた原告が,交通事故により受
傷して損害を受けたと主張し,民法709 条及び自動車損害賠償保障法3条に
基づき,被告に対し損害賠償を請求した事案である。
1 争いのない事実
(1)交通事故の発生
 次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
ア 日  時  平成12年8月4日午前2時10分頃
イ 場  所  奈良県大和高田市A町付近道路(以下「本件事故現場」とい
う。)
ウ 被告車両普通乗用自動車(登録番号省略,以下「被告車」という。)
エ 事故態様被告は,被告車を運転し,本件事故現場付近の信号機により交通整
理の行われている交差点北詰において,信号待ちをした後,北から南へ向かって
直進するにあたり,急発進,急加速して疾走し,ハンドルを転把したところ,自
車を道路右斜め前方に道路から逸走させて自車右前部を道路右側の電柱に衝突さ
せ,被告車の助手席に同乗していた原告を負傷させた。
(2)責任原因
 被告は,本件事故当時,自己所有の被告車を運転していたものであるが,そ
の際,適宜速度を調節することはもとより,的確にハンドル操作をし,自車の進
路を適正に保持して進行すべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,信号
待ちの後,急発進して時速約50キロメートルないし60キロメートルに急加速
して疾走しながら,不用意にハンドルを転把して被告車を道路から逸走させた過
失により,本件事故を惹起したものであるから,不法行為責任(民法709条)
及び運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)に基づき,本件事故によって
原告が被った損害を賠償する責任がある。
(3)原告の受傷及び治療経過
ア原告は,本件事故により,顔面挫創・切創,頸部捻挫,右膝打撲等の傷害を
負った。
イ原告は,平成12年8月4日の事故日から平成13年2月10日の頸部捻
挫,腰椎捻挫等についての症状固定日までの  間(191日間),通算して4
6日間入院治療を受けたほか,上記の191日間に通院治療を受けた(実通院日
数24日,但し,内1日は入院中の8月7日のB医科大学眼科への通院分)。
その詳細は次のとおりである。
 原告は,平成12年8月4日の事故当日,B医科大学付属病院救急科におい
て,顔面挫創・切創の洗浄縫合手術を受けると共に,同病院眼科において,両眼
球打撲,両角膜びらんの診断を受け,点眼の処方を受け,同月7日に通院治療を
受けている。
 原告は,平成12年8月4日から同月26日までの23日間,C外科胃腸科に
おいて入院治療を受けた。
 原告は,上記C外科胃腸科を退院後,平成12年9月11日,通院治療を受け
たが,同病院よりD病院を紹介されて,同日より同病院に通院して治療を受け
た。
 しかしながら,原告は,症状が軽減せず,仕事にも支障が生じるため,平成1
2年9月14日から同年10月6日までの23日間,同病院で入院治療を受け
た。
 その後,原告は,平成13年2月10日に症状固定の診断を受けるまでの間,
同病院で通院治療を受けた(但し,外貌醜状についての後遺障害診断はC外科胃
腸科において受けている。)。
(4)損害の填補
 原告は,本件事故に関し,損害の填補として,合計243万2136円の支払
を受けた。
2 争点
(1)原告の後遺障害の有無
ア 原告の主張
 原告は,平成13年2月7日,上記のとおり,顔面挫創・切創の傷害につき,
C外科胃腸科において症状固定の診断を受け,左頬に長さ3センチメートル,上
唇上に1センチメートルと1.5センチメートル,下唇の下から頸部にかけて5
センチメートルの各線状瘢痕(幅はいずれも1ミリメートルないし2ミリメート
ル,軽度の隆起あり)の後遺障害が残ったところ,これは自動車損害賠償保障法
施行令別表7級12号(女子の外貌に著しい醜状を残す。)に該当する。なお,
従前の外貌醜状を理由に,本件の外貌醜状を後遺障害にあたらないと判断するこ
とは不合理であり,許されない。
 また,原告は,平成13年2月10日,D病院において頸部,腰部の傷害につ
いて症状固定の診断を受け,頸部痛,腰  部痛の自覚症状が残ったところ,こ
れは自動車損害賠償保障法施行令別表14級10号(局部に神経症状を残す。)
に該当する。
イ 被告の主張
 外貌醜状の後遺障害については,原告は,平成9年頃にも交通事故に遭い,同
年5月16日に自賠責保険において外貌醜状(顔面部)の最高級である,7級1
2号に認定されており,本件事故当時,上記後遺障害は残存していたものである
から,仮に本件事故によりいかにひどい外貌醜状の後遺障害が残ったとしても,
従前と同一系列の部位(顔面部)にさらに障害を負ったものであり,それは自賠
責保険にいう,加重障害にはならず,原告に新たな被害が生じたとはいえないか
ら,後遺障害にはあたらない。なお,原告は,既存の外貌醜状については形成手
術をし,日常生活上,特段のハンディキャップを感じていなかったというのであ
るから,本件事故による外貌醜状についても,将来,形成手術を行うことにより
被害の回復を図ることが可能である。
 原告主張のその他の後遺障害については,他覚的所見に乏しく,後遺障害には
該当しない。
(2)原告の損害額
ア 原告の主張
(ア)治療費       135万6609円
   内訳
     B大学救急科        1万6860円
     B大学眼科           9470円
     C外科胃腸科       29万0150円
     D病院         104万0129円
 (イ) 入院雑費            5万9800円
   1日あたり1300円が相当であり,46日分
(ウ) 通院交通費           9万2240円
 (エ) 通勤交通費          12万6380円
 (オ) 休業損害           95万3236円
 原告は,本件事故により平成13年8月5日から同年8月30日までの間及び
同年9月12日から同年10月31日までの間の合計76日間欠勤を余儀なくさ
れた。
 原告の平成11年の年間所得は376万8419円であるのに対し,平成12
年の年間所得は281万5183円であり,95万3236円の減収となってい
るところ,同減収は,すべて本件事故の起因するものである。
 (カ) 逸失利益      290万9860円
 原告は,本件事故後も本件事故前と同様に,社会福祉法人E会の経営する,特
別養護老人ホーム「F」に寮母として勤務しており,現実に収入が減少したわけ
ではない。
 しかしながら,原告は,同ホームにおいて,入所者のおむつの取り替え,食事
の介護,入浴介助,車椅子とベッド間の移動,身体の清拭など重労働に従事して
おり,上記の頸部痛,腰部痛は原告の仕事に支障を来しているし,醜状痕も,寮
母としての入所者及びその家族,関係者らとのコミュニケーションに支障が生
じ,職場内での評価が得られず,昇給等に影響が生じるおそれがある。
また,頸部痛,腰部痛などの後遺障害により上記のような寮母の重労働を継続
することに困難を来しても,醜状痕のため転職の機会が通常の女性より狭められ
ることになる。
 以上のような事情を考慮すると,原告において,少なくとも今後10年間,1
0パーセント程度の労働能力の喪失を認めるのが相当であり,原告の平成11年
の年収を基礎としてライプニッツ方式により中間利息を控除して計算すると,次
の計算式のとおり290万9860円(円未満切捨て)となる。
    3,768,419×0.1×7.7217≒2,909,860
(キ) 慰謝料          1350万円
    入通院慰謝料150万円,後遺障害慰謝料1200万円
(ク) 弁護士費用         150万円
イ 被告の主張
(ア) 原告主張の治療費のうち,C外科胃腸科の1050円の文書料(生命保険
会社に提出された診断書作成料)とD病院の6300円の文書料(後遺障害診断
書の作成料)の支払義務は否認し,その余は認める。
(イ) 原告主張の入院雑費,通院交通費,通勤交通費は認める。
(ウ) 原告主張の休業損害及び入通院慰謝料の額は争う。
(エ) 上記のとおり原告には後遺障害は認められず,従って後遺障害による逸失
利益や後遺障害慰謝料は認められない。
   また仮に原告の外貌醜状が後遺障害に該当するとしても,外貌醜状により
労働能力の喪失は考えられず,本件においては現に減収が生じていないのである
から,逸失利益は否定されるべきである。
(3) 過失相殺
ア 被告の主張
 本件事故は,職場の同僚である原・被告が午後9時頃から翌日午前2時頃まで
居酒屋,カラオケ店で飲食後,被告運転の被告車に原告が同乗して帰宅途中に発
生したものであるが,被告の運転ミスに酒の酔いが一因していることは明らかで
あるところ,原告は,被告が相当量の飲酒をしていることを知りながらあえて被
告車に同乗したものである。
 また原告はシートベルトを装着しておらず,このため衝突した衝撃でフロン
トガラスに顔を強打したのである。
 以上の点を考慮すると,本件は5割の過失相殺が免れない。
イ 原告の主張
 被告の呼気1リットル中のアルコール量は0.38ミリグラムであり,被告の
「言語態度は普通」「正常の歩行」「直立できた」「酒臭も弱い」とされてお
り,本件事故当時,運転に大きく影響を与えるような酒気帯び状態ではなかっ
た。
 本件事故は,被告の急発進が大きく起因しているのであり,この急発進は被告
の酒気帯びとは直接関係がない,安全運転義務違反行為である。
 従って,本件事故において,酒気帯びの点を重視し,このことを原告が承知し
ていたことを理由に過失相殺を行うことは不当である。
第3 当裁判所の判断
1 原告の後遺障害の有無について
(1) 外貌醜状について
 証拠(甲12,28の1ないし6)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平
成13年2月7日,顔面挫創・切創の傷害につき,C外科胃腸科において症状固
定の診断を受け,左頬に長さ3センチメートル,上唇上に1センチメートルと
1.5センチメートル,下唇の下から頸部にかけて5センチメートルの各線状瘢
痕を残していること,担当医師は,同瘢痕について,「多少ましになるかもしれ
ない」と判断しているにすぎず,今後の改善の可能性は低いことが認められ,同
瘢痕の部位・内容・程度からすると,原告は,本件事故により,自動車損害賠償
保障法施行令別表の7級12号に該当する,女子の外貌に著しい醜状を残す後遺
障害を受けたものと認めることができる。
 これに対し,被告は,原告が平成9年頃にも交通事故により受傷して,顔面に
醜状痕を残し,自賠責保険において,自動車損害賠償保障法施行令別表の7級1
2号の後遺障害に該当すると判断されていることから,仮に本件事故によりいか
にひどい外貌醜状の後遺障害が残ったとしても,従前と同一系列の部位(顔面
部)にさらに障害を負ったものであり,それは自賠責保険にいう,加重障害には
ならず,原告に新たな被害が生じたとはいえないから,後遺障害にはあたらない
旨主張している。
 しかしながら,上記は自賠責保険の認定基準にすぎないのであって,それに裁
判所が拘束されるいわれはなく,本来,後遺障害とは,「傷害がなおったとき身
体に存する障害」(自動車損害賠償保障法施行令2条1項2号ロ)をいうのであ
って,この意味で原告の本件事故による外貌醜状が後遺障害に該当するのは明ら
かであり,原告が以前に本件事故による後遺障害と同一系列の後遺障害を受けた
か否かによりその結論が異なるものではないものと解するべきである。この点に
関する被告の主張は採用できない。
(2) 頸部痛及び腰部痛について
 原告は,症状固定後も頸部痛及び腰部痛を訴えているものの,証拠(甲13,
乙1)及び弁論の全趣旨によれば,頸部,腰部共にX線写真やMRI検査におい
て特段の異常所見は認められていないこと,神経学的検査においても病的な反射
は認められず,自訴を裏付ける神経学的な他覚所見は認められていないこと,以
上の結果から,頸部痛及び腰部痛に関しては,自賠責保険において,後遺障害に
該当しない旨判断されていることが認められる。
 上記事実によれば,原告が頸部痛及び腰部痛を訴えているからといって,その
ことだけで直ちに原告に本件事故に起因する後遺障害が残存していると認めるこ
とはできず,他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。
 従って,原告の頸部痛及び腰部痛に関して,後遺障害を認めることはできな
い。
2 原告の損害額について
(1)治療費       134万9259円
 原告主張の治療費のうち,C外科胃腸科の1050円の文書料(生命保険会社
に提出された診断書作成料)とD病院の6300円の文書料(後遺障害診断書の
作成料)を除く部分は当事者間に争いがない。
 上記C外科胃腸科の生命保険会社に提出された診断書作成料については,本件
損害賠償と無関係であることは明らかであり,またD病院の後遺障害診断書は,
証拠(甲13)によれば,頸部痛及び腰部痛に関する診断書であることが認めら
れ,上記のとおり,頸部痛及び腰部痛については後遺障害は認められないことか
ら,本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。
(2) 入院雑費        5万9800円
 当事者間に争いがない。
(3) 通院交通費       9万2240円
 当事者間に争いがない。
(4) 通勤交通費      12万6380円
 当事者間に争いがない。
(5) 休業損害       95万3236円
 証拠(甲22ないし24,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,
本件事故当時,社会福祉法人E会の経営する,特別養護老人ホーム「F」に寮母
として勤務して給与所得を得ていたこと,原告は,本件事故により平成13年8
月5日から同年8月30日までの間及び同年9月12日から同年10月31日ま
での間の合計76日間欠勤を余儀なくされたこと,原告の平成11年の年間所得
は376万8419円であるのに対し,平成12年の年間所得は281万518
3円であり,95万3236円の減収となっているところ,同減収は,本件事故
による欠勤期間中,給与が支給されなかったほか,賞与も減額されたため生じた
もので,他に減収の原因は考え難いことが認められる。
 上記事実によれば,原告の休業損害は95万3236円と認めるのが相当であ
る。
(6)逸失利益             0円
原告に自動車損害賠償保障法施行令別表の7級12号に該当する後遺障害が残
存していることは上記認定のとおりである。
そこで,上記後遺障害により逸失利益が発生するか否かにつき検討するに,証
拠(甲22ないし24,27,原告本人)によれば,原告(昭和50年生)は,
本件事故後も上記「F」に寮母として勤務しており,特段減収は生じていないこ
と,原告は,平成8年9月14日にも交通事故により受傷し,平成9年4月15
日に症状固定したが,顔面の唇の右端から右頬部にかけて7センチメートルの瘢
痕(中央部は固く陥没しており,3ミリメートル程の幅がある赤色の肥厚した瘢
痕)が残存し,自賠責保険により,自動車損害賠償保障法施行令別表の7級12
号の後遺障害と判断されたこと,原告は,同事故当時も現在と同じ職場に勤務し
ていたこと,原告の上記後遺障害は現在も残存していることが認められる。
上記認定事実によれば,そもそも現実に減収が生じておらず,本件の醜状痕が
将来の労働能力に影響を与えるものであるかどうか判然としないうえ,将来の労
働能力に多少の影響を与えることがあるとしても,それが従前の醜状痕によるも
のか,本件事故による醜状痕によるものかの区別も判然としないというべきであ
って,結局のところ,独立の逸失利益を認める足りる的確な証拠はない。上記醜
状痕によって被る不利益は慰謝料算定にあたって補完的に斟酌するのが相当であ
る。
(7) 慰謝料    1250万円
 上記認定にかかる,原告が本件事故により被った傷害の程度,入通院治療の内
容,経過,その期間,後遺障害の程度その他諸般の事情に鑑みれば,原告の入通
院慰謝料としては150万円,後遺障害慰謝料(逸失利益が認められない点も考
慮)としては1100万円の合計1250万円が相当と認める(なお,後遺障害
慰謝料算定にあたって,原告が従前の顔面醜状による後遺障害を残していること
を減額要素として考慮するのは相当ではない。)。
(8) 合計       1508万0915円
3 過失相殺について
(1) 証拠(甲1,2の1ないし8,原告本人)によれば,次の事実が認められ
る。
ア 原告と被告は,原告が被告の職場の先輩の関係にあたる。
イ 原告と被告は,平成12年8月3日午後8時頃,一緒に飲食するため,近
鉄八木駅前で待ち合わせた。原告は,同駅前から,被告の運転する被告車に同乗
して香芝市内の居酒屋に赴き,同所で午後9時頃から翌4日午前零時前頃まで,
一緒に飲酒飲食した。被告は,同所では,生ビールを中ジョッキ3杯位飲んだ。
ウ 原告と被告は,被告の運転する被告車に同乗して大和高田市内のカラオケ
店に赴き,同所で4日午前零時頃から午前2時頃まで,一緒に飲酒しながら歌を
歌った。被告は,同所では,生ビール中ジョッキ2杯位と酎ハイを少し飲んだ。
 エ 被告は,その後,被告車を運転し,助手席に原告を同乗して原告の自宅ま
で送って行くこととした。
   なお,被告は,外見上は酔った感じはせず,普段とあまり変わらない状態
に見えた。    また原告は,助手席に同乗するに際し,シートベルトを装着
しなかった。本件事故現場付近の状況は,別紙図面記載のとおりであるが,国道
165号線の非市街地にあり,当時の天候は晴れで,道路の状態はアスファルト
舗装された平坦な道路で路面は乾燥しており,最高速度は時速40キロメートル
に制限されていた。当時本件事故現場付近は暗く,交通は閑散としており,被告
車の前方の見通しはよかった。
 オ 被告は,被告車を運転し,国道165号線を北方向から南方向へむけて走
行中の平成12年8月4日午前2時10分頃,本件事故現場付近の信号機により
交通整理の行われている交差点に差しかかり,対面信号が赤色を表示していて前
車が別紙図面のA地点で停止していたことから,自車を同図面の①地点で停止さ
せた。
   被告は,被告車を停止させた後,車内のオーディオデッキの音量等を調整
していたが,ふと前方を見ると,既に対面信号が青色表示に変わって前車は発進
しており,後続車も接近してきているのに気づき,後続車の走行の邪魔にならな
いように,別紙図面の①地点でアクセルを踏んで急発進させ,ギアーをローギア
ーからセカンドギアーに入れ,時速50ないし60キロメートルに急加速したと
ころ,同図面の②地点において,被告車の車体が右に振った様になったため,ハ
ンドルを左に転把したが,今度は被告車の車体が左に寄り建物に衝突しそうにな
ったため,別紙図面の③地点でハンドルを右に転把すると共に急ブレーキをかけ
たが,間に合わず,同図面の④×地点で被告車の前部を電柱に衝突させ,電柱を
折って,同図面の⑤地点で停止した。原告は,シートベルトを装着していなかっ
たことから,事故の衝撃で,フロントガラスに顔面を強打した。
カ 被告は,本件事故直後,本件事故現場付近で,警察官から飲酒検査を受け
たところ,呼気1リットル中0.38ミリグラムのアルコールが検出されたが,
当時の被告の状況は,言語態度は普通で,警察官の質問に対しては素直に答えて
おり,約10メートルを真直ぐに正常に歩行し,10秒間直立でき,酒臭は約3
0センチメートル離れた位置で弱い状態であった。
(2)上記認定事実によれば,本件事故の直接の原因は,被告の急発進,急加速と
ハンドル操作の誤りという安全運転義務違反であるが,そのような運転をするに
至った原因は,被告が酒気帯び運転をし,正常な判断をすることができなかった
からであると推認することができる。
  そして,原告は,被告と共に飲酒し,被告が酒気帯び運転をするのを承知で
同乗したと認められ,しかもシートベルトを装着していなかったためフロントガ
ラスに顔面を強打するなどして負傷したのであるから,原告にも責任があり,損
害の公平な分担を図るという趣旨から,原告の損害額を減額するのが相当であ
る。
  しかしながら,他方,上記のとおり,本件事故の直接の原因は,被告の安全
運転義務違反であり,原告はこれに関与していないし,酒気帯び運転について
も,少なくとも外見上はさほど酔った状態には見えなかったというのであるか
ら,原  告の責任を大きく評価するのは相当ではない。
そうすると,本件では,シートベルト不装着の点を含め,損害額から2割減
額するのが相当である。
4 過失相殺後の損害額と損害の填補について
 上記の損害額1508万0915円から,過失相殺としてその2割を減ずる
と,1206万4732円となり,そこから,さらに上記の損害の填補分243
万2136円を控除すると,原告の残損害額は,963万2596円となる。
5 弁護士費用について
 本件事案の内容,審理経過,認容額等に照らすと,本件事故による損害として
賠償を求め得る弁護士費用の額は,100万円をもって相当と認める。
6 結論
 以上によれば,被告は原告に対し,損害額1063万2596円及びこれに対
する本件事故日である平成12年8月4日から支払済みまで民法所定年5分の割
合による遅延損害金を支払う義務がある。
 よって,主文のとおり判決する。
       奈良地方裁判所葛城支部
             裁 判 官神 山  隆 

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