弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 一、 上告理由第一点について
 論旨は要するに、同一の新聞を二部以上職場に持込むことは上告会社の従業員就
業規則(以下単に規則という)三〇条並びに同条二項に基づき定められた物品搬入
搬出及び持込持出規程(以下単に規程という)に違反することであるから、これに
対して守衛が口頭による質問と、任意の提示を求める行為をしたことは当然である
というのであつて、(イ)私品持込の範囲、(ロ)私品点検の許否の二つの問題が
含まれているのて、先ず(イ)の問題について考察する。
 規則三〇条、並びに規程は所論のごとく職場内における秩序維持、規律の確立、
盗難予防等のために規定されたものであり、従業員の行動を規制するものである
が、右規則は法令又は当該事業場について適用される労働協約に反しない限り法的
規範としての拘束力を有するものと解すべきであるとともに、規則、規程の運用に
当つては不当に従業員の自由を制限することのないよう合理的に解釈運用されるべ
きである。このような見地において、規程一六条一項を検討してみると、同項に書
籍・新聞・雑誌等が列挙されているとはいえ、その前に「作業衣・傘・洗面用具な
ど日常携帯品」との定めがあり、その後には、「軽易な運動用具その他これに類す
るもの」との定めがあることを考えあわせると、右書籍・新聞・雑誌も、その前後
に挙げられた諸物件と著しく均衡を失しない程度のものに限定する必要があり、こ
れを新聞について考えてみると、同一の新聞を多数携帯しているとか、あるいは、
別個の新聞であつても、若しこれを構内で配布する目的で持ち込もうとするような
場合は、右規程一六条一項の除外例には含まれないと解すべきである。かくして当
裁判所は右(イ)の問題点については、原判決が、同僚等への無償交付や、同僚等
の依頼による取次等のため自己の需要以上の部数を持込む場合も日常携帯品の範囲
内に属するものと解したのは支持することができず、むしろ論旨の主張に近い考え
方をとるのが相当である。
 <要旨>しかしながら前記(イ)(ロ)の問題点の内では、(ロ)の点検の範囲に
ついて、より重要な問題が存在することを見逃すことができない。すなわち
規則三〇条三項は必要ある場合は守衛の請求により携帯品を点検することができる
ことを定め、規程一八条も守衛が必要と認めた場合はその指示に従い点検を受けな
ければならないと規定しており、これに基いて、上告人は持込を許されない物件を
携帯していないかどうかにつき、口頭による質問、任意の提示を求める行為をする
ことは当然であると主張するのであるが、労使双方の利害を合理的かつ公正に調整
することを基本理念とする以上、たとえ論旨のいう方法による点検であつても、携
帯物件の形状、数量その他諸般の状況から見て持込の許されない物品を所持してい
ることを疑うに足りる相当な事由がある場合に限りこれをなしうるものと解すべき
であつて、単なる会社側の見込だけによつて所持品検査をすることは、思想信条の
調査にもつながり、人の自由を制限する虞のあるものとして許すべきではない。
 本件の場合、原判決が適法に確定した事実によると、被上告人らはアカハタ四な
いし五部をはだかのまま四つ折にして小脇にかかえて入場しようとしたというので
あるが、そのような外観だけから、果してそのかかえている新聞がすべて同種のも
のであると判るか否かにも疑問があり、また四部ないし五部という数量は、先きに
掲げた持込許容の最高限であると見るのが相当である。更に、工場内の文書配布禁
止(規則七〇条一一号)の効果を右点検の方法によつて確保するのにも限界がなけ
ればならない。したがつて被上告人らが右点検を拒否したことは相当の理由がある
というべきであつて、原判決の判断は結局正当として維持すべきであり、所論は採
用できない。
 二、 上告理由第二点について
 当裁判所は右第一点について判示したとおり、たとえ口頭による質問と任意の提
示を求める行為とをすることも、諸般の状況から見て、持込の許されない物品を所
持していることを疑うに足りる相当な事由がある場合を除いでは許されないと解す
るのであり、またこの方法による点検を拒んで入場した場合には規則三〇条違反の
問題が起ることは原判決が甲第一号証により認定したところである。してみると、
被上告人らの入門の際、上告人の守衛がピケにより物理的な妨害をしたことがなか
つたとしても、許されない点検により入門を妨げたことには変りはない。したがつ
て、ピケによる入門拒否の事実の有無ということは、本件の判断に影響のあること
ではなく、また証拠の措信できない理由は、必らずしも、判示を要しないのである
から、この点の判示に際し証拠の引用に誤まりがあつても、直ちに判決を違法とす
るには足りない。してみると、原判決の事実認定についての証拠の判断に違法があ
るとの論旨も採用できない。
 三、 よつて、民訴法四〇一条、三八四条二項、九五条、八九条に従い、主文の
とおり判決する。
 (裁判長裁判官 沢井種雄 裁判官 野田宏 裁判官 中田耕三)

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