弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は一審参加人の負担とする。
         事    実
 一審参加人代理人は「原判決中参加共同訴訟人敗訴の部分を取り消す、一審被告
会社が昭和三十一年六月二十四日岡山市ab番地同会社本店において開催した臨時
株主総会においてなしたA、B、C、Dを各取締役に、Eを監査役に選任するとの
決議の取消を求める一審原告の請求を棄却する、訴訟費用は一、二審とも一審原告
の負担とする」との判決を求め、一審原告代理人は主文と同旨の判決を求めた。
 各当事者の主張と立証は、一審参加人において「原判決は株主総会決議取消訴訟
の被告となり得る者は当該会社以外にないと宣言するか、商法第二四七条、第二四
九条、第二五三条等総会の決議取消の訴に関する規定中被告を当該会社に限定した
趣旨の窺われるものは存しない。会社を被告の一人とすべきことは、決議が会社の
ものであることから当然の如く思われる。しかし、決議取消の効果は原告たる株主
又は取締役と被告たる会社との間だけでなく、対世的効力があることから考える
と、決議の対象となつた者が被告たり得ないと解することはその者の権利を害する
こと甚だしい。本件の如きは、原告と被告会社とはいわゆる馴合訴訟を行つてい
る。このような馴合訴訟によつて決議の対象となつた者はその権利を不当に害せら
れることとなり、かかる不当な結果は許さるべきではない。右のように考えると、
取締役、監査役選任決議取消訴訟は、会社と選任の対象となつた役員との間の必要
的共同訴訟と解するのが正当であつて、本件の如きは理論的に民事訴訟法第七一条
の場合というよりも、同法第七五条による参加を認むべき場合である。これを要す
るに、決議取消の訴の被告たり得べき者が会社に限定せられるという条文上の根拠
がない以上、右主張のように解するのが合理的である」と附陳したほか、原判決事
実摘示(但し、原判決主文第二項に関する部分を除く―この点については控訴がな
く確定した)と同じであるから、これをここに引用する。
 なお、一審原告Fは昭和三十一年十二月十六日死亡せることが記録上明らかであ
つて、同人の本訴株主総会決議取消権は株主としての株主総会たる会社機関の地位
において有する共益権であつて、いわゆる一身専属的性質を有し、相続によるこれ
が権利の移転をなし得ないものと解するのを相当とするから、その相続人において
も訴訟承継をするに由なく、他に訴訟承継を許容すべき事由も存しないので、一審
原告Fとの関係では本件訴訟が右死亡と共に当然終了したものである。
         理    由
 <要旨第一>先ず、本件株主総会決議取消訴訟の判決はいわゆる対世的効力を有
し、その既判力が一審参加人を含む第三者にも及ぶことは商法第二四七
条第二項第一〇九条第一項に徴し明白であるから、右訴訟の目的たる決議の取消
は、一審原被告らと一審参加人との間に合一にのみ確定せられるべき性質のもので
あることはいうまでもない。しかしながら、一審参加人主張の如く、その故をもつ
て直ちに民事訴訟法第七五条により一審参加人が一審被告会社の側に共同参加する
ことができるものと解することはできない。即ち、同条の趣旨とするところは、他
人間の判決の効力を受ける第三者が自ら別訴を提起する代わりに、自己の請求をこ
れと併合して共同訴訟人となることを許す趣旨に出たものであるから、第三者たる
参加人において相手方に対し本訴の請求又はそれに対する反対申立と同内容の主張
ができる適格を具備することを要するものと解するのが相当である。しかるとこ
ろ、本件株主総会の決議はいうまでもなく一審被告会社そのものの意思決定である
から、この決議について処分権を有するのは一審被告会社の外にはなく、従つてこ
れが決議取消訴訟において被告としての適格を有するのは一審被告会社に限られる
ものと解すべき筋合にある。さすれば、一審参加人が被告たり得る適格を欠くこと
は明らかであるから、本件決議取消訴訟の一審被告会社の側に共同参加することは
許されないものと断ずるの外はない。一審参加人のこの点に関する主張は独自の見
解というべく、到底賛同すべくもない。
 <要旨第二>さらにまた、一審参加人は本件決議取消請求の対象たる株主総会にお
いて選任された取締役としての資格において参加せんことを主張する。
しかし、取締役たる資格を現に有するものに限つて決議の取消を訴求できる旨を定
めた商法第二四七条第一項の法意に鑑みるときは、たとえ取消の対象たる決議によ
つて取締役に選任され、これが取消に直接利害関係を有するものであつても、参加
当時その取締役たる資格を失つているものは、この訴訟に民事訴訟法第七五条の共
同参加は勿論、同法第七一条の当事者参加をする資格がないものと解するのを相当
とする。これを本件についてみるのに、一審参加人が本件取消請求の対象たる決議
によつて取締役に選任されたものであることは、当該決議自体に徴し明らかである
が、他面一審参加人はその後の昭和三十一年七月二十九日にその取締役の地位を辞
任したることを自ら認めるところである。もつとも、この辞任によつて直ちにその
取締役たる地位を失つたものとすることはできない。即ち、一審参加人の右辞任と
同時に他の三名の取締役も全員辞任し、取締役を欠くに至つたことが成立に争いの
ない甲第一号証に徴して明らかである上に、同日開催された臨時株主総会の決議に
より新に所定員数の取締役が選任されたものの、右選任決議の取消訴訟か本件決議
取消訴訟と併合審理され、右選任決議の取消を認容したその一審判決が確定したこ
とが本件記録上明らかであるから、右選任決議は当初に遡つて取消されることとな
り、従つて一審参加人は前記の如くその取締役の地位を辞任したのに拘らず、商法
第二五八条第一項によりその後新に選任された取締役の就職するまで依然取締役た
る権利義務を有することとなるからである。けれども、成立に争いのない甲第一号
証によれば、更にその後の昭和三十一年九月十四日新に所定員数の取締役が就職し
たことを認め得るので、右就職と同時に一審参加人はその取締役たるの権利義務を
失つたことになると共に、その後において取締役の地位を取得したとする証拠はな
い。そして、一審参加人が本件参加申立をしたのは同年十二月五日であることが記
録上明らかであるから、その当時既に一審参加人は取締役たる地位を有しなかつた
ことが明らかである。従つて、株主としての資格で参加するとの主張を殊更撤回
し、且つ株主たることの立証もない本件においては、もはや一審参加人は共同参加
は勿論のこと、当事者参加をもする資格がないものという外はない。一審参加人の
この点に関する主張も亦独自の見解というべく、到底採用すべくもない。
 以上の次第により、一審参加人の本件参加申立は前叙何れの観点からしてもこれ
を許容する余地がなく、不適法としてこれか却下を免れない。そして、一審原告主
張の請求原因事実については、すべて一審被告会社の認めるところであつて、該事
実に基く一審原告の本訴請求は正当であるから、これを認容すべきものとする。
 よつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却すべく、訴訟費用の負担につき
民事訴訟法第九五条第八九条を適用して主文のように判決する。
 (裁判長裁判官 高橋英明 裁判官 高橋雄一 裁判官 小川宜夫)

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