弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人
()原判決を取り消す。1
()処分行政庁東京都千代田都税事務所長が控訴人に対して平成17年9月2
28日付けでした同13年8月1日から同14年7月31日までの事業年
度,同年8月1日から同15年7月31日までの事業年度及び同年8月1日
から同16年7月31日までの事業年度の各事業所税決定処分並びに各不申
告加算金賦課決定処分をいずれも取り消す。
()処分行政庁東京都千代田都税事務所長が控訴人に対して平成17年103
月20日付けでした同16年8月1日から同17年7月31日までの事業年
度の事業所税決定処分及び不申告加算金賦課決定処分をいずれも取り消す。
()訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。4
2被控訴人
主文同旨。
第2事案の概要
1本件は,控訴人が貸ビル内の駐車場設備をオーナーから賃借し,エンドユー
ザーに転貸する駐車場業を営んでいたところ,東京都千代田都税事務所長が,
控訴人が事業所税の納税義務者に当たるとして,平成13年8月1日から同1
4年7月31日までの事業年度(以下「平成14年7月期」という,同年。)
8月1日から同15年7月31日までの事業年度(以下「平成15年7月期」
という,同年8月1日から同16年7月31日までの事業年度(以下「平。)
成16年7月期」という)及び同16年8月1日から同17年7月31日ま。
での事業年度(以下「平成17年7月期」といい,上記4期の事業年度を併せ
て「本件各事業年度」という)について各事業所税決定処分及び各不申告加。
算金賦課決定処分をしたことに対し,控訴人が,上記各決定処分は違法である
として,被控訴人に対し,その取消しを求める事案である。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却した。これを不服とする控訴人が,控
訴を提起した。
2法令の定め,前提事実並びに争点及び争点に対する当事者の主張の要旨は,
次の3のとおり当審における控訴人の主張を追加するほかは,原判決「事実及
び理由」欄中の「第2事案の概要」の2から5まで(原判決3頁1行目から
23頁14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
3当審における控訴人の主張
事業所税の課税要件は不明確である。控訴人は,貸しビル所有者との間で一
括駐車場賃貸借契約を締結して,余剰の空駐車場を賃借し,エンドユーザーを
募集し,エンドユーザーにサブリースをする仲介業者にすぎない。駐車場に係
る事業所税の納税義務者は,駐車場の所有者であり,当該駐車場を一体として
事業を営むエンドユーザーであって,駐車場業者である控訴人ではない。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきもの
と判断する。その理由は,次のとおり訂正し,2のとおり控訴人の当審におけ
る主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄中の「第
3当裁判所の判断」の1及び2(原判決23頁16行目から37頁5行目ま
で)に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決36頁14
「,」「」。)。行目のついての次に東京都千代田都税事務所長が認定したを加える
()原判決23頁17行目から24頁20行目までを次のとおり改める。1
「()事業所税は,都市環境の整備及び改善に関する事業に要する費用に1
充てるために課される目的税であり(地方税法701条の30,東京都
都税条例188条の12第1項,人口及び企業が集中し,都市環境の)
整備を必要とする都市の行政サービスとその所在する事務所及び事業所
との受益関係に着目し,これらの事務所及び事業所に対して特別の税負
担を課するものである。そして,事業に係る事業所税は,企業の事業活
動を外形標準でとらえて課す税であり,事務所及び事業所において法人
又は個人の行う事業を課税客体とし,当該事業を行う者を納税義務者と
し,また,上記受益の度合いに人的又は物的に対応するものと考えられ
る従業者給与総額及び事業所床面積を課税標準としたものである。
このように,事業に係る事業所税は,事務所及び事業所において事業
が行われることにより,当該事業を担う人や車両が参集すると共に,当
該事業の作用として人や車両が参集することとなり,そのことによって
都市環境に相応の負荷が加わり,都市環境の整備及び改善に関する事業
を更に行うことを必要とする事態が生じ得る原因となることに着目し,
上記の課税要件によって課税することとするものである。このような事
業に係る事業所税の趣旨及び目的のほか,事業用家屋の新築又は増築と
は区別して,事業所等において法人又は個人の行う事業という課税要件
が定められたことを併せ考慮すると,事業を営む事務所及び事業所が自
己の所有に属するものでなくても上記の課税要件を満たすのであり,事
務所又は事業所の所有者が他の者にこれを賃貸し,これを借り受けた者
が更に別の者に転貸し,その者が当該事務所又は事業所において事業を
営む場合のように,同一の事務所又は事業所をめぐって上記の課税要件
の定める「事業」が重畳的に存在する観を呈する場合であっても,その
うち,事業を担う人や車両が参集し,事業の作用として人や車両が参集
する直接的な原因となる本体的な事業と認められるものに限り,事業に
係る事業所税の課税客体となり,当該事業を行う者だけが事業に係る事
業所税の納税義務者となると解するのが相当である。
そこで,上記の見地から,控訴人が本件各駐車場において行う事業が
事業に係る事業所税の課税客体に当たり,控訴人が事業に係る事業所税
の納税義務者に当たるかどうかについて,以下,検討する」。
()原判決28頁5行目から10行目までを次のとおり改める。2
「(イ)以上によれば,控訴人が本件各駐車場で行う事業は,事業を担う人
や車両が参集し,事業の作用として人や車両が参集する直接的な原因と
なる本体的な事業に当たるということができるのであり,控訴人が本件
各駐車場において行われる事業に係る事業所税の納税義務者であるとい
うことができる」。
()原判決28頁22行目の「本件各駐車場の所有者は」から29頁4行3,
目までを次のとおり改める。
「本件各駐車場の所有者は,控訴人に対し,その駐車場業の用に供するた
めの駐車場施設を賃貸しているが,事業の作用として人や車両が参集する
直接的な原因となるのは,控訴人が本件各駐車場で行う事業であり,控訴
人が本件各駐車場で行う事業が上記の直接的な原因となる本体的な事業に
当たるということができるのであって,本件各駐車場の所有者が控訴人に
対してその駐車場業の用に供するための駐車場施設を賃貸していること
が,上記の直接的な原因となる本体的な事業に当たるということはできな
い」。
()原判決29頁14行目から30頁15行目までを次のとおり改める。4
「しかしながら,前記のとおり,事業に係る事業所税の趣旨及び目的に照
らすと,同一の事務所及び事業所で重畳的に事業が行われる場合であって
も,事業を担う人や車両が参集し,事業の作用として人や車両が参集する
直接的な原因となる本体的な事業と認められるものに限り,事業に係る事
業所税の課税客体となり,当該事業を行う者だけが事業に係る事業所税の
納税義務者となると解するのが相当であり,事業に係る事業所税の趣旨及
び目的に照らして前記のとおりに解することが租税法律主義,租税条例主
義に反するということはできない。
したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない」。
()原判決30頁20行目から31頁1行目までを次のとおり改める。5
「しかしながら,事業に係る事業所税の趣旨及び目的に照らすと,同一の
事務所及び事業所で重畳的に事業が行われる場合であっても,事業を担う
人や車両が参集し,事業の作用として人や車両が参集する直接的な原因と
なる本体的な事業と認められるものに限り,事業に係る事業所税の課税客
体となり,当該事業を行う者だけが事業に係る事業所税の納税義務者とな
ると解するのが相当であることは,前記のとおりである。したがって,控
訴人の上記主張は,その前提を欠くものであり,採用することができない」。
2控訴人の当審における主張に対する判断
控訴人は,事業所税の課税要件が不明確であると主張し,さらに,自らは,
貸しビル所有者との間で一括駐車場賃貸借契約を締結して,余剰の空駐車場を
賃借し,エンドユーザーを募集し,エンドユーザーにサブリースをする仲介業
者にすぎないとして,駐車場に係る事業所税の納税義務者は,駐車場の所有者
であり,当該駐車場を一体として事業を営むエンドユーザーであって,駐車場
業者である控訴人ではないなどと主張する。
しかしながら,事業に係る事業所税の趣旨及び目的に照らすと,同一の事務
所及び事業所で重畳的に事業が行われる場合であっても,事業を担う人や車両
が参集し,事業の作用として人や車両が参集する直接的な原因となる本体的な
事業と認められるものに限り,事業に係る事業所税の課税客体となり,当該事
業を行う者だけが事業に係る事業所税の納税義務者となると解するのが相当で
あることは,前記のとおりであり,事業所税の課税要件が不明確であるという
ことはできない。また,前記引用に係る原判決の認定事実によれば,事業の作
用として人や車両が参集する直接的な原因となるのは,控訴人が本件各駐車場
で行う事業であり,控訴人が本件各駐車場で行う事業が上記の直接的な原因と
なる本体的な事業に当たるということができるのであって,控訴人の上記主張
は採用することができない。
第4結論
以上の認定及び判断の結果によると,控訴人の請求はいずれも理由がないか
らこれを棄却すべきである。よって,当裁判所の上記判断と符合する原判決は
結論において相当であり,本件控訴はいずれも理由がないから,これを棄却す
ることとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第21民事部
裁判長裁判官渡邉等
裁判官高世三郎
裁判官西口元

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