弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人大島正恒の上告趣意は、末尾に添附した別紙書面記載の通りである。
 第一点について。
 しかし、現行犯とは現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた際発覚したものをい
うのであり、そして、現に罪を行いというのは、犯罪行為実行中のことであり、現
に罪を行い終つた際とは、犯罪行為の実行々為の終つた瞬間はもとより、その後多
少の時間のへだたりがあつても、犯罪行為の行はれた痕跡がまだ明瞭な状態にある
場合を指すのであつて、必ずしも犯人が其場所に在ることを要しないものである。
原審の認定した事実によれば、原審相被告人Aは、同Bと共に昭和二二年六月二六
日午後八時頃新潟市のC劇場において開催中のDのヴアイオリン演奏会を妨害した
ので同人等逮捕の為出張した新潟警察署勤務刑事係巡査E、同Fの為に同日午後八
時三〇分頃右劇場前において逮捕されたというのであるが、判文上明らかなる通り
右妨害行為の時より逮捕の時までの間は僅か三〇分であり、且つ逮捕の場所は妨害
行為の行はれた劇場前である等の点に鑑み、原審において右両巡査が現行犯人逮捕
の手続により右Aを逮捕したことは適法なる職務執行であると判定したものであつ
て、其判定は違法とはいえない。従つて両巡査の右逮捕に際し両巡査を脅迫して、
右Aの逮捕を妨害した被告人に対し公務執行妨害罪として処断したことは当然であ
るから、論旨は理由がない。
 第二点について。
 しかし共同正犯たるには、行為者双方の間に意思の聯絡のあることは必要である
が、行為者間において事前に打合せ等のあることは必ずしも必要ではなく、共同行
為の認識があり、互に一方の行為を利用し全員協力して犯罪事実を実現せしむれば
足るのである。原審の採用した証拠によれば、被告人等の間に判示の犯行について
共同行為の意思聯絡のもとに、互に他の一方の行為を利用し、協力して両巡査の職
務執行を妨害したものであることを認め得るのであるから、原審が挙示の証拠によ
り被告人等は共謀して本犯行をなしたと認めたことは、虚無の証拠によつたものと
は言い得ない。論旨は理由がない。
 第三点について。
 しかし論旨は原審の事実誤認を主張することに帰着するが日本国憲法施行に伴う
刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第一三条第二項により刑事訴訟法第四一四条
は適用されないので本論旨は適法の上告理由とならないものである。
 よつて刑事訴訟法第四四六条により主文の通り判決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 宮本増蔵関与
  昭和二三年一二月一四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

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