弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原決定を取り消す。
         理    由
 本件抗告の要旨は末尾記載のとおりであつて、当裁判所はこれについて次の通り
判断する。
 競売法第三〇条によつて競売法による不動産の競売につき準用される民事訴訟法
第六五九条第一項の法意は、なるべく多くの人に競売期日を知らせ、結局競売がで
きるだけ相当な価格で行われることを期するために、競売期日と公告の日との間に
少なくとも十四日の期間を置くことを必要とするというのであり、かつ競売法第二
九条第二項、民事訴訟法第六六一条第一項によれば、競売期日の公告は、裁判所の
掲示板と不動産所在地の市町村の掲示板との少なくとも二ケ所にしなくてはならな
いことが明らかであるから、競売期日の前少なくとも十四日の期間を置いてなさる
べしとの前記の要件は、そのいずれの公告についても具備さるべきは、当然であ
る。そして、右十四日の期間は、通常の期間計算法にしてたがつて、公告の日の翌
日より起算すべきであつて(民法第一三八条、第一四〇条)、とくにこれと異なる
計算をなすべき何らの根拠を見出すことができないから、本件不動産競売の昭和三
十二年十月二十一日午前十時の競売期日について同年同月七日に足利市役所の掲示
場に掲示してされた公告(その事実は記録第四八丁の通知書によつて明らかであ
る。)は、公告と競売との間に存すべき十四日の期間に一日だけ不足し、したがつ
て前記競売期日は適法にこれを開くことはできなかつたものである。したがつて、
適法に右期日が開かれたものとして、最低競売価額を低減して行われた次回の競売
手続も亦最低競売価額の定めを誤つた点において違法であつて、もしその期日の競
買申出によつて競<要旨>落許可がされたとすれば、それはとうてい取消を免れない
であろう。しかし、その日の競売においても競買の申出がなく、更に競売期
日がくり返された結果競買の申出があつた場合においては、これと同一に解するこ
とができない。低減された価額のもとにあつてすら競買の申出がなかつた事実によ
つて、当初の最低価額をもつてしては、もちろん競買の申出をするものがなかつた
であろうことが実質的に明らかにされたと言い得るから、たとい前競売期日が違法
で開くべからざるものであつたとしても、その違法を是正し、かつ最低競売価額を
当初の額に復して、競売手続をやり直すということは、全く意味のないことになる
のである。本件についてこれを見るのに、昭和三十二年十月二十一日に開かれた第
一回競売期日は前記のように公告に違法があつて開くべからざるものであつたが、
最低競売価額を低減して行われた同年十一月二十一日の新競売期日においても競買
の申出をするものがなく、更に累次これを低減して、昭和三十三年二月三日と同年
三月二十五日とに各競売期日を開いたが、そのいずれにおいても競買の申出をする
ものがなく、同年五月八日の新期日においてようやく抗告人が競買の申出をしたの
であること、本件競売記録に徴して明らかであり、しかも昭和三十二年十一月二十
一日以後の手続については、最低競売価額の点のほかに、何らの違法のかどを見出
すことができないから、右競買申出にもとづき言い渡された本件競落許可決定に
は、これを取り消すべき瑕疵はないといわなくてはならない。これと見解を異に
し、右競売事件の債務者である相手方の即時抗告につき、再度の考案によつて右競
落許可決定を取り消し、抗告人の競落はこれを許さないとした、原決定は失当であ
る。よつて、これを取り消すこととし、主文のとおり決定する。 (裁判長判事 
内田護文 判事 原増司 判事 入山実)

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