弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人代理人袴田重司の上告理由第一、二点について。
 所論はひつきよう原審の専権に属する証拠の取捨判断ならびに事実の認定を非難
するに帰着するものであつて、上告の理由として採用することはできない。
 同第三点について。
 所論離婚判決が本件原判決に対し民訴四二〇条所定の関係に立たないことは自明
であり、同条の準用によつて原判決を破棄すべきものとの所論は理由がない。
 よつて民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条を適用して主文のとおり判決す
る。
 この判決は、裁判官小谷勝重の次の反対意見ある外、裁判官一致の意見によるも
のである。
 裁判官小谷勝重の反対意見は次のとおりである。
 原判決の認定によれば、(1)本件宅地建物は贈与者D家の唯一の不動産である
こと、(2)当時Dには、妻E、長男Fの外他家に入つておるとはいえ四人の娘が
あり(即ち以上六人の遺産相続人があつた)しかも本件贈与につき之等の者の何ら
の諒解をも得ていないこと、(3)しかるに該不動産中、宅地はFとその妻Bとの
養子であるGに、建物は右Bに挙げて贈与したこと、(4)右贈与には何等贈与証
の作成もなきこと、(5)また登記申請書にいわゆる登記権利証の添付もないこと、
(6)Dの実印はHの妻IがDの承諾なくして改印届を為したるにせよ、仙台市役
所としては正式に改印が為されておるにかかわらず、本件登記手続に要した印鑑証
明は改印前の旧印鑑によつて為されそれが登記手続に使用されていること、(7)
本件贈与契約成立当時贈与者Dは病弱老衰且つ脳軟化症に冒されており、ついに贈
与契約後三ヶ月を経ないうちに死亡しておる事実、(8)受贈者Bの不貞行為は原
審の否定する処なるも、同人は夫Fより該不貞行為を理由として仙台高等裁判所に
おいて離婚判決がなされ、該判決は本件判決前に確定し現在は実家に入籍している
ことが記録上明らかであること。以上の事実に徴すると、本件贈与契約を肯定する
には余りにも稀有と不可思議不自然なる事実が連綿累積存在しており、しかもなお
本件贈与契約を肯定するには他に各特段なる事情の存在することの証明とその判示
を必要とするものと考える。ひつきよう原判決は以上の諸点に関し審理不尽乃至理
由不備の違法があり該違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるといわなければ
ならない。以上の理由により論旨は理由があり本件は原判決を破棄し事件を原裁判
所へ差し戻すべきものであるとの意見である。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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