弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告が、別紙物件目録記載の建物に付属するダストボックス置場(別紙図面1
の朱色で表示の部分)から一般廃棄物を収集する義務を負うことを確認する。
2 被告は、原告に対し、三〇〇万円及び平成五年二月九日から前項の一般廃棄物
の収集が開始されるまで一か月当たり二四万円の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 2項につき仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 本案前の答弁
(一) 本件訴えを却下する。
(二) 訴訟費用は原告の負担とする。
2 本案の答弁
主文と同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 本件建物の建築・使用
原告は、建築請負や不動産賃貸を主たる業務内容とする会社であるが、訴外有限会
社A(本店所在地・青梅市<地名略>、以下「訴外会社」という。)から別紙物件
目録記載の共同住宅(単身者用住宅六四戸及び管理人用住宅一戸・以下「本件建
物」という。)の建築工事を請け負い、平成五年一月末までに右建物を完成し、訴
外会社に引き渡した。
そして、原告は、平成五年二月一日、訴外会社から、本件建物を期間平成五年二月
九日から三〇日、賃料月額三九五万〇七三九円との約定のもとに一括して賃借した
うえ、右二月九日以降、各戸を第三者に転貸し、それらの転借人を入居させるとと
もに、訴外会社に対し約定賃料の支払を続けている。
2 青梅市におけるごみの収集方法等
青梅市長(以下「市長」という。)が定めた一般廃棄物処理計画(以下「処理計
画」という。)によれば、被告は、適宜の区域毎に「ダストボックス」と称する可
燃ごみ及び不燃ごみ(以下「ごみ」という。)を投棄するための金属製の収納容器
を設置したうえ、ここからごみの収集を行うという方法をとっている。
そして、中高層建築物で二〇戸以上の住宅の建設事業等に適用される行政指導の基
準として定められた「青梅市宅地開発等指導要綱」及び「青梅市宅地開発等指導要
綱細則」(以下、一括して「指導要綱」という。)によれば、当該事業の事業主
(以下、指導要綱の適用事業の事業主を「事業主」という。)は、建物に付属する
ごみ収集施設を設置すべきものとされ、
必要数のダストボックス及びその置場スペースを確保することが求められている。
3 ダストボックスの交付拒否
本件建物の建設は指導要綱による行政指導の対象となる事業であり、本件建物に付
属するごみ収集施設の設置が求められることから、事業主であった訴外会社代表者
のBは、指導要綱に従い、本件建物の敷地内にダストボックス四個(可燃物用三個
及び不燃物用一個)分の置場(別紙図面1の朱色で表示の部分。以下「本件置場」
という。)を整備するとともに、市長に対し、ダストボックスの交付を受けたい旨
申し出たが、市長は、Bとの間で指導要綱に基づく協議が成立していないことを理
由に、右申出を拒絶し、ダストボックスの交付を行わなかった。
4 被告の本件収集義務の存在
(一) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)に
よれば、市町村は、その区域内における一般廃棄物の処理について一定の計画を定
め(同法六条一項)、その計画に従って、一般廃棄物を生活環境の保全に支障が生
じないうちに収集し、これを運搬、処分しなければならないとされており(同法六
条の二第一項)、一般家庭で生じる一般廃棄物については、市町村がその収集等を
行う義務を負うこととされているのである。
(二) したがって、被告としては、ダストボックスからごみが溢れるなどして生
活環境の保全ができない事態とならないよう、一定数の住民が居住する一定の区域
毎に必要数のダストボックスを設置しなければならないのであって、指導要綱が、
一定規模以上の共同住宅について、敷地内にごみ収集施設を付属させることとして
いるのも、そこに入居した多数の住民が排出するごみを収集するためには、既存の
ダストボックスでは不十分となることを予想し、当該共同住宅の所定の場所にダス
トボックスを備え付けさせ、入居者の排出するごみを収集することを前提としてい
るものである。
(三) 前記のとおり、本件建物には指導要綱に従った本件置場が整備されている
のであるから、市長は、Bの申出に基づきダストボックスを交付すべきであり、被
告は、本件置場からごみの収集を行う義務(以下「本件収集義務」という。)を負
うというべきである。
しかるに、被告は、本件収集義務を負わない旨主張して、右義務を履行しようとし
ない。
5 本件置場からごみを収集しないことの違法性
Bは、ごみ収集施設については指導要綱に従ってこれを設置しているのであり、た
だ指導要綱の要求のうち、駐車場の増設、防火水槽の設置、公共施設整備分担金の
三点について応じられないとしているに過ぎないのであって、市長が、指導要綱に
基づく協議の未成立を理由に、ダストボックスを交付しようとせず、本件収集義務
に違反して、本件置場からごみを収集しないことは、本来、任意の協力を求めたう
えで実現されるべき指導要綱による行政指導を強制する手段として行われた違法な
行為である。
6 原告の損害
(一) 市長の故意又は過失に基づく右5の違法行為のために、本件建物の入居者
のごみ処理に関する異常な状態が継続したことから、本件建物の入居者の募集は成
果が上がらず、平成六年五月に至っても三〇室が空室の状態にあり、原告は、転借
料を得ることができない右三〇室分の賃料相当分(月額一八〇万円、年額二一六〇
万円)の損害を被るとともに、訴訟代理人に報酬を支払って、本件収集義務の確認
を求める本件訴訟の提起を余儀なくされ、その結果、少なくとも合計三〇〇万円を
下らない損害を被った。
(二) 市長の故意又は過失に基づく右5の違法行為のために、原告は、本件建物
の転貸人として、転借人である入居者に対し衛生的な住環境を提供する責任上、本
件建物の入居者が本件置場に排出するごみを近隣のダストボックスまで運搬しなけ
ればならず、平成五年二月九日の転貸の開始以降、少なくとも毎月八回の割合でそ
の運搬を行っている。その結果、原告は、右運搬のために毎月合計二四万円(一回
当たり三万円)の費用の支出を余儀なくされており、同額の損害を被っている。
7 結論
よって、原告は、被告に本件収集義務があることの確認を求めるとともに、国家賠
償法一条に基づき、被告に対し、三〇〇万円及び平成五年二月九日以降一か月当た
り二四万円の割合による損害賠償金の支払を求める。
二 被告の本案前の主張
廃棄物処理法が市町村の義務として定めている一般廃棄物の処理義務は、概括的責
務であって、個々の住民に対し直接的・具体的に負担する義務ではないから、原告
が同法を根拠として、被告に対し何らかの権利を主張することは失当である。ま
た、原告は、本件建物を賃借しこれを転貸している者に過ぎず、青梅市の住民では
ないから、被告の一般廃棄物の処理業務につき直接的な請求をすることはできな
い。
したがって、本件訴えは不適法な訴えとして却下されるべきである。
三 請求原因に対する被告の認否
1 請求原因1の事実は知らない。
2 同2の事実は認める。
3 同3の事実のうち、原告主張のとおり、本件建物の敷地内に本件置場が整備さ
れていることは認めるが、その余は否認する。
なお、市長は、事業主との間で指導要綱による協議が成立した場合に、事業主のた
めに、市長設置のダストボックスと同一規格のダストボックスの購入の斡旋を行っ
ているものであって、原告が主張するように事業主に対しダストボックスを交付し
ているものではない。
4 同4の主張は争う。
原告主張の本件収集義務は、結局、本件建物から戸別収集を行う義務をいうもので
あるが、処理計画によれば、被告は、戸別収集を行うべきものとはされておらず、
本件建物のような共同住宅が建築された場合も、当然に当該建物に付属するダスト
ボックス置場からごみの収集を行う義務を負うことになるわけではない。本件建物
の入居者は、最寄りの市長が設置したダストボックスにごみを投棄すればよいので
あって、被告は、本件建物入居者の排出するごみの収集を拒否しているわけではな
い。
確かに、指導要綱により市長と締結した協議内容に基づき事業主が設置したダスト
ボックス(以下「協議締結済みダストボックス」という。)は、市長が設置したダ
ストボックスと同等の扱いを受けるものとされ、被告は、右協議締結済みダストボ
ックスからもごみを収集することになることから、共同住宅にこの種のダストボッ
クスが設置されれば、事実上、当該共同住宅のために戸別収集を行うのと同様の結
果となる。しかし、これは、事業主が指導要綱に理解を示し被告の行政指導に協力
したことによって得られる見返りであり、本件建物については、Bとの間で指導要
綱に基づく協議が成立していない以上、右のような戸別収集の利便が与えられない
ことは当然である。
5 同5は争う。
B及び原告は、当初から指導要綱による行政指導を無視し、被告と誠実に話し合お
うともせずに本件建物の建設工事に着手し、これを完成させたものであるし、被告
は、本件建物入居者に対し他の一般の住民と同様の方法による収集を拒否している
ものでもないのであって、何ら違法の咎め立てを受ける筋合のものではない。
6 同6の(一)、(二)の事実は知らない。
第三 証拠(省略)
○ 理由
第一 本案前の主張について
原告の被告に対する本件収集義務の存在確認の訴えは、ごみの収集義務という公法
上の義務の存否に関する当事者訴訟と解され、本件建物の占有者である原告と被告
との間に右義務の存否を巡って紛争が存在しており、その確認を求める以外に紛争
解決のための適切な手段がない以上、原告は、右義務の存在確認を求める法律上の
利益を有すると解するのが相当である。
被告は、一般廃棄物の処理義務は住民に対する直接的・具体的義務ではない旨主張
するが、その点は、本件収集義務の存否に関する実体法上の問題であって、本件訴
えを不適法とする理由にはなり得ないし、また、原告は、青梅市の住民ではない
が、後記認定のとおり、一括賃借人として、本件建物を占有し、その共用部分等に
ついて管理すべき立場にある者であるから、被告に対し、本件収集義務の確認を求
める適格を有しているというべきであって(なお、原告が青梅市の住民でなくて
も、被告に対し損害賠償を求める訴訟を提起し得ることはいうまでもない。)、本
件訴えが不適法であるとする被告の主張は理由がない。
第二 本件収集義務の存否について
一 請求原因1の事実は、成立に争いのない甲第二号証、原告代表者本人尋問の結
果及びこれによって真正に成立したものと認められる甲第三号証により、これを認
めることができ(ただし、本件建物の賃借期間は平成五年二月九日から平成三五年
一月三一日までである。)、また、同2の事実及び同3のうち原告主張のとおり本
件建物の敷地内に本件置場が整備されていることは、いずれも当事者間に争いがな
い。
右各事実に、いずれも成立に争いのない甲第一号証、第四号証、第五号証の一、第
六号証、乙第六号証、第九号証の一、第一一号証、第一三号証の一、第一五、第一
六号証、第二三号証、いずれも原本の存在及び成立に争いのない甲第七号証、乙第
一ないし第四号証、証人Cの証言、原告代表者本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨
を総合すれば、以下の事実が認められ、その認定を左右するに足りる証拠はない。
1 被告の「青梅市廃棄物の処理および清掃に関する条例」(昭和四七年三月三〇
日条例第一九号。なお、平成五年三月三一日条例第一五号により全部改正され、そ
の名称も「青梅市廃棄物の処理および再利用の促進に関する条例」と改められ
た。)は、市長が一般廃棄物の処理計画を定めるものとしており(改正前の右条例
五条、改正後の右条例二八条)、その処理計画によれば、被告は、青梅市内の土
地・建物の占有者を対象として、可燃ごみにつき週三回、不燃ごみにつき週一回、
いずれも市長が設置し可燃物用と不燃物用に区分けされたダストボックスから収集
するものとし、各戸ごとあるいは各共同住宅ごとに戸別にごみを収集することとは
していない。そのため、青梅市内の住民は、その家庭から排出するごみを可燃物と
不燃物とに分別したうえ、自らこれをダストボックスまで運び、その中にごみを投
棄することが求められている。
2 一方、被告が、青梅市内における良好な市街地の造成を図るために、住民福祉
の増進に必要な公共施設等の整備基準と負担区分を設け、事業主と協議することに
より、地域の秩序ある整備を促進すること等を目的として定めた指導要綱は、一定
規模以上の共同住宅等の建設を行おうとする事業主に対し、当該住宅の敷地内にご
み収集施設(住宅戸数に見合う数のダストボックス及びその置場)を確保すべきこ
とを求めており、指導要綱に基づく市長との協議が成立した場合には(指導要綱
は、該当する事項のすべてにわたり協議が調った場合に協議書を作成するとしてい
る。)、市長は、事業主のために、市長設置のものと同一規格のダストボックスの
購入方を斡旋し、これをうけて、事業主は、業者から必要数のダストボックスを購
入し、敷地内の置場に備え付けることとなる。そして、処理計画によれば、このよ
うにして備え付けられた協議締結済みダストボックスは、市長設置のダストボック
スと同等の扱いを受けるものとされており、被告は、このダストボックスからもご
みを収集することになる。
3 市長設置のダストボックスは、住民であれば誰でもごみを投棄できる公共のご
み収納容器であり、住民は、通常は最寄りのダストボックスにごみを投棄するであ
ろうが、必ずしもそれ以外のダストボックスを利用してはならないという性質のも
のではない。また、協議締結済みダストボックスは、事業主によって購入されたも
のであるが、購入後は、被告が管理することになっており、その共同住宅の入居者
以外の者が利用することが条例等で禁止されているわけではなく、その性質は、市
長設置のダストボックスと異なるところはない。もっとも、協議締結済みダストボ
ックスは、事業主が建設した共同住宅の敷地内という入居者にとっては極めて便利
な場所に備え付けられているから、実際上は、その入居者がこれを専用する形で利
用することになり、この場合は、あたかも当該共同住宅のために戸別収集が行われ
るのと同様の結果を呈することになるが、それはあくまで事実上の問題であって、
これをもって被告が戸別収集を行っているということになるものではない。
4 右のようなダストボックスによるごみの収集方法は、ごみ収集の現場を清潔に
保ち、かつ、時間及び経費の点で効率的な収集ができるという利点を有するもので
あり、被告は、昭和四四年以降、青梅市内のほぼ全域で右収集方法を採用してい
る。
平成四年における青梅市の人口は一三万〇二八八人であり、平成五年一〇月一日時
点におけるダストボックスの数(市長設置のものと協議締結済みのものの合計数)
は、可燃物用が三八〇八個、不燃物用が二二九八個であって、被告は、可燃物につ
いては直営の清掃車九台及び委託業者の清掃車一七台により、不燃物については委
託業者の清掃車七台により、これらダストボックスからごみを収集している。ま
た、本件建物周辺におけるダストボックスの設置状況は別紙図面2のとおりであ
り、本件建物の最寄りのダストボックスとしては、敷地から一〇〇メートル程度の
距離のところに、市長設置のダストボックスと協議締結済みダストボックスが存在
している。
5 ところで、指導要綱によると、事業主は、正式の協議申請に先立ち、当該事業
に関する事前の審査を願い出たうえで被告の関係各課と折衝を行うこととされてい
るところ、Bは、平成四年五月六日、本件建物に関する事前審査願を提出し、被告
の都市計画課は、駐車場の増設など一二項目にわたって指導要綱に基づく審査内容
について説明し、関係各課と協議するよう指導した。しかし、Bは、指導要綱に基
づく行政指導のうち、(一)本件建物に付属させる駐車場を三三台分とすること
(建設計画では一七台)、(二)丸型四〇トンの防火貯水槽一基を設置すること、
(三)公共施設整備負担金六八万円を寄付すること、の三点については応じる意思
がなく、被告の関係各課との協議がされないまま、本件建物の建設工事に着手し、
結局、本件建物の建設工事が完了した平成五年一月末の段階でも、Bと被告との間
で指導要綱に基づく協議が調わなかったため、市長は、Bに対し、本件建物敷地内
に設置するダストボックスの購入を斡旋しないことにした。そのため、本件建物の
敷地内には、指導要綱で必要とされる本件置場が整備されてはいるものの、そこに
ダストボックスが設置されていないという状況にある。
6 原告は、Bの外にも青梅市内で三棟の共同住宅の建設を請け負っていたが、い
ずれについても指導要綱に基づく協議が成立しないまま工事を進めており、市長が
これら事業主のためにダストボックスの購入を斡旋しない姿勢を明らかにしたこと
から、これに対し、ダストボックスを交付しごみを収集するよう書面で抗議した
が、市長は、協議締結済みのダストボックスを備え付けるためには指導要綱に基づ
く協議の成立が先行されなければならないとの姿勢を変えなかった。
7 平成五年二月以降本件建物各戸への入居が開始されたが、入居者は、本件置場
にダストボックスが設置されていないにもかかわらず、最寄りの一般のダストボッ
クスにごみを投棄しようとせず、右置場にごみを放置したため、原告は、社員を使
用して、それらの放置ごみを近隣のダストボックスまで運搬するという行為を繰り
返していた。ところが、そのような行為の結果、近隣のダストボックスからごみが
溢れるような事態も生じ、住民から被告に苦情が寄せられたことから、被告は、平
成六年一月ころ以降、別紙図面2の朱線で囲んだ箇所のダストボックスからは、可
燃物を毎日収集することにし(本来は週三回の収集)、その後はそれらのダストボ
ックスからごみが溢れ出るという事態にはなっていない。
二 清掃事業は、普通地方公共団体の固有事務であるが(地方自治法二条)、廃棄
物処理法によれば、市町村は、一般廃棄物の適正な処理に必要な措置を講ずるよう
努めなければならず(同法四条一項)、その処理に当たっては、厚生省令(同法施
行令三条)の定める基準に適合するように一般廃棄物の処理計画を定め(同法六条
一項ないし三項)、右処理計画に従って、その区域内における一般廃棄物を生活環
境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し、処分しなければならない
とされている(同法六条の二第一項)。そして、土地又は建物の占有者は、市町村
の定める右処理計画に従い一般廃棄物を適正に分別し、保管する等市町村が行う一
般廃棄物の収集、運搬及び処分に協力しなければならないとされている(同法六条
の二第四項)。
右のように、一般廃棄物の処理は市町村の義務とされているが、もとより右の義務
は、水道事業における給水義務のように契約締結の強制を媒介として発生する特定
の住民に対する個別的・具体的な義務とは異なり、専ら生活環境の保全及び公衆衛
生の向上という公益を達成するために、市町村が公共サービスとして住民全体に対
して負担する一般的な責務というべき性質のものであって、その内容も、当該市町
村の財政状況や地域の実情等に応じて定めらるべきものであり、市町村は、それら
の事情を総合考慮して、合理的な裁量判断により、収集の方法を含め処理計画の具
体的な内容をどのようなものとするかを決定できるというべきである。
三 前記のとおり、被告におけるごみの収集方法は、市長が設置したダストボック
ス及び協議締結済みダストボックスだけから収集を行うというものであり、青梅市
の住民は、自宅前などの適当な場所にごみを出して収集してもらうということはで
きず、必ずダストボックスまでごみを運ばなければならないのである。右のような
収集方法は、住民にある程度の負担をかけるものではあるが、住民も市町村の処理
計画に協力すべき責務を負うものであり(同法六条の二第四項)、住民に右の程度
の負担を求めたとしても特段不合理とはいえないし、収集作業の合理化・効率化、
収集現場の清潔さの保持という点を考えれば、右のようなダストボックスによる収
集方法をとることとした市長の判断には合理性があるということができる。
そうすると、被告は、ダストボックスからごみの収集を行うだけであって、ダスト
ボックスが設置されていない場所からごみを収集する義務はないのであるから、青
梅市内の建物の占有者が、被告に対し、ダストボックスが設置されていない特定の
場所からごみの収集を求めることができないことは明らかである。このことは、本
件建物のような共同住宅が建設された場合でも同じであって、共同住宅の建設によ
り予想されるごみの増加に対し、その地域に新たにダストボックスを増設するの
か、収集回数を増やすなどの措置を講じるのかといったことは、市長の合理的な判
断に委ねられているというべきであり、共同住宅の建設によってごみの排出量が増
えるとの事情から直ちに、協議締結済みダストボックスが備え付けられていない共
同住宅の占有者が、被告に対し、その敷地内からごみの収集をするよう求めること
ができると解することはできない(結局、本件建物の入居者は、既存のダストボッ
クスまでごみを運ぶことになるが、前記のとおり、本件においては、本件建物の敷
地から一〇〇メートル程度のところに市長設置のダストボックスと協議締結済みダ
ストボックスがそれぞれ設置されているのであり、本件建物の入居者が住宅から右
ダストボックスまでごみを運ぶという負担は、他の付近住民の負担と比較して特に
過重なものとはいえないし、本件建物の建設によりごみが増加したことに対する措
置としても、被告は、別紙図面2の朱線で囲んだ可燃物用のダストボックスから毎
日収集を行うこととしているのであって、本件置場からごみが収集されないことに
よって、生活環境や環境衛生に特段の支障が生じていることもないのである。)。
四 以上のとおりであって、被告には、本件置場からごみを収集する義務があると
は認められないから、被告に対し本件収集義務の存在確認を求める原告の請求は理
由がない。
第三 損害賠償請求について
一 原告は、被告が本件収集義務に違反して本件置場からごみを収集しないことは
違法である旨主張するが、本件収集義務が認められないことは既に検討したとおり
であり、原告の右主張は、その前提を欠き失当である。
二 また、原告は、被告が本件置場からごみを収集しないことは、指導要綱による
行政指導を強制する手段として行われた違法な行為である旨主張する。
しかし、前記のとおり、被告は、指導要綱の該当する事項のすべてにわたって協議
が調った場合に、事業主との間で協議書を作成することとし、そのようにして成立
した協議内容に基づいて設置されたダストボックス(協議締結済みダストボック
ス)を市長設置のダストボックスと同等に扱い、そこからごみを収集することとし
ているのであるから、指導要綱に基づく事業主との協議が戊立していない以上、市
長が事業主に対しダストボックスの購入の斡旋を行わず、その結果、本件置場から
ごみの収集が行われないこととなるのは、協議締結済みダストボックスの設置その
ものが右協議の成立によって行われるものであるという事柄の性質上当然のことで
あって、これをもって行政指導を強制する違法なものということはできない。のみ
ならず、協議が成立しないために、本件置場にダストボックスが設置されず、そこ
からごみの収集が行われないとしても、そのことは、本件建物の入居者が敷地内に
ダストボックスが設置されている場合に受けるであろう利便を享受できないという
だけのことで、それ以上に本件建物の入居者のためのごみの収集が行われないとい
うことではなく、入居者や事業主の権利、利益を特段制限するものではないことか
らすれば、市長がダストボックスの購入の斡旋を行わず、本件置場からごみの収集
をしないことが、行政指導を強制する違法な行為であるということもできない。
したがって、本件において、被告が本件置場からごみを収集しないことが行政指導
を強制する違法なものであるということはできず、右違法をいう原告の主張は失当
である。
三 そうすると、本件置場からごみを収集しないことの違法を理由に、被告に対し
損害賠償を求める原告の請求は理由がない。
第四 結論
以上の次第で、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することと
し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主
文のとおり判決する。
(裁判官 佐藤久夫 橋詰 均 武田美和子)
別紙物件目録、図面1、2(省略)

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