弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
被告が原告らに対し昭和四三年六月二九日付納税通知書をもつてなした別紙目録記
載の不動産に対する別表記載の固定資産税及び都市計画税の賦課処分を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
       事   実
第一 当事者双方の申立
(原告ら)
主文同旨の判決を求めた。
(被告)
「原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決
を求めた。
第二 原告ら主張の請求の原因
一、被告は原告らが後記各税目の昭和三九年ないし昭和四三年度の各賦課期日(そ
の年度の初日の属する年の一月一日)において別紙目録記載の不動産(山林)につ
き、登記簿上、共有者として登載されていたことを根拠として、原告らに対し、昭
和四三年六月二九日付納税通知書をもつて、別表記載の固定資産税及び都市計画税
の賦課処分をした。
 原告らは、これを不服として同年七月二四日被告に対し異議の申立てをしたが、
被告は、昭和四四年一月三一日付で右申立てを棄却する旨の決定をなし、同年二月
三日原告らにこれを通知した。
二、しかしながら、前記課税処分は、法令の解釈を誤つてなされた瑕疵を有し、違
法である。
すなわち、
(一) 前記山林は、終戦前からAの所有であつたが、昭和三八年三月二七日同人
が死亡して相続が開始し、その相続人たる原告らの共有に帰し(その持分の割合
は、原告Bが九分の三、その余の原告らが各九分の二)、前記各地方税の賦課期日
において、その登記簿上、原告らを共有者とする登記が存したものである。
(二) ところが、国は、終戦後、アメリカ合衆国(以下、単に合衆国ともい
う。)との間の相互協力及び安全保障条約に基づく、義務の履行として、右山林を
在日合衆国軍隊に使用させるため、合衆国に提供し、今日にいたつたから、右山林
は、地方税法三四八条二項一号及び七〇二条の二の二項にいわゆる「国が公用に供
する固定資産」に該当し、これに対しては固定資産税及び都市計画税を課すること
ができない。
 従つて、被告が右山林をもつて国の公用に供する固定資産にあたらないとしてな
した右課税処分は地方税法の解釈を誤つたものといわなければならない。
第三 被告の答弁
一、前掲請求原因の一の事実、二の(一)の事実及び二の(二)のうち、国が原告
ら主張の条約上の義務の履行として原告ら主張の山林を原告ら主張の目的でアメリ
カ合衆国に提供し今日にいたつた事実は認める。
二、原告ら主張の法律上の見解は、失当である。すなわち、地方税法三四八条二項
一号にいわゆる「国が公用に供する固定資産」とは、国がその事務または事業を執
行するため直接使用することを本来の目的とする固定資産税を指すのであつて、前
記山林のように合衆国軍隊が直接使用し、国その他地方税法三四八条二項一号所定
の団体等が直接その事務または事業の用に供していない固定資産を含まない。そし
て、このことは、国が右山林を合衆国軍隊に使用させるについて、合衆国との間
に、いかなる契約その他いかなる縁由が存在しても左右されるものではない(昭和
三四年三月三日法制局一発第九号「提供財産の国有財産法上の取扱いに関する疑義
について」の回答参照)。
三、以上の次第で、被告のなした本件課税処分には、なんら違法がない。
第四 証拠(省略)
       理   由
一 別紙目録記載の山林が終戦前からAの所有であつたところ、昭和三八年三月二
七日同人の死亡により相続が開始し、その相続人たる原告らの共有に帰し、後記各
税目の昭和三九年ないし昭和四三年度の賦課期日(その年度の初日の属する年の一
月一日)において、登記簿上、原告らを共有者とする登記が存したこと、被告がこ
れに基づき原告らに対し昭和四三年六月二九日付納税通知書をもつて別表記載の固
定資産税及び都市計画税の賦課処分をしたこと、原告らが、その主張の日これに対
する異議申立をなし、右申立棄却の決定をされ、その通知を受けたこと、ところ
が、国が終戦後、アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づく義務
の履行として、右山林を在日合衆国軍隊に使用させるため合衆国に提供して今日に
いたつたことは当事者間に争いがない。
二 そこで、右課税処分の適否について判断する。
 地方税法三四八条二項一号は、国その他所定の公共団体が公用または公共の用に
供する一般人の固定資産に対しては、原則として国または公共団体が有料で借り受
けている場合を除いて、固定資産税を課することができない旨を規定するが、それ
は、固定資産をかように公の目的に使用する一方、担税力のない状態においたま
ま、これに対し固定資産税を課したのでは、元来その所有に担税力を見込み、これ
を基礎として成り立つている固定資産税の制度上好ましくないという政策的考慮に
よるものと解される。そして、さような理解に立てば、右に国が公用に供する固定
資産とは、必らずしも、国が自ら執行すべき業務に直接使用するものに限らず、国
が他に使用させている固定資産でも、その用途が一定の公の目的のためであつて、
もし、これに対し固定資産税を課したならば、公用物の場合に比して著しく衡平を
失すると認められるものを含むと解するのが相当である。
 これを本件についてみると、国が原告ら所有の前記山林をアメリカ合衆国軍隊に
使用させるため合衆国に提供しているのは、公共の用に供しているものといえない
のは勿論、直接公用に供しているものともいいがたいが、前記条約六条一項に基づ
く国際公法上の義務を履行して憲法九八条二項の要請を充すとともに、国家の安全
等に寄与するという特定の公の目的に供し、そのため右条約六条に基づく施設及び
区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定三条一項により合衆国に
特別の管理を許容し、その限度で私法の適用を排除しているものというべきである
から、右山林は、少くとも、固定資産税の非課税範囲に属すべき要因の存否に関す
る限り、公用物との間に本質的な差異がなく、むしろ、もしこれを別異に取扱うな
らば、著しく衡平を缺くものがあるといわざるをえない。そして、国が右山林をか
ように使用するため原告らから有料で借り受けたことについては、なんら主張立証
がないから、右山林は、当時、地方税法三四八条二項一号の非課税資産に該当する
ものであつたと解するのを相当とする。
 次に、地方税法七〇二条の二の二項は、同法三四八条二項一号の規定により固定
資産税を課することができない土地または家屋に対しては、都市計画税を課するこ
とができない旨を規定しているが、それは、都市計画税の制度が土地家屋の所有に
担税能力を見込み、これを基礎として成り立つていることからして、固定資産税制
度の場合と同一の政策的考慮によるものと解されるから、都市計画税についての非
課税の範囲も固定資産税についてのそれと同一に取扱うのが妥当である。従つて、
原告ら所有の右山林は、当時、同法七〇二条の二の二項の非課税資産に該当するも
のでもあつたといつて妨げない。
 そうだとすれば、被告が右山林を固定資産税及び都市計画税の課税物件としてな
した本件各課税処分は、地方税法の解釈を誤つた結果、非課税資産に対してなされ
た瑕疵を有し、違法というべきである。
三 よつて、その取消しを求める原告らの本訴請求を正当として認容することと
し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 駒田駿太郎 小木曾競 山下薫)

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