弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人中込・尚作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるか
ら、これをここに引用して、これに対し次のとおり判断する。
 論旨一、
 原判決引用の証拠殊に被告人両名の検察官に対する各供述調書の記載によれば、
原判示の如く被告人両名は共謀して、一般商業用として販売する外国製冷房機合計
一六台を米国軍軍納品として輸入するもののように装い、神戸税関に関係書類を提
出し、右の不正行為により免税輸入し、これに対する関税及び物品税を免れたもの
である事実を十分肯認しうるのであつて、本件記録を仔細に検討しても所論事実を
認めて原審右認定を覆すには足らない。原判決には所論のような事実誤認は存しな
い。
 論旨は理由がない。
 論旨二、三、
 原判決の判示によれば、被告人等に対する追徴は関税法第一一〇条の不正の行為
により関税を免れた罪の犯罪貨物であつて、没収することのできない冷房機一二台
分につき、同法第一一八条第一項本文、第二項に則り、その犯罪が行われたときの
価格に相当する金額として原判示金額が科せられたものであり、又没収は領置にか
かる前同様の犯罪貨物たる冷房機四台を同法第一一八条第一項本文によつて没収し
たものであることは明白であるところ、原判決は被告人等の本件行為を所論の如く
被告人等か勤務するA株式会社の業務として為したものと認めているのであつて本
件冷房機が同会社の所有に属することも原判決に徴して明白である。
 ところで法人の代表者、代理人或は使用人等がその法人の業務に関し、詐偽その
他の不正の行為によつて関税を免れたときは、関税法第一一七条によつて、その行
為者のみならず、その法人に対しても該当法条(本件においては関税法第一一〇
条)の罰金刑を科しうるものであり関税法第一一八条によれば犯罪に係る貨物のす
べてを没収の対象とし、ただ貨物が犯人以外の善意者の所有に係る場合及び第三者
が已に転得したもの<要旨>は、同法第一一八条第一項第一号、第二号により没収の
対象から除かれるにすぎないのである。そして同条に犯人とは行為者のみな
らず、いわゆる両罰規定により処罰される法人をも包含するものと解するのを相当
とする。従つて原判決が被告人等の所有に属していなくても、被告人等の不正行為
によつて免税輸入され犯人たるA株式会社の所有に属した犯罪貨物たる本件冷房機
四台を没収し、没収することのできなかつた同じく犯罪貨物たる冷房機一二台分の
価格に相当する金額の追徴を科したのは正当であり、原判決には所論の如き法令の
適用を誤つた違法の存するものとは認められない。
 次に本件冷房機の輸入の主体及び納税義務者は右会社であり、右会社が起訴され
ていないことは所論のとおりである。そして所論は右会社は本件摘発後冷房機一六
台分の関税及び物品税を納付した旨主張するけれども原審証人Bの供述によれば右
会社は罰金に相当する金額を税関に納付すべき旨の通告をうけて、これを納付した
ものであつて、この履行によつて、起訴されなかつたにすぎず、所論の如く冷房機
一六台分の関税及び物品税を納付したものとは到底認め難いのであつて、このこと
は当審において証拠として取り調べた右会社に対する通告処分書に徴しても明白で
ある。従つて、右関税及び物品税を納付したから、被告人等に追徴を科することは
二重に徴税するのと同じ結果となり不当であるとの所論は、その前提を欠き失当た
るを免れない。
 論旨は何れも理由かない。
 よつて、本件各控訴は理由がないから、刑事訴訟法第三九六条に則り、これらを
棄却すべきものとして、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 山本謹吾 判事 渡辺好人 判事 石井文治)

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