弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人B、C、D、E、F、Gの弁護人太田耐造、玉沢光三郎の上告趣意第一点
について
 原判決が認定した事実は、昭和二三年四月四日、被告人H等朝鮮人多数が暴行脅
迫に出でた際には判示第一の暴力行為等処罰に関する法律違反の犯罪事実あるに過
ぎず、未だ一地方における公共の静謐を害するに至らなかつたが、判示第二の同月
五日夜から六日朝に至る被告人B等の暴行脅迫行為は一地方の公共の静謐を害する
ものであつたという趣旨であつて、右事実は、原判決挙示の証拠就中浜松市警察署
長Iの第一審公判廷における供述記載によつて認められるのである。されば、原審
裁判所が原判示第一の所為につき同法律を適用し、同第二の所為につき刑法一〇六
条を適用したのは正当であつて、擬律の錯誤乃至理由齟齬の違法があるとする論旨
は採るを得ない。
 同第二点について
 原判決の判示第二の事実認定は、被告人B等が朝鮮人の襲撃があつた昭和二三年
四月四日より翌五日にかけてこれに対する反撃策をよりより謀議して茲に共謀の上
同五日夜から翌六日朝に判示犯行をしたという趣旨であつて、所論のごとく二個の
関連脈絡を欠く別個の共謀を判示したものでないこと明らかである。そして、挙示
の証拠によれば共謀の日時或は場所について多少の不一致はあるけれども結局共謀
の原判示事実認定を肯認することできないわけではないから、原判決には所論の違
法があるということはできない。
 同第三点について
 被告人B等に対する原審判決言渡期日の公判調書の所論各葉間に契印のないこと
は所論のとおりであるけれども、その筆跡、墨色続き具合からすれば同調書の連続
性を肯認することができ、これによれば右期日に適式に判決の言渡があつたことを
認めることができるから、原審には所論の違法はない。
 同第四点について
 原審における被告人Jの外B等六名の弁護人であつた玉沢光三郎が所論第三回公
判において太田弁護人申請の証人の外特に被告人JのためK外二名、その他の被告
人のため五名を証人として申請したところ、右Kについて決定を留保されたことは、
所論のとおりである。しかし、玉沢弁護人は右のごとく被告人Jの外被告人Bらの
弁護人でもあり、そして、原審第四回公判には、被告人Jは不出頭であつたが玉沢
弁護人は出頭して弁論が進められ右Kを含んだ弁護人申請にかかる留保中の証人全
部の申請はすべて却下する旨の決定が言渡されて他の被告人については結審され、
被告人Jについては弁論続行されたことは記録上明白である。されば当日出頭した
玉沢弁護人は、自己の申請した留保の証人が決定を以て却下された事実を了承した
ことは多言を要しない。しかのみならず、同被告人に対する最終続行期日である第
七回公判期日においては、弁論が更新されており、その際に裁判長は同被告人に対
し証拠につき意見弁解があるかどうかを問い且つ利益の証拠の提出ができる旨告げ
たのに対し同被告人は別にない旨答え玉沢弁護人においても何らの申立もしていな
いこと記録上明らかであるから、被告人及び弁護人は、右斎藤九七郎らの証人申請
をしない考えであつたこと一点の疑も存しない。それ故原審には所論の違法がある
ということはできない。
 同第五点について
 原審が巡査Aの証人尋問申請を却下しながら同巡査作成の報告書を証拠としてい
ることは所論のとおりである。しかし右報告書については、原審第三回公判におい
て証拠調をした上その作成者の喚問を請求しうる旨告げられたのに対し被告人等は
請求しない旨答えたものである。(記録一五七七丁裏以下参照)。そして太田、玉
沢、高屋弁護人は右Aを証人として訊問を請求したがその申請の趣旨は、右報告書
の内容に関しその報告者としてではなく、四月四日L方における朝鮮人の暴行及び
その被害状況並びに現場において犯人を逮捕しなかつた事由等を明らかにするため
であつたこと記録上(記録一五七九丁裏以下同一五三六丁参照)明らかであるから、
原判決が同報告書を証拠としたのは違法ではない。
 被告人H、M、Nの弁護人布施辰治、神道寛治の上告趣意第一点について
 原判決が被告人Hに対し、第一審判決の認定した犯罪中銃砲等所持禁止令違反の
罪につき無罪を言渡したこと並びに同被告人に対し第一審同様懲役三年を言渡した
ことは、所論のとおりである。しかし、本件のような旧刑訴法における控訴審は純
然たる覆審であつて、事後審ではないから、原判決が事実の認定、刑の量定につき
第一審判決と一致しないことのあるのは訴訟法上当然である。されば、所論は、結
局単なる量刑非難に帰し、採用できない。
 同第二点について
 しかし無罪の言渡をした部分に対する所論は、被告人に取り上告の利益のないこ
と明白であるから、採ることはできない。
 同第三点について
 しかし、原判決は脅迫の判示として被告人等十数名の一部は拳銃を発射しと認定
し、所論拳銃所持の無罪の判示として被告人Hがこれを所持した確証がない旨説示
しているから、判決の理由に何等の矛盾も存しない。その他無罪判決理由に対する
所論は、上告の利益を欠くもので適法な上告理由となし難い。
 同第四点について
 所論第一審判決の認定判示は、覆審判決である原判決に関係はないし、また、原
判決が「憶断」と認定判示したからといつて、民族的差別をしたものとすることは
できない。その他原判決の事実認定には前後矛盾した点を見出すことはできないか
ら、論旨は採るを得ない。
 同第五点について
 記録を調べても被告人、弁護人らは、原審において正当防衛の主張をした点は認
められない。従つて原判決には所論のような判断遺脱は認められないのである。
 同第六点について
 しかし、原判決挙示の証拠によれば、原判示の事実認定を肯認することができる。
そして、原判決挙示の証拠が伝聞、想像、推定若しくは狂言的断定だと認むべき資
料は存しない。
 されば、所論は、結局原判決の証拠の取捨、判断乃至事実の認定を非難するに帰
し、採ることができない。
 被告人H、N、O、Mの弁護人布施辰治、神道寛次の上告趣意第一点について(
被告人H外五名とあるのは右の被告人らを指すものと認める。
 所論は、原判示に副わない独自の「絶讃」、「侮蔑」の見解を前提として、原判
決の事実認定又は量刑を非難するに帰し、上告適法の理由とならない。
 同第二点について
 全記録を精査しても警察署、検察庁が所論刑事手続違反を為し、又は原判決が所
論のごとき偏頗な審理不尽若しくは人種差別に基く審理不尽の事実誤認を敢てした
事実はこれを認めることができない。されば論旨は、その前提を欠き採用するを得
ない。
 同第三点について
 旧刑訴三九九条の定めている検事の附帯控訴は、同四〇三条の不利益変更禁止の
規定を排除する効果をもつに止まり、弁論の終結に至るまでこれを申し立てれば足
りるものであつて、特にこれを被告人に通知する必要もなく、検事の附帯控訴に基
いて事実審理をする必要もなく、また、これについて特に被告人及び弁護人の意見
を聴く必要もないものである。されば、原判決には所論のような違法は存しない。
 被告人H、N、M、Oの弁護人布施辰治、神道寛次の上告趣意第一点について
 しかし、記録を精査し所論指摘の点を対比又は対照して見ても、原審裁判所が審
理及び判断又は量刑をするのに、人種的偏見を以て被告人等を差別待遇したと認む
べき事跡を見出すことはできない。されば、所論は、その前提事実を欠き是認する
ことを得ない。
 同第二点について
 原判決挙示の証拠によれば、原判示の決意、意思の共通その他原判示第一の(一)
乃至(五)の事実認定を肯認することができるから原判決には所論の違法は存しな
い。
 同第三点について
 しかし、本件のような公判準備における証人尋問は、公判廷における証人尋問と
は異り、一般に公開されるものではないから、特に必要ありと認める場合の外後に
尋問すべき証人を尋問の場に在席させることはないものである。そして、本件証人
尋問においても後に尋問すべき証人が在席していた事跡は認められないのであるか
ら、特に証人尋問調書に後に尋問すべき証人の居らないところで尋問した旨の記載
のないのは、むしろ当然であつて、これを以て旧刑訴二〇三条二項の規定に違反し
たということはできない。
 よつて刑訴施行法二条旧刑訴四四六条に従つて、裁判官全員一致の意見で主文の
とおり判決する。
 検察官 長谷川劉関与
  昭和二七年一二月二五日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
 裁判官沢田竹治郎は退官につき署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎

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