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主主主主文文文文
1被告らは,連帯して,原告に対し,60万円及びこれに対する平成
23年9月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告らは,連帯して,原告に対し,50万円及びこれに対する平成
23年9月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,これを500分し,その7を被告らの負担とし,その余を
原告らの負担とする。
5この判決は,第1項,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及事実及事実及事実及びびびび理理理理由由由由
第1請求
1被告らは,連帯して,原告に対し,3996万6363円及びこれに対
する平成23年9月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告らは,連帯して,原告に対し,3796万6363円及びこれに対
する平成23年9月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要等
1事案の概要
本件は,原告らの子であるが,被告町の公務員である教諭による違法な
指導により多大な精神的苦痛を被り,自殺行為に至って平成20年4月4日に死亡
し,さらに真実解明調査・報告義務違反があったとして,被告町に対し,国家
賠償法1条1項又は民法415条に基づく安全配慮義務違反に基づき,被告北海道
に対し,国家賠償法3条1項により,死亡による逸失利益,死亡慰謝料,原告ら固
有の慰謝料及び弁護士費用を損害として,原告は3996万6363円,原告
は3796万6363円及びこれらに対するそれぞれ訴状送達の日の翌日である
平成23年9月21日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の
支払を求めた事案である。
2前提となる事実(争いのない事実に加え,各項末尾掲記の証拠及び弁論の全
趣旨によって容易に認められる事実)
当事者等
ア原告ら
ア原告はの父であり,原告はの母である。
イは,平成9年3月24日に出生し,平成15年4月,町立小学校
(以下「本件小学校」という。)に入学し,平成20年4月4日に死亡した。
イ被告ら
ア被告町
被告町は,平成20年4月当時,が通っていた本件小学校を設置管理して
いる普通地方公共団体であり,本件小学校の校長,教頭,教諭ら及び被告町が
設置する町教育委員会の教育長以下委員らは,いずれも被告町の公務員であ
る。
イ被告北海道
被告北海道は,市町村立学校職員給与負担法1条の規定に基づき本件小学校の教
員の給料その他の給与等を負担している。
の死亡に至る経緯
アは,平成19年度当時,本件小学校の5年生だった。本件小学校の5年
生は,13名の1クラスしかなく,教諭が担任だった。この13名は,全員同じ
保育所に通い,本件小学校入学後も1学年1クラス編成だったため,全員同じクラ
スで進級してきた。
イ教諭による平成19年度当時の指導等
ア教諭は,5年生の児童に対して,登校後,忘れ物がないかを点検し,忘
れ物をした場合,朝の会が始まる前に,職員室に来て教諭にその旨申告するよ
う指示していた。
教諭は,忘れ物をした児童に対して厳しく叱責した。
イ教諭は,児童を厳しく指導した後に,児童に対して「皆に謝りなさ
い。」と言ったことがあった。
ウ教諭は,が5年生時の夏休みの宿題ドリル(以下「本件ドリル」とい
う。)で,図形の作成(指定された平行四辺形と同じ平行四辺形を作図するという
もの)を1か所間違えたことに対して,できるようになるまでやり直すよう,図形
の作成を繰り返し指導した。
そのため,は,夏休み後に毎日本件ドリルの再提出をしたが,教諭は平成1
9年11月初旬頃まで繰り返し訂正と再提出を要求した。
原告は,同月中旬頃,教諭に対し,本件ドリルをチェックするよう依頼し
た。
エ教諭は,を含む一部の児童に対して,学校行事に際して演奏する楽器
の居残り練習を指示した。の個人練習は,7,8回行った。
ウは,平成20年4月3日午前9時40分,自宅トイレのブラインドにつ
いている紐によって縊首している状態で発見され(以下「本件事件」という。),
同月4日午後4時52分,病院において,縊首を原因として死亡した(甲2)。
の死亡後の本件小学校の対応等
ア本件小学校の校長らの対応等
ア本件小学校校長(以下「校長」という。)は,平成20年4月7日,
原告らに対して,電話で,同月13日開催予定のPT総会において,の死因は
自殺ではなく,不慮の事故である旨説明を行うようにとの発言をした。
イ校長は,平成20年4月7日,原告らに対して,教諭が辞意を表明し
ている旨を伝え,の死因は不慮の事故であって教諭に責任はないとして,
教諭に辞意を撤回するよう,原告らから教諭に慰留を求めるよう依頼した。
ウ平成21年3月9日,本件小学校では,卒業式に向けた保護者説明会が予
定されていたが,原告らが本件小学校を訪れたところ,校長は,原告らに対し
て,「お母さんたち(の同級生の保護者ら)は,今,ナーバスになっているの
で,余計なことは言わないで下さい。」と述べた。
エ町教育委員会は,平成21年9月14日付けで,原告ら宛ての「さん
の事故及びご逝去に関わる学校(校長・教諭)の対応についての経過と指導
について」(乙イ7)と題する文書に,校長の前記イの依頼に対する教育委員
会の見解として,「当時,事故で亡くなった認識していたとはいえ,悲しみに打ち
ひしがれている保護者にお願いをすることは,組織の維持や自分の立場しか考えの
及ばない校長の思い上がりやおごりであって,言語道断といわなければなりません。
これから将来のある若い教師を育て上げようとする校長の意思が強かったとしても
重大な判断ミスであります。お願いされた時の,(原告らの氏)さんの驚きや困
惑は極めて当然でご遺族の気持を逆なでされた思いであったことは想像に難くあり
ません。」と記載して,原告らに交付した。
オ校長の後任者である本件小学校校長(以下「校長」という。)は,平
成22年5月14日,原告ら宅を訪れ,原告らの執拗な追及によって教諭が辞
意を表明していることを報告し,これ以上の執拗な追及を止めてもらいたい旨述べ
た。
イ事故報告書の記載内容等
ア平成19年11月16日付けで北海道教育委員会教育長から各市町村教
育委員会教育長(各市町村立学校長)宛てに出された「児童生徒の事故報告につい
て(通知)(教学健第1059号)」(甲3)は,死亡の原因が「自殺」である場
合には,事故報告書の「事故の分類」欄には「自殺」と記載するものとしている。
イ平成20年4月4日付けの死体検案書(甲2)には,の直接の死因とし
て多臓器不全,その原因として縊首と記載されており,「死因の種類」として「自
殺」に丸が付けられていた。
ウ校長は,平成20年4月7日付け一般事故報告書(乙イ29)において,
「死亡の原因」として「多臓器不全」と記載した。
エ原告らは,平成22年7月9日付けで,町教育委員会教育長(以下「
教育長」という。)に対して,死体検案書を提出し,の死亡が事故という報告
で処理されているが,自殺である旨異議を述べた。
校長は,同月23日付けで,町教育委員会に対して,平成20年4月7日付
け一般事故報告書において,死亡の原因を「多臓器不全」としていた点を,原告ら
が上記死体検案書を提出したことにより,「自殺」と変更する旨報告するとともに,
死亡の原因につき自殺と記載した平成22年7月23日付け一般事故報告書(乙イ
30)を提出した。
ウ教諭は,平成23年3月31日,教員を辞職した。
3争点及びこれに対する当事者の主張
争点1(教諭の指導の違法性)
(原告らの主張)
ア教諭は,の属する学級の担任教諭であり,を含む受持児童全員に対す
る小学校教育をつかさどる職務権限を有していたものである(学校教育法37条1
1項)。また,小学校教育の目的は多岐にわたるが,基本となる目的として,およ
そ人たるものにとって,日常生活を円滑に行っていくに際して,共通に必要な一般
的かつ基礎的な教育を施し(同法29,30条参照),学校内外における社会的活
動を促進し,自主,自立及び協同の精神,規範意識,公正な判断力並びに公共の精
神に基づき主体的に社会の形成に参画し,その発展に寄与する態度を養うことが掲
げられている(同法21条1項1号)。学校教育の基本法である教育基本法は教育
の目的として,「教育は,人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形
成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければ
ならない」(同法1条)とし,右教育の目的はあらゆる機会に,あらゆる場所にお
いて実現されなければならないとされている(同法3条前段)。
そして,教育という事柄の性質上,かかる職務権限を委ねられた教諭は,この目
的を達成するために合理的な範囲で裁量権を有するとしても,当該裁量権が児童の
学習権やその他の基本的人権を侵害する態様で行使された場合には,教諭の教育的
裁量の逸脱・濫用として違法性を有することは明らかである。
また,教職員らは,児童らと学校生活をともにし,直接指導に当たる立場として,
児童らが健全で安定した学校生活を送ることができるように,同人らの生命,身体,
精神等の安全に配慮する義務があり,特に児童に対する指導を行うに際しては,教
師,児童という権力関係が児童にとって大きな精神的・心理的負荷につながりやす
いこと,思春期の児童が精神的不安に陥りやすいことから,当該児童の年齢,性別,
性格などを考慮した上で,教育目的の観点から,当該児童に過度の肉体的・精神的
負担を負わせるに至った場合には,これを除去するなどの教育的配慮を行う義務が
ある。
イ教諭の指導の違法性
の担任であった教諭は,本人及び教育委員会も自認するような教師の教育
的裁量の範囲を逸脱した違法な指導を繰り返した。その結果,を精神的に追い
詰め,遅くとも,平成20年3月末頃にはその負担を除去すべき安全配慮・教育的
配慮義務が生じていたにもかかわらず,漫然とそれを見過ごしたものである。
ア忘れ物をした児童等に対する行き過ぎた厳しい指導
教諭は,無抵抗で弱い立場にあるを含む5年生児童らに対し,日常的に,
他の児童や職員らの面前で,10分から20分にわたって,児童が泣き出すまで叱
りつけた上で,他の児童に対する謝罪を強制し,児童らに強い屈辱感を与えており,
これにより不登校となる児童も現れたほどであった。このような教諭の指導は,
小学校5年生が忘れ物をしたことに対する指導としては,教育的配慮を欠き,教諭
の教育的裁量を逸脱・濫用するものであって違法である。
また,教諭は,授業中であっても「チェッ」と舌打ちし,5年生児童らは,こ
の「チェッ」という舌打ちが教諭が怒る前の仕草であるとして,それが始まる
と一斉に萎縮して行動を止めるなど,教諭の叱責を畏怖して怯えていた。
イ夏休みの本件ドリルの訂正・再提出に関する行き過ぎた厳しい指導
教諭は,に対してのみ,本件ドリルの図形の作成の1か所の間違いを指摘し
続け,が繰り返し訂正の上で再提出を行っても具体的な指導を行うことなく単
に「ズレてる,ズレてる」として,11月になっても裏表紙がはがれるまで毎日本
件ドリルを持参させておきながら,最終的にはが本件ドリルを持参しているこ
とを知りながら,それを確認・添削しなかった。上記忘れ物に対する行き過ぎた厳
しい指導と併せて鑑みれば,が強い屈辱を感じながらも,毎日本件ドリルを持
参したのは,教諭に対する畏怖の念によるものに他ならず,このような教諭
の指導は,に過度の精神的苦痛を与える指導であって,教育的配慮を欠き,教
諭の教育的裁量を逸脱・濫用するものであって違法である。
また,が本件ドリルを持参しても教諭がこれを見ようとしないのを見かね
て,原告は,教諭に対し,「は未だに毎日本件ドリルを学校に持って行っ
ているのに,先生に本件ドリルを見てもらえないための夏休みはまだ終わっ
ていないんです。もうすぐ冬休みになるので見てもらえませんか。」と頼んだとこ
ろ,教諭は,「そうですね,もうすぐ冬休みがきますもんね。」と言ったものの,
結局本件ドリルを見ることはなかった。
ウ学校行事に向けた器楽の練習に関する行き過ぎた厳しい指導
教諭は,休み時間や放課後にまで,一部の児童に対して,運動会・学芸会・卒
業式・入学式等の学校行事に際して演奏する器楽の練習を繰り返し命じたが,特に
に対しては卒業式,入学式の器楽練習として,6回から7回にわたって放課後
に一人で器楽の練習をすることを命じた。
は,5年生3学期から学校へ行きたくないと言い始め,器楽の練習が始まっ
た5年生の1月頃から「お腹が痛い」,「鼻が痛い」と言って本件小学校を欠席す
るようになった。
は,度重なる器楽の居残り練習を苦痛として,4日連続で欠席した。これに
対して,教諭は,原告らとの話合いの席にて,「休んだ4日目位の時,練習がつ
らいのではと思い,もう大丈夫と声をかけました。」と供述しており,このことは,
連日休まざるを得ない程の辛い練習や苦痛を強いていたことを,当時,教諭が認
識しつつ行っていたことを示すものである。
そして,教諭が,特定の児童ら,特にに対して,休み時間や放課後に及ぶ
居残り練習を繰り返し命じていたことは,上記のような厳しい指導のもとで,教
諭に対して強い畏怖の念を感じていたを含む児童らにとって,教諭に対する
畏怖から逃れる自由時間を奪い,強い拘束感と屈辱感を与えたものであって,教育
的配慮を欠き,教諭の教育的裁量を逸脱・濫用するものであって違法である。
エ教諭の発言
教諭は,平成20年4月3日,本件事件の第一報を聞いて病院に駆けつけた際,
春休みのの様子等を確認することもなく,病室に入るなり,「さんのことが
分かってあげられなくて申し訳ありません。」と謝罪しており,これは,教諭が
自身に非があることを自認していることを示すものである。
また,同月7日,教諭が,本件事件の原因として児童間のいじめの有無を調査
するために家庭訪問を行っているとして原告ら宅を訪れた際,原告らが,「子供の
いじめなんかあるわけないでしょうって,先生,1年間担任して分かっているでし
ょう。」と言ったところ,教諭は,「子供たちを少しでも疑って申し訳ない,そ
したら私かな。」と発言しており,これは,自身の非によりが自殺した可能性
を自認するものである。
さらに,教諭は,指導の違法性を自認する内容の反省文や原告ら宛ての手紙を
作成している。
オ町教育委員会の教諭に対する処分等
町教育委員会は,教諭について,聴取り等の調査の結果,教師としての行き
過ぎた指導や不適切な指導があったことを確認したため,教師としての指導力ある
いは資質を高めるための研修を受けさせるという処置をとったものの,最終的には,
退職勧奨をした。
この点について,被告らは,教諭に厳しい評価を行った理由について,原告ら
の意に沿う形での対応を迫られたことによるものであって,事実とは異なる旨主張
するが,原告らが教育委員会を訪問した平成21年3月末日当時は,教育長に
とっても原告らの訴えは極めて穏やかな内容であったにもかかわらず,その約1か
月後の同年5月8日には,教育長は,既に教諭に対して事実をもとに強く反
省を迫り,指導し,同年6月25日にも再度反省を強く求める等,調査開始当初よ
り,教諭に繰り返し反省を迫っていたのである。
町教育委員会等が教諭の指導の違法性や問題点等を認めたことは事実であ
るからであって,これが事態を円満に収束させるための方策として,あえて事実で
ないことを述べた「虚偽」,「嘘」であるということはできない。
ウよって,教諭の指導は,ⅰ)児童の学習意欲を高めたり,励ましたりとい
う配慮が不十分で,教師からの一方的な指導となっていたこと,ⅱ)児童の心情を
受け止めるなど,担任と学級の児童との好ましい人間関係が醸成されていなかった
ことといった問題点があり,上記の指導はいずれも,担当教諭としての教育指導上
著しく適切さを欠いており,教諭の教育的裁量を逸脱・濫用するものであって,安
全配慮義務・教育的配慮義務に反しており,違法性を有することは明らかである。
また,教諭の教育指導は,アカデミック・ハラスメント類似の構造を持ってお
り,教諭の行為は,教師と子どもの人格的触れ合いに満ちた「教育」ではなく,
子どもに対する単なる「ハラスメント(嫌がらせ)」であり,「子どもの最善の利
益」を侵害する違法行為である。
(被告らの主張)
ア一般的経験則に照らしても明らかであるとおり,教師にはその性格,物の考
え方,教育に対する信念,実績経験に応じて多種多様な者がおり,教育論・教育方
針も教師により様々である。
本件小学校として認識している限り,教諭は,常に真剣に教育と向き合い,自
身が児童にとって最善と考える教育指導を行っていた。また,教諭は,教師とし
ての一般的な能力も,6年目の教師として十分であった。
イ平成19年度学級における教諭の指導方法について
教諭が,受け持ったクラスの児童に対して,時折厳しく指導することがあった
のは事実である。しかしながら,そうした厳しい指導も,あくまで児童らの成長の
ために各教師の教育方針に基づく裁量の範疇で行われたものであって,客観的に見
て,何ら公教育現場における教育的指導の範疇を超えるものではなかった。
教諭に見受けられた問題点は,担任と児童との意思の疎通や信頼関係の構築と
いった面で若干の未熟さがあったという程度のものに尽きるのであり,これは,経
験年数を問わず教師一般に見られる通常の問題点である。また,教諭が児童らを
成長させたいという一心で,教師という仕事に真剣に取り組んでいたからこそ,そ
のような未熟な部分が露呈されたといえる。
このため,町教育委員会は,教諭には,懲戒処分に値するような問題点はな
いと判断の上,上記のような未熟な部分を克服して良い教師になれるよう指導した
のである。
ウに対する指導について
ア忘れ物を理由にに対する厳しい指導が行われた事実はないこと
教諭は,それぞれの児童の事情を考えて,児童の忘れ物に対する指導を行って
いた。そして,教諭は,個々の児童と話をし,持ち物の揃え方を確認したり,他
の児童から学習用具を借りるように助言したり,できるだけ気を付けるように励ま
したり,それぞれの児童に合った指導をしていたが,に関しては,忘れ物が多
い児童ではなかったことから,忘れ物について特に厳しい叱責が行われたという事
実はない。
したがって,原告らの主張を前提にしても,教諭が忘れ物を繰り返す等の問題
のある児童に対して行っていた厳しい指導を目にしたが,忘れ物をするのを恐
れて入念な準備をするようになったという程度のことに尽きるのであり,かかる事
実をもって,教諭の指導が違法であったと評価される余地はない。
イ器楽の特別練習は正当な教育的意図に基づき相当な方法により行われてい
たこと
器楽の特別練習についても,児童ら全員で演奏する演奏会で,がきちんと演
奏できるように,教諭自身も時間を割いて個別指導に当たっていたものであり,
何ら不当な意図・目的に基づくものではなく,のみが個別指導の対象となって
いたものでもない。また,その頻度も休み時間に3,4回,放課後に2,3回程度
のものであり,児童を励ます,褒めるなどの配慮もしていた。
結果として,を含む児童らは,本番の演奏会できちんと演奏できており,
も文集のテーマに選ぶほどに自身が努力の末やり遂げた器楽の発表に関して達成感
を感じていた。
ウ本件ドリルのやり直し指示は正当な教育的意図に基づくものであること
本件ドリルの指導経過については,教諭は,平行四辺形の作図は丁寧に指導す
る必要があると考え,に対して,「先生の時間があるときに,あとで一緒にや
ろう。」と声を掛けたものであり,教諭によれば,そのように声を掛けた後にす
ぐに個別指導の時間を作らなかったことについては反省しているものの,本人
も,その間,本件ドリルについて特に気にしている素振りはなかった。ドリルの指
導は,のためにも,中途半端のまま妥協せず,正しくやり遂げることが重要と
考えたからこその指導であって適切なものであった。
また,が本件ドリルに最終的な丸がもらえていないことを気にしていたとし
ても,この程度の児童・担任間の意思の不疎通は通常十分に起こり得ることであり,
に対して作図のやり直しを命じたことや結果的に丸付けが遅れたことをもって
違法であると評価される余地はない。
エ原告らは,存命時に教諭の指導の違法性を疑わせる事実を認識してい
なかったこと
ア原告らが本件訴訟において教諭の指導の違法性として主張している事実
について,の存命時においては,本件ドリルの丸付けの依頼の一点以外,教諭
や本件小学校に対して,何らの指摘や申入れも行っていない。また,原告らは,
教諭の違法な指導によって,3学期に入ってからが学校に行くのを嫌がるよう
になったと主張する一方で,その原因・理由について本人に確認することもし
ていなかったというのである。
仮に,児童が自殺に及ぶほどに担任教師に対して日々怯えていたのであれば,そ
のような行動に至るまでに,両親として児童の心身の変化に気が付き,児童本人あ
るいは学校に対して何らかの確認をしてしかるべきである。また,心身ともに成長
発達が著しい時期にある小学校高学年の女子児童は,誰しも多かれ少なかれ,両親
に対しても自ら積極的に相談できないような悩み等の事情を抱えていることが通常
であり,が,3学期に入ってから学校に行きたくないと言って休むようになっ
たことも,教諭に対する嫌悪感に限らず,両親すらも把握できない悩みや葛藤を
抱えていたことに理由がある可能性も十分に考えられる。
結局のところ,両親というと最も密接な関係にあった原告らですら,の存
命時において,に対する教諭の指導に違法性を疑わせるような具体的事実を
認識していなかったのであり,「教諭によるいじめがあった」,「の自殺は
教諭のいじめによるものである」という原告らの主張は,いずれも後付けの主張に
過ぎない。
イまた,の死亡後についても,教諭が,に対して,違法とまで評価し
得る言動をしており,がこれを苦にしていたのであれば,の死亡直後から指
摘・追及がなされてしかるべきであるところ,原告らから,教諭及び本件小学校
に対する要望が出始めたのは,が死亡して1年以上が経過した平成21年4月
頃からであり,それまでの間,原告らから,が存命中に教諭に対して嫌悪感
等の感情を持っていたこと等の発言は一切なかった。
オ教諭がの死について法的責任を認めた事実はないこと
教諭が,が病院に運び込まれた日に,自分自身に非があるかのような発言を
したのは,原因が何であれ受け持った児童が自殺に及んだことに関して,担任とし
ての道義的責任感から来る自責の念によるものであって,法的な意味での自殺
の原因が自分にあることを認めた訳ではない。
また,教諭がや原告らに宛てて書いた手紙等においてに対する謝罪の言
葉を記載したことについても,教諭の日々の指導がの心情を傷つけていたと
いう原告らの言い分をそのまま受け止め,担任という立場から来る自責の念により
記載したものに過ぎない。
カ教諭の指導方法・能力・適性に関する町教育委員会の言及の背景事情
について
町教育委員会は,教諭に認められた教師として未熟な部分につき研修指導に
より成長を促していく必要があると判断する一方で,原告らが主張するような
教諭を何らかの処分に付すべき事由はないとの判断に至っており,この点について
は,当初より首尾一貫した態度をとっている。
町教育委員会は,教諭に対して退職を促した際も,教諭の教師としての能
力や適性に問題があるといったことは一切告げていない。教諭に対する退職勧奨
は,教諭が,原告らによる厳しい追及に対応することで教職に専念できる状況に
なく,心身ともに疲れ果てて辞意を表明していたことを踏まえて,教諭の心身及
び将来に配慮して行われたものである。そうであるにもかかわらず,教育長が,
原告らに対し,教諭の能力や適性につき否定的な評価を述べた理由は,教育長
自身も過去に子を不慮の事故で亡くした辛い経験を有していたことから,同じく大
切な我が子をなくした原告らの心情にできる限り寄り添い,また,抗議の姿勢を
日々強めていく一方の原告らの理解と納得を得てどうにか事態を収束させようとの
意図の下で,が自殺した原因は教諭の指導にあるという原告らの主張を真っ
向から否定することをしない方法を選択したからである。なお,教育長が,原
告らとの直接のやり取りに限らず,町教育委員会会議においても同様に否定的な
評価を述べたのは,同委員会が一般公開されており,議事録の閲覧・謄写も可能で
あるために,原告らに対する説明と齟齬が生じないようにしたためである。
キ以上のとおり,の死亡との因果関係を別途論ずるまでもなく,教諭から
に対して行われた指導に違法性は一切認められない。
争点2(本件事件後の対応の違法性)
(原告らの主張)
ア本件小学校の設置者である被告町及び本件小学校校長以下教諭らは,在
学する児童との間に公法上の在学契約関係が存し,当該法律関係の付随義務として,
当然に,学校教育の場及びこれと密接に関連する生活場面において,児童が傷害等
の被害を受けた場合には,被害者である児童及びその保護者に対して,被害発生の
経緯等について調査した上これを正確に報告する義務がある(真実解明調査・報告
義務)。この義務の内容としては,ⅰ)適切速やかに調査を行い,事態の状況やそ
の原因,経緯,学校がどのような対応をとったか(あるいはとろうとしているか)
等について,保護者等に報告する義務という本来の意味である調査報告義務(以下
「狭義の調査報告義務」という。)に加え,ⅱ)調査報告の過程において,隠蔽行
為を行わない義務,ⅲ)調査報告の過程において,保護者等の名誉を毀損せず,誠
実な対応をとる義務(以下,このような義務を含む調査報告義務を「広義の調査報
告義務」という。)が含まれる。
イ狭義の調査報告義務違反
ア本件小学校側は,の死が自殺であることを知りながら,校長と教諭
は,PT三役会議や保護者会において,「両親が『間違えなく事故であり自殺で
はない』と言っていた」という嘘を言い,事故報告書の「死亡原因」欄に「多臓器
不全」と記載して町教育委員会に報告しており,全く調査義務を果たしていな
い。
イ町教育委員会は,原告らに対して,教諭の指導には問題性があったと
の説明をしてきたにもかかわらず,本件訴訟になってからそれまでの説明を翻して
いるところ,このような態度は,二重の意味で調査義務違反である。すなわち,
町教育委員会は,自ら調査した結果に基づき,教諭の問題性を認めていたにもか
かわらず,本件訴訟においてこれを翻したとするならば,最後の段階で調査義務を
果たすことを放棄したことになる。他方,教諭の問題性を裏付ける事実がないに
もかかわらず,問題があるかのように説明し,本件訴訟において「実は問題はなか
ったのだ」と真相を語ったとするならば,最初から調査義務を全く果たしてないこ
ととなる。
ウ広義の調査報告義務違反
以下の校長,教諭,教育長の言動は,いずれも,広義の調査報告義務に違反
する。
ア校長は,平成20年4月3日,の枕元で「首に紐が二重,三重にまか
れたまま運ばれたと町中の噂になっているので,鉄は熱いうちに打たないとだめ
だ。」などと話した。
イ校長は,平成20年4月7日,「死亡の原因」欄に「多臓器不全」と記
載した虚偽の事故報告書を作成し,町教育委員会教育長宛てに提出した。
ウ校長は,平成20年4月7日,原告らに対し,電話で同月13日開催予
定のPT総会において,「本件事件発生原因は,自殺ではなく,不慮の事故であ
る」旨の虚偽の説明を行うよう依頼した。
エ校長は,平成20年4月7日,原告らに対し,教諭が辞意を表明して
いる旨伝え,本件事件の原因は不慮の事故であって教諭に責任はないとして
教諭に辞意を撤回するよう,原告らから教諭に慰留を求めるよう依頼した。
オ原告らが,平成20年5月22日,の四十九日法要にお参りに来てくれ
た児童らにお礼の品を届けるため,本件小学校を訪れ,と同級生らとの関わり
の深さやにたくさんの思い出をくれた児童らに対する感謝の気持ちを述べたと
ころ,校長は,「さんのことは忘れなさい。」と無神経な話をした。
カ教頭と教諭は,平成21年3月5日,原告ら宅を訪れた際,同月19
日の卒業式への出席について,原告らが,「も卒業生として卒業式に出席させ
てもらえるのか。」と尋ねたところ,卒業式は祝い事でめでたいことなのに,そこ
にの写真があると,の自殺が生々しく思い出されて悲しい式になってしまう
からそれはできないとして,の席は卒業生らの席とは別にし,式場の脇の教員
らが座る席に別途遺影を置く席を設ける旨説明した。
キ原告らが,平成21年3月9日,本件小学校を訪れた際,校長は,自身
が親を亡くした際のエピソードを述べて,「私の親が亡くなったときは,子どもが
悲しんだ。子どもを亡くした親の気持ちはどんな気持ちなのか?」と悲しみに暮れ
る原告らに対し,非常識な質問をした。
ク校長は,平成21年5月15日,町教育委員会から校長と教諭の
人間的な成長を指導するよう命じられた教育専門相談員(以下「相談員」と
いう。)とともに,原告ら宅に謝罪に訪れた際,原告らに対し,「さん
は・・・」と言いながら,左手で首を絞める動作を行い,苦しむような表情をしな
がら「自殺だった」との具体的な仕草をした上で,「大変失礼なことばかり言って
申し訳ありませんでした。」と謝罪した。
ケ校長は,平成22年5月14日,原告ら宅を訪れ,「原告らがいつまでも
教諭の責任を追及するため,教諭が辞意を表明している。以後は,本件事件に
ついて一切,言及しないで欲しい」旨述べ,原告らに対し,本件事件の口止めを行
った。
コ事故報告書は,平成22年7月23日付けで「死亡原因欄」が多臓器不全
から自殺に訂正されたが,その経緯の説明にあたって,校長は,「訂正前の事故
報告書は平成20年4月7日警察署の担当課長より『外見上は自殺の可能性が
高いが,両親には自殺は考えられないとの揺るぎない思いがあるので両親の意向を
尊重し,二次的な精神的苦痛も考え,これ以上捜査することなく事故扱いとします。
報道関係機関から警察に問い合わせがあったとしても死亡の事実は伝えますが死亡
の原因については一切公表しないこととします。』とのことでしたので,死亡の原
因は不慮の事故による『多臓器不全』として平成20年4月7日付事故報告書に記
載したものです。」と虚偽の説明をした。
サ原告らが,平成22年8月5日,町教育委員会を訪れ,教育長に対し
て「死体検案書を提出したが,その後どうなったか」と質問したところ,原告らに
対して,「うるさい!だまれ!!」と怒鳴り,原告らに暴言を浴びせた。
(被告らの主張)
ア被告町関係者が事実関係の調査・把握に努めたこと
ア隠蔽工作などないこと
一般論としての調査・報告義務があることは認めるが,の死亡後,本件小学
校の校長らを含む被告町関係者らは,警察その他関係各所へ出向き,また,同
級生らの下へ家庭訪問する等して,事実関係の調査・把握に努めており,調査・報
告義務違反はない。そもそも,「自殺」という文言が原告らから出たのは,平成2
1年3月31日に原告らが町教育委員会を訪れて面談した際が初めてのことで
あり,事故当時の報告での隠蔽工作などあり得ない。
平成20年4月7日付け事故報告書の死亡の原因欄の「多臓器不全」との記載は,
教諭が,同月4日の午後7時半頃に,原告らから,検死の結果として多臓器不全
である旨を伝えられたことや警察の担当者とのやりとりの経緯からなされたもので
あり,自殺であることを隠蔽しようという意図の下になされたものではない。
また,原告らは,事件当初は自殺ではなく事故であるという強い思いを抱いてい
たことからすれば,教諭を含む学校関係者に対してもその思いを伝えたはずであ
り,上記事故報告書に「自殺」と記載されなかったのは,原告らから,検死の結果
として多臓器不全である旨を聞かされたことに加えて,自殺ではなくの不注意
による事故であるという原告らの強い思いが尊重されたからである。
さらに,原告らは,本件訴訟において,事故である旨の説明は,が存命中な
ので,復学を前提として児童らに説明する際に配慮を依頼したものに過ぎない旨を
主張しているが,一方で,本件訴訟提起より以前,かつ,事件から2年以上が経過
した時点で,原告らは,「私たちはの亡くなった時は,不注意によっておきた
ことと思っていました」,「が亡くなった後も,考えることはの名誉であり
人権でしたから,『事故で・・・』と自分たちに言い聞かせてきました。」と
の死亡直後もなお不注意による事故であると思っていた旨を記載していることと矛
盾しており,本件訴訟提起前の言い分が実際のところであったことは明らかである。
イ保護者らに対して虚偽の説明をした事実がないこと
そもそも,児童の尊い命が失われた直後に行われた保護者会及び全体懇談会にお
いて,教職にある者である教諭が,具体的描写を伴う虚偽の報告を保護者らに
対して行うとは考え難い。
ウ教諭の指導の違法性についての調査・報告義務違反がないこと
校長,教頭,教諭を始めとする本件小学校の教員ら(以下「本件小学校関
係者」という。)は,本件事件発生後,直ちに,原告らや他の保護者に対して聴取
り調査を実施した上で,報告書を作成している。また,町教育委員会は,本件事
件から約1年が経過した平成21年3月31日に,原告らより,の死は教諭
の言動によるいじめが原因で自殺した旨の申入れを受けて,直ちに調査に着手し,
教諭からは20回前後にわたる聴取りを行い,その他の本件小学校関係者からも
聴取りを行った上で,教諭には教師として未熟な部分は確認されるものの,原告
らが主張するような言動によるいじめは確認できなかったため,処分は不要との結
論に至った。
教育長が教諭の能力や適性につき否定的な評価を伝えたことは,結果とし
て,原告らの教諭に対する追及の姿勢を助長させてしまった面があることは否
めないものの,上記のとおり,あくまで教育長の善意からとられた行動であり,
決して責められるべきことではない。
また,原告らは,町教育委員会が,教諭の指導の違法性について「虚偽の説
明」をし続けたことは明らかに「調査・報告義務」に違反し,本件小学校と児童・
保護者との信頼関係を破壊する違法行為に該当する旨を主張しているが,教諭の
違法な指導はなかったものの,原告らの主張を真っ向からは否定しない形で原告ら
の理解と納得を得ようと努めた町教育委員会の対応に違法性はない。町教育
委員会は,原告らに対して,その主張に反する内容の説明をする度に,原告らから
繰り返し反論を受けて堂々巡りの状態に陥っていた上,原告らから,誹謗中傷の言
葉を受けていたのであり,原告らの主張を認めた上で教諭に何らかの処分を行
わない限りは,同じやり取りが延々と継続しかねない状況に追い込まれていたので
ある。このような状況下では,本件小学校と保護者との信頼関係はそもそも維持し
ようがなかったといえ,むしろ,町教育委員会が,教諭に懲戒処分が必要とな
るような違法な指導はなかったことを前提としつつも,できる限り,原告らの気持
ちに配慮して対応していたことは,原告らとの信頼関係を維持しようと努めたから
にほかならない。
ウ原告らと被告町関係者のやり取りの経過
ア原告らは,平成21年3月31日,の死亡は事故ではなく自殺であった
旨を述べて以降,校長及び教諭への要求を厳しくするようになり,以下のよ
うな経過を辿った。
a原告らは,平成21年8月24日頃,町教育委員会に対して,「の事故
及び死去に関する学校(校長先生・担任の先生)の対応について教育委員会の見解
と学校への指導内容の文書による回答を要望します」と題する書面(乙イ12)を
交付した。
これに対し,町教育委員会は,同年9月14日頃,原告らに対して,「さん
の事故及びご逝去に関わる学校(校長・教諭)の対応についての経過と指導
について」と題する書面(乙イ7)をもって回答した。
b原告らは,平成21年9月24日頃,町教育委員会に対して,校長及
び教諭の反省文を求める書面(乙イ13)を交付した。
これに対し,町教育委員会は,同年10月2日頃,原告らの要望に応えて,
校長及び教諭の反省文等(乙イ14ないし19)を交付した。
c原告らは,平成21年10月30日頃,町教育委員会に対して,校長
及び教諭に更なる説明を求める書面(乙イ20)を交付した。
d原告らは,平成22年5月6日頃,町教育委員会に対して,教諭による
に対するいじめがあったと主張する書面(乙イ21)を交付した。
これに対し,町教育委員会は,同月27日頃,教育委員会の内部資料として見
解をまとめた。
e教育長及び相談員は,平成22年6月4日頃,原告ら宅を訪問し,経
過報告等を行った。
原告らは,同月11日頃,町教育委員会に対して,上記経過報告に対して異議
を述べる書面(乙イ24,25)を交付した。
f原告らは,平成22年7月9日頃,町教育委員会に対して,死体検案書
(甲2)を交付した。
本件小学校は,同月23日頃,原告らより死体検案書が開示されたことを受けて,
町教育委員会に対して,事故報告書の再提出を行った。
g原告らは,平成22年8月20日頃,町教育委員会に対して,上記e記載
の書面に対する文書回答を求める書面(乙イ31)を交付した。
町教育委員会は,同年9月17日頃,原告らに対して,教育委員会の見解を回
答した(乙イ32)。
h原告らは,平成22年10月13日頃,町教育委員会に対して,謝罪等を
求める書面(乙イ33)を交付した。
町教育委員会は,同月25日頃,原告らに対して,上記書面に対して回答した
(乙イ34)。
i原告らは,同年11月24日頃,町教育委員会宛てに,謝罪及び説明を求
める書面等(乙イ9,10)を交付した。
町教育委員会は,同年12月10日頃,原告らに対して,乙10号証に対して
回答した(乙イ35)。
j原告らは,平成22年12月14日頃,町教育委員会に対して,「再度,
謝罪を求める書(平成22年11月24日付)に対する教育長の口頭回答およ
び質疑応答の覚書確認書」と題する書面(甲5)を交付した。
k原告らは,平成22年12月20日頃,被告町宛てに,教諭らの処分
を求める書面(乙イ36)を交付した。
l原告らは,平成23年3月21日頃,北海道教育委員会,オホーツク教育局,
町教育委員会に対して,質問書(乙イ37)を交付した。
町教育委員会は,同月30日頃,原告らに対して,上記書面に対して回答した
(乙イ38)。
m原告らは,平成23年3月31日頃,町教育委員会に対して,第6回
町教育委員会会議議事録の訂正を求める書面(乙イ39)を交付した。
イ以上の経過から分かるとおり,被告町としては,原告らの気持ちに可能
な限り配慮しながら,適切かつ真摯に対応している。これに対して,原告らの要求
は,原告らの考えに反する内容の被告町の回答は全く受け付けないという一方
的なものであった。
エ遺族の心情に配慮せず精神的苦痛を与えた言動はなかったこと
ア校長の言動について
原告らが,校長による遺族の心情に配慮しない言動があったと主張する点に
ついては,校長自身が否定しているとおり,多くが事実に反する。例えば,原
告らは,校長が「さんのことは忘れなさい。」と述べた旨の主張や左手で首
を絞める動作を行い,苦しむような表情をしながら「自殺だった」との具体的な仕
草をした旨主張するが,常識的に考えても,校長の職にあるものがそのような言動
をとるはずがない。また,「ナーバス」や「鉄は熱いうちに打て」という表現は,
かかる表現を用いるに至った前後の経緯やその言い方のいかんを問わず,心情配慮
及び適切対応義務違反があったことにはならない。
イ教諭の言動について
教諭は,原告らの要望に対して真摯に対応し,また,担任という立場から来る
自責の念によって極力原告らの意に沿った対応をとっていたのであり,教諭が原
告らの心情に配慮しない言動をとったことは断じてない。教諭の「警察の人に聞
かれて頭がおかしくなる」との発言は,不満を明らかにしたものではなく,むしろ
原告らに配慮した言動を原告らが歪曲して捉えているに過ぎない。卒業式に関する
やり取りについても,教諭らが,原告らに詰め寄り,「勝手にやりますから」と
言って帰ったという事実はない。
ウ教育長の言動について
原告らからの誹謗中傷の言葉に冷静さを失った教育長が原告らに対して怒鳴
ったことは事実であり,この点は,教育長も不適切であったことを認めている。
しかしながら,かかる教育長の言動は,原告らが,「嘘偽り」,「ペテン師」,
「捏造」,「詭弁によるすり替え」等と執拗かつ辛辣に責め立ててきたやり取りの
中で,我慢の限界を超えてとっさにしたものであり,そのような言動を導き出した
のは原告らにほかならないのであるから,教育長のかかる言動に,遺族に対す
る心情配慮及び適切対応義務違反があったとは認められない。
オしたがって,校長が原告らに対して辞職の意向を示した教諭の説得に
協力を求めたことや,原告らからの誹謗中傷の言葉に冷静さを失った教育長が
原告らに対して怒鳴ったこと等,妥当さを欠く対応が全くなかったとはいえないも
のの,本件小学校及び町教育委員会としては,問題解決のために可能な限り,
原告らの意向に応えられるように努力しており,本件事件後の対応においても,被
告らが原告らに対して損害賠償責任を負うべき義務違反の事実は存在しない。
争点3(の死亡と教諭の指導との因果関係の有無)
(原告らの主張)
アの精神的苦痛について
子どものトラウマ反応として,ⅰ)強烈な視覚化,ⅱ)その他の形態による反復
的な想起・反復的な行動,ⅲ)トラウマに関連した特定の恐れ,ⅳ)人間や人生あ
るいは将来に対する基本的な態度の変容があり,反復的で慢性的な経験によるトラ
ウマの場合には,強い怒りが生じ,それが内化したときには自己毀損行動となって
現れる。
は,常に教諭の叱責が頭から離れず,何とかこれを回避したいと思うよう
になり,異常とも思えるほどに忘れ物をしないように注意するようになっていた上,
教諭と一緒になる茶道のお稽古を嫌がり,3学期になってからは「鼻が痛い」,
「お腹が痛い」等の身体的症状を訴え,不登校気味になるとともに,6年生になっ
ても教諭が担任であることに悲観的な言動・表情を見せるようになっていたも
のであり,これは心理的トラウマにより生じた強迫観念であるといえる。
また,には,いつも叱責している教諭の姿が視覚的に焼き付いており,
「どこからでも見られている」と思うような特定の恐れが生じていた。
そして,強迫観念が反復的・持続的に継続したことにより,本件事件直前,
は心理的トラウマによる強迫性障害を発症していたといえる。
イ因果関係
アは,春休みの間,「6年生になっても担任は先生(教諭)なのか。
いやだ。」と原告らに何度も訴えていた。
は,平成20年4月2日の夕方,図書館から慌てて帰ってきて,「お父さん,
明日から学校だ。入学式に音楽の演奏するので楽譜を明日持っていかなけれ
ば・・・」と言って,慌てて何かノートに書いていた。後日,ノートには,「いま
まで日記をかいたことをまとめてノートにかいてみよう!!よくここまでがんばり
ました。日記の神様より」と書かれていたことが判明した。
イは,平成20年4月3日午前9時40分頃,自宅トイレにおいて,ブラ
インドの紐で首を吊って自殺を図り,意識不明の状態で原告に発見され,救急
車で病院に搬送されたが,翌4日午後4時52分頃に死亡した。
ウ教諭の指導により,が多大な精神的苦痛を被っていたことは,前提と
なる事実イ記載の事実関係及び前記(原告らの主張)記載の事実関係,春休
み中に小学校6年次も教諭が担任となることに対しての不安を繰り返し述べて
いたことに加え,は,5年生の3学期に器楽の居残り練習を苦に登校を嫌がっ
ており,始業式の前々日の夕方に,登校日に器楽演奏の練習があることを指摘する
発言をし,登校日の前日に自殺を図ったことなどから明らかである。
エまた,は,教諭の違法な指導による度重なるストレスが心理的トラウ
マとなって強迫性障害を発症していたところ,平成20年4月2日,にとって,
楽譜が見つからないことは,教諭から忘れ物に対して厳しく叱責されることを意
味しており,他の児童らのいる教室内で,あるいは廊下に連れ出されてまで10分
も20分も叱責されることや,他の児童に迷惑を掛けたとして謝罪を命じられるこ
と等が,自身に起こりうることとして,恐怖・畏怖を感じたに違いない。
そして,強迫性障害の症状として,追い詰められ,ぎりぎりまで叱責をされない
ための努力をしてもなお,叱責の恐怖にかられたことにより,は,叱責を免れ
るためには死しかないと考えたものである。
よって,の自殺と教諭の違法な指導との間には相当因果関係が認められる。
ウ教諭が因果関係を肯定する発言を行ったこと
教諭は,の自殺直後に児童らへの家庭訪問をしたが,その結果として「保護
者らが,の自殺の原因は児童間のいじめによるものと噂をしている」旨を原告
らに告げた。その際,原告らは,「子どものいじめは絶対ない。先生も1年間見て
きて分かるでしょ。」と,児童間のいじめの存在を否定したところ,教諭は,
「子どもを疑って申し訳ない。そしたら私(のことが原因で悩んでいたの)か
な。」と,自殺の原因が教諭自身にあることを認める発言を行った。
以上に加え,の死亡当時,と原告ら家族との関係は良好であって,他に,
の自殺の原因となるようなトラブルは一切なかったことに照らせば,が自殺を
図ったのは,教諭の指導を苦にしたことによるものであって,の死亡と教
諭の指導との間には因果関係がある。
エ予見可能性
教諭の叱責等により児童が自殺する事例は毎年のように存在し報道されており,
教諭の行き過ぎた厳しい指導等が,児童の自殺を誘発し得ることは,社会的事実と
して広く認識されるようになっている。すなわち,教諭による不適切な指導・行き
過ぎた指導の適切な防止ができずに放置すれば,それを苦にした児童が自殺するこ
とは公知の事実である。
教諭だけでなく,本件小学校の校長以下教諭らは,教諭の児童らが職員室又
は教室の内外において泣くまで叱りつけられたり,休憩時間や放課後に居残り練習
を命じられたりしたことを知りながら黙認していた。
教諭の教師としての能力は,標準レベルをはるかに下回っていたことから,そ
の指導がをはじめとした児童を抑圧し,精神的に追い詰める状況が日常的に続
いていた。
したがって,児童がそれを苦にして自殺する危険性が具体的に生じていたのであ
り,予見可能性は肯定される。
(被告町の主張)
ア前記(被告らの主張)記載のとおり,教諭の教師としての能力・資質
に問題はなく,教諭が採っていた教育指導方法も通常の教育指導方法の範疇であ
って,が死亡した事実と教諭の指導教育方法の間に因果関係は認められない。
イ加えて,の5年生時に,保護者である原告らから,教諭についての苦情
等が申し入れられたこともなく,は学校生活を十分に楽しんでいるように見受
けられ,の死亡は,春休み中に発生したものであり,本件小学校にはの日常
の心身状態について把握する余地もなかった。
よって,教諭及び被告町に,の死亡に関する予見可能性はなかった。
(被告北海道の主張)
の死亡に関し,が死亡した事実と教諭の指導方法の間に明らかな因果関
係は認められない。
争点4(教諭の指導に関する被告らの責任)
(原告らの主張)
ア被告町の責任
被告町は,国家賠償法1条1項又は民法415条に基づく責任を負う。
ア国家賠償法1条1項に基づく責任
教諭による違法な指導は,被告町の公務員である教諭がその職務を行う
について行ったものであるから,被告町は,国家賠償法1条1項に基づき,
教諭の違法な指導により原告らが被った損害を賠償する義務を負う。
イ安全配慮義務違反に基づく責任
a安全配慮義務について
本件小学校の設置者である被告町には,在学する児童との間に公法上の在学
契約関係が存するのであるから,在学する児童に対してはその教育目的に必要な限
度で学校施設や設備を供して,教諭により所定の課程の教育を施す義務を負い,在
校生との間に右の特別な社会的接触の法律関係に入った当事者として,また,当該
法律関係の付随義務として,当然に学校教育の場及びこれと密接に関連する生活場
面において他の在校生や教諭らによる当該在校生の生命,身体,名誉人格権等に対
する人権侵害行為及びその危険から児童を保護すべき安全配慮義務(以下,単に
「安全配慮義務」という。)が,公法上の原則でもある信義則より,当然に導かれ
る。
そして,この安全配慮義務には,一般に,校長以下教諭が日頃から児童の動静を
観察し,児童やその家族から,教諭による不適切な指導に対する具体的な申告があ
った場合はもちろん,そのような具体的な申告がない場合であっても,一般に,教
諭と児童間の権力的な上下関係等に鑑みれば,被害を受けている児童が必ずしも申
告できる状況にあるとは限らないので,あらゆる機会をとらえて教諭の不適切な指
導等が行われていないか細心の注意を払い,児童及び保護者から事情聴取するなど
して,常日頃から教諭の指導実態を調査し,実態に応じた適切な防止措置(結果発
生回避措置)をとる義務があるというべきである。
また,教職員は,児童と学校生活をともにし,直接指導にあたる立場にあるもの
として,児童が健全で安定した学校生活を送ることができるように同人らの生命,
身体,精神等の安全に配慮する義務がある。特に,児童に対する指導を行うに際し
ては,教諭・児童という権力構造が大きな精神的・心理的負荷につながりやすいこ
と,成長期にある児童が精神的不安に陥りやすいことから,当該児童の年齢,性別,
性格等を考慮した上で,教育目的の観点から当該児童に過度の肉体的・精神的負担
を負わせてはならないという義務を負う。
b本件における安全配慮義務違反
は,教諭の違法な指導により多大な精神的苦痛を受けた。本件小学校関係者
は,その他児童らへの教諭の不適切な指導を認識していたかあるいは認識す
べきであったにもかかわらず,適切な対応をとることなくの自殺を招いた。
やその他の児童らに対する教諭の不適切な指導は継続的な指導は継続的な
ものであり,本件小学校関係者は,当該事実を認識していたのであろうし,仮に認
識していなかったとしても,注意をしていれば十分認識し得たものであり,本件小
学校関係者には教諭の不適切な指導からを保護する安全配慮義務に違反した
ことは明らかである。
cよって,被告町は,民法415条に基づき,本件小学校関係者の安全配
慮義務違反により,原告らが被った損害を賠償する義務を負う。
イ被告北海道の責任
被告北海道は,市町村立学校職員給与負担法1条の規定に基づき本件小学校の教
諭等の給料その他の給与等を負担するから,国家賠償法3条1項に基づき,教諭
の上記違法な指導により原告らが被った損害を賠償する義務を負う。
(被告町の主張)
争う。
(被告北海道の主張)
被告北海道は,国家賠償法3条1項の責任を負わない。
争点5(本件事件後の対応に関する被告らの責任)
(原告らの主張)
ア被告町の責任
前記(2)(原告らの主張)記載の各違法行為は,いずれも被告町の公務員とし
ての職務を行うについてしたものであるから,被告町は国家賠償法1条1項に
基づき,原告らが被った損害を賠償する義務を負う。
また,公法上の在学契約関係に基づく付随義務として,本件小学校の設置者であ
る被告町は,民法415条に基づき,上記各違法行為につき,原告らが被った
損害を賠償する義務を負う。
イ被告北海道の責任
被告北海道は,国家賠償法3条1項に基づき,上記各違法行為により原告らが被
った損害を賠償する責任を負う。
(被告町の主張)
争う。
(被告北海道の主張)
被告北海道は,国家賠償法3条1項の責任を負わない。
(6)争点6(原告らに生じた損害)
(原告らの主張)
アの死亡によって生じた損害
ア死亡による逸失利益4393万2727円
は,11歳という,これから成長発達して自分の生き方を見出していく前の
段階で自ら命を絶った。は,自殺当時,11歳の健康な女子であり,その逸失
利益は,平成20年賃金センサス全年齢平均賃金額である486万0600円に
(1-生活費控除率0.3)を乗じ,これに67歳までの就労年数56年のライプ
ニッツ係数18.6985から18歳までの年数7年のライプニッツ係数5.78
63を控除した12.9122を乗じた4393万2727円となる。
イ死亡慰謝料2200万円
教諭の違法な指導によりに生じた精神的苦痛は多大であり,その期間も小
学校5年生の1年間と長期に及んでいることに照らせば,の被った精神的苦痛
は極めて深刻かつ甚大であった。
そして,本来信頼し得るはずの担任教諭の指導が甚だしく不適切であったこと等
の教諭の責任の重大性や追い詰められたの置かれた状況等を考慮すると,
の精神的苦痛を慰謝するには少なくとも2200万円を下らない。
ウ原告らの相続
原告らは,上記の損害賠償請求権合計6593万2727円を3296万6
636円ずつ相続により取得した。
イ校長らの違法な言動による損害
原告らは,前記(原告らの主張)記載の校長らの違法な言動により,筆舌
しがたい多大な精神的苦痛を受けたもので,これに対する慰謝料としては,原告そ
れぞれにつき500万円が相当である。
ウ弁護士費用
原告は,本件訴訟提起に際して,原告代理人らに対し,弁護士費用の支払を
約しており,本件訴訟の内容や訴訟提起に至った経過などに鑑みれば,200万円
を相当因果関係のある損害とすべきである。
(被告らの主張)
不知ないし争う。
第3当裁判所の判断
1争点1(教諭の指導の違法性)について
(1)学校教育法11条は,「校長及び教員は,教育上必要があると認めるとき
は,文部科学大臣の定めるところにより,学生,生徒及び児童に懲戒を加えること
ができる。ただし,体罰を加えることはできない。」と定めており,一般に,児童
に対する叱責や学習内容や学校行事における指示は,指導の一環として教員に認め
られた行為といえる。
もっとも,教員は,児童に懲戒を加えるに当たって,児童の心身の発達に応ずる
等教育上必要な配慮をすることを義務付けてられており(学校教育法施行規則26
条1項),児童に対する指導は,児童の権利侵害を伴うことも少なくないことから
すれば,教育的効果と児童の被るべき権利侵害の程度とを比較衡量し,児童の心身
の発達状況等を考慮した上で,指導による教育的効果を期待し得る合理的な範囲の
ものと認められる限りにおいて正当な指導の一環として許容されるべきであり,そ
の範囲を超えた場合には,指導としての範囲を超えた違法なものとなると解すべき
である。
そこで,教諭の指導が,正当な指導として許容されるものかについて検討する。
(2)教諭による指導の内容等
ア持ち物に関する指導について
(ア)教諭は,前提となる事実(2)イ(ア)記載のとおり,忘れ物をした児童に対
して厳しい指導をしていたものの,これは,学級通信で,忘れ物をしないように持
ち物欄を作るなどして再三注意を促していたところ,何度も忘れ物が続いたり,忘
れたことを隠していた児童などに対するものだった。また,教諭は,忘れ物が続
いたなどの状況によっては,忘れ物をした児童に対して,10ないし20分程度叱
責をしたことが複数回あった。については,忘れ物が続いたり,忘れたことを
隠すなどといったことはなかったため,強く叱責したことはなかった。(乙イ44,
49から55,58,59,61から63,69,70,75から82,109,
証人3,4,16,17頁)
(イ)は,5年生の2学期頃から,何回も何回も持ち物を確認し,原告らにも
確認するよう頼むなど,忘れ物に対して,神経質な対応をするようになった。(甲
23,原告本人28,37,38頁)
(ウ)確かに,教諭が忘れ物をした児童に対して行っていた指導は,短いとは
いえない時間にわたる叱責という,小学校5年生の児童に対して行うものとしては
厳しいものだったことが認められるが,その指導は,一度でも忘れ物をしたら叱責
をするというものではなく,複数回忘れ物をするなど改善の傾向の小さい児童に対
するものであって,教育的効果を考慮すれば,ある程度厳しい指導が必要な状況に
あったといえる。また,は,教諭のこのような指導に対して,少なくとも自宅
において過剰な反応を示していたことが認められ,13名しかいない学級において
他の児童が叱責されれば,直接叱責されていないも教諭に対して多少の恐怖
心を抱いていた可能性は否定できないものの,教諭は自身を強く叱責したこ
とはなかったことや叱責を受けた児童以外も今後忘れ物をしないように気をつける
という教育的効果があるといえることからすれば,忘れ物に関する指導が教育的効
果を期待し得る合理的な範囲を超えるものとまでは認め難い。
イ本件ドリルに関する指導について
(ア)は,本件ドリルを平成19年8月20日に提出したが,教諭は,前提
となる事実(2)イ(ウ)記載のとおり,に対して,本件ドリルのやり直しを複数回
命じた。教諭は,日頃から,図形の問題については,2㎜以上のずれがあったと
きには不正解とするという指導をしており,本件ドリルでは,平行四辺形の作図が
2㎜以上ずれていたことから不正解とした。は,教諭に対し,本件ドリルを4
回以上提出し直し,裏表紙が取れるまで持参していた。教諭は,不正解が続いた
ことから,の作図の仕方が間違えているのかと思い,指導するために,に対
して,後で一緒に時間のあるときにやろうと声を掛けたものの,結局,作図の指導
をしたのは,原告から,本件ドリルのチェックを依頼された後である同年11
月中旬だった。(甲6,乙イ63,64,109,証人12ないし15頁,原告
本人30頁,弁論の全趣旨)
(イ)原告は,同月上旬に,教諭に対して,本件ドリルのチェックを依頼し
た。それまでに,原告らが教諭に対して,本件ドリルのチェックの依頼や相談
などをしたことはなかった。(原告本人30,31頁)
(ウ)教諭が本件ドリルのやり直しを複数回命じた点については,初回の提出
から作図の指導をして正解とするまでに約3か月を要しており,教諭が自認して
いるとおり,13名の学級での対応としては作図の指導まで時間が経過し過ぎてい
ること,指導の内容としてはいささか過剰であることは否定できないものの,でき
るようになるまで提出を求めること自体は,作図方法の習得や根気良く作業を続け
ることといった一定の教育的効果を期待できるものであって,当該作図がそれほど
難しい作業ではないと思われることに加え,本件ドリルのチェックの依頼がなされ
た後は間を空けずに作図の指導をしていることからすれば,指導による教育的効果
を期待し得る合理的な範囲を超えるものとまではいえない。
ウ器楽の練習について
(ア)教諭は,前提となる事実(2)イ(エ)記載のとおり,に器楽の練習を指示
しており,卒業式に向けた器楽の練習では,放課後や休み時間での練習を指示した。
は,卒業式の演奏で,初めて演奏する楽器であるアコーディオンの演奏を担当
した。放課後に練習をしたのは,以外に1名の児童,休み時間にも他に2名ほ
どの児童がいた。放課後に練習した場合,は,1人で下校することになること
もあった。(乙イ109,証人1ないし3頁,原告本人39頁)
(イ)は,5年生の3学期に,「学校に行きたくない」と言い,1月下旬に遅
刻及び欠席した。の5年生の出欠状況は,2学期は皆勤であったものの,出席
日数197日,病欠8日,法要による欠席1日,遅刻2回である。(甲23,乙イ
11,76,原告本人11頁)
が,原告らに対し,器楽の練習に関する不満や欠席の理由を述べたことはな
く,原告らも,の欠席理由について,器楽の練習が原因かどうかを確認したこ
とはなかった。また,原告らは,器楽の練習に関して,本件小学校に対し,相談や
申入れをしたこともなかった。(原告本人31,32,38ないし41頁)
(ウ)は,5年生で一番頑張ったことは音楽であり,卒業式で演奏する楽曲は,
最初は全然演奏の仕方が分からなかったが,やっているうちに少しずつ分かってき
たのが嬉しかったこと,また同じ楽曲を演奏してみたいことを「私の一年間」とい
う表題の作文で書いた(乙イ3)。
(エ)の担当していた楽器は初めて演奏するアコーディオンであり,練習に一
定時間必要であったことがうかがわれること,授業時間外の練習を指示されたのは
だけではないこと,の欠席理由が器楽の練習を苦にしたことであると認める
に足りる証拠はないこと,は器楽の練習を5年生で一番頑張ったこととして挙
げ,また演奏してみたいとしており,達成感を得ていたことが認められることから
すれば,授業時間外に拘束されたことや1人で帰宅する状況となったことがあった
点を考慮しても,教諭による器楽の練習の指示が,指導による教育的効果を期待
し得る合理的な範囲を超えるものだったとはいえない。
エ以上のとおり,教諭の指導方法は,小学校5年生に対するものとしては,
やや厳しいものだったことは否定できないものの,指導による教育的効果を期待し
得る合理的な範囲内なものであるから,正当な指導として許容される。
(3)町教育委員会及び教育長の教諭に対する評価について
ア教育長の教諭に関する評価の内容等
(ア)町教育委員会及び教育長は,本件事故後も,教諭に対して何らかの
処分をしたり,一般的な研修以外の研修を受けさせたりしたことはなく,本件小学
校の平成20年度の6年生の担任から外したこともなかった。そして,同年度内に
不登校児童が見られたものの,本件小学校の6年生は,特段の問題なく教諭担
任の下で卒業を迎えた。(甲4,甲23,証人31頁,32頁,弁論の全趣旨)
(イ)原告らの申し出を受け,教育長は,教育長と相談員による教諭
に対する聴取りの結果,教諭が5年生を担任していた当時の指導は,高学年を意
識するあまり,学習に取り組む姿勢や学習用具の忘れ物をしないなどの学級内の約
束を徹底させるといった厳しい指導となっていた傾向があったこと,担任と児童と
の信頼関係の構築において若干の未熟さがあったと認識していた(乙イ106,証
人2,9頁)。
イ教育長が原告らに示したE教諭の評価等
(ア)教育長は,平成22年5月27日,町教育委員会会議において,教
諭に対する聴取りで,教諭は,ⅰ)忘れ物をした児童に対してその都度厳しく叱
っていたこと,ⅱ)運動会,学芸会及び卒業式の練習では高学年にふさわしい練習
内容になっていないという理由から時間を超えて,休み時間等も練習時間に使って
いたこと,ⅲ)日頃から児童に対して,日々の授業をきちんとした姿勢で最後まで
学ぶことを求めていたことといった事実を確認することができたとの報告をした。
また,教育長は,当該会議において,ⅰ)教諭の指導は,児童の学習意欲を高
めたり,児童を励ましたりという配慮が不十分で教師からの一方的な指導となって
いたこと,児童の心情を受け止めるなど担任と学級の児童との好ましい人間関係が
醸成されていたとはいい難い状況にあったことを踏まえ,教諭に対して,教師と
しての資質及び指導力を向上させるために校内研修,個人研修及び各種研修機関に
おける研修を実施すること,ⅱ)教育長が事実確認をした限りでは,原告らの
主張するいじめ等は現段階で認定することはできなかったこと,ⅲ)教諭の指導
は,訓戒処分や戒告処分,減給,停職,懲戒免職等には該当しないことを報告した。
さらに,教育長は,当該会議において,教諭の指導内容の一例として,「三角
定規,コンパスを忘れたとしたら,前日に今日これらを使うということをあんなに
言ったのにどうして忘れるのか,昨日のうちに準備していたのかという当たり方を
して,10分でも20分でも叱責が続くそうです。そして45分の授業が終わった
ら,あなたのせいで授業ができなかったのだからみんなに謝りなさいと言うそうで
す。」と述べた。町教育委員会が教諭に対して勧めた研修は,どの教師にも
必要な一般的な研修であり,期間が決まった教諭に対する研修ではなく,計画
的に行われている研修に参加したり,授業を公開するといった内容の研修である。
(甲4,乙イ106,証人4,10,11頁,証人31頁)
(イ)教育長は,平成22年6月4日,原告らに対して,町教育委員会の見
解として,教諭の言動・行動によるいじめがあったとする原告らの主張について
は,断定できる確証がないこと,厳しい指導があったとの指摘については,クラス
における学級指導や学習指導の場面で,教師としての配慮にやや欠ける部分があっ
たことを報告した。また,町教育委員会の処置として,教諭が担任していた当
時の指導は,児童の学習意欲を高めたり,励ましたりという配慮が不十分で,教師
からの一方的な指導となっていたきらいがあったこと,児童の心情を受け止めるな
ど,担任と学級の児童との好ましい人間関係が醸成されているとはいいがたい学級
の状況だったことから,教諭には,教師としての資質及び指導力を向上させるた
めに,校内研修,個人研修,さらに各種研修期間において研修するよう教育長及び
校長から指導することとした旨を報告した。(乙イ22,23,証人9頁)
(ウ)教育長は,平成22年12月13日,原告らに対して,「5年生の時の
(教諭の)指導は子どもたちとの意思の疎通がなかった。教室の中,外の生活で
生の声を聞き生き生きとのびのびした生活をしていなかった。おびえる心理状態で
送っていたと実感できたので学級の児童にとっても苦痛であったろうと推察いたし
ますと言う言葉になったのだ。表情もそうだ。楽しいこと苦しいこと子どもたちと
分かち合うということも極めて足りない。怒るということの勘違い,感情に任せて
おびえさせたりなどの仕打ちをする。怒った後の処置が悪い。自分中心で人の言う
ことを聞かない。大人でも傷つくことはもっと子どもは傷つくんだから,こんだけ
分かっているのに処分できないのかとXさんに言われるかもしれませんが研修指導
をやっていくしかない。今現在も学校でやっているがその効果は上がっていない。
には通じない。さんの教員生活38年,私の36年の経験から縦,横,斜め
いろいろな角度からこのようなときはどうするとか演習を通して研修,指導したが
通じていない。教員として生きていくのも人として生きていくのも教諭次第
だ。」,「教諭は,一つ一つ細かいことを確認しても言わないし,曖昧にするの
で事実確認はしない。それよりも研修指導する。」などと述べた(甲5,8の1,
2,甲9,証人14,15頁)。
(エ)教育長は,平成23年3月14日,原告らに対して,教諭に退職を促
していたところ,同年2月下旬に教諭から辞職の意向が伝えられたため,同年
3月14日付けで教諭に校長から退職の内示をすることにしたこと,辞職を最
終的に判断したのは教諭であることを報告した。(甲18,証人20頁)。
教諭は,同月31日,教職を辞した(前提となる事実(3)ウ)。
ウ町教育委員会及び教育長は,上記イ記載のとおり,教諭の指導内容
に対する厳しい評価を対外的に示したが,その評価に際して行われた事実確認は,
教育長と相談員が教諭と校長に対して聴取り調査を行ったのみであり,
本件小学校のの同級生や保護者に対する聴取り調査はしていない。教諭に対
する聴取り調査は,約20回行われたが,教育長による聴取り調査は約2回で
ある。教育長は,原告らが主張する具体的事実について,教諭に対して,事実
の有無を確認することまではしなかった。また,教育長は,教諭の授業の様子
を2度ほど参観したことがあるが,その際,忘れ物をした児童への叱責や授業時間
外の器楽の練習の指示といった前記ア記載の厳しい指導は確認できなかった。(証
人1ないし4,12ないし14,29,30頁)
さらに,教育長は,教諭に関する上記のような厳しい評価を原告らに示した
理由は,原告らが,が亡くなったのは教諭の指導に原因があるという主張を
強めていたため,原告らの意を察しつつ,その意に沿う形で対応したためであると
証言する(証人3,16,17,25,26頁)。
なお,教育長は,原告らや町教育委員会に報告した教諭の上記イ記載の
評価内容を,教諭には伝えなかった(証人,証人)。
エ以上の認定によれば,町教育委員会及び教育長の教諭に対する評価
は,アのとおりであったところ,この評価は,前記1(2)(教諭による指導の内
容等)における認定判断に加え,原告らもの異常に気づいておらず,本件ドリ
ルの件以外には原告らの申し出があったことがうかがわれないことからすれば,相
当であったと認められ,町教育委員会が,教諭の指導能力の不足は,訓戒や戒
告等の処分の対象とはならず,一般的に開催されている研修を受けることで足りる
と判断したことも,相当であったと認められる。もっとも,そのための調査方法は,
第三者に対する事実確認等をせずに,基本的に原告らの主張に沿う形でなされたも
のに過ぎず,不十分であることは否めないものの,前記1(2)の認定からすれば,
評価の基礎事実としては十分であったと認められる。また,町教育委員会の
教諭に対する評価,判断に比べ,教育委員会が教諭に対する評価として原告ら
に示した内容は教諭に対する処置に比して過剰な表現が多用されており,前記
1(3)アの評価とは異なっていることが認められるが,これは,教育長が原告ら
の意に沿う形で対応したことによるものと認められるから,前記1(3)イ記載の
教育長が原告らに示した教諭に関する評価は,その方法においてもまた内容に
おいても正当になされたものではないといわざるを得ず,前記1(2)記載の事実認
定に影響を与えるものではない。
また,退職勧奨をしたのは,原告らとのやりとりから,職務に専念できる状況に
なかったことや教諭が心身ともに疲れ果てている様子だったことが理由であっ
て,教師の資質に関わるような問題点があったためではないこと(証人28,
29頁),教諭が教師を辞める決断をしたのは,本件事件に関して膠着状態が続
き,本人なりに精一杯の誠意を示していたが,なかなか状況が変わらなかったため
であること(証人7頁)からすれば,教育委員会から退職勧奨がなされたことを
もって,前記1(3)ア記載の教諭に対する評価が妥当ではなかったということは
できない。
(4)教諭による謝罪等について
ア教諭による謝罪等の内容
(ア)教諭は,平成20年4月3日,の病室に入った際,原告らに対して,
「さんのことが分かってあげられなくて申し訳ありません。」と述べた(甲2
3,乙イ111,証人4,5頁,原告本人5頁)。
(イ)教諭は,平成20年4月7日,原告らに対して,家庭訪問において児童
のいじめについて調査した旨述べたところ,原告らは,「子ども(クラスメイト)
は良かった。」,「友達には本当に恵まれた。」,「子どものいじめなんて絶対に
ない。」などと述べた。これに対し,教諭は,「そしたら私かな。」という趣旨
の発言をした。(甲23,乙イ111,証人5頁,原告本人13,14頁)
(ウ)教諭は,平成21年3月,卒業式が終わって数日後,原告らから「話が
ある。」と言われ,原告ら宅を訪問した。その際,原告らは,教諭に対して,結
び目のあるひもを見せ,「結び目があるから,自分でやったんだろうと検死をして
判断された。自分たちも事故であるという思いだったが,警察では自殺だと判断し
ている。病院の院長先生も自殺だと判断している。」と話した。教諭は,原告ら
はが事故で亡くなったのではなく,自ら命を絶ったのだという考えを強め,そ
の原因は教諭の指導が原因であると考えていると感じた。(乙イ109,11
1)
教諭は,同月27日,「この2年間,にとってとてもつらく悲しい時間にし
てしまったこと,深く深く悩ませてしまったこと,本当にごめんなさい。あやまっ
てもあやまってもゆるされることではありませんが,の希望にあふれる未来,
無限の可能性を私がうばってしまったと思うと,言葉にならないほどのざんげの気
持ちでいっぱいです。私の言うこと,行動でのやさしい心をたくさん傷つけて
しまいました。」などと記載した宛ての手紙を,の誕生日である同月24日
に合わせての仏壇に供えた。(甲10,23,乙イ109,111,証人2
1ないし24頁,原告本人16,17頁)
(エ)教諭は,平成22年2月12日,原告らに対して,「今振り返ると『子
どもたちのために・・・』と思っていた言葉や行動も私のこうありたい,こうであ
りたいという思いが強過ぎたのではないかと思います。」,「さんの気持ちを
十分にわかってあげられなかったことを,今深く反省しています。心からお詫び申
し上げます。」などと記載した手紙を渡した(甲12,乙イ111)。
(オ)原告らは,平成22年5月6日,教諭に対して,「5年生担任時の言
動・行動を自覚し,しっかりと受けとめて下さい。」,「が亡くなったのは
先生の言葉の暴力であり,いじめです。名誉も人権も心も傷つけられました。先
生に対し5月10日までに書面にて謝罪を深く求めます。」などと記載した「
の死去に関する先生の言動・行動によるいじめについて」と題する書面を渡し
た(乙イ85)。
教諭は,同月10日,原告らに対して,ⅰ)が忘れ物をすることをとても気
にしていたことは,教諭の言動に原因があったと思うこと,ⅱ)授業時間外の器
楽の練習は児童にとって辛い時間だったと思うこと,ⅲ)教諭の言動が負担で,
辛く思い,悩みを抱えて過ごしたのことを考えると申し訳ない気持ちでいっぱ
いであることなどを記載した謝罪文を渡した(甲13,乙イ111)。
イ原告らは,教諭がこれらの発言等をしていることをもって,指導の違法性
を自認している旨主張する。
これに対し,教諭は,教諭がに辛い思いをさせてきたのだという原告ら
の思いに沿って,謝罪をしてきたと述べているところ(乙イ111,証人23,
24頁),上記アの経緯からすれば,原告らの要望に基づき,教諭が,原告らの
心情に沿う形でなされたものと認められる。
また,教諭は,上記ア記載の発言は,が自殺するような悩みを抱いていた
ことを気付かなかったという気持ちで発した旨証言しているところ(証人5頁),
児童の状況を把握していなかったことや,本件事件を防止できなかったことについ
て申し訳ないと思うことは,担任の教諭として自然なことである。
したがって,上記ア記載の発言等をもって,教諭が指導の違法性を自認してい
たとは認め難い。
(5)よって,教諭の指導方法は,正当な指導として許容されるものであって,
その指導に違法性は認められない。
2争点2(本件事件後の対応の違法性)について
(1)前提となる事実に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事
実が認められる。
ア平成20年度における主な事実経過
ア教諭は,平成20年度,本件小学校の6年生の担任だった(証人31
頁)。
イは,平成20年4月3日午前9時40分,縊首している状態で原告に
発見され,心肺停止の状態で病院に救急搬送された(原告本人3,4頁)。
同日午前11時15分頃,本件小学校に警察署から電話があり,が自殺未
遂をした可能性があるという通報が入った旨伝えられた。これを受けて,教諭は,
職員会議において,の家族構成,学級での様子,交友関係について説明した。
同日午前11時40分頃,警察からの電話を受けて,教諭と教頭は,病院
へ行った。そして,教諭は,の病室に入った際,原告らに対して,「さんの
ことが分かってあげられなくて申し訳ありません。」と述べた。原告らは,教諭
と教頭に対して,の首にひもが巻き付いた状態だったこと,現在は自力呼吸
ができて意識もあることを伝えた。警察は,教諭と教頭に対して,は自宅
トイレでブラインドのひもが巻き付いた状態で心肺停止・意識不明の状態となって
いたこと,首に巻き付いたブラインドのひもが固く,原告が包丁で切り取った
こと,病院での処置後,は心肺停止から自力呼吸に戻り,意識不明の状態だ
が快方に向かっていることを伝え,自殺の可能性もあるとして,本件小学校での
の様子や交友関係について聴取りを行った。これに対し,教諭は,の交友関
係は良好で優しい性格であること,いじめ等の問題はなかったこと,本人が悩んで
いる様子はなかったことを回答した。なお,医師によれば,は意識が回復した
ものの,喉が損傷していたため,声は出ない状態であった。教諭が原告らに対し
て,について,児童にどのように説明したら良いかを聞いたところ,原告らは,
が復学した際のことを考慮して,は不注意でけがをして入院したとだけ言っ
て下さいと答えた。(甲23,乙イ8,84,104,証人5,8,9,28,
29頁,原告本人3ないし6,41頁)
教諭と教頭は,同日午後0時40分頃,本件小学校へ戻り,原告らと警察
からの話を教職員に説明し,同日午後1時頃,教頭が町教育委員会にの件
を電話で報告した。教諭は,同日午後1時30分頃,再び病院へ行き,同日
午後2時頃,校長も病院を訪問した。校長は,原告らに対して,「鉄は熱
いうちに打て」との表現を用いて,が自殺未遂であるとの噂を払拭するための
対処を早急にとる必要があるとの趣旨の発言をした。(甲23,乙イ8,84,1
04,107)
同日午後7時頃,本件小学校のPTA三役会があり,校長と教頭は,に
ついて,原告らと警察からの話の概要を説明するとともに,原告らはが自殺す
ることはあり得ないと考えており,本件小学校としても不慮の事故だと考えている
こと,地域の中では,は自殺未遂なのではないかという噂が流れているような
ので,問い合わせがあれば間違いだと言って欲しいことなどを伝えた(乙イ8,1
04,証人11頁)。
ウ教諭は,平成20年4月4日午前8時頃,病院へ行き,同日午前8時
30分頃,校長と教頭に対して,同月3日の夜には再度心肺停止となった
ことなどを伝えた。校長と教頭は,同月4日午前9時頃,教育委員会での
様子等を報告し,他方,教諭は,入学式の前日準備のため登校した6年生に対し,
が前日から入院していること,首がトイレのブラインドのひもにかかってしま
っていたこと,原告はが自殺することは絶対にないと言っていることなどを
説明した。(乙イ8,104,証人10頁)
は,同日午後4時52分,死亡し,原告は,同日午後5時20分頃,本件
小学校に対し,死亡の事実を伝えた(乙イ8,104)。
教諭と生徒指導担当の教諭は,同日午後5時30分頃,病院へ行き,
と原告らと面会し,その後本件小学校へ戻り,教職員らはPTAの連絡網での
訃報を伝えた。教諭は,同日午後6時45分頃,再度,病院へ行き,原告らが
警察からの聴取りを終えた後,原告らから,検死の結果,死因は多臓器不全である
こと,原告らは事故であると確信していること,葬儀などに級友にも来てもらいた
いことなどを聴取し,教諭は,同日午後7時50分頃,本件小学校へ戻り,職員
に報告した。なお,教諭から,原告らに対して,が自殺ではないのかといった
確認を改めてしたことはなく,原告らも,の死亡を受けて,従前,不注意でけ
がをして入院したと説明するよう希望していたことについて,他の説明をして欲し
いといった話をすることはなかった。(乙イ8,104,証人29頁,原告
本人41頁)
エ教諭は,平成20年4月5日及び6日,本件事件により児童や保護者が
動揺している旨の保護者からの連絡があったことなどを受けて,児童の様子を聞い
て,児童や保護者に安心してもらうため,本件小学校の6年生児童宅への家庭訪問
を行った。同月7日,本件小学校では,始業式の前にへの黙祷を教職員・児童
全員で行い,始業式式辞において,校長は,が死亡したこと,トイレのブラ
インドのひもに誤って首を入れてしまい窒息してしまったようであることなどを述
べた。(乙イ8,証人20頁)
校長は,同日,原告らに対して,同月13日開催予定の全体懇談会において,
の死因は自殺ではなく,不慮の事故である旨説明を行うようにとの依頼をし,
さらに,教諭が辞意を表明しているとして,原告らから教諭に慰留を求める
よう依頼した。
前記1(4)ア(イ)記載のとおり,教諭は,同日午後,原告らに対して,家庭訪問
において児童のいじめについて調査した旨述べたところ,原告らは,「子ども(ク
ラスメイト)は良かった。」,「友達には本当に恵まれた。」,「子どものいじめ
なんて絶対にない。」などと述べた。これに対し,教諭は,「そしたら私か
な。」という趣旨の発言をした。
オ校長は,平成20年4月7日付けで,の死亡の原因を多臓器不全とす
る事故報告書を作成し,町教育委員会に提出した。また,校長は,同日付け
で,同月3日ないし7日までの本件小学校の対応等の経緯,警察から,ⅰ)外見上
の状況は自殺の可能性も考えられるが,原告らには自殺を考えることはあり得ない
という揺るぎない思いがあり,原告らの意向を尊重し,二次的な精神的苦痛も考え,
これ以上捜査することなく事故扱いとすること,ⅱ)本人が死亡したので原因はは
っきりしないが,原告らを驚かそうとして事故にあったということも考えられるこ
と,ⅲ)新たなことが分かったときは,再調査をすることもあり得るが,の友
人への聴取り調査は行わないことといった説明を受けた旨を記載した「児童・生徒
に関する報告書」と題する書面を作成し,町教育委員会に提出した。(乙イ8,
106)
カ教諭は,平成20年4月10日,本件小学校の6年生の保護者会におい
て,ⅰ)が自宅のトイレで,ブラインドのひもが首にかかっていて,片足が棚
にかかり片足は棚から落ちた状態で原告に発見されたこと,ⅱ)原告らは,
に変わった様子は全くなく,自殺はあり得ないと言っていること,ⅲ)原告らは,
の死亡は間違えなく事故によるもので,誰かが責められることでは決してない
と言っていることなどを説明した(乙イ6)。
また,校長は,同月13日,本件小学校の全体懇談会において,原告らは,
に変わった様子は全くなく,自殺はあり得ないと言っていること,ⅱ)原告らは,
の死亡は間違えなく事故によるもので,誰かが責められることでは決してない
と言っていることなどを説明した(乙イ6,証人11,12頁)。
キ教諭は,平成20年4月10日以降,の四十九日である同年5月29
日に至るまでは毎週,同日以降,平成21年2月に至るまでは月命日に,本件小学
校の6年生児童とともに,原告ら宅にお参りに行った(乙イ84,109)。
原告らは,平成20年5月29日,教諭に対して,の死亡検案書(甲2)の
「死因の種類」欄には,「不慮の外因死」という項目もあるが,「自殺」に丸が付
いている旨を伝えた(証人23,30頁,原告本人15,16頁)。
ク教諭と教頭は,平成21年3月2日及び同月5日,原告ら宅を訪問し,
本件小学校の平成20年度卒業式への出席を求めた。原告らは,「も卒業生と
して卒業式に出席させてもらえるのか。」と尋ねたところ,教諭は,「おめでた
い席に悲しい涙はちょっと・・・。」と言い,の席を設けると寂しいから置か
ないとの方針を伝えた。原告らは,出席を辞退する意向を伝え,同月9日,本件小
学校の6年生の最後の参観日には,本件小学校を訪れ,保護者に対しても卒業式に
は欠席する旨を伝えた。その際,前提となる事実(3)ア(ウ)記載のとおり,校長
は,原告らに対して,「お母さんたちは,今,ナーバスになっているので,余計な
ことは言わないで下さい。」と述べた。教諭と教頭は,同日午後,原告ら宅
を訪問し,再度卒業式への出席を求めたところ,原告らは,「学校のためにはいか
ないけど,子どもたちのために行く。」として,卒業式への出席を了承した。(甲
23,乙イ84,証人14頁,原告本人17頁,弁論の全趣旨)
前記1(4)ア(ウ)記載のとおり,教諭は,同月,卒業式が終わって数日後,原告
らから「話がある。」と言われ,原告ら宅を訪問した。その際,原告らは,教諭
に対して,結び目のあるひもを見せ,「結び目があるから,自分でやったんだろう
と検死をして判断された。自分たちも事故であるという思いだったが,警察では自
殺だと判断している。病院の院長先生も自殺だと判断している。」と話した。
前記1(4)ア(ウ)記載のとおり,教諭は,同月27日,宛ての手紙を,の誕
生日である同月24日に合わせての仏壇に供えた。
ケ原告らは,平成21年3月31日,町教育委員会を訪問し,本件事件後
の本件小学校の対応や,教諭の児童に対する指導のあり方について,事実確認を
するよう申入れをした。また,原告らは,その際,教育長に対して,の死亡
は事故ではなく自殺によるものであることを伝えた。(甲4,乙イ106,証人
1頁,原告本人16ないし18頁)
コ以上の認定に対し,原告らは,本件学校の関係者に対し「の死は間違い
なく事故であり,自殺ではない。」とは伝えておらず,また,その死因が多臓器不
全であったとは伝えていないと主張し,原告もこれに沿う供述をする。
しかし,死体検案書は,通常死亡から時間をおかず遺族(本件では原告ら)に交
付されるものであり,の死体検案書には,死亡の種類として自殺が選択され,
直接の死因として多臓器不全と記載されていた。また,原告自身,が病院に
搬送された際,消防隊員に自殺だと言われたので,「自殺と断定しないでくださ
い。」と言った旨供述している上,原告らは,「私たちはの亡くなった時は,
不注意によって起きたことと思っていました。」,「私たちは警察に事故であると
訴えました」などと記載した平成22年5月6日付「の死去に関する先生の
言動・行動によるいじめについて」と題する文書(乙85)を教諭に交付した。
これらの点に照らせば,原告らの上記主張は採用できない。
なお,教諭は,原告らから,検死の結果,の死因は多臓器不全であると聞い
たと述べているが(乙イ8,証人),この供述は,上記認定判断に照らし,信用
できる。
イ平成21年度における主な事実経過
ア教諭は,平成21年度,本件小学校の特別支援学級(5年生1名,1年
生1名)の担任だった(乙イ18,19,証人31頁)。
イ教育長は,平成21年4月10日,原告ら宅を訪問し,同年3月31日
の申入れの内容を詳しく聴き取った。さらに,教育長と相談員は,同年4月
10日,本件小学校を訪問して,校長と教諭と面談し,原告らからの申入れ
を伝えるとともに,事実関係について聴取りを行った。なお,その後,教諭に対
する聴取り調査は,約20回行われたが,教育長による聴取り調査は約2回で
ある。(乙イ7,106,証人2頁)
ウ教育長は,平成21年5月8日,校長に対して,反省文の提出を求め
た。校長は,同年6月15日,町教育委員会に対して,反省文を提出し,教
諭も同日,「平成19年度第5学年学級指導を振り返って」と題する書面を提出し
た(乙15,16,106,証人24,25頁)。
エ原告らは,同年8月24日頃,町教育委員会に対して,校長及び教
諭の対応に関する見解と本件小学校に対して行った指導の内容について文書で回答
するよう要望書を交付した(乙イ12,原告本人19頁)。
これに対し,町教育委員会は,前提となる事実(3)ア(エ)記載のとおり,同年9
月14日頃,原告らに対して,「さんの事故及びご逝去に関わる学校(校
長・教諭)の対応についての経過と指導について」と題する書面を交付した(乙
イ7,原告本人19頁)。
原告らは,同月24日頃,町教育委員会に対して,校長及び教諭作成の
反省文を示すよう求める書面を交付した(乙イ13,原告本人19,20頁)。
これに対し,町教育委員会は,同年10月2日頃,原告らに対して,校長
作成の反省文及び教諭作成の「平成19年度第5学年学級指導を振り返って」
と題する書面を交付した(乙イ14ないし16,原告本人20頁)。
原告らは,同月30日頃,町教育委員会に対して,校長及び教諭が,
町教育委員会の指導を受けた後,どのように反省しているのかについて書面で提出
するよう要望書を交付した(乙イ20,原告本人20頁)。
これに対し,教諭は,同年12月3日,原告らに対して,ⅰ)教諭が初めて
病院を訪ねたときのこと,ⅱ)警察に色々聞かれた後の発言について,ⅲ)平成2
0年4月5日の発言について,ⅳ)同月7日の辞意表明について,ⅴ)四十九日の
後の発言について,ⅵ)の誕生日の後日の手紙について,ⅶ)学習指導につい
て,ⅷ)生活指導について説明した書面を交付した(甲11,乙イ111,原告
本人21頁)。
オ前記1(4)ア(エ)記載のとおり,教諭は,平成22年2月12日,原告ら
に対して,謝罪の気持ち等を記載した手紙を渡した。
ウ平成22年度における主な事実経過
ア教諭は,平成22年度,本件小学校の特別支援学級の担任だった(証人
31,32頁)。
イ前記1(4)ア(オ)記載のとおり,原告らは,平成22年5月6日,教諭に
対して,「の死去に関する先生の言動・行動によるいじめについて」と題す
る書面を交付した。また,原告らは,同日,町教育委員会に対して,の自殺は
教諭のいじめによるものであること,町教育委員会には,教諭に対する厳重
な処分を求めることなどを記載した「先生の言動・行動によるいじめに対しての
書面提出について」と題する書面を交付した。(甲4,乙イ21,85)
校長と教諭は,同月10日午後5時50分頃から午後8時45分頃まで,原
告ら宅を訪問し,前記1ア記載のとおり,教諭は,原告らに対し,謝罪文を
渡した(乙イ93,108)。
ウ校長は,平成22年5月14日,原告ら宅を訪れ,教諭が辞意を表明し
ていることなどを述べた(前提となる事実(3)ア(オ))。
エ教育長は,平成22年5月27日,町教育委員会会議において,前記
1(3)イ(ア)記載のとおり教諭の指導内容及び教諭に対する処置等について報
告した。
(オ)教育長と相談員は,平成22年6月4日,原告ら宅を訪問し,前記ウ
(イ)記載の書面に対する回答として,ⅰ)町教育委員会の見解は,本件事件の原
因が「担任の言動・行動によるいじめ」にあったとの原告らの訴えについては,断
定できる確証がないが,教諭による厳しい指導があったとの指摘については,ク
ラスにおける学級指導や学習指導の場面で,教師としての配慮にやや欠ける部分が
あったというものであること,ⅱ)町教育委員会の処置としては,校内研修,個
人研修及び各種研修機関において研修するよう教育長及び校長から指導するこ
ととすることを伝えた。また,教育長は,原告らに対して,同年5月31日に
警察署で確認した内容として,ⅰ)本件事件は,犯罪性,事件性が認められなかっ
たので,捜査及び調査は平成20年4月4日をもって終了したこと,ⅱ)自殺であ
ったかどうかは,捜査対象でないので不明であることを伝えた。(乙イ22,2
3)
(カ)校長,教頭(以下,「教頭」という。)及び教諭は,平成22年
6月6日午後5時頃から午後7時30分頃まで,原告ら宅を訪問し,教諭は,5
年生,6年生と関わってきたことやこれまでの原告らとのやりとりを考え,自分が
辞めることで原告らの気持ちが少しでも和らぐのであれば,辞める気持ちがあると
いうことを校長に話し,そのことを校長が前回訪問した際に原告らに伝えたの
だなどと述べた(乙イ94,108)。
(キ)原告らは,平成22年6月11日頃,町教育委員会に対して,前記ウ
記載の町教育委員会の見解及び処置を受け,「異議申し立て及び再審議の要
望」と題する書面及び「趣意書」と題する書面を交付した(乙イ24,25)。
ク校長,教頭及び教諭は,平成22年7月4日,原告ら宅を訪問した
(乙イ95,108)。
教諭が同月7日原告ら宅に架電したところ,原告が電話を受け,教諭の
辞意の表明の理由はⅰ)を傷つけたことについて申し訳ないと思ったため,
ⅱ)周りのたくさんの人に迷惑をかけたため,ⅲ)今担任している児童にも迷惑を
かけるためで間違いないかと尋ねた。これに対して,教諭は,その3つだとは言
っていないと思うが,校長が教諭の話をまとめたのだと思うこと,退職したい
と言ったのではなく,退職の気持ちがあるということを話したことを伝えた。これ
に対し,原告は,前記アカ記載の全体懇談会で話す内容が記載されたFAXの
交付を求め,教諭は,確認の上,連絡する旨伝えた。(乙イ96)
ケ原告らは,平成22年7月9日頃,町教育委員会に対して,の死体検
案書を交付するとともに,当該死体検案書をもとに,前記ウキ記載の要望に応え
て欲しい旨記載した書面を交付した(乙イ26)。
これを受けて,校長は,同月23日付けで,の死亡の原因を自殺とする事故
報告書を作成し,記載内容を訂正した理由を記載した書面とともに町教育委員
会に提出した(乙イ27,28,30)。
原告らは,同年8月5日,教育長に対して「死体検案書を提出したが,その
後どうなったか」と尋ねるため,町教育委員会を訪問した。その際,会話の中で,
教育長は,「うるさい。だまれ。」などと怒鳴った。(証人7,8頁)
コ原告らは,平成22年8月20日頃,町教育委員会に対して,同年9月
10日までに前記ウキ記載の要望に対する文書での回答をすることを強く求める
旨記載した書面を交付した(乙イ31)。
これに対し,町教育委員会は,同月17日頃,原告らに対して,ⅰ)前記1
(4)ア(ウ)記載の教諭のに対する手紙は,自らの過失を認めたものであるとす
る原告らの主張については,教諭が担任として,自分の指導が至らなかったこと
に対する心情を記述したものであり,原告らが指摘する教諭が謝罪した数々の
事柄についても,教諭が教師として未熟であることを強く自覚し,深く反省して
のものであって,これらのことをもっての死亡の原因が教諭の指導そのもの
にあると断定することはできないと判断したこと,ⅱ)事故報告書の死亡の原因が
「事故」から「自殺」に訂正されたことから,過失が問われるべきであるとする原
告らの主張については,自殺の原因については不明であるとの警察署の判断に
基づき,町教育委員会としても同様の判断をしたこと,ⅲ)校長の言動につ
いては,著しく配慮に欠けるものであったことや,校長としての指導性が欠如して
いたことから,平成21年9月14日に強く指導したこと,ⅳ)が5年生だっ
た時の教諭の指導に関する原告らの指摘の数々は,学級の児童にとっても苦痛
だったと推察され,教諭には,児童の心情を受け止め,学習意欲を高めたり励ま
したりという配慮が不十分で,教師からの一方的な指導となっていたきらいがある
こと,担任と学級の児童との好ましい信頼関係が醸成されていたとはいい難い状況
であり,保護者との情報交換や相互理解も不十分だったことから,教諭には,平
成22年5月27日に,教師としての資質及び指導力を向上させるために,校内研
修,個人研修,及び各種研修機関において研修するよう教育長及び校長から指
導したこと,ⅴ)原告らが強く求めている校長及び教諭に対して厳しい処分
をするとの要請には,上記ⅲ)及びⅳ)といった処置をとることとしたことを記載
した書面を交付した(乙イ32)。
(サ)原告は,平成22年9月21日,本件小学校を訪問し,事故報告書の開
示を求めた。校長は,同日,町教育委員会に対して,事故報告書の写しや記載
内容を訂正した理由を記載した書面を原告らに交付しても良いか確認の上,原告ら
宅を訪問し,これらの書面を原告らに交付した(乙イ86,87)。
原告は,同月22日,本件小学校を訪問し,事故報告書や記載内容を訂正し
た理由を記載した書面の作成者を確認した。また,原告は,教諭に対して,
平成20年4月7日に警察とどのような話をしたのか,始業式で校長はにつ
いての話をしたのかなどを確認した。(乙イ88)
(シ)原告らは,平成22年10月13日頃,町教育委員会に対して,「うそ
偽り,又,詭弁による見解で埋め尽くされ,教育関係者にあるまじき事で慚愧に堪
えません。」などと記載し,「謝罪要求書」,「処分はできる」及び「納得できな
い見解への反論」と題する書面を添付して,前記ウ(キ)記載の要望について,誠意
をもって再度回答するよう求める書面を交付した(乙イ33)。
これに対し,町教育委員会は,同月25日頃,原告らに対して,ⅰ)前記ウ
(コ)記載の同年9月17日付け書面において,警察署の正式な見解であると受け
取れる表記があり,警察署から「そのような話を担当者がしたという事実はな
い」などと厳重注意を受けたため,当該表記については削除したいこと,ⅱ)
の書き残した日記の文面からは自殺を予知させるものは読み取れず,自殺前の様子
の記述からも自殺の前兆であると判断することはできなかったことなどを記載した
書面を交付した(乙イ34)。
(ス)原告らは,平成22年11月4日頃,教諭に対して,再度の話し合いを
求め,教諭と教頭は,同月10日午後6時頃から午後9時30分頃まで,原
告ら宅を訪問した。原告らは,事故報告書に記載された「多臓器不全」という言葉
がどこから出てきたのかを尋ね,教諭が,原告らから聞いたと記憶している旨を
伝えると,原告らは,それはあり得ないなどと述べた。また,本件ドリルの指導,
器楽練習,教諭の反省文の内容や辞意に関する話などをし,原告らは,教諭に
対して,時間を空けずにまた来るよう求めた。(甲14,乙イ97,98)
教諭と教頭は,同月17日午後6時頃から午後9時45分頃まで,原告ら
宅を訪問した。(甲15,乙イ99)
(セ)原告らは,平成22年11月24日頃,町教育委員会に対して,「町
教育委員会教育長は話し合いが進むに従い,学校側の立場を守るため,手段を
選ばず,うそ偽りという卑劣な手段で結論ありきの見解を示し,私たち保護者の訴
えを封じようとしたことは,亡くなったや私たちを愚弄した行為で許されるも
のではありません。」などと記載した「再度,謝罪を求める書」と題する書面を交
付した。また,原告らは,同日頃,オホーツク教育局及び町教育委員会に対し
て,両者の話の食い違いを率直に認め,経緯等の真相を説明し,真摯なる謝罪の上
で,改めて誠意ある調査・検証に基づく見解と教諭への適切な処分を求める旨
記載した「矛盾対応に対する説明を求める書」と題する書面を交付した。(乙イ9,
10)
(ソ)原告又は原告は,平成22年12月1日,本件小学校を訪問し,校
長に対し,事故報告書で死亡の原因が多臓器不全とされていたが,多臓器不全とい
う言葉は話していないから事故報告書は無効であることなどを述べた(乙イ89)。
(タ)校長,教頭及び教諭は,平成22年12月4日午後3時頃から午後
6時30分頃まで,原告ら宅を訪問し,教諭が原告らから「多臓器不全」が死亡
原因であると聞いたという点,器楽練習に関する話などをした(甲16,乙イ10
0)。
(チ)町教育委員会は,平成22年12月10日頃,原告らに対して,前記ウ
(セ)記載の書面への回答として,これまでにも必要に応じて一定の調査や検証を実
施していることから再調査及び再処分は行わないことを記載した書面を交付した
(乙イ35)。
(ツ)教育長は,同月13日,原告らに対して,前記1(3)イ(ウ)記載のとおり
教諭の指導内容に対する厳しい評価を述べた。
原告らは,同月14日頃,町教育委員会に対して,「教育長の口頭回答およ
び質疑応答の覚書確認書」を交付し,同月13日に教育長が述べた内容を記録
したものであることを確認の上,教育長に押印するよう求めた。これに対して,
教育長は,付箋や書き込みによって一部訂正を求めた上で,押印した。(甲5,
8の1,2,甲9,乙イ109,証人14,15頁)
(テ)校長,教頭及び教諭は,平成23年2月20日午後1時頃から午後
5時30分頃まで,原告ら宅を訪問した。原告は,校長に対して,ⅰ)事故報
告書訂正とその後について,ⅱ)教諭の辞意表明について,教頭に対して,
ⅰ)事故報告書の「多臓器不全」について,ⅱ)教育委員会の「聴き取り調査」に
ついて,ⅲ)教諭の指導について,教諭に対して,ⅰ)事故報告書について,
ⅱ)PTA総会で校長が読み上げた文書について,ⅲ)の死亡当時のことにつ
いて,ⅳ)説明責任と守秘義務について,ⅴ)「怒る」を勘違いした教育について,
ⅵ)への指導について,ⅶ)の同級生の児童を車に乗せなかったことについ
て,ⅷ)にくれた「ざんげの手紙」について,それぞれ質問内容を記載した質
問書を読み上げ,校長,教頭及び教諭はこれに回答し,原告は回答内容
を記録した。(甲17,乙イ101,102,108)
(ト)教育長は,平成23年3月14日,原告らに対して,同日付けで教諭
の退職の内示をすることとしたなどと報告した。
原告らは,同月21日頃,北海道教育委員会,オホーツク教育局及び町教育
委員会に対して,教諭への事実上の退職勧告による退職は,原告らの訴えた事案
を隠蔽する行為であり,原告らが繰り返し要望してきた事実確認に基づく適正な処
分とは思えないこと,質問に対する見解を求めることなどを記載した「『事実上の
退職勧告による解決策』に対する質問及び教育委員会見解を求める書」と題する書
面を交付した(乙イ37)。
これに対し,町教育委員会は,同月30日頃,原告らに対して,教職を継続す
ることによって原告らの理解と信頼を得ることは困難であると判断したため,教
諭に自身の進退について重大な決断をすべきである旨を伝え,判断を委ねた結果が
教諭の退職の内示であることなどを記載した書面を交付した(乙イ38)。
原告らは,同日頃,町教育委員会に対して,第6回町教育委員会会議議事
録に不適切な記載があるため,精査の上,訂正するよう求めた「平成22年第6
回町教育委員会会議議事録の訂正を求める書」と題する書面を交付した(乙イ
39)。
(2)原告らは,本件事故につき,被告町及び本件小学校関係者に調査報告義
務違反があったと主張する。
在学中の児童が自殺し,それが学校生活上の問題に起因する疑いがある場合,当
該児童の保護者がその原因を知りたいと思うのは当然のことであるが,保護者にお
いて,学校生活上の問題を調査することは困難である。他方,学校がその点を調査
することは,学校が教育機関として他の児童の健全な成長やプライバシーについて
配慮すべき立場にあり,その調査能力に一定の限界があることを考慮しても,保護
者がこれを行う場合に比べてはるかに容易であり,その効果も期待できることは明
らかである。
学校設置者は,在学する児童の学校生活上の安全に配慮して,無事に学校生活を
送ることができるように教育・指導をすべき立場にあるのであるから,児童の自殺
が学校生活上の問題に起因する疑いがある場合,その原因を究明することは,健全
な学校運営にとり必要な事柄である。したがって,このような場合,学校設置者は,
他の児童の健全な成長やプライバシーに配慮した上,児童の自殺が学校生活に起因
するのかどうかを解明可能な程度に適時に事実関係の調査をしてその原因を究明す
る一般的な義務を負うと理解できる。
また,自殺した児童の保護者から,自殺の原因についての報告を求められた場合,
学校設置者は,信義則上,在学契約に付随して,当該児童の保護者に対し,上記調
査義務に基づいた結果を報告する義務を負うというべきである。
そして,国家賠償法上違法となるためには公務員が個別の国民に対して負担する
職務上の法的義務に違背することが必要であるところ,上記報告義務は,在学契約
に基づき,報告を求めた当該児童の保護者との関係において信義則上負うものであ
るから,この報告義務に違反したときは,国賠法上違法との評価を受けるが,上記
調査義務は,上記のとおり学校設置者としてその健全な学校運営のために一般的に
負う義務と理解できるから,上記調査義務違反は国家賠償法上の違法評価とは直ち
に結びつくと解することはできず,上記報告義務違反の判断の一要素に留まると解
するのが相当である。
(3)そこで,前記認定事実を前提に報告義務違反の有無について検討する。
ア本件小学校関係者は,本件事件発生日である平成20年4月3日の時点で,
警察から,が自殺未遂をした可能性があるという通報が入った旨連絡を受けて
いた。さらに,同日の時点で,本件小学校関係者は,警察及び原告らからの聴取り
で,は自宅トイレでブラインドのひもが巻き付いた状態で心肺停止・意識不明
の状態となっていたことや,首に巻き付いたブラインドのひもが固く,包丁で切り
取る必要があったことを認識しており,発見されたの状態からすれば,本件小
学校関係者は,自殺の可能性が高いと容易に認識できた上,警察からも自殺の可能
性があるとして,教諭や教頭は聴取りを受けていた。
そして,同日の時点で,原告らがは不注意でけがをして入院したとだけ言っ
て下さいと言っていたとしても,これは,他の児童や保護者に対する状況説明の仕
方に関する要望に過ぎず,自殺の可能性を否定するものとはいえない。
また,ⅰ)本件事件発生日の翌日である同月4日は,は春休み中だったもの
の,入学式の前日準備で登校する予定であり,同月7日(月曜日)から6年生の1
学期が始まるという時期だったこと,ⅱ)小学校5年生や6年生は,授業時間が低
学年に比べて長く,一般に,生活のうち小学校で過ごす時間が長い上,交友関係も
小学校内が中心となること,ⅲ)前記1(2)ウ(イ)記載のとおり,は,同年1月
下旬に遅刻及び欠席をしていたことからすれば,本件事件は,学校生活上の問題に
起因する自殺である疑いがあったといえる。
そうすると,被告町には,遅くともが死亡した同年4月4日以降,その原
因が教諭の指導や本件小学校内でのいじめ等であるか否かについて事実関係の
調査する義務(以下「本件調査義務」という。)があったというべきである。
そして,被告町の設置する本件小学校の教員であり,被告町の公務員であ
る本件小学校関係者は,児童の教育に付随する公務として(学校教育法37条参
照),本件調査義務を負い,被告町の設置する町教育委員会の委員であり,
被告町の公務員である町教育委員会教育長以下委員らは,学校管理又は教育
に関する事務の管理・執行として(地方自治法180条の8),本件調査義務を負
っていたものである。
イ本件小学校関係者は,原告らの状況説明の仕方に関する要望や,警察が本件
事件についてこれ以上捜査することなく事故扱いとする旨説明した点を重視して,
本件小学校のの同級生や保護者に情報提供を呼びかけ,の日頃の生活の様子
等,の自殺に結びつく可能性のある事情を調査することを怠った。
また,被告らは,本件小学校関係者は,本件事件発生後,直ちに,原告らや他の
保護者に対して聴取り調査を実施した上で,報告書を作成している旨主張するが,
他の保護者に対する聴取り調査がなされたと認めるに足りる証拠はない。なお,
教諭は,平成20年4月5日及び6日,本件小学校の6年生児童宅への家庭訪問を
行っているところ,教諭は,この際いじめの有無について聴取した旨供述するが,
事情聴取がなされたことを示す客観的資料はなく(報告書が作成されたとは認めら
れない。),その主な目的も,本件事件の発生により動揺が見られる児童や保護者
を安心させるためというものだったと認められるものであり,このことをもって,
本件事件についての聴取り調査がなされたということはできない。
そして,校長は,本件事件に関する事故報告書の作成にあたっても,原告ら
の当初の説明や警察による説明を重視して,特段の調査をすることなく,「死亡の
原因」欄に「自殺」ではなく「多臓器不全」と記載した。なお,「多臓器不全」と
の文言は,同月4日に作成された死体検案書の「直接死因」の欄に記載があり,同
日頃,原告ら又は警察から本件小学校関係者に伝わったものと認められ(前記2
(1)ア(コ)),「多臓器不全」との記載がなされたことから,本件小学校関係者が,
自殺であることを隠蔽する目的を有していたとまでは認められない。
ウ原告らは,平成21年3月31日,前記2(1)ア(ケ)のとおり,本件事件につ
いて事実確認するよう町教育委員会に申入れをした。したがって,遅くとも同
日以降,本件小学校の設置者である被告町は,原告らに対し,の自殺の原因
についての報告義務(以下「本件報告義務」という。)を負うに至ったと認められ
る。
エ教育長と相談員は,その後も,前記1(3)記載のとおり,原告らの言い
分を確認し,教諭と校長に対する聴取りをしたのみで,原告らが主張する具
体的事実について,教諭に対して,事実の有無を確認することはおろか,本件小
学校のの同級生や保護者に対する聴取り調査もしていない。
また,教諭自身は,原告らからの口頭での問い合わせや書面の提出の要求に真
摯に応じてきたことが認められるが,本件小学校関係者や町教育委員会は,適
切な調査をすることなかった。
さらに,教育長は,前記1(3)記載のとおり,教諭の指導能力不足について,
懲戒処分の対象とはならず,これに対する対処としては一般的に開催されている研
修を受けさせることで足りると判断したにもかかわらず,原告らに対しては,基本
的に原告らの主張に沿う形で教諭に関する厳しい評価を伝えた(前記2(1)ウ
(ツ))。その際,教育長は,実際に教諭に対して行った処置と原告らに伝えた
教諭の評価の齟齬についても原告らに対して何ら合理的な説明をしなかった。
オ以上によれば,本件小学校関係者及び町教育委員会は,本件事故に関し
て適切な調査を行ったとは認められず,本件調査義務を果たしたとはいえない。ま
た,教育長は,原告らがの自殺の原因と考えていた教諭の指導能力につい
て,原告らから報告を求められた後も,調査を尽くさないまま,その認識や教
諭に対する指導内容とは異なる評価を原告らに伝えており,また,両者に齟齬があ
ることにつき合理的な説明をしておらず,本件報告義務を適正,誠実に履行したと
は認められない。
教育長は,その理由につき,大切な子供を亡くした原告らの心情にできる限
り寄り添うためであり,抗議の姿勢を日々強めてゆく原告らの理解と納得を得て事
態を収拾させるためであった旨述べる。しかし,本件報告義務は,その性質上,調
査結果に基づき,町教育委員会がの自殺の原因として判断したこと(あるい
は,自殺の原因が不明であること)を客観的に報告することが求められるものであ
り,教育長の上記方針は,原告らに対して本件報告義務を履行するについての
方針としては相当であるとは認められない。確かに,原告らは,教諭等に対して,
長時間にわたる聴取りや多数回にわたる書面のやり取りを行うといった強硬な態度
をとるようになった(これは,本件小学校関係者が,原告らに対して,教諭の慰
留を求めたり,卒業式においての席を設けることはできないとの方針を伝えた
などといった本件小学校関係者の配慮に欠けた言動や,本件小学校関係者の調査態
様などが一因であると考えられる。)が,このことを考慮しても,本件報告義務の
内容が変質するものではない。
よって,本件小学校関係者及び町教育委員会教育長以下委員らは,本件報告
義務に違反したものといわざるを得ない。なお,本件小学校及び町教育委員会
といった組織に属する被告町の公務員による一連の職務上の行為の過程をもっ
て,本件報告義務違反が認められるものであり,個々の教員,委員の各行為が本件
報告義務に違反したということはできない。
3争点5(本件事件後の対応に関する被告らの責任)について
(1)被告町の責任について
上記2記載のとおり,本件小学校関係者及び町教育委員会教育長以下委員ら
は,公務員としての職務を行うについて本件報告義務に違反したものであるから,
被告町は,国家賠償法1条1項に基づき,原告らが被った損害を賠償する
責任を負う。
(2)被告北海道の責任について
前提となる事実(1)イ(イ)記載のとおり,被告北海道は,本件小学校関係者の給料
その他の給与等を負担しており,本件報告義務違反が本件小学校関係者及び町
教育委員会教育長以下委員らによる一連の職務上の行為の過程をもって認められる
ものであり,本件小学校関係者と町教育委員会教育長以下委員らの義務違反は
不可分一体となったものであることから,被告北海道は,国家賠償法3条1項に基
づき,原告らが被った損害を賠償する責任を負う。
4争点6(原告らに生じた損害)について
(1)原告らは,本件報告義務違反により,本件事件の原因が教諭の指導によ
るものか否かについて適正に報告を受ける機会を失い,本件小学校関係者による配
慮に欠けた言動も相まって,の死亡による原告らの精神的苦痛は増大したもの
といえるが,ⅰ)教諭の指導について,本件ドリルのチェックの依頼を除けば,
本件事件以前に原告らから相談や指導改善の申入れはされていないこと,ⅱ)原告
らは,本件事件当日,他の児童や保護者に対する状況説明の仕方に関する要望とし
て,は不注意でけがをして入院したとだけ言って下さいと言っており,その後,
他の説明をして欲しいといった話をすることはなかったこと,ⅲ)原告らが町
教育委員会に事実確認をするよう申入れをしたのは,本件事件から1年近く経過し
た平成21年3月31日だったこと,ⅳ)の同級生は小学校6年生という精神
的に未発達な児童であった上,1学級がを含めて13名と少人数であったこと
からすれば,児童への聴取り調査は慎重を期する必要があったといえること等の事
情に加え,ⅴ)原告らが長時間にわたる聴取りや多数回にわたる書面のやり取りを
行うといった強硬な態度をとったことと町教育委員会が原告らに迎合する態度
をとったことにより,教諭に対するそれぞれの認識の齟齬が強くなったと考えら
れることも考慮すると,本件報告義務違反による原告らの精神的苦痛に対する慰謝
料の額は,原告らそれぞれにつき50万円と認めるのが相当である。
(2)原告が本件訴訟の遂行を原告ら訴訟代理人らに委任したことは記録上明
らかであり,本件事案の性質,審理の経過,認容額に照らすと,本件調査報告義務
違反と相当因果関係のある弁護士費用の損害額は10万円とするのが相当である。
第4結論
以上によれば,原告らの請求のうち,原告の請求は,被告らに対し連帯して
60万円及びこれに対する平成23年9月21日から支払済みまで年5分の割合に
よる金員の支払を求める限度で,原告の請求は,被告らに対し連帯して50万
円及びこれに対する平成23年9月21日から支払済みまで年5分の割合による金
員の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し,その余の請求は
いずれも理由がないからこれを棄却することとし,仮執行免脱宣言については相当
でないから付さないこととし,主文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第1部
裁判長裁判官千葉和則
裁判官鳥居俊一
裁判官瀬戸麻未

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