弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件訴えをいずれも却下する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1甲事件及び丙事件について
豊中市長は,別紙物件目録記載の土地の事前相談受付番号第××××−××
××号に係る開発行為に対して,開発許可処分をしてはならない。
2乙事件について
被告は,上記1掲記の開発行為に用いる車両について車両制限令12条に基
づく特殊車両通行認定処分をしてはならない。
第2事案の概要
本件は,別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)の近隣に居住
する原告ら(全事件。以下特記しない限り同じ。)が,同土地の開発行為(以下
「本件開発行為」という。)に対して都市計画法(以下条文を引用するときは単
に「法」という。)29条1項に基づく開発許可処分(以下「本件開発許可」と
いう。)をすることは,法33条1項2号等に違反すると主張して,本件開発許
可の差止めを求めた事案(甲事件及び丙事件)と本件開発行為に用いる車両に対
し車両制限令12条に基づく特殊車両認定処分(以下「本件認定処分」とい
う。)をすることは違法であると主張して,本件認定処分の差止めを求めた事案
(乙事件)である。
1前提事実(争いがないか,掲記証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められ
る事実。以下特記しない限り枝番を含む。)
(1)当事者等
ア原告らは,大阪府豊中市αに居住する者である(争いのない事実)。
イP1株式会社(以下「P1」という。)は,本件土地を購入して分譲マ
ンションの建設を計画している者である(争いのない事実)。
ウ原告らの居住地と本件土地との位置関係は,別紙位置関係図記載のとお
りであり,本件土地は,その東側部分が市道β線(以下「本件道路」とい
う。)に接している(甲17)。
(2)事前相談等
ア豊中市において法29条1項の規定による許可を要する開発行為を行う
者は,豊中市土地利用の調整に関する条例(以下「調整条例」という。)
23条1項により,当該開発行為等に係る計画について市長と協議を行わ
なければならず,さらに,協議の申出に先立って,当該開発行為等に係る
計画の内容について市長と相談しなければならないこととされている(調
整条例23条1項及び3項)(乙1)。
イP1は,平成18年10月2日,豊中市長に対し,以下のとおり,本件
土地を開発区域(以下「本件開発区域」という。)とする開発行為等事前
相談書を提出した。
(ア)開発区域に含まれる地域の名称本件土地
(イ)開発区域の面積2999.01㎡
(ウ)予定される建築物等
a用途共同住宅(分譲)
b棟数・戸数1棟57戸
c階数地上3階・地下2階
d高さ9.95m
(エ)開発行為等の目的と工事種別共同住宅(分譲)の新築のため
(オ)設計・代理者株式会社P2(以下「P2」という。)
(以上につき,甲5)
ウ豊中市長は,同月25日,P1に対し,以下のとおりの開発行為等事前
相談返答書を交付した。
(ア)事前相談受付番号××××−××××
(イ)開発行為者P1
(ウ)区域に含まれる地域の名称本件土地
(エ)設計・代理者P2
(オ)一定の事項について関係各課と協議を行うこと
(以上につき,甲6)
エP1及びP2等は,平成19年3月23日,本件土地周辺の住民らに対
し,本件土地上に建築予定の共同住宅の計画についての住民説明会を開催
し,その後も,平成19年8月11日までに同様の説明会を3回開催した
(甲10,28)。
オP1は,平成19年7月19日,豊中市長に対し,以下のとおり,本件
開発区域についての開発行為等事前相談書を提出した。
(ア)開発区域に含まれる地域の名称本件土地
(イ)開発区域の面積2999.00㎡
(ウ)予定される建築物等
a用途共同住宅(分譲)
b棟数・戸数1棟55戸
c階数地上3階・地下2階
d高さ9.97m
(エ)開発行為等の目的と工事種別共同住宅(分譲)の新築のため
(オ)設計・代理者P2
(以上につき,甲38)
カ豊中市長は,平成19年8月7日,P1に対し,以下のとおりの開発行
為等事前相談返答書を交付した。
(ア)事前相談受付番号××××−××××
(イ)開発行為者P1
(ウ)区域に含まれる地域の名称本件土地
(エ)設計・代理者P2
(オ)一定の事項について関係各課と協議を行うこと
(以上につき,甲39)
(3)原告ら(甲事件及び乙事件)は,平成19年5月7日,本件開発許可及
び本件認定処分の差止めを求める訴えを提起し,原告ら(丙事件)は,平成
20年5月12日,本件開発許可の差止めを求める訴えを提起した(顕著な
事実)。
2争点
[本案前の争点]
(1)本件開発許可の差止めを求める訴えについて(甲及び丙事件の争点)
ア原告適格の有無
イ処分の蓋然性の有無
ウ重大な損害の有無
(2)本件認定処分の差止めを求める訴えについて(乙事件の争点)
ア原告適格の有無
イ処分の蓋然性の有無
ウ重大な損害の有無
[本案の争点]
(3)差止めの訴えと行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)10条1項
の適用の有無(全事件の争点)
(4)本件開発許可が違法か否か(甲及び丙事件の争点)
(5)本件認定処分が違法か否か(乙事件の争点)
3争点に対する当事者の主張の要旨
(1)本件開発許可の原告適格(争点(1)ア)について
[原告らの主張]
原告らが本件開発許可の差止めの訴えに係る原告適格を主張するに当たっ
て問題としている法律上の利益は,人格権の一種としての平穏な生活を営む
利益であるところ,次のとおり,都市計画法は,開発区域周辺住民の平穏な
生活を営む利益を個別的利益として保護する趣旨を含んでおり,かつ,原告
らは,上記の利益を保護されている住民に当たるというべきである。
ア法33条1項2号は,道路について,「周辺の状況」を勘案して,環境
の保全上,災害の防止上,通行の安全上又は事業活動の効率上支障がない
ような規模及び構造で適当に配置されることと定め,消防活動,通過交通
量や通勤・通学の安全を考慮している。また,同号は,公園について,
「周辺の状況」を勘案して,適当に配置されることと定め,「健康で文化
的な都市生活の確保」(法2条)を考慮している。そして,同項3号は,
排水施設の排水能力を開発許可基準としており,これは開発区域内の雨量
と周辺の降雨状況を併せて考慮している。さらに,同項7号は,地盤に関
する基準を定め,開発行為の審査基準である「宅地防災マニュアル」(甲
53)によれば,軟弱地盤について,隣接地も含めた造成上の問題点を総
合的に検討することとされている。これらの定めからすれば,都市計画法
は,近隣住民の平穏な生活を営む利益(人格権の一種)及び所有権を保護
する趣旨と解すべきである。
イまた,以下のような建築基準法及び条例の規定からすれば,法33条1
項各号が都市住民の平穏な生活を営む利益を保護する趣旨であることは明
らかというべきである。
(ア)開発許可と建築確認は密接に関連したものであり,両者が一体とな
って都市計画区域における土地利用規制をしていることからすれば,建
築基準法は,都市計画法の関係法令と解すべきである。そして,建築基
準法は,住民の平穏な生活を営む利益を保護していることに照らせば,
都市計画法もこれを保護していると解すべきである。
(イ)都市計画法の関係法令と解される豊中市中高層建築物等の建築に係
る紛争の予防及び調整に関する条例(甲16。以下「本件紛争予防条
例」という。)によれば,建築主は,近隣関係住民等から,説明会の開
催の求めがあった場合はこれに応じる義務があり(同条例11条3項),
建築主及び工事施工者は近隣関係住民等と工事施工方法等に関する協定
を締結するよう努めなければならないとされていること(同条例12
条)からすれば,同条例は,上記近隣関係住民等の個別的利益を保護す
る趣旨と解すべきである。
ウ都市計画法の関係法令と解される景観法1条,環境基本法3条,4条,
大阪府環境影響評価条例1条及び大阪府環境基本条例前文に規定されてい
る各法及び条例の趣旨・目的を参酌すれば,都市計画法は,住環境を保護
している趣旨と解される。そして,国立市マンション事件の最高裁判決
(最高裁平成18年3月30日第一小法廷判決・民集60巻3号1242
頁。以下「平成18年判決」という。)が良好な景観の恵沢を享受する利
益は法律上保護に値すると述べていることにも照らせば,都市計画法は,
住民の平穏に生活を営む利益を個別的に保護していると解すべきである。
エ本件における被侵害利益の性質及び内容は,原告ら近隣住民の平穏な生
活を営む利益(人格権の一種)であり,これは,民法710条を根拠とす
るものであるが,都市計画法等の行政法令においても保護されていると解
される(法2条参照)。
そして,上記被侵害利益が害される態様及び程度は,道路の開発許可基
準に違反すれば,消火活動への支障や交通事故の危険を引き起こすという
重大なものである。また,公園等の開発許可基準に違反すれば,健康で文
化的な都市生活の基盤を破壊するものである。そして,排水施設の開発許
可基準に違反すれば,集中豪雨による洪水の危険を引き起こすという極め
て重大なものであるところ,原告らの居住地近くのγ地区は床上浸水等の
被害をたびたび受けており,原告らは,同地区を通過しなければ,商店街
での買物や通勤等は不可能であるから,γ地区の洪水によって原告らの日
常生活は重大な被害を受ける。さらに,軟弱地盤に対して適切な対策が行
われなければ,近隣に住む原告らは地滑りや不同沈下という重大な被害を
受ける。
[被告の主張]
ア当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益をそれが帰属
する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否か
は,主に当該処分の根拠となる法令の規定の趣旨及び目的を検討し,考慮
されるべき利益の内容,性質,規制の具体性等にかんがみ個別的に判断す
べきである。
イ法33条1項7号は,その被害が直接的に及ぶことが想定される開発区
域内外の一定範囲の地域住民の生命・身体の安全等を個々人の個別的利益
として保護する趣旨と解される。しかし,原告らは,崖崩れによる被害を
直接的に受ける範囲に居住しているとはいえず,法33条1項7号を理由
に原告適格を認めることはできない。
法33条1項2号は,その規定及び同号に関する技術的細目をみても開
発区域外の周辺住民個々人の具体的利益を考慮すべきことをうかがわせる
規定がないこと,自己の居住の建築用に供する目的で行う開発行為につい
て同号に定める基準の適用を除外していることからすれば,同号は,開発
区域内の環境の保全,災害の防止,通行の安全及び事業活動の効率化を図
ることを目的とした規定と解すべきである。したがって,同号が開発区域
外の住民の利益を保護していると解することはできない。
法33条1項3号は,溢水等による被害が直接的に及ぶことが想定され
る開発区域内外の一定範囲の地域住民の生命・身体の安全等を個別的に保
護する趣旨と解される。しかし,本件開発区域内の排水施設は,本件道路
に敷設されている下水管に接続し,本件開発区域内の下水は同下水管に放
流されるところ,本件道路は,北から南方向への下り斜面となっており,
原告P3や原告P4の住居は,本件道路より3mから5m高い位置にある
ことからすれば,原告らは本件開発区域における溢水等による直接的な被
害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者とは認められない。
以上からすれば,原告らには,本件開発許可の差止めを求める原告適格
は認められないというべきである。
ウこの点,原告らは,目的を共通にする関係法令として景観法の趣旨・目
的を参酌すべきであると主張する。しかし,開発許可処分の根拠規定が周
辺住民の景観利益を個別的に保護する趣旨とは解せないこと,平成18年
判決は,不法行為の成否の場面において,景観利益が民法709条に規定
される「法律上保護される利益」に当たると判断したものにとどまること
からすれば,上記の景観利益を理由に本件の原告適格が基礎付られるとは
解せない。
原告らは,本件紛争予防条例に定める「近隣関係住民等」には原告適格
が認められるべきであると主張する。しかし,同条例は,建築行為以前の
開発行為を対象とするものではないこと,その内容も中高層建築物等の建
築によって生じる住環境に関する民事上の紛争の予防及び調整を図ること
を内容とするにとどまることからすれば,「近隣関係住民等」に該当する
ことをもって本件の原告適格を基礎付けるものとは解せない。
原告らは,建築確認について原告適格が認められる者には,開発許可に
ついても原告適格が認められると主張する。しかし,建築確認と開発許可
は,その目的,審査対象,保護法益,処分要件を異にすること,開発許可
申請の段階では予定建築物の用途とその敷地の形状が特定されるにとどま
り,建築確認と開発許可に密接な関連性を認め難いことからすれば,原告
らの上記主張は失当というべきである。
(2)処分の蓋然性(争点(1)イ)
[原告らの主張]
本件の開発業者であるP1は,既に被告と本件開発許可の事前相談を終え,
豊中市土地利用の調整に関する条例(乙1)23条1項の規定する「協議」
の段階に入っていることからすれば,処分の蓋然性の要件を満たすというべ
きである。
[被告の主張]
本件はいまだ事前相談の段階である上,P1と被告との間で上記「協議」
の段階に入ったとしても,開発行為許可申請前の段階であり,本件開発行為
の内容も流動的であるから,処分の蓋然性の要件を欠くというべきである。
(3)重大な損害(争点(1)ウ)
[原告らの主張]
本件開発区域は,「δ」として,景観形成が目指され,多数の希少生物の
生息地にもなっているにもかかわらず,本件開発許可がされれば,上記景観
や希少生物の生息地を破壊することになる。また,本件開発区域の近くのγ
地区では過去に何度も浸水被害が発生しているにもかかわらず,本件開発許
可により,本件開発区域の樹木が伐採されれば,γ地区の洪水の危険を更に
増大させ,同地区を通勤,買物等で利用する原告らにも深刻な影響を与える。
これらの損害は,本件開発許可がされ,樹木が伐採されれば,回復するこ
とが困難なものといえるから,原告らには「重大な損害が生じるおそれ」が
あるというべきである。
[被告の主張]
原告らは,本件開発許可により,①δの景観や希少生物の生息地が破壊さ
れること,②洪水等による被害を受けることから,「重大な損害」が生じる
と主張する。しかし,「δ」として位置付けられているのは本件開発区域の
隣のP5であり,原告らの前記①の主張はその前提を誤っている上,重大な
損害とは,原告らの個人的損害をいい,公共的損害は含まれない以上,原告
らの前記①の主張は失当である。また,本件道路には,開発許可基準(都市
計画法施行規則(以下「施行規則」という。)22条1項)に対応した配水
管が敷設されており,原告らの主張を前提にしても原告らが居住するε地区
には洪水被害が発生していないことからすれば,原告らの前記②の主張も失
当である。
したがって,原告らには「重大な損害が生じるおそれ」があるとはいえな
い。
(4)原告適格(争点(2)ア)
[原告らの主張]
本件認定処分は,本件開発許可と密接に関連した一連の処分であるから,
本件開発許可の差止めを求める原告適格が認められる者には,本件認定処分
の差止めを求める原告適格が認められると解すべきである。また,道路法4
7条の趣旨は,狭い道を大型の自動車が幅員いっぱいに走行すると道路を著
しく損傷させ,交通能率が低下し,更には交通の危険を生じさせることから,
これを防止し,当該道路を通行する住民の交通の安全を保護する趣旨と解さ
れることからすれば,本件道路を毎日通行する原告らには,本件認定処分の
差止めを求める原告適格が認められると解すべきである。
[被告の主張]
道路法及び車両制限令が車両の制限を設けている趣旨は,交通の危険の防
止等を通じて広く公益を実現することにあり,個々の道路利用者の利益は,
かかる公益の保護を通じて保護されるものにすぎない。そして,車両制限令
12条の道路管理者の認定手続において,道路の沿線ないし近隣の住民等の
利益を考慮することが予定されていないことも併せて考えれば,道路法及び
車両制限令が当該道路の沿線ないし近隣の住民等の利益を個別的に保護して
いるとは解されず,原告らに本件認定処分の差止めを求める原告適格は認め
られないというべきである。
(5)処分の蓋然性(争点(2)イ)
[原告らの主張]
本件開発許可がされる蓋然性が高いことは前記のとおりであるから,これ
と密接な関係にある本件認定処分がされる蓋然性も高いというべきである。
[被告の主張]
原告らの主張は争う。
(6)重大な損害(争点(2)ウ)
[原告らの主張]
本件認定処分によって,前記(3)の本件開発許可がされた場合の損害が生
じるだけでなく,通過車両の増加による交通事故の危険も高まり,このよう
な原告らの受ける損害は,「重大な損害」というべきである。
[被告の主張]
本件開発許可により,重大な損害が生じないことは前記のとおりであるか
ら,本件認定処分によっても重大な損害は生じないというべきである。
(7)差止め訴訟と行訴法10条1項について(争点(3))
[原告らの主張]
差止め訴訟に行訴法10条1項を準用する旨の明文の規定はない。これは,
差止め訴訟の要件である「重大な損害」の要件の認定において,同様な要件
の判断がされるからである。すなわち,原告に「重大な損害」が生じる場合
には,当該主張そのものは原告の法律上の利益に関係なくとも,主観訴訟と
しての性質が保持されていないと形式的に非難することはしないという趣旨
である。したがって,差止め訴訟には,行訴法10条1項の準用はないと解
すべきである。
また,差止め訴訟に行訴法10条1項が準用されたとしても,同項が適用
されるのは,処分の相手方以外の第三者であって,同法9条2項の要件が満
たされたものの主張に対してである。このような第三者は,当該処分が処分
要件を充足している限りにおいて,法的利益侵害を甘受すべき地位にある者
といえることからすれば,かかる第三者は,不利益処分の相手方と同様に違
法事由の主張について制限を受けないと解すべきである。
[被告の主張]
行訴法10条1項は,取消訴訟が原告らの権利利益救済の制度であること
に由来する当然のことを規定したものであること,取消訴訟と差止め訴訟に
おいて,主張制限の範囲を異にする合理的理由はないことからすれば,行訴
法10条1項は,差止め訴訟に準用されると解すべきである。
本件において,法33条1項2号は,開発区域外に居住する原告らの権利
利益を保護する趣旨を含むものとは解されず,同号に基づく原告らの違法事
由の主張は失当である。
(8)本件開発許可が違法か否か(争点(4))
[原告らの主張]
ア法33条1項2号(道路に関する基準)違反について
(ア)法33条1項2号,都市計画法施行令(以下「施行令」という。)
25条2号は,開発区域が原則6m以上の幅員の道路に接続することを
要求しているが,本件道路は,幅員6mの要件を満たさない。この点,
施行令25条2号ただし書及び開発許可制度運用指針(甲47)によれ
ば,消防活動の支障がなく,車両等の交通量及び歩行者の数が少ない場
合には,上記幅員は,6m未満(4m以上)でも許されるとしているが,
本件道路は,幼稚園,小中学校の通園,通学路として利用され,ζ駅,
η駅が近くにあり,上記要件を満たさない。
(イ)仮に,施行令25条2号ただし書が適用されたとしても,有効幅員
の判断については,「小幅員区画道路の計画基準(案)について」(経
宅第38号・昭和61年4月11日建設省建設経済局通達(甲3。以下
「通達38号」という。)に沿って判断すべきところ,この基準によれ
ば,本件道路の幅員は4m未満である。
(ウ)また,本件道路は,豊中市土地利用の調整に関する条例施行規則
(甲4)10条(1)別表第1の規定する開発道路に該当すると解される
から,その幅員は4.35m必要であるが,本件道路の幅員が4m未満
であることは前記のとおりであるから,本件開発許可は,上記施行規則
にも反する。
イ法33条1項2号(公園に関する基準)違反について
法33条1項2号及び施行令25条6号は,3000㎡以上の開発行為
を行う場合には,開発区域の3%以上の公園,緑地又は広場の設置を義務
付けている。しかし,本件開発区域の面積は,3003.74㎡になるに
もかかわらず,上記公園,緑地又は広場の設置を欠いている。本件開発行
為は,本件開発区域とその隣接地を一体的に開発しており,かかる隣接地
も開発区域に含まれると解すべきであり,そうすると,その面積は300
0㎡を超えており,この点においても法33条1項2号等に違反する。
ウ法33条1項2号(排水施設に関する基準)違反について
排水施設については,法33条1項3号,施行令26条1号,規則22
条1項において,「5年に1回の確率で想定される降雨強度値以上の値を
用いる」とされているにもかかわらず,本件開発区域付近においては平成
22年に完成予定の排水施設が出来上がるまでは5年に1回の確率の降雨
強度に対応できない状況にあり,現実に,多数の洪水も発生していること
からすれば,本件開発許可は,法33条1項2号等に違反する。
エ法33条1項7号(地盤に関する基準違反)違反について
開発行為の審査基準である「宅地防災マニュアル」(甲53)によれば,
「①有機質土・高有機質土,②粘性度でN値が2以下,③砂質土でN値が
10以下のものを軟弱地盤とする」と定められている。そして,原告らが
行った地質調査(甲54)によれば,本件開発区域の周辺に粘性土でN値
2以下の箇所があり,本件開発区域は,軟弱地盤というべきである。しか
るに,軟弱地盤対策は何もされていない以上,本件開発許可は法33条1
項7号に違反する。
[被告の主張]
ア法33条1項2号(道路に関する基準)違反について
(ア)本件道路のうち本件開発区域に接している部分の幅員は4m以上あ
り,かつ施行令25条2号のただし書の要件も満たすから,本件開発許
可は法33条1項2号に違反しない。
(イ)この点,原告らは,通達38号に基づいて,道路の幅員を測定すべ
きであると主張するが,通達38号は,開発区域内の開発道路について
定めたものであるから,本件には妥当せず,原告らの上記主張は失当で
ある。また,原告らは,豊中市土地利用の調整に関する条例施行規則1
0条(1)別表第1に規定する「開発道路」の要件を満たしていないと主
張するが,本件道路の幅員は4.35m以上あるから,原告らの上記主
張は失当である。
イ法33条1項2号(公園に関する基準)違反について
本件開発区域は,2999.0㎡であるから,法33条1項2号に違反
しない。この点,原告らは,本件における隣接地を開発区域とした上で,
本件開発区域が3000㎡を超えていると主張するが,本件における隣接
地は,工事用地として利用されるにすぎず,本件の開発区域に含まれない
以上,原告らの主張はその前提を誤っており失当である。
ウ法33条1項2号(排水施設に関する基準)違反について
本件道路には,5年に1回の確率で想定される降雨強度値に対応した下
水管が敷設されているから,本件開発許可は,法33条1項2号に違反し
ない。
エ法33条1項7号(地盤に関する基準)違反について
原告らが主張する「宅地防災マニュアル」は,開発行為の審査基準では
なく,軟弱地盤に関する判定の目安にすぎないから,原告らの地盤調査の
1か所において,換算N値が2以下の部分があったとしても本件開発区域
の地盤が軟弱とはいえない。かえって,原告らが行った他の地点の地盤調
査結果によれば,その換算N値は高く,土層が締まった状態にあると推定
されていることからすれば,原告らの主張は失当である。また,軟弱地盤
であったとしても,その対策の検討等をすれば開発許可は認められる以上,
軟弱地盤であることは,本件開発許可の違法事由にはならないと解すべき
である。
(9)本件認定処分が違法か否か(争点(5))
[原告らの主張]
本件開発許可が違法である以上,これと密接に関連する本件認定処分も違
法と解すべきである。
[被告の主張]
原告らの主張は争う。
第3争点に対する判断
1行訴法37条の4第3項は,差止め訴訟の原告適格について規定するが,同
項にいう当該処分の差止めを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,
当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必
然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規
が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとど
めず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとす
る趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護さ
れた利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるお
それのある者は,当該処分の差止め訴訟における原告適格を有するものという
べきである。
そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無
を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによる
ことなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利
益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考
慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその
趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,
当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利
益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものであ
る(同条4項・9条2項参照)。
以上を前提にして,原告らに本件開発許可及び本件認定処分の差止めを求め
る原告適格が認められるか否かを検討する。
2争点(1)ア(本件開発許可の原告適格)について
(1)法33条1項7号の趣旨と原告適格について
ア同号は,開発区域内の土地が,地盤の軟弱な土地,崖崩れ又は出水のお
それが多い土地その他これらに類する土地であるときは,地盤の改良,擁
壁の設置等安全上必要な措置を講ぜられるように設計が定められているこ
とを開発許可の基準としている。上記のような土地において,安全上必要
な措置を講じないままに開発行為を行うときは,その結果,崖崩れ等の災
害が発生して,人の生命,身体の安全等が脅かされるおそれがあることに
かんがみ,そのような災害を防止するために,開発許可の段階で,開発行
為の設計内容を十分審査し,上記措置が講ぜられるように設計が定められ
ている場合にのみ許可をすることとしているものである。そして,この崖
崩れ等が起きた場合における被害は,開発区域内のみならず開発区域に近
接する一定範囲の地域に居住する住民に直接的に及ぶことが予想される。
また,同条2項は,同条1項7号の基準を適用するについて必要な技術的
細目を政令で定めることとしており,これを受けて定められた施行令28
条,施行規則23条,27条の各規定をみると,法33条1項7号は,開
発許可に際し,崖崩れ等を防止するために崖面,擁壁等に施すべき措置に
ついて具体的かつ詳細に審査すべきこととしているものと解される。以上
のような同号の趣旨・目的,同号が開発許可を通して保護しようとしてい
る利益の内容・性質等にかんがみれば,同号は,崖崩れ等のおそれのない
良好な都市環境の保持・形成を図るとともに,崖崩れ等による被害が直接
的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の地域の住民の生命,
身体の安全等を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨
を含むものと解すべきである。
そうすると,開発区域内の土地が同号にいう崖崩れのおそれが多い土地
等に当たる場合には,崖崩れ等による直接的な被害を受けることが予想さ
れる範囲の地域に居住する者は,開発許可の差止めを求めるにつき法律上
の利益を有する者として,その差止め訴訟における原告適格を有すると解
するのが相当である(最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決・民集5
1巻1号250頁参照)。
そして,上記のような居住者に原告適格が認められるためには,それが
本案前の訴訟要件に係るものであることに照らせば,崖崩れ等による被害
を受ける蓋然性があれば足りると解すべきである。
イ認定事実
前記前提事実(第2の1),掲記証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下
の事実を認めることができる。
(ア)原告P3は,本件開発区域の東側にある本件道路を挟んで同区域か
ら約5m離れた所で,かつ本件道路から約4m高い土地に居住している。
原告P4は,本件開発区域の東側にある本件道路及び原告P3宅等を
挟んで同区域から約20m離れた所で,かつ本件道路から約6m高い土
地に居住している。
原告P6及び同P7は,本件開発区域の西側部分に隣接する土地に居
住しており,原告P8は,本件開発区域の南側部分に隣接する土地に居
住している。
(以上につき,前記前提事実(1)ウ,乙4,6,12,弁論の全趣旨)
(イ)本件開発区域のうち本件道路に面している東側部分は,高低差が最
大で約9mの急斜面になっており,同区域のうち原告P3宅に近接する
部分は,水平距離約7.5mに対し高低差約6mの斜面になっている。
他方,原告P6及び同P7宅と隣接する本件開発区域の西側部分は水
平距離約3mから4mに対し高低差約1.5mから2.1mの斜面にな
っている。
原告P8宅と隣接する本件開発区域の南側部分には,高低差約1mの
段差がある。
本件開発区域のうち上記東側,西側及び南側部分の隣接地に接する部
分以外の土地はほぼ水平である。
(以上につき,前記前提事実(1)ウ,乙6の3から5まで,弁論の全趣
旨)
(ウ)本件開発行為は,予定建築物が地上3階・地下2階で1棟55戸の
共同住宅であることを前提として,その基礎及び周辺部分に切土及び盛
土を行うものである。
本件開発区域のうち本件道路に面している東側部分においては,切土
の高さは,約3mから5mであり,原告P6及び同P7宅に隣接する西
側部分においては,斜面部分のわずかな切土と同部分に設置される高さ
約2mのL型擁壁内への盛土が行われ,原告P8宅と隣接する南側部分
においては,切土の高さは約1mであり,盛土は行われず,これら以外
の上記水平部分においては,ほとんど切土及び盛土は行われず,行われ
たとしても数十cm程度である。
(以上につき,前記前提事実(2)オ,乙6の3から5まで,弁論の全趣
旨)
ウ以上を前提に検討するのに,本件開発区域は,本件道路に隣接する東側
部分の斜面は,最大約9mの高低差がある急斜面であること,同斜面にお
ける切土の高さも約3mから5mであること(前記認定事実(イ))からす
れば,本件開発区域の東側部分の斜面は,崖崩れの危険があり得る場所と
いうことができる。
しかし,以下のとおり,原告らについては,崖崩れ等による直接的な被
害を受ける蓋然性を認めることはできず,崖崩れ等による直接的な被害を
受けることが予想される範囲の地域に居住する者とはいえないというべき
である。
すなわち,まず,原告P3は,水平距離約7.5mに対し高低差約6m
の斜面に近接する部分に居住するが,その場所は,本件開発区域から本件
道路を挟んで約5m離れた所で,かつ本件道路から約4m高い土地に位置
している(前記認定事実(ア))。このような原告P3の居住場所及び上記
斜面の高低差に照らせば,原告P3は,崖崩れ等による直接的な被害を受
ける蓋然性がある者と認めることはできない。
次に,原告P4は,本件開発区域から本件道路及び原告P3宅を挟んで
約20m離れた所で,かつ本件道路から約6m高い土地に居住しているこ
と(前記認定事実(ア))からすれば,原告P3と同様に,同P4も崖崩れ
等による直接的な被害を受ける蓋然性がある者と認めることはできない。
さらに,原告P6及び同P7は,本件開発区域に隣接した土地に居住す
る者である(前記認定事実(ア))。しかし,本件開発区域のうち原告P6
及び同P7宅と隣接する西側部分は水平距離約3mから4mに対し高低差
約1.5mから2.1mの斜面であり,その斜面の上方の大部分はほとん
ど水平な土地であり,原告P6及び同P7宅に隣接する西側部分において
行われる切土及び盛土はわずかである(前記認定事実(イ),(ウ))。この
ような原告P6及び同P7宅と本件開発区域との高低差,その地形及び本
件開発行為の内容に照らせば,原告P6及び同P7は,崖崩れ等による直
接的な被害を受ける蓋然性がある者と認めることはできない。
原告P8も,本件開発区域に隣接した土地に居住する者である(前記認
定事実(ア))。しかし,本件開発区域のうち原告P8宅に隣接する南側部
分の高低差は約1mにとどまり,その上方の大部分はほとんど水平な土地
であり,原告P8宅に隣接する部分において行われる切土はわずかであり,
盛土は行われない(前記認定事実(イ),(ウ))。このような原告P8宅と
本件開発区域との高低差,その地形及び本件開発行為の内容に照らせば,
原告P8は,崖崩れ等による直接的な被害を受ける蓋然性がある者と認め
ることはできない。
以上のとおり,原告らは,崖崩れ等による直接的な被害を受けることが
予想される範囲の地域に居住する者とはいえず,これを理由に本件開発許
可の差止めを求める原告適格を認めることはできない。
エ崖崩れ等による被害との関係で,原告らは,本件開発区域は軟弱地盤で
あるから,地滑りや不同沈下という被害を直接被ると主張する。
そこで,検討するのに,証拠(甲53,54)及び弁論の全趣旨によれ
ば,軟弱地盤の判定の目安は,地表面下10mまでの地盤に粘性土で標準
貫入試験で得られるN値(以下「N値」という。)が2以下であること等
とされていること,本件開発区域の主たる地盤は粘性土であり,本件開発
区域周辺の2箇所(別紙位置関係図記載のA及びB。)で測定された各深
さごとのN値はB点が3.8から15であり,B点から約40m離れたA
点のN値もほとんどの深さにおいて2を超えていること,A点の深さ3.
75m及び4.75mの層において,N値が1.5となっているが,これ
と同一の地層におけるB点のN値はそれぞれ6.2及び12.2であるこ
とが認められる。これらの事実を総合すれば,本件開発区域全体としては
比較的引き締まった地層といえ,これに加えて,A点付近における本件開
発行為が斜面部分のわずかな切土と同部分に設置される高さ約2mのL型
擁壁内への盛土にとどまること(前記認定事実(ウ))も併せて考えれば,
原告らが,A点付近の地盤変化により崖崩れ等の被害を直接受ける蓋然性
がある者と認めることはできないというべきである。したがって,原告ら
の上記主張は採用できない。
(2)法33条1項3号の趣旨と原告適格について
ア同号は,排水路その他の排水施設が下水を有効に排出するとともに,そ
の排出によって開発区域及びその周辺の地域に溢水等による被害が生じな
いような構造及び能力で適当に配置されるように設計が定められているこ
とを開発許可の基準としている。この規定は,排水施設等が必要な構造及
び能力を有しないままに開発行為を行うときは,その結果,溢水等による
被害が生じて,人の生命,身体の安全等が脅かされるおそれがあることに
かんがみ,そのような災害を防止するために,開発許可の段階で,開発行
為の設計内容を十分審査し,上記措置が講ぜられるように設計が定められ
ている場合にのみ許可をすることとしているものである。そして,この溢
水等が起きた場合における被害は,開発区域内のみならず開発区域に近接
する一定範囲の地域に居住する住民に直接的に及ぶことが予想される。ま
た,同条2項は,同条1項3号の基準を適用するについて必要な技術的細
目を政令で定めるとしており,これを受けて定められた施行令26条,施
行規則22条,26条の各規定をみると,法33条1項3号は,開発行為
の許可に際し,排水施設の構造及び能力等について具体的かつ詳細に審査
すべきこととしているものと解される。以上のような法33条1項3号の
趣旨・目的,同号が開発許可を通して保護しようとしている利益の内容・
性質等にかんがみれば,同号は,溢水等のおそれのない良好な都市環境の
保持・形成を図るとともに,溢水等による被害が直接的に及ぶことが想定
される開発区域内外の一定範囲の地域の住民の生命,身体の安全等を,個
々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべ
きである。
そうすると,開発区域における溢水等による直接的な被害を受けること
が予想される範囲の地域に居住する者は,開発許可の差止めを求めるにつ
き法律上の利益を有する者として,その差止め訴訟における原告適格を有
すると解するのが相当である。
そして,上記のような居住者に原告適格が認められるためには,それが
本案前の訴訟要件に係るものであることに照らせば,溢水等による被害を
受ける蓋然性があれば足りると解すべきである。
イ以上を前提に検討するのに,本件開発区域周辺は,本件道路の北から南
方向へ長い下り坂となっており(乙4),原告ら宅は,いずれも本件道路
から4mから6m程度高い位置にあること(前記認定事実(ア),乙6,弁
論の全趣旨)からすれば,原告らは,本件開発区域の周辺地域のうち比較
的上方の土地に居住している者といえる。そして,本件開発区域周辺より
下方に位置するγ地区において家屋浸水等が生じた場合でも本件開発区域
周辺部分は家屋浸水等は生じておらず(甲32,46),原告らも本件開
発許可により主にγ地区において家屋浸水等が生じると主張立証するにと
どまることを併せて考えれば,本件開発区域において溢水等が生じたとし
ても,原告らがその被害を直接受ける蓋然性があると認めることはできな
い。
この点,原告らは,本件開発区域において溢水等が生じれば,同区域に
近いγ地区が洪水の被害を受け,原告らは同地区を通過しなければ,買物
や通勤等ができない以上,原告らは上記溢水等の被害を直接受ける者であ
ると主張する。しかし,本件開発区域とγ地区は,約450m以上離れて
おり,その間に多数の住居等が連なり,河川等もあることが認められ(甲
46,乙4,弁論の全趣旨),他方,本件開発区域の面積は約3000㎡
にすぎないこと(争いのない事実)からすれば,本件開発区域における溢
水等が原因となって,γ地区における家屋浸水等の被害が生じるとはにわ
かに認め難い。また,この点をおくとしても,原告らの居宅とγ地区は,
約450m以上離れていることからすれば,原告らが主張するγ地区にお
ける買物や通勤等の際に受けるという被害は,原告らに生ずる直接的な被
害ともいえないから,この点においても原告らの上記主張は採用できない。
ウ以上のとおり,原告らは,本件開発区域における溢水等による直接的な
被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者とはいえず,これ
を理由に本件開発許可の差止めを求める原告適格を認めることはできない
というべきである。
(3)都市計画法の保護法益に関する原告らの主張について
原告らは,①法33条1項2号,3号及び7号の規定,②建築基準法の規
定,③本件紛争予防条例の規定,④景観法,環境基本法,大阪府環境影響評
価条例及び大阪府環境基本条例の規定からすれば,都市計画法が近隣住民の
平穏な生活を営む利益及び所有権を保護する趣旨であると主張するが,以下
のとおり,原告らの主張はいずれも採用できない。
ア法33条1項2号,3号及び7号の規定をいう点(前記①)について
(ア)法33条1項2号は,自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供
する目的で行う開発行為以外の開発行為にあっては,道路,公園,広場
その他の公共の用に供する空地が,開発区域の規模,形状及び周辺の状
況等を勘案して,環境の保全上,災害の防止上,通行の安全上又は事業
活動の効率上支障がないような規模及び構造で適当に配置され,かつ,
開発区域内の主要な道路が,開発区域外の相当規模の道路に接続するよ
うに設計が定められていることを開発許可の基準としている。これらの
規定の文言及び内容に加えて,同号が,自己の居住の用に供する住宅の
建築の用に供する目的で行う開発行為については,同号の適用を除外し
ていることにも照らせば,法33条1項2号は,開発区域内に道路,公
園,広場その他の公共の用に供する空地を確保し,また,開発区域内の
主要な道路を開発区域外の相当規模の道路に接続させることによって,
開発区域内の環境の保全,災害の防止,通行の安全又は事業活動の効率
化を図ろうとしたものと解すべきである(仮に,同号が全体として開発
区域外への影響をも保護している趣旨であれば,自己の居住用の場合に
ついて上記適用除外の規定を設ける必要はないのであり,これをあえて
設けていることからすれば,同号は,主に開発区域内の上記利益を保護
する趣旨にとどまると解すべきである。)。
また,同号の規定及び同号に規定する基準を適用するについて必要な
技術的細目を定めた施行令25条,施行規則20条,21条,24条,
25条等の各規定をみても,開発区域外の住民個々人の利益を個別的に
保護していることをうかがわせる規定は見当たらない。そして,原告ら
が主張する近隣住民の平穏な生活を営む利益なるものは,その利益の内
容,性質自体抽象的であることにも照らせば,法33条1項2号がこれ
を個別的に保護する趣旨とは解せない。
したがって,法33条1項2号と同項3号,7号を併せて考慮したと
しても,これらの規定が,前記(1)(2)の崖崩れや溢水等による被害を受
けない利益を個別的に保護している趣旨に加えて,近隣住民の平穏な生
活を営む利益なるものを個別的に保護している趣旨とは解されず,原告
らの前記①の主張は採用できない。
(イ)原告らは,法33条1項2号,3号,及び7号が周辺の土地等の所
有権をも個別的に保護する趣旨であると主張する。しかし,都市計画法,
施行令及び施行規則において,開発区域周辺住民の財産権を保護する趣
旨を含むと解される規定はないことからすれば,法33条1項2号,3
号及び7号が開発区域周辺住民の財産権を個別的に保護している趣旨と
は解されず,原告らの上記主張は採用できない。
イ建築基準法の規定をいう点(前記②)について
原告らは,開発許可と建築確認が密接に関連したものであることから,
建築基準法は,都市計画法の関係法令と解すべきであり,建築基準法の規
定が本件の原告適格を基礎付けると主張する。
しかし,都市計画法の目的は,都市の健全な発展と秩序ある整備を図り,
もって国土の均衡ある発展を図ることにある(法1条)のに対し,建築基
準法の目的は,建築物の敷地,構造,設備及び用途に関する最低の基準を
定めて,国民の生命,健康及び財産の保護を図ることにあり(同法1条),
両者の主たる目的は異なる。また,開発許可は,開発区域内の土地の区画
形質の変更を許可するものであるのに対し(法4条12号参照),建築確
認は,予定建築物が建築基準関係規定に適合するものであることを確認す
る(建築基準法6条)ものであり,その対象,処分要件を異にする。そし
て,開発許可の段階では,予定建築物の用途とその敷地の規模及び配置が
特定される(法33条1項2号ハ,ニ)が,これは開発許可申請の際,将
来当該開発区域に建築される予定の建築物等の用途を明らかにし,これを
基礎として法33条,34条の基準を適用して開発許可の許否を決しよう
としたものであり,開発許可の段階で予定建築物等に係る建築基準法の要
件の具備につき審査を行うことが予定されているわけではなく,そうした
審査は専ら建築確認段階で行うことが予定されている。以上からすれば,
建築基準法は,開発許可の根拠法規である都市計画法の関係法令というこ
とはできず,建築基準法の規定が本件の原告適格を基礎付けるとは解せな
い。
したがって,原告らの前記②の主張は採用できない。
ウ本件紛争予防条例の規定をいう点(前記③)について
原告らは,本件紛争予防条例が,近隣関係住民等から説明会の開催の求
めがあった場合に建築主がこれに応じる義務を定め,また,建築主及び施
工者が近隣関係住民等と工事施工方法等に関する協定を締結する義務を定
めていることから,同条例の規定が本件の原告適格を基礎付けると主張す
る。
しかし,同条例の目的は,中高層建築物等の建築等に関し,市等の役割,
建築主等が配慮すべき事項,計画の事前公開等,紛争のあっせん及び調停
その他必要な事項を定めることにより,良好な近隣関係を保持し,併せて
地域における住環境の保全及び形成に資することを目的とするものであり
(同条例1条),具体的には,近隣関係住民と建築主等との間の建築基準
法上の建築確認等に伴って生じる紛争の解決等を目的とするものと解され
る(同条例2条(5)(7)参照)。そして,前記イのとおり,建築確認と開発
許可は別個の制度であり,その目的,審査対象,処分要件も異にし,建築
基準法が都市計画法の関係法令とは解されないことからすれば,本件紛争
予防条例は,建築基準法の関係法令とは解することができたとしても,建
築確認の前段階で行われる開発許可の根拠法令である都市計画法の関係法
令とは解されず,本件紛争予防条例の規定が本件の原告適格を基礎付ける
ものと解することもできない。
また,この点をおくとしても,本件紛争予防条例は,周辺住民との紛争
を防止することを目的としているにとどまること,近隣関係住民が受ける
平穏な生活を営む利益なるものは,その性質,内容自体抽象的なものであ
ることからすれば,本件紛争予防条例が原告らの平穏な生活を営む利益な
るものを個別的に保護する趣旨を含むとは解せない。
したがって,本件紛争予防条例をもって,原告らの原告適格を基礎付け
ることはできない。
以上より,原告らの前記③の主張は採用できない。
エ景観法等の規定をいう点(前記④)について
(ア)原告らは,環境基本法3条,4条,大阪府環境影響評価条例1条及
び大阪府環境基本条例前文の各規定及び各法の趣旨・目的を参酌すれば,
都市計画法は,平穏な生活を営む利益を個別的に保護する趣旨であると
主張する。しかし,いずれの規定も環境についての基本理念や環境を保
全するための社会の基本姿勢等を宣明するにとどまり,そこから地域住
民の何らかの利益を個別的に保護する趣旨は読みとれないこと,原告ら
が主張する上記利益なるものそれ自体抽象的,主観的なものであること
からすれば,上記規定から,地域住民一般の上記利益を個別的に保護す
る趣旨と解することはできず,原告らの上記主張は採用できない。
(イ)原告らは,景観法の趣旨,目的を根拠として,都市計画法は,平穏
な生活を営む利益を個別的に保護したものであると主張する。
そこで,検討するのに,法33条5項は,景観行政団体は,良好な景
観の形成を図るため必要と認める場合においては,景観法8条2項1号
の景観計画区域内において,政令で定める基準に従い,景観計画に定め
られた開発行為についての制限の内容を,条例で,開発許可の基準とし
て定めることができるとし,景観法8条2項は,景観計画においては,
景観計画の区域,同区域における良好な景観の形成に関する方針,良好
な景観の形成のための行為の制限に関する事項等を定めるものと定めて
いる。これは,景観計画区域内における開発行為に一定の制限を加える
ことにより同区域の良好な景観を保全しようとしたものと解される。
しかし,景観利益は,地域住民や不特定多数者からの眺め,風景をそ
の対象とするものであり,法律上保護すべき範囲は必ずしも明らかでは
ないし,景観阻害の程度も主観的な価値判断の要素が大きい。これに加
えて,法33条5項及びこれを受けた施行令29条の4が,良好な景観
の形成を図るために定めた基準は,切土,盛土及び敷地面積等について,
一般的な規制をするにとどまり,保護すべき具体的景観の範囲,具体的
な保護の態様等を特に定めた規定は見当たらない。そうだとすれば,景
観計画に住民の意見を反映させることが要求されていること(景観法9
条1項)を考慮したとしても,法33条5項及び景観法の規定は,一般
的な景観を保護することをもって,環境の保全を図ろうとした趣旨の規
定と解すべきであり,これらの規定が地域住民の具体的な景観を享受す
る利益を個別的に保護する趣旨を含むとは解せない。したがって,これ
らの規定により,開発区域の周辺住民の景観利益又は平穏な生活を営む
利益が個別的に保護されていると解することはできず,これらの利益は
一般的公益の中で保護されているにとどまるというべきである。
この点,原告らは,平成18年判決が,良好な景観に近接する地域内
に居住し,その恵沢を日常的に享受している者が有する利益(景観利
益)は,法律上保護に値すると判示していることから,原告らには景観
利益を根拠として原告適格が認められると主張する。しかし,同判決は,
不法行為の成否の場面において,景観利益が民法709条に規定される
「法律上保護される利益」に当たると判示したものであり,開発許可に
係る抗告訴訟の原告適格を認める根拠となるものではない。そして,原
告適格の有無は,前記1のとおり,当該処分を定めた行政法規が,不特
定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめ
ず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきもの
とする趣旨を含むか否かという観点から判断すべきところ,開発許可の
根拠法規である都市計画法及び景観法の規定から地域住民の景観利益が
個別的に保護されていると解せないことは既に判断したとおりであるか
ら,原告らの上記主張は採用できない。
オ以上より,原告らの前記主張はいずれも採用できず,原告らに本件開発
許可の差止めを求める原告適格は認められない。
したがって,原告らの本件開発許可の差止めを求める訴えは,その余の
点について判断するまでもなく,不適法である。
3本件認定処分の原告適格(争点(2)ア)について
(1)道路法は,道路網の整備を図るため,道路に関して,路線の指定及び認
定,管理,構造,保全,費用の負担区分等に関する事項を定め,もって交通
の発達に寄与し,公共の福祉を増進することを目的とする(同法1条)。そ
して,同法は,道路の構造を保全し,又は交通の危険を防止するため,道路
との関係において必要とされる車両の幅,重量,高さ,長さ及び最小回転半
径の最高限度は,政令で定めることとし(同法47条1項),車両でその幅,
重量,高さ又は最小回転半径が上記政令で定める最高限度を超えるものは,
道路を通行させてはならず(同条2項),道路管理者は,道路の構造を保全
し,又は交通の危険を防止するため必要があると認めるときは,トンネル,
橋,高架の道路その他これらに類する構造の道路について,車両でその重量
又は高さが構造計算その他の計算又は試験によって安全であると認められる
限度を超えるものの通行を禁止し,又は制限することができる(同条3項)
ほか,道路の構造を保全し,又は交通の危険を防止するため,道路との関係
において必要とされる車両についての制限に関する基準は,政令で定める
(同条4項)と規定している。
上記規定を受けた車両制限令は,道路の構造を保全し,又は交通の危険を
防止するため,道路との関係において必要とされる車両についての制限を定
めることを趣旨とし(同令1条),同令3条は,道路法47条1項を受けて,
車両の幅等の最高限度を規定し,同令5条から9条までは,道路法47条4
項を受けて,市街地区域内の道路における車両の幅の制限(5条),市街地
区域外の道路における車両の幅の制限(6条),総重量,軸重及び輪荷重の
制限(7条),カタピラを有する自動車の制限(8条)及び路肩通行の制限
(9条)をそれぞれ規定している。
そして,車両の幅等が上記車両制限令3条に規定する最高限度を超えず,
かつ,上記同令5条から7条までに規定する基準に適合しない車両で,当該
車両を通行させようとする者の申請により,道路管理者が上記基準に適合し
ないことが車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得な
いと認定したものは,当該認定に係る事項については,同令5条から7条ま
でに規定する基準に適合するものとみなすと規定されている(同令12条)。
(2)このように本件認定処分の根拠規定である車両制限令12条が同令5条
から7条までに規定する基準に適合しない車両について,その車両の構造又
は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないものと認定した場合に
道路の通行ができるようにした趣旨は,現実の社会経済活動において,車両
の使用目的や車両の特殊性から,やむを得ず上記基準に適合しない車両が道
路を通行する必要が生じることもあるところ,このような場合に一切車両の
通行が認められないことになれば,社会経済活動が損なわれ,公共の福祉の
増進という道路法の目的に反することにもなりかねないことから,一定の場
合に車両の通行を認めたものと解される。このような車両制限令12条の趣
旨に加えて,道路は広く一般の利用に供されているものであり,一般国民が
道路を利用する利益は通常は当該道路の存在を前提として認められるにとど
まる(道路管理者が当該道路を公共の用に供している限りにおいて自由に通
行する利益が認められるにとどまる)ことにも照らせば,同条は,公益的観
点から,通行車両についての調整を図り,もって,道路の構造を保全し,交
通の危険を防止しようとしたものと解すべきである。
そして,道路管理者は,特殊車両認定をする際,車両制限令5条から7条
までに規定する車両についての制限に関する基準に適合しないことが,車両
の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないものであるか
どうか判断するにとどまり,その際,当該道路の沿線ないし近隣の居住者等
の利益を考慮することは予定されておらず,車両制限令及びその関係法令上,
特殊車両認定の手続において,当該道路の沿線ないし近隣の居住者等の利益
を考慮することが予定された規定もない。そうだとすれば,道路法及び車両
制限令の規定が保護しようとしているのは,一般に道路を利用する国民ない
し地域住民が共通して持つ抽象的,一般的な利益であり,これらの規定から
当該道路の沿線ないし近隣の居住者等の利益が個別的に保護されていると解
することはできない。
なお,車両制限令12条ただし書は,特殊車両認定を行う際,道路管理者
は,運転道路又は運転時間の指定等道路の構造の保全又は交通の安全を図る
ため必要な条件を付すことができる旨定める。しかし,前記のとおり,道路
法及び車両制限令は,公益的観点から道路の構造を保全し,交通の危険を防
止しようとしたものであることからすれば,上記条件も一般に道路を利用す
る国民ないし地域住民の利益を保護したものと解すべきであり,これをもっ
て,当該道路の沿線ないし近隣の居住者等の個別的利益が保護されていると
は解せない。
(3)以上からすると,乙事件原告らには,本件認定処分の差止めを求めるに
ついて法律上の利益はないというべきである。
したがって,乙事件原告らの本件認定処分の差止めを求める訴えは不適法
である。
4結論
以上のとおり,原告らの本訴請求はいずれも不適法であるから,その余の点
について判断するまでもなく,却下することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第7民事部
裁判長裁判官吉田徹
裁判官小林康彦
裁判官棚井啓

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