弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人野尻昌次の上告趣意について。
 所論は違憲をいうけれどもその実質は単なる訴訟法違反の主張であつて適法な上
告理由に当らない。
 弁護人関原勇、同柴田睦夫の上告趣意第一点について。
 所論は違憲をいうけれどもその実質は量刑不当の主張であつて適法な上告理由に
当らない。(なお憲法三六条の「残虐な刑罰」の意義につき、昭和二二年(れ)第
三二三号、同二三年六月三〇日大法廷判決、集二巻七号七七七頁、昭和二二年(れ)
第一一九号、同二三年三月一二日大法廷判決、集二巻三号一九一頁各参照)
 同第二点について。
 所論は、判例違反を主張するけれども、所論の点については、原審において主張、
判断を経ていないのであるから、かかる事項について原判決の判例違反を主張する
ことは、適法な上告理由に当らない。(なお、本件第一審第四回公判調書に裁判長
の認印若しくは、裁判長の差支あるときの他の裁判官の一人の認印が存しないこと
所論のとおりである。従つて右公判調書は刑訴規則四六条の規定に違反するもので
あるというべきであるがその作成権限ある裁判所書記官補の署名押印があり、他方
第一審において所定の期間内(刑訴五一条参照)に被告人又は弁護人から同公判調
書の記載の正確性について異議の申立がなされた形跡はなく、又原審において、右
法令違反について控訴趣意として主張も為されておらず且つ原審の数回に及ぶ公判
においても被告人又は弁護人から所論の点について何らの主張もなされていないこ
と記録上明白である。かような場合には、右公判調書は前記認印を欠くの一事によ
つてこれを無効とすべきものではないと解するを相当とする)
 同第三点について。
 所論は憲法七六条三項違反をいうけれども、所謂被告人の本件犯行(単純逃走及
び殺人)の動機意図が原判決認定のとおりであることは、原判決の支持する第一審
判決挙示の証拠により、これを肯認することができるのであるから、原判決には所
論の如く証拠なくして事実を認定した違法は存しない。又原判決が所論の如く偏見
と予断とにより事実を認定したと認むべき資料も存しないのであるから所論違憲の
主張はその前提を欠くものであつて適法な上告理由に当らない。
 同第四点(上告趣意補充書の記載を含む)について。
 所論は採証の法則違背、事実誤認の主張を出でないものであつて適法な上告理由
に当らない。
 同第五点について。
 所論は原判決は事実を誤認し、再審の請求をすることができる場合に当る事由が
あるという主張であつて、適法な上告理由に当らない。
 同第六点について。
 所論は違憲をいうけれども、原裁判所が所論のような予断偏見を有し、良心に反
して裁判をしたと認むべき資料は存しないのであるから、所論違憲の主張はその前
提を欠き適法な上告理由に当らない。
 同第七点について。
 所論は量刑不当の主張であつて適法な上告理由に当らない。
 また記録を精査しても原判決には事実の誤認も、法令の違反もなく、刑の量定も
不当でなく、従つて原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。
 よつて刑訴四一四条、三九六条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決
する。
 検察官検事 宮崎三郎出席
  昭和三二年八月二三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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