弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件訴えをいずれも却下する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
処分行政庁が別紙処分目録記載1から4までのとおりした車両制限令12条に
基づく認定をいずれも取り消す。
第2事案の概要
1本件は,A株式会社(以下「A」という。),B株式会社(以下「B」とい
う。),C株式会社MF事業部(以下「C」という。)及びD株式会社(以下
「D」という。)が,処分行政庁に対し,東京都杉並区αに所在する運動場で
ある通称βの跡地に建築されているマンションの建築工事のために,道路法4
7条4項,車両制限令(昭和36年政令第265号)12条に基づき,別紙車
両目録1から4まで記載の各車両(以下,これらを併せて「本件各車両」とい
う。)につき,被告が管理する道路の通行に係る認定をそれぞれ申請したとこ
ろ,処分行政庁が,上記各会社に対し,別紙処分目録記載1から4までのとお
り,同条に基づく各認定(以下,これらを併せて「本件各認定」という。)を
したことから,当該道路周辺に居住する住民である原告らが,本件各認定が違
法である旨主張して,本件各認定の取消しを求める事案である。
2関係法令の定め
()道路法
ア1条
この法律は,道路網の整備を図るため,道路に関して,路線の指定及び
認定,管理,構造,保全,費用の負担区分等に関する事項を定め,もつて
交通の発達に寄与し,公共の福祉を増進することを目的とする。
イ47条
1項
(ア)
道路の構造を保全し,又は交通の危険を防止するため,道路との関係
において必要とされる車両(人が乗車し,又は貨物が積載されている場
合にあつてはその状態におけるものをいい,他の車両を牽引している場
合にあつては当該牽引されている車両を含む。以下本節及び第8章中同
じ。)の幅,重量,高さ,長さ及び最小回転半径の最高限度は,政令で
定める。
2項
(イ)
車両でその幅,重量,高さ,長さ又は最小回転半径が前項の政令で定
める最高限度をこえるものは,道路を通行させてはならない。
3項
(ウ)
道路管理者は,道路の構造を保全し,又は交通の危険を防止するため
必要があると認めるときは,トンネル,橋,高架の道路その他これらに
類する構造の道路について,車両でその重量又は高さが構造計算その他
の計算又は試験によつて安全であると認められる限度をこえるものの通
行を禁止し,又は制限することができる。
4項
(エ)
前3項に規定するもののほか,道路の構造を保全し,又は交通の危険
を防止するため,道路との関係において必要とされる車両についての制
限に関する基準は,政令で定める。
()車両制限令
ア1条
道路の構造を保全し,又は交通の危険を防止するため,道路との関係に
おいて必要とされる車両についての制限は,道路法(以下「法」とい
う。)に定めるもののほか,この政令の定めるところによる。
イ3条
1項
(ア)
法第47条第1項の車両の幅,重量,高さ,長さ及び最小回転半径の
最高限度は,次のとおりとする。
1幅2.5メートル
2重量次に掲げる値
イ総重量高速自動車国道又は道路管理者が道路の構造の保全及び
交通の危険の防止上支障がないと認めて指定した道路を通行する車
両にあつては25トン以下で車両の長さ及び軸距に応じて当該車両
の通行により道路に生ずる応力を勘案して国土交通省令で定める値,
その他の道路を通行する車両にあつては20トン
ロ軸重10トン
ハ隣り合う車軸に係る軸重の合計隣り合う車軸に係る軸距が1.
8メートル未満である場合にあつては18トン(隣り合う車軸に係
る軸距が1.3メートル以上であり,かつ,当該隣り合う車軸に係
る軸重がいずれも9.5トン以下である場合にあつては,19ト
ン),1.8メートル以上である場合にあつては20トン
ニ輪荷重5トン
3高さ道路管理者が道路の構造の保全及び交通の危険の防止上支障
がないと認めて指定した道路を通行する車両にあつては4.1メート
ル,その他の道路を通行する車両にあつては3.8メートル
4長さ12メートル
5最小回転半径車両の最外側のわだちについて12メートル
2項
(イ)
バン型のセミトレーラ連結車(自動車と前車軸を有しない被けん引車
との結合体であつて,被けん引車の一部が自動車に載せられ,かつ,被
けん引車及びその積載物の重量の相当の部分が自動車によつて支えられ
るものをいう。以下同じ。),タンク型のセミトレーラ連結車,幌枠型
のセミトレーラ連結車及びコンテナ又は自動車の運搬用のセミトレーラ
連結車並びにフルトレーラ連結車(自動車と一の被けん引車との結合体
であつて,被けん引車及びその積載物の重量が自動車によつて支えられ
ないものをいう。以下同じ。)で自動車及び被けん引車がバン型の車両,
タンク型の車両,幌枠型の車両又はコンテナ若しくは自動車の運搬用の
車両であるものの総重量の最高限度は,前項の規定にかかわらず,高速
自動車国道を通行するものにあつては36トン以下,その他の道路を通
行するものにあつては27トン以下で,車両の軸距に応じて当該車両の
通行により道路に生ずる応力を勘案して国土交通省令で定める値とする。
3項
(ウ)
高速自動車国道を通行するセミトレーラ連結車又はフルトレーラ連結
車で,その積載する貨物が被けん引車の車体の前方又は後方にはみ出し
ていないものの長さの最高限度は,第1項の規定にかかわらず,セミト
レーラ連結車にあつては16.5メートル,フルトレーラ連結車にあつ
ては18メートルとする。
ウ5条
1項
(ア)
市街地を形成している区域(以下「市街地区域」という。)内の道路
で,道路管理者が自動車の交通量がきわめて少ないと認めて指定したも
の又は一方通行とされているものを通行する車両の幅は,当該道路の車
道の幅員(歩道又は自転車歩行者道のいずれをも有しない道路で,その
路肩の幅員が明らかでないもの又はその路肩の幅員の合計が1メートル
未満(トンネル,橋又は高架の道路にあつては,0.5メートル未満)
のものにあつては,当該道路の路面の幅員から1メートル(トンネル,
橋又は高架の道路にあつては,0.5メートル)を減じたものとする。
以下同じ。)から0.5メートルを減じたものをこえないものでなけれ
ばならない。
2項
(イ)
市街地区域内の道路で前項に規定するもの以外のものを通行する車両
の幅は,当該道路の車道の幅員から0.5メートルを減じたものの2分
の1をこえないものでなければならない。
3項
(ウ)
市街地区域内の駅前,繁華街等にある歩行者の多い道路で道路管理者
が指定したものの歩道又は自転車歩行者道のいずれをも有しない区間を
道路管理者が指定した時間内に通行する車両についての前2項の規定の
適用については,第1項中「0.5メートルを減じたもの」とあるのは
「1メートルを減じたもの」と,第2項中「0.5メートル」とあるの
は「1.5メートル」とする。
エ6条
1項
(ア)
市街地区域外の道路(道路管理者が自動車の交通量がきわめて少ない
と認めて指定したものを除く。以下次項において同じ。)で,一方通行
とされているもの又はその道路におおむね300メートル以内の区間ご
とに待避所があるもの(道路管理者が自動車の交通量が多いため当該待
避所のみでは車両のすれ違いに支障があると認めて指定したものを除
く。)を通行する車両の幅は,当該道路の車道の幅員から0.5メート
ルを減じたものをこえないものでなければならない。
2項
(イ)
市街地区域外の道路で前項に規定するもの以外のものを通行する車両
の幅は,当該道路の車道の幅員の2分の1をこえないものでなければな
らない。
オ7条
1項
(ア)
道路構造令(昭和45年政令第320号)第23条第2項の基準(強
度に係るものに限る。)に適合している舗装がされていない都道府県道
又は市町村道で,これに代わるべき他の道路があるものについて,道路
管理者が路面の破損を防止するため必要と認められる車両の総重量,軸
重又は輪荷重の限度を定めたときは,当該道路を通行する車両の総重量,
軸重又は輪荷重は,当該限度をこえないものでなければならない。ただ
し,当該道路を通行しなければ目的地に到達することができない車両に
ついては,この限りでない。
2項
(イ)
融雪,冠水等のため支持力が著しく低下している道路について,道路
管理者が路盤又は路床の破損を防止するため必要と認められる車両の総
重量,軸重又は輪荷重の限度を定めたときは,当該道路を通行する車両
の総重量,軸重又は輪荷重は,当該限度をこえないものでなければなら
ない。
3項
(ウ)
前項の規定により道路管理者が車両の総重量,軸重又は輪荷重の限度
を定めようとするときは,国土交通省令で定める構造計算又は試験の方
法に基づいてしなければならない。
カ12条
幅,総重量,軸重又は輪荷重が第3条に規定する最高限度をこえず,か
つ,第5条から第7条までに規定する基準に適合しない車両で,当該車両
を通行させようとする者の申請により,道路管理者がその基準に適合しな
いことが車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得な
いと認定したものは,当該認定に係る事項については,第5条から第7条
までに規定する基準に適合するものとみなす。ただし,道路管理者が運転
経路又は運転時間の指定等道路の構造の保全又は交通の安全を図るため必
要な条件を附したときは,当該条件に従つて通行する場合に限る。
3前提事実
本件の前提となる事実は,次のとおりである。証拠及び弁論の全趣旨により
容易に認めることができる事実等は,その旨付記した。その余の事実は,当事
者間に争いがない。
()当事者等
ア原告らは,いずれも本件各認定に係る別紙図面記載の矢印で示された部
分の道路(以下「本件道路」という。)の沿道あるいは近隣に居住する者
である。(甲9から12まで,21,23,24,弁論の全趣旨)
イ本件道路は,被告が管理する区道である。(甲1から4まで,15,乙
1,5から7まで)
()車両制限令による制限について
本件道路は,市街地を形成している区域内の道路であって,車両制限令5
条1項所定の道路に該当しないものであるところ,その最も幅員が狭い部分
は4.75mであるから,そこから0.5mを減じたものの2分の1である
2.125mを超える幅の車両は,同令12条に基づく道路管理者の認定を
受けない限り,本件道路を通行できないこととなる(同令5条2項参照)。
そして,本件各車両は,同令3条所定の最高限度を超えていないが,その幅
がいずれも2.125mを超えるから,道路管理者である処分行政庁の同令
12条に基づく認定を受けない限り,本件道路を通行することができないも
のである。(甲1から4まで,15,乙1,5から7まで,弁論の全趣旨)
()本件各認定の経緯等
アAは,処分行政庁に対し,平成18年9月6日,別紙車両目録1記載の
各車両について,特殊車両通行認定申請書を提出して,車両制限令12条
に基づく申請をし,処分行政庁は,Aに対し,同月8日,本件道路につき,
別紙処分目録記載1のとおり,同条に基づく認定をした。(甲1,乙5)
イBは,処分行政庁に対し,平成18年12月5日,別紙車両目録2記載
の各車両について,特殊車両通行認定申請書を提出して,車両制限令12
条に基づく申請をし,処分行政庁は,Bに対し,同月8日,本件道路につ
き,別紙処分目録記載2のとおり,同条に基づく認定をした。(甲2,乙
1)
ウCは,処分行政庁に対し,平成18年12月6日,別紙車両目録3記載
の各車両について,特殊車両通行認定申請書を提出して,車両制限令12
条に基づく申請をし,処分行政庁は,Cに対し,同月12日,本件道路に
つき,別紙処分目録記載3のとおり,同条に基づく認定をした。(甲3,
乙6)
エDは,処分行政庁に対し,平成18年12月11日,別紙車両目録4記
載の各車両について,特殊車両通行認定申請書を提出して,車両制限令1
2条に基づく申請をし,処分行政庁は,Dに対し,同月18日,本件道路
につき,別紙処分目録記載4のとおり,同条に基づく認定をした。(甲4,
乙7)
オ処分行政庁は,本件各認定に当たり,要旨次のような条件をそれぞれ付
した。(甲5,乙1,5から7まで)
通行区間に通行上の交通規制がある場合は,あらかじめ所轄警察署の
(ア)
通行許可を得ること。
通行区間及び安全対策について,沿道住民及び通行者に対して事前に
(イ)
十分な広報を行い,安全管理責任者を明確にし,沿道要望者等に迅速な
対応をすること。
通勤,通学,買物等による交通混雑の時間帯は歩行者優先の観点から
(ウ)
通行は避けること。
歩行者及び対向車両等の通行の安全を確保するため,交通整理員を配
(エ)
置すること。
道路管理者の道路工事及び占用工事(水道,ガス,電気等)がある場
(オ)
合は,事前の土木事務所の指示及び占用工事者との通行時間帯の協議に
従い通行すること。また,沿道に建築工事等がある場合は事前に調整し
た上で通行すること。
道路管理者が道路の補強の必要を認めた場合は,認定を受けた者の費
(カ)
用負担で補強すること。
通行区間の点検及び清掃を日々行うこと。万一,道路(舗装構造物,
(キ)
道路付属物)を損傷した場合は,直ちに応急処置を行い,土木事務所に
連絡して,その指示に従って復旧し,その費用は,認定を受けた者の負
担とすること。
地下埋設等占用物件に損傷を与えた場合,至急占用物件の企業者に連
(ク)
絡し,その指示に従い,責任を持って対処すること。
認定期間中に車検証の期限が満了する車両については,更新後改めて
(ケ)
車検証の写しを提出することを要し,提出しない場合は認定車両の対象
とならないこと。
通行開始前に道路の補強又は道路上の工事等の有無を確認し,認定期
(コ)
間終了後に道路の損傷の有無を確認して,杉並土木事務所南土木維持係
に連絡し,指示があった場合にはその指示に従うこと。
()本件訴えの提起
原告らは,平成19年4月18日,本件各認定の取消しを求める本件訴え
を提起した。(当裁判所に顕著な事実)
4争点
()原告らは本件各認定の取消しを求める訴えの原告適格を有するか。
()本件各認定は適法なものか。
5当事者の主張
()争点()(原告らは本件各認定の取消しを求める訴えの原告適格を有する
か)について
(被告の主張)
本件各認定は,いずれも道路法47条4項に基づく車両制限令12条によ
りされたものであるが,これらの規定は,一般的公益の保護を超えて個々人
の個別的利益を保護する趣旨の規定ではないし,同法及び同令のその他の規
定の中にも個々人の個別的利益を保護する趣旨であることをうかがわせる規
定は存しない。
したがって,原告らはいずれも行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の
利益を有する者」には該当せず,このような原告らが提起した本件訴えは,
いずれも不適法である。
()争点()(本件各認定は適法なものか)について
(被告の主張)
ア道路法47条2項は,政令で定める最高限度を超える車両が道路を通行
することを禁止しているが,車両制限令3条がその最高限度を定めている
のであって,法律上禁止されているのは,この制限を超える車両の通行に
限られているのであり,政令で定める最高限度を超えない車両の通行は,
原則として自由である。
もっとも,一概に道路といっても,構造,幅員等その形状は様々であり,
車両の構造及び道路の形状いかんによっては,道路の構造を保全し,又は
交通の危険を防止するための特別な配慮が必要な場合も存するから,同法
47条4項は,道路との関係において通行できる車両に一定の基準を設け,
それを超える車両の通行を制限できるものとして,同令5条から7条まで
がその基準を定め,この基準に適合しない車両については,道路の構造の
保全及び交通の危険の防止に支障がないかを確認するために,同令12条
の認定を受けることを定めたのである。
したがって,同条における「車両の構造が特殊である」とは,前記趣旨
及びこれと文言を同じくする同法47条の2の解釈からすれば,車両の構
造上,寸法において分割不可能であるため,同令5条から7条までが規定
する基準を超える車両をいうものと解すべきである。
イ本件各車両は,車両の構造上,寸法を分離し,又は分割することが不可
能であり,「車両の構造が特殊」であることは明らかである。
そして,道路の構造の保全という観点からは,本件各車両が本件道路を
通行することで,道路の構造の保全に支障を来すおそれはなかった。
また,γ街道を除く本件道路は,住宅地内の道路であり,南北への通り
抜けができないから,もともと車両の通行は多くはなく,通勤通学の時間
帯を除けば,歩行者も少ないこと,γ街道も,車両の通行は頻繁であり,
大型車両の相互通行が困難な箇所が一部に存するものの,通勤通学の時間
帯を除けば,歩行者は少ないことから,通勤通学の時間帯の通行を制限し,
交通整理員を配置して交通整理を行えば,十分に交通の危険防止を図り得
る。
そこで,処分行政庁は,本件各車両について,相互通行を避けるために,
搬出路と搬入路を指定した上で,より通行の安全を確保するために,通勤,
通学,買物等による交通混雑の時間帯の通行を避け,交通整理員を配置す
るなどの条件を付した上で,車両の構造が特殊であるためやむを得ないと
認定して,本件各認定をしたものであり,何ら違法はない。
(原告らの主張)
ア車両制限令12条所定の特殊な車両といい得るには,車両の構造が特殊
である車両,あるいは輸送する貨物が特殊な車両で,道路法に定められた
幅,長さ,高さ及び総重量のいずれかの一般的制限値を超えたり,橋,高
架の道路,トンネル等で総重量及び高さのいずれかの制限値を超える車両
である必要がある。
そして,車両の構造が特殊である場合とは,車両の構造が特殊なため一
般的制限値のいずれかを超える車両で,トラッククレーン等自走式建設機
械,トレーラ連結車の特例5車種(バン型,タンク型,幌枠型,コンテナ
用,自動車の運搬用)のほか,あおり型,スタンション型,船底型の追加
3車種をいうとされている。
また,輸送する貨物が特殊である場合とは,貨物が特殊で分割不可能の
ため,一般的制限値のいずれかを超える建設機械,大型発電機,電車の車
体,電柱等の貨物をいうとされている。そして,ここにいう分割不可能と
は,分解に熟練を要し,通常の運搬,保管等で済ませることのできない程
度のものをいい,取り外し可能なものは取り外させ,運搬に適した車両を
選択させるものとされている。
以上の規制によれば,本件各車両は貨物が分割可能なものであり,特殊
な車両に該当しないことは明らかである。
すなわち,本件各車両のうち,まず,A及びBの申請に係る車両は,い
ずれもコンクリートミキサー車であり,前記のトラッククレーンやトレー
ラ等の特殊な車両に該当しないことは明らかであり,また,積載貨物であ
る生コンクリートが,その分割に熟練を要したり,通常の運搬保管ができ
ないものではないことは明らかである。
次に,Cの申請に係る車両はダンプカーであり,Dの申請に係る車両は
ダンプカー及びキャブオーバーであるが,これらが特殊な車両に該当しな
いことは明らかであり,また,その貨物も,土砂や人であるから,いずれ
も特殊で分割不可能なものではないことも明らかである。
イ本件各車両のうち,Cの申請に係るダンプカーの車幅は,車両制限令3
条所定の2.5mにわずか1cm足りないだけの2.49mであるにもか
かわらず,処分行政庁は安易に認定をしているから,本件各認定は実質的
に違法な処分である。
ウ本件各認定における認定期間は,いずれも1年間にわたるものであるが,
このように長期間にわたる認定では,道路法及び車両制限令が目的として
いる交通の危険の防止を図ることはできない。
すなわち,道路状況は日々変わっているのであり,特に本件のごとく道
路幅が狭く,歩行者の多い地域に大型車両が多数通行する場合には,交通
の危険が生じていないかについて常にチェックが必要であり,なるべく認
定期間を短くしてこの点について十分配慮すべきである。それにもかかわ
らず,認定期間を1年にもわたる長期にした場合,道路状況の変化に柔軟
に対処できず,交通の危険が発生しても適切に対応することができず,事
実上放置されてしまう事態となる。
このような認定期間の設定は,処分行政庁が法の趣旨を実現することを
放棄したに等しく,この点でも,本件各認定は違法である。
エ本件各認定においては,車両制限令12条ただし書に基づき,条件が付
されているが,その条件は抽象的に過ぎ,およそ交通の危険を防止するた
めに必要な条件といえるものではない。
すなわち,本件各認定に付された条件が記載されている「車両通行認定
条件書」3項は,具体的な時間帯や地域の指定をしておらず,それらの判
断を通行する車両にゆだねているのであって,交通の危険の防止のための
条件には全くなっていない。
したがって,法の趣旨に従った交通の危険の発生を防止するための具体
的条件を付していない本件各認定は,違法である。
オBの申請に対する認定は,同認定に係る車両が認定外の道路を通行せざ
るを得ないものとなっているから,同認定には瑕疵がある。
第3当裁判所の判断
1争点()(原告らは本件各認定の取消しを求める訴えの原告適格を有する
か)について
()行政事件訴訟法9条は取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項
にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,
当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は
必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政
法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させる
にとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべき
ものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法
律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され,又は必然的
に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有
するものというべきである。
そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有
無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみに
よることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮される
べき利益の内容及び性質を考慮すべきであり,この場合において,当該法令
の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係
法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を
考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場
合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び
程度をも勘案すべきものである(同条2項参照)。(以上につき,最高裁平
成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻1
0号2645頁参照)
()上記の見地に立って,原告らが本件各認定の取消しを求める訴えの原告適
格を有するか否かについて検討する。
ア道路法は,道路網の整備を図るため,道路に関して,路線の指定及び認
定,管理,構造,保全,費用の負担区分等に関する事項を定め,もって交
通の発達に寄与し,公共の福祉を増進することを目的とするとし(同法1
条),道路の構造を保全し,又は交通の危険を防止するため,道路との関
係において必要とされる車両の幅,重量,高さ,長さ及び最小回転半径の
最高限度は,政令で定め(同法47条1項),車両でその幅,重量,高さ,
長さ又は最小回転半径が前項の政令で定める最高限度を超えるものは,道
路を通行させてはならず(同条2項),道路管理者は,道路の構造を保全
し,又は交通の危険を防止するため必要があると認めるときは,トンネル,
橋,高架の道路その他これらに類する構造の道路について,車両でその重
量又は高さが構造計算その他の計算又は試験によって安全であると認めら
れる限度を超えるものの通行を禁止し,又は制限することができ(同条3
項),前3項に規定するもののほか,道路の構造を保全し,又は交通の危
険を防止するため,道路との関係において必要とされる車両についての制
限に関する基準は,政令で定めるものとしている(同条4項)。
イまた,車両制限令は,道路法47条1項に基づき,車両の幅,重量,高
さ,長さ及び最小回転半径の最高限度について規定し(同令3条),同法
47条4項に基づき,市街地区域内外の道路を通行する車両の幅の制限
(同令5条,6条),車両の総重量,軸重又は輪荷重の制限(同令7条)
について,それぞれ規定している。そして,同令12条は,幅,総重量,
軸重又は輪荷重が同令3条に規定する最高限度を超えず,かつ,同令5条
から7条までに規定する基準に適合しない車両で,当該車両を通行させよ
うとする者の申請により,道路管理者がその基準に適合しないことが車両
の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないと認定した
ものは,当該認定に係る事項については,同令5条から7条までに規定す
る基準に適合するものとみなすとしている。
ウこのように,道路法及び車両制限令は,道路の構造の保全及び交通の危
険の防止のため,車両の幅,重量,高さ,長さ及び最小回転半径の最高限
度等の種々の制限をしているところ,道路は,一般公衆の使用に供するこ
とを目的とする公共施設であり,何人も他人の共同の使用を妨げない限度
で,その用法に従い,自由にこれを使用することができるものであって,
一般公衆が道路の自由な使用によって享受する利益は,特段の事情がない
限り,道路が設置され一般公衆の使用に供されていることの結果として受
ける一般的な利益にすぎないこと,道路を安全かつ円滑に利用するという
利益は,当該道路の利用者の居住地や利用目的,利用頻度等によって消長
を来すものではなく,当該道路の利用者が共通して有する性質のものであ
ること,同法47条4項に基づく同令12条所定の道路管理者の認定の手
続において,当該道路の沿道あるいは近隣の居住者等の利益を考慮するこ
とが当然に予定されていることをうかがわせる規定を見いだすことはでき
ないことを併せ考慮すると,同法及び同令が上記制限を設けた趣旨及び目
的は,道路の構造を保全し,交通の危険を防止することによって,一般的
公益を保護することにあり,同認定において考慮されている利益は,一般
に道路を利用する者が共通して持つ一般的抽象的な利益であるというべき
である。
確かに,同認定が同法47条4項及び同令12条に違反してされた場合
には,道路の構造を保全することができず,又は交通の危険を防止するこ
とができないという事態が発生するおそれがあり,そのような場合には,
個々の道路利用者の道路を安全かつ円滑に利用するという利益が害される
おそれがあるが,前示の同法47条4項及び同令12条の趣旨及び目的並
びに考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮すると,個々の道路利用者
の当該利益の保護は,同法47条4項及び同令12条の規定による道路の
構造の保全及び交通の危険の防止という一般的公益の保護の結果として実
現されるべきものとされていると解するのが相当である。
エ以上のような道路法47条4項に基づく車両制限令12条所定の道路管
理者の認定に関する上記各規定の趣旨及び目的,これらの規定が同認定を
通して保護しようとしている利益の内容及び性質を考慮すれば,同法及び
同令は,ある道路の沿道あるいは近隣に居住する者が有する当該道路を安
全かつ円滑に利用する利益を,道路利用者として有する一般的抽象的な利
益にとどめず,個々人の個別的利益として保護する趣旨を含むものと解す
ることはできない。
オしたがって,本件道路の沿道あるいは近隣に居住している原告らは,本
件各認定の取消しを求めるにつき法律上保護された利益を有しているとい
うことはできず,本件各認定の取消しを求める訴えの原告適格を有してい
ないといわざるを得ない。
2以上のとおりであるから,原告らは本件訴えの原告適格を有しておらず,本
件訴えはいずれも不適法な訴えであるというべきである。
第4結論
よって,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えはいずれも不適
法であるから,これらをいずれも却下することとし,訴訟費用の負担につき,
行政事件訴訟法7条,民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとお
り判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官杉原則彦
裁判官松下貴彦
裁判官島田尚人
(別紙)
処分目録
1()申請者
A株式会社
()認定日
平成18年9月8日
()認定車両
別紙車両目録1記載のとおり
()運転開始日
平成18年9月16日
()運転終了日
平成19年9月15日
2()申請者
B株式会社
()認定日
平成18年12月8日
()認定車両
別紙車両目録2記載のとおり
()運転開始日
平成18年12月11日
()運転終了日
平成19年12月10日
3()申請者
C株式会社MF事業部
()認定日
平成18年12月12日
()認定車両
別紙車両目録3記載のとおり
()運転開始日
平成18年12月13日
()運転終了日
平成19年12月12日
4()申請者
D株式会社
()認定日
平成18年12月18日
()認定車両
別紙車両目録4記載のとおり
()運転開始日
平成18年12月18日
()運転終了日
平成19年12月17日

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