弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人朝比奈新の上告趣意について。
 被告人が税関の免許及び外国為替銀行の承認を受けないで貨物を輸入しようとし
たとされているA島附近は、北緯二九度以南、北緯二八度以北の南西諸島であつて、
本件犯行当時においては、関税法並びに外国為替及び外国貿易管理法の適用につい
て外国とみなされていたのであるが、関税法違反の罪に関しては、北緯二九度以南、
北緯二七度以北の南西諸島が外国とみなされていた当時、免許を受けないで日本内
地から同地域へ、若しくは同地域から日本内地へ貨物を密輸出し、若しくは密輸入
した所為について、その後右地域が外国とみなされなくなつても、これに対する刑
の廃止があつたものといえないことすでに当裁判所判例の趣旨としているところで
ある(昭和二七年(あ)四三四号同三〇年二月二三日大法廷判決、集九巻二号三四
四頁、昭和二八年(あ)三七一号同三〇年七月二〇日大法廷判決、集九巻九号一九
二二頁参照)。また、昭和二八年条約三三号「奄美郡島に関する日本国とアメリカ
合衆国との間の協定」、昭和二八年大蔵、通産省令四号「外国為替及び外国貿易管
理法における附属の島に関する命令の一部を改正する命令」によつて、北緯二九度
以南、北緯二七度以北の南西諸島は、外国為替及び外国貿易管理法の適用について
も昭和二八年一二月二五日以降本邦の地域として取り扱われることになつたのであ
るが、同地域が外国とみなされていた当時、外国為替銀行の承認を受けないで同地
域から日本内地へ貨物を密輸入した外国為替及び外国貿易管理法違反の罪について、
その後右地域が外国とみなされなくなつても、刑の廃止があつたものといえないこ
とは関税法違反に関する前記大法廷判決の説示する法理と異るところがないものと
解すべきである。論旨引用の大審院判例は本件に適切でなく所論判例違反の主張は
適法な上告理由とならない。
 よつて刑訴四〇八条、一八一条により後記裁判官の少数意見を除くその余の裁判
官一致の意見で主文のとおり判決する。
 裁判官真野毅、同小谷勝重、同藤田八郎、同河村又介、同谷村唯一郎、同小林俊
三、同垂水克己の少数意見は、本件において被告人が密輸入をしょうとしたとされ
ているA島附近は北緯二九度以南、北緯二八度以北の南西諸島であつて、本件犯行
当時においては、関税法並びに外国為替及び外国貿易管理法の適用については外国
とみなされていたのであるが、昭和二八年一二月二五日以降は、外国とみなされな
くなつた。かかる場合においては、右地域が外国とみなされていた間に、右地域よ
り密輸入をしようとした関税法違反並びに外国為替及び外国貿易管理法違反の罪に
ついては、犯罪後の法令により刑の廃止があつたものと解し、被告人に対しては刑
訴四一一条五号により原判決を破棄し、同法三三七条二号を適用して、被告人を免
訴すべきものであること昭和二七年(あ)四三四号同三〇年二月二三日大法廷判決、
昭和二八年(あ)三七一号同三〇年七月二〇日大法廷判決、昭和二八年(あ)一六
一一号同三一年五月二三日大法廷判決記載の真野、小谷、藤田、河村、谷村、小林、
垂水各裁判官の少数意見と同趣旨である。
 裁判官小林俊三は、この点に関し、昭和二七年(あ)四三四号同三〇年二月二三
日大法廷判決記載の同裁判官の意見と同趣旨の意見を附加する。
  昭和三一年七月一一日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己

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