弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人柴田健太郎の上告理由第一点について。
 所論は、原判決主文第二項のような記載のみでは被上告人の所有と確認された地
域の範囲が明確を欠き確定し得ないから、原判決は違法たるを免れないという。し
かし、本訴は、特定範囲の土地について所有権の確認を求める訴であるから、右範
囲が特定しさえすれば必ずしもその地番の表示を要するものではなく、原判決主文
第二項の記載および原判決添付別紙第一図面の記載を綜合すれば、所論土地の範囲
は優に特定するに足りるものであることが明らかである。なお、所論判示イ、ハ、
ヨ及びレの各点は、必ずしも所論ザボンの木を起点としてその所在を定められたも
のではなく、前記図面の記載によれば、右ザボンの木がなければ右各点を特定し得
ないわけではないこともまた窺いうるところである。従つて、所論は採用できない。
 同第二点について。
 所論は、原判決は本件不動産につき登記簿の記載と一致しない権利変動を認めた
点で、理由不備の違法あるを免れないというが、登記簿の記載は真実の権利関係の
変動と必ずしも一致しているものではないし、また、原判決は亡Dが亡Eに所論土
地を分与した時期を明治一八年と確定しているわけではなく、右Dの生前であるが
日時は確定できないと判示しているのであり、その時期を右判示する以上に明確に
すべき理由はみとめられない。それのみならず、原判決挙示の証拠関係によれば、
亡Dが亡Eに右土地を分与したとの事実認定は、首肯するに足りる。従つて、原判
決にはなんら所論違法はなく、論旨は採用できない。
 同第三点について。
 所論は、上告人先代亡Fにおいて本件土地を時効取得したとの上告人の主張を排
斥した原判決を違法と非難する。しかし、原判決の認定するところによれば、本件
土地は亡Fにおいても被上告人の前前主たる亡Eから管理を依頼されていたという
のであるから、本件土地が亡Eの所有に属するものであることは亡Fにおいて当然
に了知していたものと解するのが相当であり、原審もまたこのような判断の上に立
つて上告人の所論時効取得の抗弁を排斥したものであることをみとめるに難くない
から、論旨は採用できない。
 同第四点について。
 所論は、亡Eが亡Fらに管理を依頼した不動産の収益返還請求権の時効消滅の主
張に対する原判決の判断には、民法一六六条の解釈を誤つた違法があるという。し
かし、原判決の確定するところによれば、右収益は亡Gが朝鮮から内地に帰還して
右不動産等の財産の返還を請求したときにこれを計算して支払う約定であつたとい
うのであり、従つて、右収益返還債務は亡Gが朝鮮から内地に帰還して後に右管理
不動産の返還を請求した時をいわゆる不確定期限とするものであるから、右債務の
消滅時効は右期限の到来によつて進行を開始するものと解すべきであり、右と同趣
旨に出た原判決は正当である。論旨は、原判決を正解せず、独自の見解に立つて原
判決の判断を非難するに帰し、採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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