弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
        原決定を破棄する。
      本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 抗告代理人飯田正剛の抗告理由について
 1 記録によれば,本件の経緯の概要は,次のとおりである。
 原々審は,平成14年3月27日,共同相続人である抗告人及び相手方らを当事
者とする遺産の分割及び寄与分を定める申立てについての審判(以下「本件審判」
という。)をした。本件審判は同年4月2日に抗告人に告知されたが,本件審判の
当事者全員への告知が完了したのは同月8日であった。抗告人は,同月22日に本
件審判に対する即時抗告(以下「本件即時抗告」という。)をした。
 2 原審は,次のとおり判示して,本件即時抗告を却下した。
 (1)
本件即時抗告は,抗告人が本件審判の告知を受けた日から2週間の即時抗告期間を
経過した後にされたことが明らかであるから,不適法なものというべきである。共
同相続人に対し最後に審判の告知がされた日から全員について即時抗告期間が進行
する旨の抗告人の主張を採用することはできない。
 (2)
本件において,即時抗告期間の徒過が抗告人の責めに帰することのできない事由に
よるものであったと認めることはできないから,訴訟行為の追完が認められるべき
であるとする抗告人の主張にも理由がない。
 3 しかしながら,原審の判断のうち上記2(1)は是認することができるが,同(
2)は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1)
相続人は,遺産の分割の審判に対して即時抗告をすることができ,その期間は,相
続人が当該審判の告知を受けた日から2週間と定められている(家事審判法14条
,家事審判規則17条,111条)。相続人は,各自が単独で即時抗告をすること
ができるが,遺産の分割の審判は,相続人の全員について合一にのみ確定すべきも
のであるから,相続人の1人がした即時抗告の効果は,他の相続人にも及ぶもので
あり,相続人ごとに審判の告知を受けた日が異なるときは,そのうちの最も遅い日
から2週間が経過するまでの間は,当該審判は確定しないものと解される。そして
,遺産の分割の審判の合一確定のためには,当該審判の確定について上記のように
解すれば足りること,各相続人は,それぞれ告知を受けることによって当該審判の
内容を了知し,各自の即時抗告期間内において即時抗告をするかどうかの判断をす
ることができること等にかんがみると,【要旨1】各相続人への審判の告知の日が
異なる場合における遺産の分割の審判に対する即時抗告期間については,相続人ご
とに各自が審判の告知を受けた日から進行すると解するのが相当である。そうする
と,相続人は,自らが審判の告知を受けた日から2週間を経過したときは,もはや
即時抗告をすることは許されないというべきである。
 また,寄与分を定める審判に対する即時抗告(家事審判規則103条の5)につ
いても,上記遺産の分割の審判に対する即時抗告の場合と同様に解すべきである。
 以上と同旨の原審の前記2(1)の判断は,正当として是認することができる。こ
の点に関する論旨は採用することができない。
 (2)
相続人ごとに審判の告知の日が異なる場合における遺産の分割の審判等に対する即
時抗告期間については,上記のとおりに解すべきものであるから,本件即時抗告は
,即時抗告期間が経過した後にされたものであることは明らかである。
 しかしながら,この場合における即時抗告期間に関しては,先例となるべき当裁
判所の判例はなく,記録によれば,家庭裁判所における実務においては,告知を受
けた日のうち最も遅い日から全員について一律に進行すると解する見解及びこれに
基づく取扱いも相当広く行われており,本件においても,抗告人が本件審判の告知
の日がいつであるかを原々審に問い合わせた際に,担当の裁判所書記官は,平成1
4年4月8日に相続人全員に対する告知が完了した旨の上記の実務上の取扱いを前
提とする趣旨の回答をしていること,抗告人は,この回答に基づき,その日から2
週間以内である同月22日に本件即時抗告をしたことが認められる。【要旨2】本
件におけるこれらの事情を考慮すると,抗告人は,その責めに帰することのできな
い事由により即時抗告期間を遵守することができなかったものと認めるのが相当で
あり,本件即時抗告が即時抗告期間を徒過した不適法なものとみることはできない
というべきである(家事審判法7条,非訟事件手続法22条前段)。
 したがって,これと異なる原審の前記2(2)の判断には,裁判に影響を及ぼすこ
とが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいう限度で理由がある。
 4 以上によれば,その余の抗告理由について判断するまでもなく,原決定は破
棄を免れない。そして,本件即時抗告につき更に審理を尽くさせるため,本件を原
審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 横尾和子 裁判官 深澤武久 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉
 徳治 裁判官 島田仁郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛