弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人東城守一、同後藤昌次郎の上告趣意第一点について。
 所論は、国家公務員法九八条五項に対する原判断が憲法二八条に違反すると主張
する。しかしながら、原判決の是認する第一審判決の確定した事実によれば、本件
被告人らは、本件時間内職場集会への参加を拒否し続けるAをしてこれに参加させ
る目的のもとに、その背後からかかえて立ち上らせようとし、同人が立とうとしな
いと見るや、足を持つて強いて連れ出そうと共謀し、同人の右腕、左腕、両足をそ
れぞれ分担してかかえ持ち、同人の身体を仰向けにし、約二五米離れた地点まで運
び出して、同人に暴行を加え、その職務の執行を妨害したというのであつて、その
行為自体、社会通念上許容される限界を越えるものであり、違法性を阻却されるも
のでないことは明白である。してみれば、所論の国家公務員法九八条五項の規定が
憲法二八条に照らし違憲であるか否か、ひいて国家公務員たる本件B労働組合傘下
の組合員による右勤務時間内職場集会の禁止が違憲、違法であるか否かは、被告人
らの本件行為の違法性に関する判断に影響を及ぼすものではないというべく、結局
所論違憲の主張は、上告適法の理由とならない。
 同第二点のうち、判例違反をいう点は、所論引用の判例は本件に適切でないから、
その前提を欠き、その余の所論は事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、以上
すべて刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。
 弁護人井藤誉志雄、同木下元二の上告趣意第一点は、判例違反をいうが、所論引
用の各判例はいずれも事案を異にし本件に適切でないから、その前提を欠き、同第
二点は、単なる法令違反、同第三点は、事実誤認の各主張であつて、以上すべて刑
訴法四〇五条の上告理由に当らない。
 弁護人荒木宏、同山田一夫の上告趣意一部の一、二は、違憲(憲法二八条違反)
をいうが、その上告適法の理由とはならないものであることは、弁護人東城守一、
同後藤昌次郎の上告趣意第一点について説示したとおりであり、同一部の三および
同二部は、違憲をいうが、原判決およびその是認する第一審判決は被告人らの行為
が所論のように憲法秩序の破壊に対してこれを擁護、闘争する目的に出たものであ
るとか、いわゆる説得行為にあたるものと認定しているものではないから、所論は
原判示に副わない事実を前提とする違憲の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理
由に当らない。
 よつて、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で主文の
とおり決定する。
  昭和四〇年九月一六日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    岩   田       誠

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