弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人引地寅治郎及び同国分丸治の上告趣意について。
 原判決は、いわゆる覚書該当者たる被告人が、農業協同組合理事立候補の決意を
している者に対し、「同じ組合の為め競争は避けて貰いたい」旨申向けて、立候補
を断念するよう勧告し、又、農協合併案討議の為め開かれた農協臨時総会で、「組
合総会に諮らず、幹部等が勝手に合併予約書を取交したのは、不当だ、合併問題等
は時期尚早である。」という趣旨の発言をして、組合幹部等の組合一本化の運動を
批判し、それに反対したという二つの事実を認定し、これを以つて昭和二二年勅令
第一号第一五条第一項にいわゆる「政治上の活動」をした場合に当ると判断したの
であつて、所論のような雑談中の独語や単に農協組合員としての言動を「政治上の
活動」と断定したものではない。そして、原判決認定の右事実はその挙示する証拠
によつてこれを認めることができるし、農協の理事たる地位が公職に該当すること
は昭和二三年総理庁令農林省令第二号の規定によつて疑問の余地がない。 したが
つて、原判決が被告人の右所為を昭和二二年勅令第一号第一五条第一項違反として
処断したのは、もとより正当であつて、何等、当裁判所の判例に反するところがな
い。所論は、原判示に副わない主張であつて、理由のないものである。
 よつて、刑訴法第四〇八条に則り、主文のように判決する。
 右は裁判官全員一致の意見である。
  昭和二五年一一月二四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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