弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件再上告を棄却する。
         理    由
 弁護人池辺甚一郎上告趣意第一点について。
 論旨は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴応急措置法一七条に定める場合に
当らないので、再上告適法の理由ではない。
 同第二点について。
 憲法三七条二項は、裁判所がその必要を認めて訊問を許可した証人について規定
しているのであつて、この規定を根拠として裁判所は被告人側の申請にかかる証人
のすべてを取り調ぶべきものと解すべきでないことについては、当裁判所がしばし
ば判例として示すところである(昭和二三年(れ)第八八号同年六月二三日大法廷
判決、昭和二二年(れ)第二三〇号昭和二三年七月二九日大法廷判決)。 それゆ
え、所論証人の申請を許容しなかつた第二審の判決を是認した原判決は憲法の所論
規定に違反するものではない。
 同第三点について。
 わが憲法の規定によるも、被告人の自白と補強証拠と相待つて全体として犯罪構
成要件たる事実を認定し得られる場合においては、必ずしも被告人の自白の各部分
につき一々補強証拠を要するものと考うべきでないことについても当裁判所の判例
とするところである(昭和二三年(れ)第七七号昭和二四年五月一八日大法廷判決)。
されば、所論被害届も補強証拠とするに足りるものであつて、第二審判決は被告人
の自白を唯一の証拠としたものではないから、これを是認した原判決には所論のよ
うな違憲はない。
 同第四点について。
 憲法三七条を根拠として、第三者の供述を証拠とするにはその者を公判において
証人として訊問すべく、公判廷外における聴取書又は供述に代る書面をもつて証人
に代えることは絶体に許されないと断定すべきではなく、裁判所は被告人側から証
人訊問の請求がない場合においても義務として現実に訊問の機会を被告人に与えな
ければこれらの書類を証拠とすることができないものと解すべきでないことについ
ても当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一六七号同年七月一
九日大法廷判決)。論旨は、右と異なる見解の下に原判決を非難するものであつて
理由がない。
 同第五点について。
 刑訴応急措置法一三条二項が事実審査を第二審限りとし旧刑訴四一二条乃至四一
四条の規定を適用しないこととしたことが憲法に違反するものではないことについ
ては当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)第四三号昭和二三年三
月一〇日大法廷判決)。それゆえ、論旨は採用することができない。
 よつて、本件再上告を理由ないものと認め、旧刑訴四四六条に従い主文のとおり
判決する。
 以上は、裁判官全員の一致した意見である。
 検察官浜田龍信関与
  昭和二五年一一月一四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

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