弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告人A1外二名の代理人大野忠雄の上告理由第一、上告人A2外一名の代理人
芝権四郎の上告理由第一、同代理人薬師寺志光の上告理由第一、二点について。
 不動産の譲受人がいまだその本登記をなさない前に、その不動産につき譲渡人を
債務者として処分禁止の仮処分がなされたときは、他の譲受人がその後に所有権取
得登記をしても、これを以て仮処分債権者に対抗することをえないものと解するの
が相当である。蓋し、右の如き仮処分の目的は、被保全権利の将来の執行が、債務
者の行為により、不能又は著しく困難となる危険を防止するにあるのであるから、
仮処分後の譲渡等の処分行為のみならず、仮処分等の処分行為につき、対抗要件を
具備するための登記もまた不動産物権の変動を完了する行為として、処分行為と同
一視し、処分禁止の仮処分の禁ずるところとしなければ、右仮処分の目的は達せら
れないからである。本件において、係争の土地は、もと上告人A1外二名の先代D
の所有であつたところ、同人は昭和一九年一月これを被上告人先代Eに売り渡し、
その家督相続をした被上告人は昭和二二年五月Dを相手方として右土地の所有権移
転登記手続請求の訴を提起し、なおその請求権を保全するため、同人を債務者とし
右土地につき売買その他一切の処分を禁止する旨の仮処分命令をえて当時これを執
行したこと、一方上告人A2外一名は、同一土地につき、Dから昭和一七年八月の
売買により所有権を取得した旨右仮処分登記の後たる昭和二四年三月所有権取得登
記をなしたことは、いずれも原審の確定したところであるから、上告人A2等のな
した所有権取得登記は、これを以て被上告人に対抗することができないものといわ
なければならない。而して被上告人のDに対する前記仮処分の本案訴訟はすでに被
上告人の勝訴に確定したこともまた原審の確定したところであり被上告人は本件不
動産につき自ら所有権取得登記をなしうるのであるから、被上告人は上告人A2外
一名に対しては、前記所有権取得登記の抹消を求めうるものというべきである。よ
つてこれと趣旨を同じうする原判決の判断は正当であり、所論は採用することをえ
ない。その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法
律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又
同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    池   田       克

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