弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
原判決中被控訴人らに関する部分を取消す。
被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
       事   実
第一 当事者が求める裁判
一 控訴人ら
 主文と同旨の判決
二 被控訴人ら
 「本件控訴はいずれもこれを棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」と
の判決
第二 当事者の主張
 当事者双方の主張は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決の事実摘示のと
おりである(但し、原判決の原告目録記載の原告番号九九番原告a、同一四〇番原
告bに関する部分を除く。)から、これを引用する。
一 原判決の、1 五頁一五行目の「旭川営林局長」の次に「(昭和五三年七月五
日法律第八七号農林省設置法の一部を改正する法律の施行前。昭和五四年一月一
日、右の改正法施行後は、旭川営林支局長。)」を、六頁二行目の「旭川営林局」
の次に「(前記改正法施行前。昭和五四年一月一日、前記改正法施行後は旭川営林
支局。)」を加入し、2 一八頁一一行目の「同四六年三月まで」の次に「に」を
加入し、3 一八頁末行の「手当てをし」を「手当を支給することとし」と改め、
4 二二頁一四行目の「労働権」を「労働基本権」と改め、5 三四頁四行目の
「権利保護から」を削除し、6 三四頁一三行目の「実施される」の次に「ように
できる」を加入し、7 三五頁一〇行目の「などをそのまま」を「一項などを文理
どおり」と改め、8 三八頁末行の「3」を「(3)」と改め、9 三九頁三行目
の「4」を「(4)」と改め、10 四四頁五行目の「については、それを」を
「は、」と改め、11 四五頁六行目及び一一行目の「一七条」の次にそれぞれ
「一項」を加入し、12 四七頁四行目及び四八頁七行目の「労働権」をいずれも
「労働基本権」と改める。
二 被控訴人ら
1 本件ストライキ及びその後昭和五一年一二月一六日までの間に全林野旭川地本
が実施したストライキの回数、規模、参加人員等の概要と右のストライキの指導、
参加を理由として戒告以上の懲戒処分を受けた者の人数は、「ストライキ及び被処
分者数表」に記載のとおりである。
2 本件ストライキは、昭和四七年以降に実施されたストライキと比較すると、そ
の回数、時間、参加人員等その規模が極く小さく、その目的は賃上げ、処遇改善と
いう純経済的なものであり、かつ本件ストライキが国民生活に及ぼした影響は皆無
であるにかかわらず、本件ストライキ参加者は、その全員が戒告以上の懲戒処分を
受けたのに対して、昭和四八年二月一〇日以降に実施されたストライキに参加した
一般組合員に対しては戒告以上の懲戒処分はなされていないことからすれば、本件
ストライキに参加したことを理由として、被控訴人らに対してなされた本件懲戒処
分は、懲戒権の裁量の範囲を逸脱し、これを濫用したものというべきであつて、取
消されるべきものである。
3 被控訴人らのうち停職処分を受けた者に交付された処分説明書の記載による
と、右の被控訴人らの本件ストライキの指導責任のみを処分事由としており、右の
被控訴人らの過去の懲戒処分歴は処分事由とされていないのであるから、その懲戒
処分歴を考慮してなされた右の被控訴人らに対する本件懲戒処分は違法である。
三 控訴人ら
1 被控訴人らの右二1の主張事実及び同2の主張事実のうち昭和四八年二月一〇
日から昭和五一年一二月一六日までの間に実施されたストライキに参加した一般組
合員に対しては、戒告以上の懲戒処分がなされなかつたことはいずれも認める。
2 被控訴人らに対する本件各懲戒処分が懲戒権の濫用であるとの点は否認する。
3 公務員に懲戒処分事由に該当する行為があつた場合に、当該公務員に対して実
際に懲戒権を発動するかどうか、発動するとした場合にいかなる種類の処分を選択
するかは、懲戒権者が当該行為の原因、動機、態様、結果、影響等諸般の事情を総
合勘案して、その裁量によつて決定すべきものであるから、同一態様の非違行為で
あつても、その行われた時期によつて懲戒処分の対象となり、あるいは対象となら
ないということはあり得るのであり、懲戒処分は、その処分がなされた時点におい
て、社会通念上著しく妥当性を欠くというものでない限り、懲戒権者の裁量権の範
囲内のものとして、その正当性が認められるべきものである。全林野旭川地本が昭
和四四年一一月一三日から昭和四七年五月二五日までの間に行つた本件ストライキ
三回を含む合計一〇回のストライキについては、その参加者の全員を戒告以上の懲
戒処分に付したのであるが、その後に行われたストライキについては、昭和四八年
四月二七日、同年の春闘の収拾にあたり、政府と春闘共闘委との間に、七項目の合
意が行われたこと、同年九月三日、公務員制度審議会から政府に対して答申が行わ
れたこと、同年一一月一六日、ILOの結社の自由委員会が同理事会に対し懲戒処
分に関する報告を行つたこと等に基づいて、政府及び組合側双方の間において労使
関係正常化について特別の努力が払われていたという事情が考慮されて、単純参加
組合員に対する戒告以上の懲戒処分が行われなかつたものである。右のような事情
は、本件各懲戒処分当時には存在しなかつたものであるし、懲戒権者としても考慮
し得ない事情であつたのであるから、本件各懲戒処分の正当性に何らの影響を及ぼ
すものではない。
4 本件各懲戒処分のうちでは重い処分である停職処分を受けた被控訴人らは、本
件ストライキ当時、全林野旭川地本の役員として、本件ストライキを積極的に企
画、指導するとともに、控訴人らの再三に亘る警告等を無視して本件ストライキを
実施させたものである。そして、右の被控訴人らは、過去において多くの懲戒処分
歴を有しているにもかかわらず重ねて本件の非違行為を行つたもので、この点は、
懲戒権者である控訴人が右の被控訴人について懲戒処分を行うについて考慮すべき
事情となつたものである。
第三 証拠関係(省略)
       理   由
一 原判決の事実摘示の第二の一被控訴人らの主張の1(被控訴人らの地位)、2
(懲戒処分の存在)の各事実のうち、被控訴人目録記載の番号八番、一一ないし一
三番、一五ないし二〇番、一〇六番及び一一八番の各被控訴人が全林野の組合員で
あるとの点を除くその余の事実、同三控訴人らの主張の1(二)本件争議行為、2
(被控訴人らに対する処分の理由)の各事実は、いずれも当事者間に争いがなく、
弁論の全趣旨によると、被控訴人目録記載の前示番号の各被控訴人が全林野の組合
員であることが認められる。
二 公労法一七条一項が、その文理どおり一率全面的に争議行為を禁止するものと
して、憲法二八条に違反するものでないことは、現在においては最高裁判所の確立
された判例(昭和四四年(あ)第二五七一号、同五二年五月四日大法廷判決・刑集
三一巻三号一八二頁、昭和五一年(行ツ)第七号、同五三年七月一八日第三小法廷
判決・民集三二巻五号一〇三〇頁、昭和五三年(オ)第八二八号、同五六年四月九
日第一小法廷判決・民集三五巻三号四七七頁)であるから、当裁判所は、右判例に
従うのが相当であると考える。
三 してみると、本件ストライキは、いずれも公労法一七条一項に違反する違法な
ものであり、原判決添付の処分等一覧表の処分の事由、職場集会実施場所、職場集
会および職場に復帰するまでの職務放き時間の各欄に記載の各被控訴人の行為は、
それぞれ同表の違反事項欄記載の法条に違反し、適用条項欄記載の法条に該当する
ということができる。
四1 全林野旭川地本が実施した本件ストライキ以降昭和五一年一二月一六日まで
のストライキの時期、回数、規模、参加分会数、参加人員の概要及び右ストライキ
の指導、参加を理由として、戒告以上の懲戒処分を受けた者の人数が別紙「ストラ
イキ及び被処分者数表」に記載のとおりであること、右のストライキのうち昭和四
八年二月一〇日から昭和五一年一二月一六日までの間に実施されたストライキに参
加した一般組合員に対しては、戒告以上の懲戒処分がなされなかつたことは、当事
者間に争いがない。
2 成立に争いのない乙第七五ないし第八一号証及び弁論の全趣旨によると、全林
野が実施した昭和四四年一一月一三日から昭和四七年五月二五日までの間のストラ
イキに参加した者は、本件ストライキの参加者を含め、その全員が戒告以上の懲戒
処分に付されたが、その後昭和五一年一二月一六日までの間に実施したストライキ
に参加した一般組合員(単純参加者)は、戒告以上の懲戒処分には付されず、訓
告、厳重注意等の処分を受けたに過ぎないこと、右のストライキの単純参加者に対
する処分の程度の変化は、昭和四八年四月二七日、同年の春闘の収拾にあたり、政
府と春闘共闘委員会との間に、労働基本権問題については、第三次公務員制度審議
会の答申が出された場合は、これを尊重する、政府は労使関係の正常化に努力する
等の趣旨の項目を含む七項目の合意がなされたこと、同年九月三日、公務員制度審
議会が政府に対して答申を行つたこと、同年一一月一六日、ILOの結社の自由委
員会が、全逓等の官公労組、総評が出していた提訴について、同理事会に対し、ス
ト参加者に報酬上の恒久的不利益や経歴にまで差別のつく制裁は避けるべきであ
る、ストの起るたびに処分すべきであるとは考えない等の趣旨を含む報告を行つた
こと等に基づいて政府、組合側双方の間に労使関係正常化について特別の努力が払
われていたという事情が考慮されたことに因るものであり、本件懲戒処分が行われ
た当時には、右のような事情は存しなかつたことが認められる。したがつて、全林
野旭川地本が実施した昭和四八年二月一〇日から昭和五一年一二月一六日までの間
のストライキの単純参加者が、戒告以上の懲戒処分を受けなかつたということか
ら、本件ストライキの単純参加者である被控訴人らに対し戒告以上の懲戒処分をな
したことが、懲戒権の濫用であるということはできない。そして、他に、被控訴人
らに対してなされた本件各懲戒処分が、社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者に
委ねられた裁量権の範囲を超えこれを濫用したものというべき事実を認めるに足り
る証拠はない。
五 国家公務員法(以下「国公法」という。)八二条によつて職員に対し懲戒処分
をする場合に、当該職員の過去の懲戒処分歴は、懲戒処分を具体的に決定するにつ
いて斟酌することができる事情に含まれるが、国公法八九条一項によつて説明書に
記載すべきものとされている「処分の事由」には当らないと解するのが相当である
から、停職処分を受けた被控訴人らに交付された処分説明書に、右の被控訴人らの
過去の懲戒処分歴を考慮した旨の記載がなかつたとしても、そのために右の被控訴
人らに対する本件各懲戒処分が違法となることはないというべきである。
六 結論
 右のとおりで、各被控訴人に対してなされた本件各懲戒処分には、被控訴人らが
主張する違法理由は存しないから、その取消を求める被控訴人らの請求はいずれも
理由がないものといわなければならない。
 よつて、被控訴人らの請求をいずれも認容した原判決は不当であるから、民事訴
訟法三八六条により原判決中の被控訴人らに関する部分を取消して、被控訴人らの
請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について同法九六条、八九条、
九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 石崎政男 寺井忠 八田秀夫)
 ストライキ及び被処分者数表
<04252-001>

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