弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人岡本拓、同田浦清及び上告指定代理人香川保一、同近藤浩武、同長島
俊雄、同鎌田泰輝、同渡辺丸夫、同曽我謙慎、同春日原秀隆、同杉本力、同川畑秋
良、同藤原晃の上告理由について。
 論旨は、本件分限免職処分を違法であるとした原審の判断は、条件附採用期間中
の職員の身分保障の本質を理解せず、そのため、国家公務員法(以下「法」という。)
八一条一項及び人事院規則一一―四(以下「規則」という。)九条の解釈適用を誤
つたものである、というのである。
 法五九条一項は、一般職の国家公務員である職員(以下職員という。)の採用に
つき、これを条件附のものとし、その職員が一定期間勤務し、その間その職務を良
好な成績で遂行したときに、正式のものとなる旨規定し、いわゆる条件附採用制度
をとることとしているが、この制度の趣旨、目的は、職員の採用にあたり行われる
競争試験又は選考(以下試験等という。)の方法(法三六条一項参照)が、なお、
職務を遂行する能力を完全に実証するとはいい難いことにかんがみ、試験等により
いつたん採用された職員の中に適格性を欠く者があるときは、その排除を容易にし、
もつて、職員の採用を能力の実証に基づいて行うとの成績主義の原則(法三三条一
項参照)を貫徹しようとするにあると解される。したがつて、条件附採用期間中の
職員は、いまだ正式採用に至る過程にあるものということができるのであつて、右
の職員の分限につき、正式採用の職員の分限に関する法の規定の適用がないことと
されているのも(法八一条一項)、このことを示すものにほかならない。しかし、条
件附採用期間中の職員といえども、すでに試験等という過程を経て、現に給与を受
領し、正式採用されることに対する期待を有するものであるから、右の職員の分限
に関し、一定の基準を設けても、その基準が正式採用の職員の場合と比べて緩和さ
れたものであるかぎり、前述の条件附採用制度の趣旨、目的にもとるものとはいえ
ない。法八一条二項は、条件附採用期間中の職員の分限につき、人事院規則で必要
な事項を定めうる旨規定しているが、これは、人事院が右の職員の勤務の実態等を
勘案して、右の基準を設けることを許容しているものであり、規則九条の規定は、
その趣旨で設けられたものと解されるのである。それゆえ、右の職員は、同条所定
の事由に該当しないかぎり分限されないという保障を受けるものといわなくてはな
らない。
 そして、条件附採用制度の趣旨、目的及び規則九条所定の分限事由が一定の評価
を内容とするものであることを考えると、条件附採用期間中の職員に対する分限処
分については、任命権者に相応の裁量権が認められることはいうまでもないが、も
とより、それは純然たる自由裁量ではなく、その判断が合理性をもつものとして許
容される限度をこえた不当なものであるときは、裁量権の行使を誤つた違法なもの
というべきであり、右の分限処分がこのような違法性を有するかどうかについては、
裁判所の審査に服すべきものである。この点に関し、所論は、規則九条の規定中の
「勤務実績の不良なこと、心身に故障があることその他の事実に基いてその官職に
引き続き任用しておくことが適当でないと認める場合」について、前段の事実の存
否に関してはともかく、後段の継続任用の適否に関する判断については、任命権者
の純然たる自由裁量に委ねられており、司法審査の対象とはならない、と主張する。
確かに、右の継続任用の適否に関する判断は、右の事実の存否に関する判断に比べ
てより多くの評価的要素を含むものであるから、任命権者に比較的巾広い裁量が認
められることは明らかであるが、そのような見地に立つてもなお、その判断が合理
性をもつものとして許容される限度をこえた不当なものであるときは、違法となり、
その点につき裁判所の審査が及ぶのは、当然である。したがつて、右所論は、採用
することができない。
 以上に基いて本件をみるに、所論は、本件分限免職処分を支持すべき事由として、
原審の認定する、被上告人の(1)G工務店係員に対する応接態度及びその際におけ
る上司に対する言動並びに(2)外来者に対する平素の応接態度を指摘し、右事実が
存する以上、右処分は違法とはいえない、という。なるほど、被上告人の右言動態
度は、職員として相当に戒められるべきものであるが、原審の判示するところによ
ると、右(1)の事実は、当時の事務繁忙に合わせて、被上告人の若気と事務不慣れ
により激発したものであつて、被上告人は、その直後、非を悟り上司に謝罪してお
り、その後同様の誤りを犯しておらず、右事実にもかかわらずその職場の事務は支
障なく続けられていた、というのであるし、右(2)の点も、被上告人が無口、無愛
想ととられる一面はあつたというものの普段の仕事振りは普通で、上司から格別の
注意も受けていないし、苦情等も持ち込まれていない、というのであるから、被上
告人に対し規則九条所定の事由があるものとしてした本件分限免職処分における上
告人の判断は、合理性をもつものとして許容される限度をこえた不当なものと解せ
られないわけではない。
 したがつて、本件分限免職処分が違法であるとした原審の判断は、正当として是
認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    坂   本   吉   勝
            裁判官    江 里 口   清   雄

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