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平成26年7月15日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成26年(ワ)第995号著作権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成26年5月15日
判決
原告有限会社GSST
被告尼崎市
同訴訟代理人弁護士上谷佳宏
同木下卓男
同訴訟復代理人弁護士村尾卓哉
同指定代理人中村直之
同田中雄造
同大黒智耶
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,別紙コンピュータ目録記載1ないし6の各コンピュータから,別紙
コンピュータ業務支援システム目録記載のシステムを削除せよ。
2被告は,原告に対し,2357万3824円を支払え。
3被告は,原告に対し,平成23年8月24日から,別紙コンピュータ目録記
載1ないし6の各コンピュータから別紙コンピュータ業務支援システム目録記
載のシステムの削除済みまで,各コンピュータ1台につきそれぞれ1か月6万
4166円の割合による金員を支払え。
(訴訟費用の負担及び仮執行宣言の申立て)
第2事案の概要等
1事案の概要
本件は,原告が,原告を著作権者とする別紙コンピュータ業務支援システム
目録記載の「徴収金事務管理支援システム」という名称のプログラム(以下「本
件プログラム」という。)につき,被告との間で,その使用契約を締結して被
告の運営する複数の高校のコンピュータにこれをインストールしたが,被告の
債務不履行(使用料の不払い)により同契約は解除され終了したと主張し,①
著作権法112条1項に基づく本件プログラムの使用差止め(コンピュータか
らの本件プログラムの削除),②本件プログラムを導入した平成19年4月か
ら使用契約解除までの間の,主位的にプログラム使用契約に基づく使用料,予
備的に不法行為に基づく損害賠償として使用料相当額の損害金の支払,③使用
契約解除後から本件プログラムの削除までの間の不法行為に基づく損害賠償と
して使用料相当額の損害金の支払をそれぞれ求めた事案であり,被告は,原告
の主張する契約を否認し,それとは異なる使用許諾を含む契約を締結したと主
張して争っている。
2争いのない事実等(証拠の記載のない事実は当事者間に争いがない。)
(1)当事者
原告は,自治体向けのコンピュータ・ソフトウェアの開発・販売等を行う
会社である。
被告は,地方公共団体であり,尼崎市立尼崎高等学校(以下「尼崎高校」
という。),同市立尼崎産業高等学校(以下「尼崎産業高校」という。),
同市立尼崎工業高等学校,同市立尼崎東高等学校(以下「尼崎東高校」とい
う。),同市立城内高等学校(これらの5校を併せて「市立5校」という。)
及び同市立尼崎双星高等学校(以下「双星高校」という。)の運営主体であ
る。
(2)本件プログラム
本件プログラムは,原告ないしその代表者が作成した高等学校における生
徒情報管理,徴収金情報管理等を行い,ファームバンキングソフトウェアと
連携して金融機関への口座振替依頼処理管理等を行うことのできるマイクロ
ソフト・アクセスを利用して構築されたプログラム著作物であり,原告がそ
の著作権者である。(甲16)
(3)市立5校への本件プログラムの導入
原告は,平成18年末頃から,市立5校の各学校事務長との間で,本件プ
ログラムを市立5校に導入するための協議を行い,平成19年4月,市立5
校の別紙コンピュータ目録記載1ないし5の各コンピュータ(以下,同目録
1ないし6記載の6台の各コンピュータをそれぞれ番号に従い「本件コンピ
ュータ1」などといい,6台全部を併せて「本件各コンピュータ」という。)
に本件プログラムをインストールした。
(4)双星高校への本件プログラムの導入
平成23年4月1日に,尼崎産業高校と尼崎東高校が統合されて,双星高
校が新設された。原告は,被告の要請により,同月7日,本件コンピュータ
6に本件プログラムをインストールした。
(5)被告から原告への支払
被告は,原告に対し,平成18年末から同19年7月にかけて,本件プロ
グラム導入等に関し,合計136万6000円(消費税を含む。)を支払っ
た(支払名目については争いがある。)。
第3争点及び争点についての当事者の主張
1争点
原告と被告との間で,本件各コンピュータにおける本件プログラムの使用に
つきどのような合意がされたか,被告の本件プログラムの使用につき原告の使
用許諾があるか
2原告の主張
(1)契約の締結
原告は,被告との間で,次のとおりの内容の本件プログラムの使用契約(以
下,ア及びイの契約を併せて「本件契約」という。)を締結した。
ア(ア)契約時期平成19年4月頃
(イ)対象本件コンピュータ1ないし5
(ウ)使用期間5年間
(エ)使用料導入するコンピュータ1台当たり基本価格385万円
(カスタマイズ料を含む。)
(オ)維持管理費2年目から月額4万円(コンピュータ1台当たり)
イ(ア)契約時期平成23年4月頃
(イ)対象本件コンピュータ6
(ウ)使用期間ア(ウ)と同じ
(エ)使用料ア(エ)と同じ
(オ)維持管理費ア(オ)と同じ本件プログラムの使用契約を締結した。
(2)本件契約の解除
原告は,本件契約に基づき上記のとおり本件各コンピュータに本件プログ
ラムをインストールし,平成19年4月から同年秋にかけて,市立5校にお
けるデータの整備,本件プログラムに関する機能追加,削除,修正等を行い,
同年秋から本件プログラムは稼働を開始した。原告は,平成23年8月13
日到達の内容証明郵便により,被告に対し,同月23日までに本件契約に基
づく本件各コンピュータでの本件プログラムの使用料として1353万40
00円を支払うよう催告するとともに,支払がなければ本件契約を解除する
旨の意思表示をしたが,支払のないまま同月23日を経過した。
したがって,被告は,本件プログラムを使用する権原を有しない。
(3)被告の主張に対する反論
原告は,被告教育委員会事務局学校教育部学務課の課長補佐であったP1
に対し,本件プログラムを含む各種システムにつき1件300万円を基準に
紹介をしてきた。原告は,導入当初,開発の初期費用として,1校あたり3
5万円程度の支払を求めたが減額を要求され,25万円程度で了承した。原
告は,本件契約の使用料の残額については,被告において予算化されれば支
払われるものと考えて取り組んできた。原告が,平成19年度の不用額での
支払を求めたところ,予算が出せる3校から7万円ずつ程度,P1から指示
された名目で支払を受け,さらに,画面の表現の修正,帳票の変更,新規作
成等の作業につき「Version2」という名目で各5万円(合計25万
円)の追加支払を受けたが,平成20年度の支払として1台あたり20万円
の請求をしたところ,被告側は請求書を受け取らなかった。
本件プログラムは,平成19年8月ころに仕様が確定し,それ以降,画面
表現を修正する,操作内容を記述するなどの変更は行ったが,何らのバグも
発生していない。正式稼働が遅れたのは,被告の事務担当者がすべきデータ
整備が遅れたことが理由である。原告はシステムの稼働までに11か月にわ
たってシステムの膨大な機能追加・改造・修正,カスタマイズを行っており,
買い切りソフトではない。
被告はコンピュータ1台につき30万円以下の価格で,無期限の使用許諾
を得た旨主張するが,本件契約の当時,事務長の専決できる金額が30万円
以下である旨を被告が説明した事実はなく,インストール費用にもならない
額でそのような許諾をするはずはない。P1自身,平成24年3月限りで使
用停止をする考えを示し,本件プログラムをいつまでも使い続けることがで
きるとは考えていなかった。
2被告の主張
(1)原告の主張に対する認否等
前記1(1)の契約の成立は否認する。
原告は,被告に対し,本件プログラムのプレゼンに際し,金額を提示して
いない。被告担当者は,被告高等学校における年度途中の備品購入について
は,事務長の専決できる金額上限である30万円以下で購入する旨原告代表
者に伝えていたが,原告代表者は,導入に際し,具体的な金額を提示し交渉
するということはなかった。被告が原告の主張するような額を支出するため
には,契約書の作成が必要であるところ,本件において作成されていないと
いうことは,そのような合意がなかったことの証左である。
(2)被告主張契約
被告は,原告との間で,本件プログラムの導入により,主としてコンピュ
ータによる授業料等の徴収管理事務のための動作環境の構築を目的として,
請負,売買等の複合的な性格を有する以下の契約を締結した(以下「被告主
張契約」という。)
ア平成18年10月頃,原告と被告との間で,口頭で,次の内容の契約が
成立した。
(ア)契約内容
原告は,平成19年9月頃までに,本件プログラムを本件コンピュー
タ1ないし5にインストールして,コンピュータによる授業料等の徴収
管理事務のための動作環境を構築する作業(以下「本件作業」という。)
を行うとともに,被告に対し,本件プログラムの使用を許諾する。
(イ)本件作業の代金及び本件プログラムの使用料
コンピュータ1台につき30万円以下で,原告と被告とが協議して定
める額とする。
(ウ)使用許諾期間
被告が本件プログラムの使用を開始した日からその使用を停止する日
までとする。
イ平成23年4月1日,尼崎東高校と尼崎産業高校とが統合されて双星高
校が新設されたことから,原告と被告との間で,上記アの契約と同内容で,
双星高校に設置されるコンピュータ(本件コンピュータ6)に本件プログ
ラムを追加してインストールすること等を内容とする契約(以下「被告主
張追加契約」という。)を口頭により締結した。
ウ被告は,本件プログラムの正式稼働を平成19年9月と予定していたが,
原告における正式テストを経ていなかったためかシステム不具合が多かっ
たため一旦延期し,機能追加及び修正を行い,結局平成20年2月ころに
至って正式稼働することができた。
被告は,原告に対し,本件作業の代金及び本件プログラムの使用許諾料
として,平成19年1月及び同年5月に合計75万6000円(本件コン
ピュータ1,4及び5の分。1台当たり25万2000円),平成20年
2月に前記の機能追加及び修正作業の代金等として,原告側と合意してい
たトータルで20万円程度を,予算上難しい状況にあった定時制高校を除
いた3校から合計21万円(前記3台分。1台当たり7万円),平成19
年7月及び8月に本件作業の代金及び本件プログラムの使用許諾料として
合計40万円(本件コンピュータ2及び3の分。1台当たり20万円)を
それぞれ支払った。そのほか,被告は,原告に対し,原告が平成20年9
月以降に行った本件プログラムの導入に係る操作指導及びデータ一括更新
作業の対価として,同年10月,平成21年4月及び同22年4月に各3
万円(市立5校分),平成23年4月に4万円(市立5校及び双星高校分)
を支払った。
エ原告は,被告に対し,上記ウ記載の支払に異議を述べなかったから,本
件作業の代金及び本件プログラムの使用料は,上記金額と定められた。な
お,被告は,被告主張追加契約に係る本件作業の代金及び本件プログラム
の使用料の金額につき,30万円以内で協議が成立するものと見込んでい
たが,原告と被告との間で協議が調わなかった。
オ被告主張契約においては,本件プログラムをインストールする際に支払
うもののほか,被告において何らかの費用を負担すべき旨の合意はなされ
ておらず,一般的なパッケージソフトと同様,1回限りの支払で本件プロ
グラムについて恒久的に使用許諾がなされたものである。
第4当裁判所の判断
1証拠(乙31,文中掲記のもの)及び弁論の全趣旨(前記争いのない事実を
含む。)によれば,次の事実が認められる。
(1)本件プログラム導入に至る経緯
市立5校においては,平成18年ころから,授業料及び諸費の収納管理事
務の効率化と正確さの向上を図るため,パソコンに収納管理ソフトを導入し
て管理台帳を作成し,金融機関と高校がパソコンにより収納情報の交換をす
る方式に変更することが検討されていた(乙18の2)
被告教育委員会学務課のP1は,同年1月ころ,原告代表者から,「教育
委員会-学校間ネットワークシステム」の紹介を受けたことがあり,これは,
学校徴収金の管理,就学援助事務の支援,学校備品の管理,学校財務の管理
及び学校給食の管理といった事務をOA化し,さらに学校,教育委員会等を
ネットワークでつなぐことを内容とするものであったが,P1は,原告代表
者に地方自治体での勤務経験があり,自治体向けコンピュータシステムの開
発を行っていたことから,平成18年10月ころ,授業料及び諸費の収納を
行うソフトの導入について,原告代表者に打診した(乙18の2,28,3
1)。
原告代表者は,同年12月以降,P1や高校の事務長らと金融機関を訪問
するなどして,金融機関と高校との情報のやり取りや,市立5校の収納事務
の流れについて説明を受け,本件プログラムの内容を提案した。市立5校の
側では同月15日の時点で収納管理方法の変更の必要経費として,電話料に
付加して支払うものを除き,いずれも備品購入費として,金融機関とのやり
取りに使うファームバンキングソフト5万5000円,ターミナルアダプタ
ー1万5000円,パソコン10万円,収納管理ソフト25万円,合計42
万円の概算を行い,原告代表者から,一部でも前払金をお願いしたいとの希
望があることを確認した(乙18の2)。
同月20日,高校の事務長や原告代表者が学務課を訪れ,金融機関の担当
者より,ファームバンキングソフトの説明を受けた際には,技術的な問題が
確認され,同月22日付けで新たな必要経費の概算が作成され,供覧に付さ
れたが,パソコンの金額が13万円に増額され,オフィスソフト2万円も購
入することになったものの,原告からの収納管理ソフトについては,備品購
入費25万円のままとされ,同月26日の事務長会においては,導入費とし
て予定していた学務課の留置予算が足りず,18年度に全額執行は難しいこ
と,2校のソフト代を支払い,残額は19年度に待ってもらうことなどが協
議された(乙18の1及び2)。
(2)本件プログラムの導入とこれに関する支払
原告は,被告に対し,平成18年12月28日及び平成19年3月30日
付けで,商品名を「高等学校授業料等管理パッケージソフト」,備考欄に「簡
易なメンテナンスを含む」と記載して,商品単価24万円,消費税1万20
00円別,合計額25万2000円とする請求書3通を発行し,被告は,同
金員(合計75万6000円,本件コンピュータ1,4及び5分として)を
平成18年度の一般会計で備品購入費として支出した(乙3ないし5の各1
及び2)。
原告は,平成19年4月,本件コンピュータ1ないし5に,本件プログラ
ムをインストールした。
原告は,被告に対し,同年6月8日付け及び8月2日付けで,商品名を「高
等学校授業料等管理パッケージソフト」,備考欄に「簡易なメンテナンスを
含む」と記載して,商品単価20万円(消費税込み)とする請求書2通を発
行し,被告は,同金員(合計40万円,本件コンピュータ2及び3分として)
を同年度の一般会計で,備品購入費として支出した(乙9及び10の各1及
び2)。
市立5校においては,同年9月ころに本件プログラムの正式稼働を予定し
ていたが,データ訂正が反映されないなどの不具合や,同年11月21日に
は一定の操作をするとデータが破壊される場合もあることなどが判明したた
め,被告は,本格的に使用できる状況には至っていないと判断して本件プロ
グラムの正式な稼働を延期し,修正等を経て平成20年2月分から正式に稼
働させた(乙2の1及び2,19の1ないし3,29)。
原告は,被告に対し,同年1月31日付けで,商品名を「高等学校授業料
等管理パッケージソフト(version2)」,単価7万円(消費税含む)
とする請求書3通を発行し,被告は,同額(合計21万円,本件コンピュー
タ1,4及び5分として)を平成19年度の一般会計で備品購入費として支
出した(乙6ないし8の各1及び2)。
(3)導入後の作業等とこれに関する支払
原告は,画面の表現修正等本件プログラムに関する作業の対価として,平
成20年8月から9月にかけて,商品名を「高等学校授業料等管理パッケー
ジソフト改修バージョン2.0」,備考欄として「簡易なメンテナンスを含
む」,商品単価5万円(消費税込み)とする請求書5通を発行し,被告は,
同年度の一般会計で,市立5校についての修繕料(物件費)として各5万円
を支出した(乙20ないし24の各1及び2)。
被告は,原告による市立5校合同の授業料収納システム操作研修の謝礼と
して,同年10月31日及び平成21年4月30日に,各3万円を報酬費と
して支出した(乙11,12)。
原告は,平成22年4月に,市立5校のうち少なくとも4校から授業料収
納システムデータ移行作業料として,各6000円を受領した(乙13の1
ないし4)。
(4)本件訴訟に至る経緯
平成23年4月1日,尼崎産業高校及び尼崎東高校が統合されて,双星高
校が新設され,原告は,同月7日,双星高校の本件コンピュータ6に本件プ
ログラムをインストールし,授業料収納システムデータ移行作業にかかる指
導料として,市立5校から各6000円,双星高校から1万円の支払を受け
た(乙14の1ないし6)。
その際,双星高校の事務長が,既に対価を支払って本件プログラムを使用
していた尼崎産業高校及び尼崎東高校が双星高校に統合されたことから,本
件コンピュータ6に本件プログラムをインストールしても,本件プログラム
自体の代金は発生せず,上記以上の支払は要しない旨の認識を示したところ,
原告代表者はこれに納得せず,P1が間に入って協議するなどしたが,解決
しなかった。
原告は,同年6月21日付けで,双星高校の事務長に対し,双星高校への
本件プログラムの導入等の代金が合計270万円であり,これを,初年度7
0万円,残額200万円を平成24年度以降毎年50万円支払うよう求める
旨を通知した。270万円の内訳は,システム価格385万円(①システム
基本機能200万円,画面数130,データベース構築修正及び各種帳票修
正含む,②全銀協データ送出変換機能及び取込みと消込み機能100万円,
③帳票関連70万円,④導入費用15万円)から115万円を特別減額した
ものとされた(乙17の1)。
原告代表者は,同年7月21日,配偶者とともに,P1,双星高校事務長,
尼崎高校事務長,双星高校の事務員2名と面談し,本件プログラムの使用料
等について協議した。原告代表者は,本件プログラム制作には約2800万
円がかかった旨述べ,前記270万円の支払だけでなく,本件コンピュータ
1ないし5における本件プログラムの使用についても,再契約と使用料の支
払や保守管理費の支払を求めた。原告代表者は,本件プログラムの使用は賃
貸借に基づく旨を主張したが,双星高校事務長らは,本件プログラムは備品
として購入した旨説明し,双星高校分も25万円余までの支払しか考えられ
ないとの意向を示した(甲11)。
P1は,同年8月3日,原告代表者に対し,①双星高校分の支払に関し,
平成20年から使用している授業料ソフトは備品購入で各校から支払をした
もので,今年度導入した授業料ソフトも以前と同様に備品購入として支払う
予定でいること,②平成24年度以降について,今般原告から今後の「使用
料」「保守管理費」の形で契約を締結しなければ本件プログラムの使用を認
めないとの申出があったことから,2費目を支出予算に計上するなど内部で
検討していく考えのあること,同年度以降使用する授業料ソフトは,原告を
含め他社の同種ソフトの中から改めて選定した後,契約締結して使用してい
く考えであること等を伝えた(乙25)。
原告は,平成23年8月13日,被告に対し,本件各コンピュータにおけ
る本件プログラムの使用料未払分として,合計1353万4000円を同月
23日までに支払うよう求め,支払がなければ本件契約を解除する旨の意思
表示をした(内訳:①1校年間40万円の市立5校分の使用料(平成19年
度から平成23年度)1000万円,②双星高校分(平成23年度1年分の
使用料と導入費)70万円,③月額4万円の維持管理費の市立5校分(4年
分)960万円,④カスタマイズ費用月額80万円を11か月分880万円
⑤値引き1420万円⑥既払金136万6000円)(甲4の1及び2)。
2判断
前記1で認定した事実を前提に,原告の主張する本件契約成立の事実又は被
告主張契約成立の事実が認められるかにつき検討する。
(1)原告の請求は,本件プログラムの基本価格コンピュータ1台あたり385
万円を5年にわたり分割し,これに維持管理費を加算して支払う旨の契約が
成立したことを前提とするものであるが,被告がこのような契約を締結する
ためには,市長又は専決者の決済を受け契約書を作成すべきところ(乙16,
26),本件において本件契約を内容とする契約書が作成されていないこと
については当事者間に争いがない。
(2)また,本件プログラムを導入するにあたり,市立5校の事務長らが,各校
の備品として収納管理ソフトを25万円で購入することを前提に経費を概算
し,原告も,簡易なメンテナンスを含むパッケージソフトとしての商品単価
を記載した請求書を発行して,これに対応する支払を受けていることは前記
1で認定したとおりであるが,この一連の過程において,本件プログラムの
価格として,上記25万円を大幅に上回る金額が提示され,その一部の前払
として上記支払がされたと解し得るような客観的証拠は提出されていない。
原告は,「教育委員会-学校間ネットワークシステム」をP1に提案した
際に,スタンドアローンシステムで300万円,ネットワークシステムで5
00万円である旨を説明したとするが(甲6),前記1で認定したところに
よれば,教育委員会,学校の複数の業務をOA化し,ネットワーク化するこ
とを内容とする前記システムと,各校毎に授業料及び諸費の収納管理のみを
行う本件プログラムとを同一視することはできないし,原告が被告に交付し
た前記システムの説明文書には,300万円,500万円といった金額は記
載されていない(乙28)。
(3)前記1で認定したとおり,原告は,本件プログラムの導入に際し,各校に
つき25万2000円又は20万円の支払を受けた後,平成20年2月以降
も各校につき7万円,5万円,3万円,6000円(1万円)といった金員
の支払を受けている。
しかしながら,前記1で認定したところによれば,上記各追加支払につい
ては,原告が行った修正プログラムの作成や研修,あるいはデータ移行作業
に対する対価又は報酬としての対応関係が認められるのであって,原告が主
張するような内容で本件契約が成立しており,被告の予算の限度で,その一
部の支払がされたと解し得るようなものではない。
(4)仮に,原告が主張する内容で本件契約が成立していたとすれば,原告は,
平成19年4月ころ,本件コンピュータ1ないし5に本件プログラムをイン
ストールし,平成20年2月にこれを稼働させた後も,本件契約に基づく代
金の支払いをほとんど受けられないまま,修正プログラムの作成等を行い,
平成23年4月の時点では2000万円以上の未収金が生じていたにもかか
わらず,本件コンピュータ6に本件プログラムをインストールしたことにな
る。
しかしながら,前記1で認定したところによれば,原告は,平成23年4
月以降,双星高校の事務長との間でトラブルになった後に,本件契約の存在
を主張するにいたったものの,原告が,それ以前に,市立5校の関係で,本
件契約どおりの代金の支払を求めたり,あるいは本件契約の解除を主張して,
本件プログラムの使用の停止を求めたことを示すような証拠は提出されてい
ない。
原告は,平成23年7月21日の面談の際のP1の発言や(甲11),そ
の後,P1が,使用料,保守管理費を予算計上する旨述べたこと(甲15)
を指摘するが,P1は,原告との間でトラブルとなり,原告が本件プログラ
ムの使用停止を求めていることを考慮し,学務課の担当者として発言等して
いるにすぎず,上記発言等から,P1が本件契約の成立を前提としていると
いうことはできない。
(5)以上検討したところを総合すると,原告と被告との間で,本件契約が成立
したと認めることはできないというべきであり,原告の請求のうち,本件契
約の成立を前提とする部分(請求2の主位的請求)については,その余の点
を検討するまでもなく理由がない。
また,前記1で認定したところによれば,本件プログラムの導入に際し,
被告はこれをパッケージプログラムとして購入し,備品購入費として代金を
一括で支払うことを前提に交渉を行い,原告もこれに対応する請求書を発行
して代金の支払を受け,コンピュータに本件プログラムをインストールした
後は,プログラムの改修,研修,データ移行といった個別の事項について支
払を受けた事実が認められるのであるから,本件プログラムを本件各コンピ
ュータにインストールするにあたり,原告と被告の間では,原告の有する徴
収金管理プログラムを被告の事務の実情に合わせて修正し,インストール後
も簡易なメンテナンス作業を行うこと,本件プログラムの複製物については
所有権を移転し,本件プログラムの使用については期限を定めずに許諾する
旨の合意が成立したと解するのが相当であり,これによると,原告の請求の
うち,被告の本件プログラムの使用が,原告の著作権侵害にあたることを前
提とする部分(請求1及び3,請求2の予備的請求)も,やはり理由がない
というべきである。
3結論
よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴
訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用し,主文のとおり,判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官谷有恒
裁判官田原美奈子
裁判官松阿彌隆
別紙コンピュータ目録
1兵庫県尼崎市上ノ島町1丁目38番1号
尼崎市立尼崎高等学校事務室内
NEC社製VERSAPRO1台
2兵庫県尼崎市東難波町2丁目17-64
尼崎市立尼崎工業高等学校事務室内
NEC社製VERSAPRO1台
3兵庫県尼崎市北城内47番地の1
尼崎市立城内高等学校事務室内
NEC社製VERSAPRO1台
4兵庫県尼崎市口田中2丁目8番1号
尼崎市立尼崎双星高等学校事務室内
NEC社製VERSAPRO
(尼崎市立尼崎産業高等学校事務用)1台
5兵庫県尼崎市口田中2丁目8番1号
尼崎市立尼崎双星高等学校事務室内
NEC社製VERSAPRO
(尼崎市立尼崎東高等学校事務用)1台
6兵庫県尼崎市口田中2丁目8番1号
尼崎市立尼崎双星高等学校事務室内
NEC社製VERSAPRO
(尼崎市立尼崎双星高等学校事務用)1台
以上
別紙コンピュータ業務支援システム目録
GSST社製「徴収金事務管理支援システム」
以上

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
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答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛